ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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最近感想をたくさん頂けるので嬉しい悲鳴を上げております!

・・・もっと送ってもらってもいいんですよ?


第八十話 大いなる怒り

・・・どうもみんなの様子がおかしい。余所余所しいと言えばいいだろうか。おそらく、勝負に向けて集中している俺を気遣い、あまり干渉しないようにしてくれているのだろう。本当に、俺は仲間に恵まれているな。

 

それはともかく、いよいよ勝負が明日に迫っている。俺は既にベッドに横になっていた。疲れを残さず、万全の状態で明日に臨む為だ。

 

『いよいよ明日やな』

 

ああ、オカン。うん、明日で全てが決まるんだ。

 

『余計な事は言わん。悔いの残らへんようにな。それと、明日は『王』の駒も持っていき』

 

駒を? 何故? 確かサーゼクスさんが言うには、俺は駒を持っておかなくても『王』として認識されると聞いてるけど。

 

『ただの保険や。・・・今のアンタなら出来るかもしれへん。贋作であったはずのアンタは、既に本物を越えとるんやから』

 

どう・・いう・・・意味・・・。ああ、やべ、眠くなって・・・。

 

『ええよ、お休み。何かあっても、ウチが助けたるからな』

 

その言葉に、どこか母親の様な温かさを感じながら、俺の意識はゆっくりと沈んでいった。・・・俺の母さんはパンチパーマじゃなかった事は伝えておこう。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

そして迎えたゲーム当日。俺達はオカルト部の部室に集まっていた。ここからゲームが行われるフィールドに転移させられる事になっていた。

 

「・・・いよいよだね、ご主人様」

 

隣の黒歌の声に黙って頷く。他のみんなも気力に満ち溢れた表情を見せている。・・・大丈夫、彼女達と力を合わせれば、きっと勝てる。

 

ポケットに入れた『王』の駒をそっと握り締める。そうすれば、彼女の・・・アーシアの声が聞こえて来るような気がした。

 

リアス達が観客席から俺達の試合を観戦するのとは違い、アーシアは家でアザゼル先生の用意してくれたモニターを通して俺達の試合を見る事になっている。あの記事の所為で有名になってしまった彼女を見て、他の人達が騒ぐのを防ぐ為だ。

 

「・・・時間ですね、行きましょう」

 

足下の魔法陣が光を放ち始める。そして、俺達は決戦の場へと跳ばされるのだった。

 

SIDE OUT

 

 

 

アーシアSIDE

 

「・・・あと少しで始まりますね」

 

壁にかかった時計を確認して私はそう呟いた。リョーマさんとディオドラさんとの勝負まであと十分を切っていた。

 

ディオドラ・アスタロトさん・・・。私が教会を追われる事になってしまったあの出来事の悪魔さん。だけど、私は彼を救った事を後悔なんてしていない。目の前で消えかけている命を見捨てるなんて絶対に間違っているのだから。

 

「誰かに愛して頂けるというのはとても素敵な事です。だけど、それと同じくらい素敵な事だってたくさんあります」

 

今のこの暮らし以上に素敵な事なんてあるだろうか。リョーマさん達と一緒に過ごせる一日一日がとても輝きに満ちていて、これ以上幸せになっていいのだろうか? なんて思ってしまったりもする。

 

「それだけでいいんです。私は・・・リョーマさんとずっと一緒にいたいんです」

 

他の人にとっては取るに足らない小さな願いなのかもしれない。だけど、私にとってはこの上も無く大切な願いだった。

 

リョーマさんから預けて頂いた『女王』の駒を手の中に納めながら祈りを捧げる。主は亡くなってしまった。だけど、祈らずにはいられなかった。

 

「どうか。どうか、みなさんが無事で帰って来てくれますように」

 

『・・・その祈り、確かに聞き届けました』

 

「え・・・!?」

 

慌てて周囲を見渡す。今、どこからか慈愛に満ち溢れた優しい声が聞こえて来た気がしたのだけれど。

 

ピンポーン!

