ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第五十一話 彼らの名は・・・

画面の前のみなさま、こんにちは。それともこんばんは? まあどっちでもいいか。神崎亮真の建物探訪のお時間がやってまいりました。

 

本日お邪魔いたしますのはこちら、リアス・グレモリーさんのお宅です。いやあ、途中でお庭も拝見させて頂きましたが、美しい花々や、見事と言うしかない造形の噴水、色彩様々な鳥達が飛び回っておりました。これだけでも見応え充分なのですが、これはいわば前座。肝心のお宅まであと少しといった所で・・・。

 

「さあ、着い・・・どうしたの、リョーマ? そんなに遠い目をして」

 

・・・はっ。俺は今まで何を・・・。なんか馬車の中でグレモリー領のトンデモ面積を耳にしてからの記憶がぶっ飛んでるんだけど。この年でボケが始まるとかマジ勘弁してください。

 

開かれたドアから外に出る。まず目に飛び込んだのは、執事さんとメイドさんが整列して作られた長い道と、そこに敷かれた真っ赤なカーペット。それは向こうの城の方まで伸びていて、城門がゆっくりと開き始めているのが見える。

 

「・・・先輩。俺、ホントにあそこにお邪魔していいんですかね?」

 

「安心してくれ、兵藤君。・・・俺も同じ気持ちだ」

 

一度顔を見合わせ、それから城を見上げつつ溜息を吐く俺と兵藤君。そこへ、グレイフィアさんが言葉を発する。

 

「それではみなさま、どうぞお進みください」

 

「行くわよ、みん・・・」

 

「リアスお姉様ぁ!」

 

城に向かって歩き出そうとした刹那、その声と共に人の列の中から紅い髪の子どもが飛び出して来た。その子は嬉しそうな顔でリアスに抱きついた。

 

「ミリキャスじゃない。ふふ、大きくなったわね」

 

「お姉様こそ、益々お美しくなられたようですね!」

 

「あら、お上手ね。流石お兄様の子どもだわ」

 

「リアス、その子は?」

 

俺が訊くと、リアスがその子を俺達の方へ一歩進ませながら答える。

 

「この子の名前はミリキャス・グレモリー。お兄様の子どもよ。私からしたら甥という事になるわね」

 

あの魔王様お子さんいたのか。言われてみればどことなく面影があるな。

 

「ミリキャス。この子が私の新しい眷属よ。挨拶なさい」

 

「初めまして。ミリキャス・グレモリーです」

 

「こ、こちらこそ初めまして! お、俺、じゃなくて、自分、でもなくて、ぼ、僕の名前は兵藤一誠です!」

 

ガッチガチだな兵藤君。でも気持ちはわかるよ。相手は魔王様のお子さんだもんな。そんな彼の様子がおかしかったのか、リアスが微笑む。

 

「イッセー。そんなに緊張しなくてもいいわ。魔王の名は継承した本人しか名乗れないの。だからこの子はお兄様の子どもだけどグレモリー家なのよ。私の次の当主候補でもあるわ」

 

なるほどな。でも、やっぱり魔王様の子だけあって、どことなくカリスマ的なオーラが出てる気がする。きっと将来、いい男になるんだろうな。

 

「と、ところで、お姉様。今回の里帰りにはあのお方もご一緒だと聞いていたのですが」

 

「ええ。彼がそうよ」

 

リアスが俺を示す。その瞬間、ミリキャス君の表情が一変した。もの凄くキラキラした目でこっちを見つめているその様子は、まるで尊敬するヒーローに出会って興奮している幼子のようだった。いやまあ、実際子どもなんだけど。

 

「リョーマ。ミリキャスもあなたのファンなのよ。今回の里帰りでお父様やお母様以上にあなたに会いたがっていたのがこの子なの」

 

「あ、あの、フューリー様! お会い出来て嬉しいです! あ、握手してもらっていいですか!?」

 

「あ、ああ・・・」

 

汚れも曇りも無い純粋無垢な目を向けて来ながら握手を求めるミリキャス君。ホントは、そんな風に見てもらえる資格なんて全く無いんですけど・・・。だが、こんな俺をそうやって見てくれる子どもの想いを否定するようなクズにまでなったつもりはない。

 

なので、精一杯の笑顔を浮かべながら、ミリキャス君の手を握る。子どもらしく、温かくて柔らかい手だった。

 

「うわあ・・・! フューリー様と握手しちゃった! もうこの手は洗えないです!」

 

いや、そこは洗おうよ。汚いからね。

 

「・・・早速一人撃墜にゃ」

 

ん? 黒歌、何か言ったか?

