ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第五十二話 自業自得という言葉を知ってるか?

ミリキャス君が出て行ってだいたい一時間くらい経った頃、またしてもノックされたのでドアを開けると、俺をここまで案内してくれたあのメイドさんが立っていた。

 

「旦那様がお戻りになられましたので、みなさまには今一度ホールに集まって頂きたく参上いたしました」

 

「わかりました。すぐに行きます」

 

さあ、いよいよリアスのご両親との再会だ。彼女が家出してしまうくらい関係を悪くさせてしまった以上、顔を合わせるなり殴られたりするかもしれないが、何をされても、何を言われても受け入れよう。俺はそれだけの事をしてしまったのだから。

 

玄関ホールにはすでにみんな揃っていた。どうやら俺が最後のようだ。そして、みんなの前には、見憶えのある美男美女の姿。それは間違い無くリアスのご両親だった。

 

よし、いくぞ! これが俺の・・・全身全霊の謝罪だぁ!

 

「おお、フューリー殿。この度はよくぞ参られ・・・」

 

「申し訳ありませんでした!」

 

こうして、リアスのご両親との二回目の顔合わせは、俺の完璧な四十五度角度のお辞儀による謝罪から幕を開けたのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

「はははは! フューリー殿。つまり貴殿は、自分の家にリアスが押し掛けて来たのは、婚約パーティーの件で私や妻とケンカした事による家出だと思っていたのかね!」

 

腹を抱えて大笑いするリアスのお父さんことグレモリー卿。謝罪した直後、明らかに戸惑っている周囲にその理由を話した所、こんな状況になっていた。

 

「え、ええ。そうでなければ、彼女が俺の家に住むなんて言うはずありませんし」

 

「あらあら。英雄と呼ばれたお方も、女心には全くの無頓着なのですわね」

 

お母さん・・・ええと、ヴェネラナさんだったっけ? の方は苦笑いしている。女心? そりゃ男ですからわかりませんよ?

 

「ふ、ふふふ・・・。そう。そうだったのね。道理で私がどんなに迫っても何の反応もしなかったわけだわ・・・」

 

そんでもって、リアスがどこぞの前髪ボクサーばりに燃え尽きていた。朱乃や黒歌が懸命に背中を擦ったりして慰めている姿が印象的だった。

 

「フューリー殿。誤解しているようだが、あれから今日まで、私達親子の関係は良好なままだ。娘は純粋に貴殿の傍に・・・」

 

「あなた。それ以上はあなたから言うべきではありませんわ」

 

ヴェネラナさんがそう遮ると、グレモリー卿も何かを察した様子だった。

 

「はは、確かに私から告げるのは無粋だろうな。ならば、この話はこれまでとしておこうか。改めて、ようこそ我らがグレモリーの屋敷へ。この時間まで待たせてしまって済まなかったね。すぐに夕食の準備をさせよう」

 

そうして、あれよあれよと夕食の準備が進められた。俺達は全員揃って食事をする部屋に案内された。そこには一般のお宅ではまず目に出来ないであろうもの凄く長いテーブルや、聞くまでも無く高価であろう装飾が施された椅子が並べられていた。そして、そのテーブルの上にこれでもかと乗せられた豪勢な料理の数々。これ、明らかに食べきれる量じゃないでしょ。食べる前からタッパーが欲しいと思った俺はやはり一般人だという事だろうな。

 

「あわわ、こんな凄いお料理を本当に頂いてしまっていいのでしょうか」

 

隣のアーシアが目を丸くしている。そうだよな。こんな料理を目の当たりにしちゃったら遠慮してしまうよな。だが、これは俺達の為に用意してもらった物だ。ならば、ありがたく頂くのが礼儀というもの!

 

・・・ぶっちゃけ、早く食べたいだけなんですけどね。

 

「では、遠慮せずに楽しんでくれたまえ」

 

全員が席に着いた所で、さっき別れたばかりのミリキャス君も加えての食事会が始まった。最初こそ恐縮した様子を見せていたみんなだったが、時間が経つにつれて、隣の子と会話するくらいの余裕を見せ始めた。

 

「ぶ、部長。俺、こういう場でのマナーとか全然知らないんですけど・・・」

 

「ふふ、そんなの気にしないでよろしいのよ。この会食の一番の目的は、お客様でもあるあなた達に楽しんでもらう事。どうぞ気持ちを楽にしてちょうだい」

 

ヴェネラナさんの言葉にホッとする兵藤君。そういう事なら俺も食べやすいやり方でいかせてもらうか。一応、アル=ヴァン先生の知識の中にはテーブルマナーも含まれていたからいざという時は頼らせてもらうつもりだったけど、どうやらその必要も無さそうだ。