 

突然チャイムが鳴った。誰か訪ねて来たのだろうか。こんな深夜に? でも、急を要する事だったら大変だし・・・。

 

少し悩んで、私は玄関に向かった。そしてドアを開けると、そこには予想だにしない人物が立っていた。

 

「やあ、迎えに来たよアーシア」

 

「ど、どうしてあなたが・・・!?」

 

アーシアSIDE OUT

 

 

 

IN SIDE

 

「ッ・・・!」

 

転移完了と同時に、アル=ヴァンセンサーがもの凄い反応を示した。あまりの強さに若干頭が痛い。これは・・・おそらくすぐに何か仕掛けて来そうだ。

 

「みんな、まずは周囲の警戒をしてくれ」

 

俺の指示でみんなが円を組みながら周囲を警戒する。支取さん曰く「勝負は常に冷静に。怒りや動揺は相手以上の敵になる事もありえる」との事だ。

 

俺達が立っているのはとても広大な場所だった。石造りの地面に何本もの巨大な柱が建っていて、向こうの方には大きな神殿の様な建物まで見れる。なんというか、凄く厳かな雰囲気だ。人間界にあったらさぞかし良い観光名所になった事だろう。

 

「・・・ちょっと変っすね。確か転移したら審判役からのアナウンスがあるって言ってませんでしたっけ?」

 

確かにミッテルトさんの言う通りだ。既に転移して五分くらい経っているのだが、肝心のアナウンスが一向に流れない。

 

誰もが怪訝な表情を浮かべていた・・・その時、突如魔法陣が出現した。しかも一つだけじゃない。至る所に連鎖的に魔法陣が展開し始める。それは全て形がバラバラだ。だが、ただ一つ・・・そこから発せられる悪意だけは共通していた。

 

そこから現れたのは大勢の悪魔のみなさん。皆例外無く俺達を睨みつけている。その数は最早数える事が出来ないほどまでに膨れ上がっていた。まさか、これが全部アスタロトさんの眷属なわけないよな・・・?

 

「見憶えのある顔もありますわね。みなさん、あれは間違いなく『旧魔王派』の連中です」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

ここでペロリストの襲撃だと!? ヤツ等・・・本当に邪魔ばかりしやがるな! はっ、ひょっとしてアスタロトさんの方にも!?

 

「我らは貴様の存在を認めない。フューリー・・・貴様にはここで散ってもらう」

 

「ふん、暑苦しい顔ばかりですわね。イライザやリコといった他の女性悪魔達はどこへ行ったのですか?」

 

そう尋ねるカテレアさんに、一番近くにいた男が声を荒げた。

 

「カテレア・レヴィアタン! 貴様さえ寝返らなければ! 何が『フューリー教』だ! どいつもこいつも惑わされおって! ・・・というか、イライザは私が狙っていたのだぞ! それを・・・それをぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「そう・・・あの子ついに動いたのね。今度遊びに行ってみようかしら」

 

・・・よくわからないが、どうも仲間割れがあったようだな。ざまあみろ。

 

「おいおい、いつまでもくっちゃべってないでさ、早いとこ殺っちゃってよ」

 

そこへ第三者の声が届く。この声はアスタロトさん!? 良かった。無事だった・・・。

 

「・・・え?」

 

空から聞こえる声の目を向けた瞬間―――俺の思考は停止した。

 

そこにいたのは間違い無いアスタロトさんだった。当然だ。彼は俺と勝負する為にここにいるのだから。でも・・・何で“彼女”が。アスタロトさんに抱えらえ、悲痛な表情を見せているアーシアがここにいる!?

 

「リョーマさん・・・!」

 

「あははは! そうだ! その顔が見たかったんだよフューリー! カメラを持って来なかったのが残念でならないや!」

 

「ディオドラ・アスタロト! アンタどういうつもりにゃ!? 何でアーシアがここにいる!?」

 

「どうもこうも。僕の目的は最初からこれだったのさ。ゲームなんて最初からするつもりなんて無かったんだよ。キミ達にはここで『禍の団』にエージェント達に殺されるんだ! これだけの数の上級、中級悪魔を相手に、伝説の騎士様はどこまで立ち向かえるのかな?」

 

「・・・やはり私の予想は正しかったようですね。ディオドラ・アスタロト。前回のゲームで見せたあの力はやはり・・・」

 

「ふふ、今から死ぬキミ達に教えても意味が無いだろう。だが・・・そうだな。あの神殿の奥まで辿りつけたら、その時は教えてあげるよ」

 

アスタロトさんとアーシアの姿が徐々に薄くなっていく。今すぐ二人の元へ行かなければ! そう思うのに体が動かない。予想もしない展開に頭の中がぐちゃぐちゃで何も考えられなくなっていた。

 

