ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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ちょっとだけ独自設定と独自解釈が入りますが、どうかご容赦を。


第六十話 イメージは大切ですよ?

とりあえずの案を持ってアザゼル先生の部屋へ向かうと、扉の前で何やら話しているアザゼル先生とメイドさんの姿が見えた。あのメイドさん、確か最初の日に俺を部屋まで案内してくれた人だ。

 

「どうだ? これから俺の部屋でゆっくりお茶でも・・・」

 

あら嫌だ。もしかしてなくてもナンパの最中? 大人の色気溢れる笑みと共に、メイドさんの頬に手を伸ばすアザゼル先生。そんな先生に対し、メイドさんは・・・。

 

「仕事中ですので」

 

そうピシャリと言ってのけ、手を払いのけた。うん、そりゃ仕事してる時に誘ったって断られるに決まってるよね。

 

と、ふいにメイドさんがこちらを振り向いて、その目を大きく見開いた。

 

「か、神崎様!?」

 

「うおっ!?」

 

アザゼル先生を押しのけ、駆け足で近付いて来るメイドさん。どうしたんだろう。

 

「あ、あの! アザゼル様とは偶然お会いしただけでして、お誘いを受けるつもりは一切無くてですね・・・!」

 

・・・ああ、わかった。このメイドさん、アザゼル先生と一緒にいる所を見て、俺が変な誤解したと思ってるんだな。初めてお世話になった時から仕事熱心な人だったし、そういう勘違いされるのは不服なんだろう。

 

「そんなに慌てなくても、あなたがそんな人じゃない事はわかってますから」

 

そう言うと、メイドさんは心の底から安堵した表情で深々と頭を下げ、足早に去って行った。その際、頬が真っ赤に見えたが大丈夫だろうか。体調を崩しているのなら休んだ方がいいと思うが。

 

こうして、この場に残されたのは、ナンパに失敗したアザゼル先生と、それを目撃した俺だけとなった。なんとも気まずい空気が辺りを漂う。

 

「・・・よお、俺に何か用か?」

 

「は、はい。頼まれた件についてお話したい事がありまして」

 

「そうか・・・まあ、入れ」

 

あー、やっぱり日を改めて・・・駄目ですかね? そうですか、わかりました。お邪魔しますよ。

 

逃げ出したい気持ちを抑え、俺はアザゼル先生の部屋にお邪魔するのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

「・・・という感じで考えてみたんですが」

 

リアス達のデータ、そして自分の考えた案を記した紙を机に並べ、俺は三十分以上かけながらその一つ一つをアザゼル先生に丁寧に説明した。説明中、先生は一言も口を挟まず、今も腕を組んで無言を貫いている。

 

な、何でこんなに緊張するんだろう。例えるなら・・・そう、小学生の時に、親に通信簿を見せる時の様な。わかるかなぁ。わかんないだろうなぁ・・・。

 

「なるほど。それぞれの役目、もしくは長所をさらに特化させた技ってわけか。中々理に叶っているものだとは思うが・・・」

 

「何か問題でも」

 

「・・・地味だ」

 

「え?」

 

「必殺技っつったらもっとこう派手で、発動させたら相手が死ぬくらいのレベルのものじゃねえと詰まらないだろう。朱乃やゼノヴィアのものはまだいいが、リアスやイッセーのはややインパクトに欠ける気がするんだよな」

 

そんなエタフォレベルを要求されても・・・。いや、必ず殺す技だから必殺技って呼ぶわけで、そう考えるとむしろそれくらいのものが普通なのか? でも、派手さ以外にも求められるものってあると思うけどな。

 

「なあフューリー。この案の技は、お前がいた世界で考えられたものなんだろう?」

 

「ええ」

 

技というか、そういうモーション全てを考えている人達ならいますけど。毎回毎回、よくもあれだけの派手な演出を考えられるよな。ただ、星やらなんやらを簡単に破壊する技とか武装の演出はちょっとやり過ぎだと思う。いや、俺は好きだけどね。OG外伝の最終話付近の“闇脳”とか“魔神”とか凄かったもんなぁ。