 

「そういえば、ミリキャス。あなた、フューリー殿にずっと会いたいと言っていたけれど、こうして実際にお会いしてどうだったのかしら?」

 

続いてヴェネラナさんがミリキャス君に話を振ると、彼はどこか神妙な顔で答えた。

 

「・・・僕は、本当に幸せ者です、おばあ様。先程、僕はフューリー様とお話させて頂きました」

 

「ほお、どんな話をしたのだ?」

 

「とても言葉では言い表せません。ですが、いつか、お二人にもお伝え出来るよう頑張ります。それが・・・僕の使命ですから」

 

あれ、今の彼の言葉から察すると、もしかしてスパロボ語りを気に入ってくれたのかな? それなら嬉しいんだけどな。お望みなら他の作品のストーリーも語ってあげるよ?

 

でも、作品で一、二を争うスケールのデカさを誇るαシリーズを最初に語っちゃったから、次もそれに勝るとも劣らないヤツを考えないと。・・・UX? それともZ? だけどZはまだ完結してないしな。

 

「・・・いい目だ。何かを決意した男の目をしている。ならば、私はその時が来るのを楽しみに待つ事にしよう」

 

「はい! フューリー様、お時間がある時でいいので、ぜひまたお話を聞かせてください!」

 

おや、てっきり長話にうんざりしてたと思ったら楽しんでくれてたのか。それなら喜んで続きも話してあげよう。

 

「わかった。いつでも聞きに来てくれ」

 

「ありがとうございます!」

 

「フューリー殿。貴殿は早速この家に新しい風を吹かせてくれたようだな。ところで、話は変わるのだが、貴殿は悪魔になる気は無いかな?」

 

おおう、本当に唐突ですね。なんでみんな俺に悪魔になるよう勧めるんだろう。

 

「その事なんですが、どうやら俺は悪魔にはなれないみたいなんです」

 

「なれない? ならないでは無くて?」

 

「ええ。俺の体は『悪魔の駒』を受け付けません。ですから、なりたくてもなれないんですよ」

 

「そうなの、リアス?」

 

「彼の言う通りです、お母様。以前、私はリョーマを眷属にしようと『悪魔の駒』を使おうとしたのですが、最後は『悪魔の駒』を弾き出すという前代未聞の結果となりました」

 

「それは、フューリー殿とあなたの実力差があり過ぎたからでは無くて?」

 

「はい。リョーマの言う通り、駒自体を拒否した様に見えました」

 

リアスの説明に、グレモリー卿がわざわざナイフとフォークを置いて腕を組んだ。

 

「困ったな。彼であれば私も妻も全く問題無いと思っているが、これで悪魔として我が家に来てくれればもう言う事は無いのだがな・・・」

 

「ですがあなた、私達にはすでにミリキャスがいますし、伝説の騎士の血を継いだ子どもならば、ハーフであろうとも、必ずや悪魔に素晴らしい未来をもたらしてくれるはずですわ」

 

何やら顔を寄せ合って話し合う二人。ただでさえ距離があるのに、そんな風にヒソヒソ話されたら全然聞こえない。まあ、大切そうな話みたいだし、部外者の俺が聞くのも悪いから特に気にしないけど。

 

「・・・うむ、その通りだ。彼を受け入れられる事自体が悪魔の将来の為になる。フューリー殿。いや、神崎殿」

 

何故に言い直したんですか? というか、俺の本名も知ってたんですね。フューリーとしか呼ばれないから知らないんじゃないかと思ってましたよ。

 

「何でしょう?」

 

「たった今から、私の事を父と思ってくれたまえ! 私も、貴殿を本当の息子だと思う事にしよう!」

 

ちょっ、『悪魔の駒』からどこをどう通ったらそんな話になるんですか!? 友達の親を父呼ばわりとか、小学生がふとした事で先生をお父さんって呼んだ時と同じレベルの恥ずかしさじゃないですか! ちなみに体験済みですけどねちくしょう!

 

「い、いや、流石にそれは・・・。友人が自分の親をそう呼ぶなんて、リアスだって不愉快・・・」

 

「べ、別にいいんじゃない? うん、いいと思うけど?」

 

まさかの許可頂きましたー! なんて言ってる場合じゃない! 駄目だよリアス! キミは否定側でしょ! 何満更じゃなさそうな顔してんの!?