「まあ、不可能だとは思うけど、来るなら急いだ方がいいよ。僕はあの神殿でアーシアと結ばれる。はは、なんならその場面に合わせて来てくれてもいいんだけどね」

 

アスタロトさんの顔が喜悦に歪む。それを見て俺は理解した。あれが・・・あの顔こそが彼の本性なのだと。

 

「リョーマさん! リョーマさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

叫び声だけを残し、アーシアの姿は消えて行った。

 

「アー・・・シア・・・」

 

自分でも間抜けだと思える様な声で彼女の名を呼ぶ俺。そんな俺を立ち直させたのはレイナーレさんだった。

 

「神崎様! すぐに神殿に向かいましょう! あの男・・・絶対に許さない!」

 

「で、でもお姉様! これだけの悪魔を無視して向かうのは不可能っすよ!」

 

「ミッテルトの言う通りです! まずはここを切りぬける事を考えるべきかと!」

 

「わかってる! でも急がないとアーシアが・・・!」

 

「ならば、ここはわしに任せてもらおうか」

 

傍の柱からそんな声が聞こえたと思えば、そこから一人の老人が姿を現した。よく見ると、その人はリアスと支取さんの勝負の後、医務室へ急いでいた俺の前に現れたあの時の老人だった。

 

「・・・北欧の主神、オーディン。何故あなたがここに・・・!?」

 

オーディン? ・・・オーディン!? この人が!?

 

「話すと長くなるので簡潔に言うがの・・・」

 

「放てぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

オーディンさんが続けて喋ろうとした刹那、周りにいたペロリスト共が一斉に魔力弾を放って来た。だが、それが俺達に直撃するよりも早く、周囲に展開した眩い障壁がその全てを防ぎきった。

 

「やれやれ、せっかちな者は嫌われるぞ。で、話を戻すがの。このゲームは『禍の団』に乗っ取られてしもうた。あのディオドラ・アスタロトが裏で『禍の団』と繋がっていた証拠がようやく見つかっての。今、運営側と各勢力の面々が協力して迎え撃っておる」

 

・・・え? アスタロトさんがペロリスト・・・? じゃあ・・・じゃあアーシアは・・・。

 

「あーあ。せっかく俺様が説明してやろうと思ったのに、そこのおじーさまの所為で台無しだぜ」

 

「ッ!? お前は・・・!」

 

「やっほーレイナーレ様ぁ。後その腰巾着のお二人さん」

 

またしても現れる新たな人物。それは姿を消して久しかったクレイジー神父だった。

 

「何故お前が・・・!」

 

「いやあ、俺も苦労したわけですよ。せっかくエクスカリバーなんて素敵な物を手に入れたってのに、それも取られちゃってさぁ。あのいけすかねえイケメン悪魔君に斬られちゃった後、何とか逃げ出したのはよかったんだがよぉ。正直、何度死ぬかと思った事やら。でも、このフリードちゃんのしぶとさをなめちゃいけませんぜ? こうしてテメエ等の前に再び姿を現しちゃったんですからねぇ!」

 

「貴様、何の目的で現れた?」

 

「目的? そんなもん決まってるじゃねえか。もう俺には何も残ってねえ。どうせこれから先も何もねえ。だったら、今まで散々俺をナメてくれた相手にお礼参りして潔く死んでやろうと思っただけですわ! つーわけで、兄ちゃん! いっちょ俺と最後のパーティーとしゃれこもうや!」

 

・・・こいつは何を言っているんだ? 今のこの状況をわかっているのか?

 

何も答えない俺に業を煮やしたのか、クレイジー神父が続けて口を動かした。

 

「おいおい! ノリが悪いぜぇ! アーシアたんの所に行かないとまずいんだろぉ? 早くしないと、あの悪魔のお坊っちゃんの素敵な趣味の相手にされて大変な事になっちゃうぜぇ?」

 

「趣味・・・?」

 

「そうさ。あのお坊っちゃんの女の趣味は大したものでなぁ。シスターとか、教会に通じている女が好みなんだとよ。アイツは熱心な信者や教会の本部に馴染みのある女を言葉巧みに騙しちゃあ手籠めにしてんだよ。もう何人もの信仰心に溢れる聖女様達がアイツの餌食になっちゃってるんだなこれが」

 

・・・まさか。いや、ありえない。そう思っても、俺の中で嫌な予感が沸々と湧き上がって来た。なら、ならアーシアが教会を追放されたのも・・・。

 