 

まあ、中にはゲシュキックとかR・H・Bとかネタっぽいものもあるけど、それはそれで見応えがあった。てか、ネタにしてはかなり強力だったしな。・・・アーシアと塔城さんでR・H・Bを妄想しかけた俺はカイ教官にしごかれるべきかもしれない・・・。

 

「なら他にも色々あるんだろ? この際、リアス達に教える云々は置いといて、思いつくだけ教えてくれよ」

 

「それは構いませんが・・・何故ですか?」

 

「そりゃもちろん、人工j・・・っと、なに、純粋に興味があるだけさ」

 

興味かぁ。それこそ浪漫兵器や浪漫技は山のようにあるけど、アザゼル先生もそういうのが好きなのかな。

 

「な? 頼む」

 

「わかりました。でも、キリが無いので、三十ほどでいいですか?」

 

「おお、構わねえよ。他のはまた聞かせてもらえばいいだけだしな」

 

というわけで、何故かアザゼル先生に武装や技を教える事になってしまった。とりあえず、版権のものまで加えたらえらい数になるので、オリジナル限定で挙げていこう。

 

まずは・・・そうだな。ラフトクランズ繋がりでJの主人公機である、グランティード、クストウェル、ベルゼルートから触れてみるか。

 

グランティードといえば、やっぱりテンペストランサーかな。というか、武器らしい武器ってあれくらいしか無かった気がする。後は額からのビームとか手刀とかだったような。

 

続いてクストウェルだが。あの機体はほぼ肉弾戦で戦う。武器も技も両肩のクローシールドを合体させたクローアームを利用したものがほとんどだ。あのクリスタル鉄拳はずいぶん人気が無かったらしいが、後継機はカッコ良かったっけ。

 

最後にベルゼルート。この機体が一番武装が豊富だった。ミサイルに小型のビーム銃。それと、ラフトクランズの物とは形状が異なるオルゴンライフル。こっちのはビームだけじゃなくて実弾も撃てる。反面、剣とかそういった近接武器は一切持たない完全な遠距離仕様の機体だった。

 

うろ覚えながら、武器の形を紙に描いたりしながら説明していく。壊滅的に下手というわけではないが、上手でも無いのでちゃんと伝わっているのか不安だ。

 

「ふむ・・・数的にもちょうどいいし、これはあいつらに・・・いや、決めるのは早いな。全部聞いてから改めて考えるべきか・・・」

 

「先生?」

 

真剣な表情で呟く先生が気になって声をかけると、先生はパッと表情を戻した。

 

「ああ、何でも無えよ。続けてくれ」

 

明らかに何でも無い様な雰囲気では無かったが、追及してもしょうがないので、俺は口を動かす作業に戻った。リボルビングバンカーやら、機神拳やら、とにかく思いついた傍からしゃべり続けていたら、あっという間に三十に達してしまった。見ると、アザゼル先生はまだ満足してないみたいだし、俺自身もちょっと火が着いたので、もう三十、合計で六十ほど列挙してみた所で、ようやく先生は満足してくれたみたいだった。

 

「これくらいでいいですか?」

 

「ああ、よくわかったぜ。・・・この世界にやって来たのがお前で本当に良かった事がな」

 

? どういう意味だろう。そういえば、途中グランゾンの武装の説明辺りで顔色が変わってたような・・・。それと関係があるのか? でも、架空の存在とはいえ、あんなチートスペックな“魔神”様の事を初めて聞けばそうなるのもわかる気がする。第三次や第四次でヤツが現れた時の絶望感と来たらもう・・・。

 

特に第四次の最終話で分身したのを見た時はコントローラーを投げそうになったっけ。α外伝じゃ序盤でネオの状態で出て来るし。・・・イベントシナリオだと思って考え無しに味方を突っ込ませて全滅してしまったのはきっと俺だけじゃないはず!