 

「あなた。流石にそれは性急過ぎますわ。リアスの気持ちにすら未だに気付いていないようですし、ここはゆっくり時間をかけていきましょう」

 

「ふむ、いい考えだと思ったのだがな。ならば、神崎殿。その気になった時はいつでも言ってくれたまえ。我がグレモリー家はいつでも貴殿を迎え入れるつもりだからな」

 

「は、はあ・・・」

 

なんか納得しちゃってるし。てか、あれだけ言って具体的な説明は無しですか? けど、聞いたら聞いたでややこしい事になりそうだし、ここはもう流してしまおう。

 

そんな感じで、夕食の時間は過ぎて行った。やっぱりというか、みんな食べきれずに残してたけど。その中ただ一人、塔城さんがその見かけからは想像出来ないペースで全てを平らげていた姿には流石に驚いてしまった。

 

もしかして、ここでお世話になる以上、これからもこんな感じの食事になるんだろうか。大丈夫かな、俺。夏休みが終わる頃にはフードファイター目指せるレベルになってたりして・・・。

 

冥界第一日目の感想は、そんなくだらないものであった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

それから早くも数日が経った日、俺達は再び列車に揺られていた。なんでも、今日はリアス達のような若手悪魔と呼ばれる人達にとって重大なイベントがあるらしい。んで、アザゼル先生の言う通り、俺は彼女達について行く事となった。なんでも、サーゼクスさんも俺をこの場に同行させるつもりだったらしい。ただ、“人間”であるアーシアと、罪が無くなったとはいえ、“元犯罪者”である黒歌は留守番させられる事となってしまったがな。・・・俺も人間なんですけどね。

 

まあいい。終わったらお土産でも買って帰ってあげよう。

 

三時間後、俺達が降り立ったのは、魔王領の都市であるルシファード。旧魔王であるルシファーがいたという冥界の旧都市である。

 

以上、木場君から説明してもらった事をそのまんま繰り返してみました。

 

そこからさらに地下鉄に乗り換える為に移動する。その最中、駅にいた悪魔のみなさんがリアスに向かって黄色い歓声を上げていた。

 

朱乃曰く、彼女は魔王の妹である上にとても美しいから、下級、中級の悪魔のみなさんの憧れの的らしい。

 

それだけならいいんだけど、リアスから俺に視線を移した途端にざわつくのは止めてください。思わず、ここは地下労働施設か! と叫びたくなった俺は至って正常だと思う。

 

そうして乗り継ぐ事五分。ようやく目的地に到着した。列車から降りて、近くのエレベーターに全員で乗り込む。

 

「みんな。もう一度確認するわね。何が起こっても平常心でいる事。何を言われても手を出さない事。上にいるのは、私達のライバルよ。無様な姿は見せられないわ」

 

ふむ、圧迫面接的なものでもやられるのだろうか。

 

「リョーマ。あなたもお願いね」

 

任せてくれリアス。最初からそういうものだって知ってれば、余程の事が無い限りプッツンしたりしないって。例えば、大切な友人を馬鹿にされるとか、そういった事が無い限りはね。

 

エレベーターが停止し、扉が開く。その先にあったのは広いホールだった。使用人っぽい人達がこちらに向かって頭を下げる。

 

「お待ちしておりました、グレモリー様。こちらへどうぞ」

 

その内の一人の後に従って歩いて行くと、前方に複数の人影が見えて来た。その先頭に立つ逞しい体つきの黒髪の男性がこちらへ顔を向けたと瞬間、リアスが声をあげた。

 

「サイラオーグ!」

 

「リアスか。随分と久しいな」

 

にこやかな表情で握手を交わす両者。もしかしなくても知り合い? ははーん。こんなイケメンと知り合いだなんて、キミも隅に置けませんなリアス。だけど、このイケメンさん、どことなく誰かに似ているような・・・。

 

「ええ。あなたも変わりないようでよかったわ。初めての者がいるから紹介させてもらうわね。彼はサイラオーグ。私の母方の従兄弟なの」

 

へえ、従兄弟さんか。

 

「たった今紹介された身だが、改めて名乗らせてもらう。俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 

それじゃ、この人がリアスのライバルの一人って事になるのか。見るからに強そうな人なんだけど、大丈夫なのかなリアス。

 

「ねえサイラオーグ。あなた、眷属と一緒にこんな通路で何をしていたの?」

 

「ふん、あまりにもくだらんから出て来ただけだ」

 

「くだらない? もしかして、他のメンバーも来てるの?」

 

「ああ。アガレスもアスタロトもすでに来ている。その上ゼファードルだ。着いた早々にアガレスとゼファードルがやり合い始めてな」

 

ライバル同士、闘志をぶつけ合ってるって感じか? けど、それにしたってやり合うって穏やかじゃない表現だな。なんか嫌な予感がするぞ。

 

そう思った直後、建物が大きく揺れ、何かがぶっ壊れたような音が俺の耳をつんざいた。言ったそばからこれだよ!