「そう・・・アーシアたんが教会を追放されるシナリオを作ったのはディオドラ坊っちゃんさ。シスターとヤるのが大好きなディオドラ君は、自分の好みドストライクなとっても可愛い聖女様を見つけました。一目見たその時から、抱きたくて抱きたくてたまりません。でもでも、教会から連れ出すのはちょっと大変かなー。そう思った彼は作戦を立てました。「そうだ! あの子は悪魔も癒してしまう神器を持ってる! なら怪我をした悪魔を癒した所を教会の人間に目撃させれば、あの子はきっと教会を追放されるはず! やべ、僕って天才!?」ってな」

 

「・・・」

 

「信じていた教会から追放され、生きる目的を失えばきっと自分の所に来るだろう。ディオドラ様はそう思ったわけですよ。その苦しみだってお坊っちゃんにとっては最高のスパイス! 堕ちる所まで堕ちた所で掬いあげ、徹底的にヤる! とにかくヤる! ヤリまくるんですよ! 今までも、そしてこれからも、お坊っちゃんはそうやって聖女様を食いまくるつもりです!」

 

「・・・下衆もここまでくると大したものですわね」

 

「うわー、流石のわしもドン引きじゃわ」

 

「つーわけで。早いとこ行かないと、聖女様の処女が散っちゃいますよ? それとも、ひょっとしてNTR趣味でもあるのかなぁ? だとしたら俺も一緒に・・・」

 

「黙れ」

 

・・・ゴメン、支取さん。せっかくのキミの教え、守れそうにないや。俺は・・・俺はもう我慢出来ないよ。あの野郎・・・絶対に許さない。あの子の優しさを踏み躙ったあの野郎を許せるわけがないだろうが!!!

 

「ディオドラ・アスタロトォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

ヤツに届けとばかりに吠える! それに呼応するかのように、俺の体から緑色の光が天に向かって伸びて行った。

 

そして、俺の頭の中にあの声が響き渡った。

 

―――そうだ。神崎亮真よ。騎士としての誓いを果たせ! あの少女を救ってみせろ!

 

先生! アル=ヴァン先生! お願いします! 俺に力を・・・アーシアを助ける力を貸してください!

 

―――断る。

 

懇願する俺に、先生は残酷な言葉を口にした。な、何でですか!? 先生の力があれば俺は・・・!

 

―――何故ならば、私の力など必要無いからだ。神崎亮真よ。お前はもう私の贋作などでは無い。あの少女の為、自らの足で歩きだしたお前の力は既に私のそれを上回っている。お前は正真正銘、神崎亮真という一人の騎士なのだ。私の貸した“剣”も最早必要では無い。今こそ、お前はお前自身の“剣”を手にするのだ。

 

俺自身の・・・剣?

 

―――思い出せ、お前が仲間達から与えられたものを。それはお前の中で混じり合い、決して折れる事の無い“剣”となっているはずだ。そして、その“剣”を振るうに相応しい“器”も既にお前は知っている。

 

剣・・・そして器・・・。前者はリアス達。そして後者は・・・。

 

『わかりました。不肖、このシーグヴァイラ・アガレス。持てる知識の全てを動員して、必ずや満足して頂ける強化プランを考えさせて頂きます!』

 

アガレスさん・・・。そうか、彼女が示してくれたアレこそが、俺の新しい“器”!

 

―――想像しろ! そして創造しろ! お前の新たな“剣”を! 何者にも屈する事の無い、お前だけの“剣”を!! お前の大切な物を守る為の最強の“剣”を!!!

 

気付けば、俺はラフトクランズモードになっていた。そして、そんな俺の前に『王』の駒が浮かんでいた。

 

「・・・奪わせてたまるか。貴様等ごときに・・・これ以上あの子から何かを奪わせてたまるかァァァァァァァァ!!!!!!」

 

SIDE OUT

 

 

 

黒歌SIDE

 

地面・・・いや、世界そのものが震えていた。その原因は今私の前で未だかつて無いほどに感情を爆発させているご主人様だった。

 

「フューリー様の激しい怒りに、大地が震えていますわぁ!」

 

いつも通りのアホな発言だが、カテレアは顔面蒼白だった。彼女だけじゃない。レイナーレ達も同じだった。そして私も。

 

これまでも、ご主人様は怒りを見せる時はあった。だけど、これは今までとはケタが違う。今に比べれば、今までのものなんて怒りとすら呼べないただのイラつきだ。

 