 

「それで、話が逸れてしまいましたが、俺の考えた案でいいんですか?」

 

「ああ。ゲームまでの日数を考えたら一つだけで充分だ。とはいえ、細かい調節は必要だがな。例えばこのガンスレイブとかいうヤツは、今からビットを一から作るよりもリアス自身の魔力を応用して形成した方が早いな。・・・最も、魔力を放出では無く、自分の周囲に収束展開させ、そこから魔力波を撃つなんて芸当が、今のアイツの実力で出来るかどうかはわからないがな」

 

出来るかわからない。つまり出来る可能性は一応あるという事か。やっぱり魔力万能説は正しかったな。

 

「よし、とにかく方向は決まった。いよいよコイツの出番だな」

 

そう言うと、アザゼル先生は一度席を立ち、部屋の奥からヘッドフォンみたいな形をした物と、ノートパソコンを持って来た。何が始まるのかと見守る俺の前で、先生はパソコンを起動させた。その画面には、広いフィールドと、その中央に立つ人形の姿が映っていた。

 

「それは・・・?」

 

「まあ、騙されたと思ってこれを着けてみろ」

 

言われるままにヘッドフォンを着ける。すると、人形の姿が一瞬でアル=ヴァン先生に変わった。

 

「え・・・!?」

 

「驚くのはまだ早いぜ。フューリー、何でもいいから動きをイメージしてみろ」

 

とりあえず走っているイメージを浮かべる。するとなんという事でしょう。画面の中のアル=ヴァン先生も走り始めたではありませんか。

 

「先生、これは・・・」

 

「これは俺が作ったソフトでな。そのヘッドフォンを着けた者のイメージした動きをそのまま画面で再現する物だ。百聞は一見にしかずというだろ? グダグダ口で説明するよりも、こうして動き付きの説明の方がずっとわかりやすいからな。これを使って、お前にはこれらの技のモーションデータを作成してもらう」

 

ああ、だからアル=ヴァン先生の姿なわけね。・・・サラッと説明してるけど、これってもの凄い発明じゃないのか? まさか、こうなる事を見越して作ったのだろうか。だとしたら、この人は間違い無く先見の明がある天才だ。

 

「先生は、どうしてこのソフトを作ろうと?」

 

「あ? そりゃお前、俺だけの技や武器を・・・じゃねえ。あれだ、こういう事もあろうかとってヤツだ。ああそうとも。それだけだ。他に何があるっていうんだ」

 

遠い目をしながらそう答えるアザゼル先生は、どこか後悔しているような感じだった。なんでだろう。こんな凄い物を作ったんだからむしろ誇ってもいいような気がするが。

 

「とにかく、これを貸してやるから、明日までにモーションデータを作っとけ。それを使って実際の指導に入るからな。下手な物は作るなよ」

 

「わかりました。お借りします」

 

そうして、パソコンとヘッドフォンを手に俺は自室に戻り、早速モーションデータの作成を始めた。やり方としては、ゲームのアニメーションをそのまま思い浮かべるだけで、勝手にパソコンが処理してくれるから簡単だった。

 

それにしたって、このソフトの再現率は異常とも言えるくらい高い。冗談のつもりでOG外伝仕様の縮退砲をぶっ放してみたら地球が吹っ飛んで爆発が宇宙に広がっていく様がキッチリ再現されてた。ただ、それをやっているのがアル=ヴァン先生だというのが違和感ありまくりだったけど。どうせなら人形の姿もイメージで変えられたらよかったのに。人間の体から縮退炉がせり上がって来るとか怖すぎる。

 

・・・っと、いかんいかん。真面目にやらないと。ええっと、ガンスレイブと爆雷符のモーションは保存したから、次は兵藤君の分を・・・。

 

この時、パソコンの操作ミスで縮退砲のデータまで保存していた事に俺は気付かなかった。

 

そして後日、それを見たアザゼル先生によってちょっとした騒ぎとなったのだが、それはまた別の話である。

 




困った時はアザゼル先生なら何とかしてくれるんですよ。これでようやく指導に入れそうです。

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