 

「まったく、だから開始前の会合などいらないと俺は進言したのだ」

 

音のした方にある大きな扉に向かい始めるリアスとサイラオーグさん。その後に続く二人の眷属達+俺。

 

そして、リアスによって開かれた扉の先には、見事にボロボロになった大広間があった。用意されていた机や椅子も例外無く全て壊されている。

 

その中央に、睨み合うようにして佇んでいる悪魔のみなさんがいた。一方は、眼鏡をかけた綺麗な女性。そしてもう一方は・・・。

 

「・・・」

 

その男の顔を見た瞬間、俺は前に進み出ていた。そうかそうか。あの野郎。あの時痛めつけてやったのに、まだ懲りて無かったのか!

 

「リ、リョーマ!?」

 

後ろからリアスの驚いた声が聞こえる。だが、俺は歩みを止めず、騒ぎの中心に向かうのだった。

 

SIDE OUT

 

 

イッセーSIDE

 

大広間の中央で、悪魔のみなさま方が睨み合っていた。武器まで取り出して、正に一触即発という言葉が相応しい状況だ。

 

一方は、悪そうな格好をした魔物や悪魔の集団。もう一方は、比較的普通そうな悪魔のみなさん。ただ、見た目は違えど、放っているオーラはどちらも恐ろしいほど冷たいものだった。

 

「ゼファードル、こんなところで戦いを始めても仕方ないと思わないの? 死ぬの? 死にたいの? 殺しても上に咎められないかしら」

 

まともそうな悪魔のみなさんの先頭に立っている眼鏡をかけた美少女が冷徹な声を発する。叶うならじっくり眺めたいけど、そういう空気じゃないから止めとこう。

 

「はっ、言ってろよクソアマ! 俺がせっかくそっちの個室で一発しこんでやるって言ってやってんのによ! アガレスのお姉さんはガードが固くて嫌だね! だから男が寄って来ないんだよ! いつまで処女やってる気なんですかねえ! だから俺がわざわざ開通式やってやろうって言ってやってんのによぉ!」

 

たった今、下品さに溢れるお言葉を言い放ったのが、もう一方の兄ちゃん。顔にタトゥー。緑色の逆立った髪。ほぼ裸な上半身。そこにも刻んでるタトゥー。スボンにジャラジャラ付けられている装飾品。

 

・・・どう見てもヤンキーです。本当にありがとうございました。

 

「ここは元々、時間が来るまで待機する場所だったんだがな」

 

そう前置きして、サイラオーグさんがさらに続ける。

 

「さらに言えば、若手が集まって軽い挨拶を交わす所でもあったのだが、実際はこのありさまだ。血の気の多い連中を集める以上、こうなる事くらい予想出来るものだがな。ヤツらが何をしようが関係無いが、ここらが潮時だろう。俺が止め・・・」

 

サイラオーグさんが進み出ようとしたほんの数瞬前、彼よりも先に動いた人物がいた。他の誰でも無い、神崎先輩その人だ。

 

「ッ・・・!」

 

僅かに確認出来た横顔は、完全に怒りに満ちていた。美少女とヤンキー達が放っていた以上に凄まじいプレッシャーを放ちながら進む先輩に向かって部長が声をかけたが、それでも先輩は止まらなかった。

 

「なんという殺気だ・・・! あの男、まさか・・・!」

 

サイラオーグさんがさっきまでの不満そうな顔を一変させた。驚愕と興奮の混じった視線を先輩の背中に送っている。

 

言い争っていた両陣営も、先輩のプレッシャーに反応したのか、一斉に顔をこちらに向けた。直後、ヤンキーの顔が驚愕の色に染まった。

 

「なっ!? テ、テメエ・・・!?」

 

「・・・久しぶりだな、強姦魔」

 

し、知り合いだったんですか、先輩!? てか今なんて言いました!? 強姦魔!? あのヤンキーが!?