「・・・彼奴の力に世界が悲鳴をあげておる。このフィールドを覆っている結界すらも既に崩壊してしまった。正にフューリー・・・“大いなる怒り”よ。ほほ、長生きはするものじゃ。これ程までのものを目にする事が出来るとはのぉ」

 

オーディンのおじいちゃんが面白そうな目でご主人様を見つめている。フューリー・・・“大いなる怒り”。私達にはとっても優しいご主人様がどうしてそう呼ばれていたのか、この時私は初めて知ったのだった。

 

「・・・奪わせてたまるか。貴様等ごときに・・・これ以上あの子から何かを奪わせてたまるかァァァァァァァァ!!!!!!」

 

咆哮するご主人様の体をあの鎧が包み込む。さらに、『王』の駒が激しい光を発しながらご主人様の眼前に浮かんでいた。

 

私達が見守る中、『王』の駒の変化が始まった。バラバラに砕け散ったかと思えば、それぞれが全く違う形へと変わっていく。それはパーツだった。大小様々なパーツがご主人様の周囲を取り囲んでいった。

 

そして、全てのパーツが一斉にご主人様の元へ殺到した。その刹那、ご主人様から目を開けていられないほどの激しい光が発せられ、私は咄嗟に目を瞑ってしまった。

 

やがて私が目を開けた時、そこに立っていたはずのご主人様はその姿を大きく変えていた。

 

「・・・剣」

 

私は無意識にそう口にしていた。さっきまでの鎧が“騎士”ならば、今のこの鎧は“剣”だ。私にはわかった。きっとこの姿は、これまでのご主人様の努力の積み重ねで得た新たな力だと!

 

先程までの激情が嘘の様に、ご主人様は静かな面持ちだった。以前の物と違い、顔が見えるので表情がわかるようになっていた。

 

その状態のまま、ご主人様は肩の大きな板状の部分から巨大な剣を引き抜いた。私達悪魔が嫌う神聖な気を発している。なのに、私はその剣の美しさに目を奪われていた。だって、あれはきっとご主人様の心そのもの。ご主人様の守りたいっていう想いが形を成したものだと思うから。

 

そして、ご主人様はその剣を手にエクソシストへと目を向けた。

 

「あ、あのですね。今のはあくまでもディオドラ坊ちゃんの事でして、決して僕の事を言ったわけでは・・・」

 

「・・・失せろ」

 

「あっハイ」

 

・・・逆らう気も無くなったのね。素直に道を譲るエクソシストを見て、私はそう思った。

 

「な、何だヤツのあの力は!? あのような姿はデータに無かったぞ!?」

 

「援軍を呼べ! こんな・・・こんな存在が許されていいはずが無い!」

 

「だ、だから私は言ったんだ! まだ手を出すべきじゃないと!」

 

『禍の団』の連中が戦慄の形相を見せる。もう遅いよ。アンタ達は、この世で一番怒らせたらいけない人の“大いなる怒り”を呼び起こしてしまったんだから。

 

「・・・俺はアーシアを助ける。邪魔をするならば・・・誰であろうとヴォーダの闇に還してやる!!!」

 

うん! 行こうご主人様! アーシアを助けに!

 

「生ヴォーダ頂きましたわ! ふははは! 滾る! 滾るぞぉ! フューリー様! 先陣はこのカテレアにお任せください!」

 

「・・・こんな時くらい自重しなさいよ。まあいいわ。カラワーナ! ミッテルト! 私達も行くわよ! この命に替えてもアーシアは助ける!」

 

「了解っす!」

 

「承知!」

 

「ほっほ、こういう展開は嫌いじゃないぞ。どれ、わしも混ぜてもらおうかの。覚悟せい『禍の団』よ。この老いぼれは想像を絶するほどに強いぞ? 精々覚悟する事じゃ」

 

「ひ、怯むな! かかれぇ!」

 

こうして、私達と『禍の団』の決戦の幕が開かれたのだった。

 




さーて、次話のハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜は!

「亮真です。今回の件は流石にブチ切れました。でも今までプッツンした時と違って、妙に冷静なんですよね。あれですかね、本当に腹が立った時は逆に冷静になるってやつですかね? とりあえず、ペロリストは全滅だぁ! の精神でいってみようと思います。さて次回は、「ペロリスト達の挽歌」「アーシア激おこからの全力ビンタ」「アザゼル先生悟りを開く」の三本です!」

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