 

「黒歌だけでは飽き足らず、今度はこの女性に手を出すつもりか」

 

美少女を守るようにヤンキーの前に立つ先輩。

 

「黒歌ですって? もしかして・・・!」

 

「あの男が・・・姉様を汚そうとした張本人・・・!」

 

部長と小猫ちゃんがハッとした表情を浮かべる。どういう事かは後で聞くとして、今はこの状況を見守るしかない。

 

「う、うるせえ! 犯罪者に何をしようが構いはしねえだろうが! おい! この野郎は主殺しの黒歌を庇った共犯者だぞ! 誰か捕まえろ!」

 

「生憎だが、黒歌はすでにサーゼクスさん直々に無罪を言い渡されている。貴様の言う犯罪者など、もうどこにも存在していない」

 

「なっ!?」

 

狼狽するヤンキーに向かって、先輩はただひたすらに淡々と告げる。感情の籠っていないその声が、逆に俺に恐怖を抱かせた。

 

「貴様こそ、強姦未遂という立派な罪を犯した事をわかっているのか? 貴様の一時の快楽の為に、女性に一生癒えないかもしれない傷を負わせる事に何も抵抗が無いとでも言う気か?」

 

交わされる会話から察したのか、広間にいるヤンキー勢力以外の全員が、ヤンキーに向かって侮蔑の視線を向けていた。もちろん、俺だって同じだ。エッチな事をしてみたいという気持ちはあるが、無理矢理なんて最低過ぎる。

 

「し、知るかぁ! 俺は俺のやりたいようにやるだけだ! 邪魔するならぶっ殺してやる!」

 

「待て! ゼファードル! その男、いや、その御人は・・・!」

 

サイラオーグさんの制止も虚しく、ヤンキーは魔力を込めた拳を先輩に向かって放った。だが次の瞬間、吹っ飛ばされたのはヤンキーの方だった。

 

理由は簡単、ヤンキーの拳が届く前に、先輩の拳がヤンキーの顔面を捉えたからだ。およそ人を殴った時に出るものとは思えないド派手な音と共に、ヤンキーが勢いよく壁に叩きつけられた。すげえ、完全にめり込んでるよあれ。

 

「犯罪者をどうしようが自由。・・・その理屈ならば強姦魔、貴様にも人権など存在しないと思え」

 

こ、怖ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! 目が、目が本気ですよ先輩! 下手したらあの視線だけで人殺せそうだわ!

 

「き、貴様!」

 

一瞬の出来事に固まっていたヤンキーの仲間達が、正気を取り戻して先輩を囲む。だが、それを止めたのはまたしてもサイラオーグさんだった。

 

「それまでだ。お前達のやるべき事はまず主の介抱だろう。これから何が行われるのか理解しているのならば、まずは主を回復させる事に全力を注げ」

 

その言葉に、仲間達も先輩を置いてヤンキーの方へ駆け寄って行った。それを一瞥し、先輩はヤンキーに向けた表情とは真逆の微笑みを美少女に向けた。それをモロに見てしまった美少女の顔が瞬く間に真っ赤に染まる。うは、さっきまでのクールな感じがすっぱり消えちゃったよ。てか先輩、これってフラグですよね。

 

「あの男に何かされましたか?」

 

「い、いえ、何もございません。た、助けて頂いてありがとうございます」

 

「気にしないでください。個人的に、あの男が許せなかっただけなので。あの時再起不能にまで追い込んでおけばよかった。そうすれば、あなたに不快な気持ちを味わわせる事も無かったのですが」

 

どこまでも気遣う様な優しい言葉に、美少女は完全にノックアウトされていた。「ポッ」とか「ドキッ」なんて効果音がそこかしこから聞こえて来そうだ。

 

「と、ところで、あなたは・・・」

 

「俺の名前は神崎亮真といいます。今日は彼女・・・リアス・グレモリーの同行人としてこの場にお邪魔しました」

 

「神崎亮真? ・・・ッ!? え、そ、それって・・・!」

 

「伝説の騎士フューリー。まさか、この日この場でお会い出来るとはな。このくだらない会合において、ただ一つの有意義な出来事と言えるな」

 

サイラオーグさんの発した言葉に、俺達グレモリー眷属以外のみなさんが目を見開く。こういう反応を見る度に、神崎先輩がどれだけ凄い人なのか思い知らされるよな。

 

「お、兵藤・・・って、なんじゃこりゃ!?」

 

突然聞き覚えのある声で名を呼ばれたので振り返ると、そこには匙を始めとする駒王学園の制服を纏った人達がいた。

 

「ごきげんよう、リアス、兵藤君。とりあえず、この状況の説明を求めます」

 

会長の要求に、部長は溜息を吐きつつも、一から説明を始めるのだった。




キリがいいので、今回はここまでとさせていただきます。ゼファードルさんの噛ませっぷりに脱帽。

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