 

「さて、ミリキャスも満足したみたいだし、そろそろ屋敷に入りましょうか」

 

今度こそ城に向かって歩き始める俺達。その間、ヴラディ君が俺の背中にくっついたままだったけど、やっぱりこれだけの人の間を歩くのは彼にはキツかったのだろう。

 

門を潜り、さらに先にあった門を潜る。そうやっていくつかの門を抜けた先に、玄関ホールがあった。入る前から予想してたけど、やっぱり中も広い。

 

「お嬢様、早速みなさまをお部屋にお通ししようと思うのですが」

 

「そうね。私もお父様とお母様に挨拶しないといけないし」

 

「ではすぐにご案内させます。それと、旦那様は現在外出中です。夕刻までにはお帰りになる予定です」

 

「わかったわ。なら、みんなには一度休んでもらおうかしら。みんなの荷物もすでに運んでいるわよね?」

 

「もちろんです。お部屋の方も今すぐお使い頂いて構いません」

 

「みんな、聞いた通りよ。お父様が戻るまで一旦解散するわ。それぞれの部屋に案内させるから、しばらく休んでてちょうだい」

 

グレイフィアさんの後ろに控えていたメイドさん達がみんなを一人ずつ連れて行き始めた。俺の前にも、とても綺麗なメイドさんがやって来た。

 

「そ、それでは、ご案内させて頂きます!」

 

「お願いします」

 

随分と気合いの入ったメイドさんだ。職務を全うしようという気概が伝わってくるようだ。チラチラと俺の顔を見て来るけど、やっぱりここじゃ人間って珍しいんだろうなぁ。

 

そんな事を思いつつ、俺はメイドさんの後に従って、ホール前方の階段に向かって歩き始めるのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

さて、部屋に案内されたのはいいが・・・正直、ヒマでしょうがない。ここは誰かのお部屋に突撃したい所だが、勝手に動きまわるのも良くないだろうし。やっぱり時間が来るまでジッとしとくしかないか。

 

そう思ってベッドに横になろうとした直後、部屋の扉が小さくノックされた。もしかして、俺と同じくヒマになった誰かが遊びに来てくれたのかな?

 

そう予想しつつ扉を開けると、そこにいたのはオカルト部の面々でも、アーシアでも黒歌でも無かった。俺を見上げるその少年は、どこからどう見てもミリキャス君だった。

 

「あの、お休みの所申し訳ありません。でも、僕、どうしてもフューリー様とお話したくて・・・!」

 

いやいや、まさかキミが来るなんて微塵も思って無かったけど、俺としては大歓迎ですよ? 俺は迷い無くミリキャス君を部屋に招き入れた。

 

立派な机と椅子があったので、俺達はそこへ向かい合うようにして腰をかけた。それで、話がしたいと言ってたけど、一体何を話せばいいんだろうか。

 

「フューリー様。僕はあなたが異世界からやって来られた事を教えてもらっています。もしよかったら、フューリー様がいた世界の事を教えてもらえませんか?」

 

え? 何で知って・・・。ああ、きっとサーゼクスさんあたりから聞いたんだろうな。つっても、この世界に比べると特に面白い所なんて無いしな。

 

だけど、そんな答えじゃ、わざわざ来てくれたミリキャス君に悪いし。うーん・・・。

 

悩む俺だったが、少しして妙案が浮かんだ。フューリーのファンって事は、きっとミリキャス君もロボットとか好きなのかもしれない。だったら、スパロボの話とかどうかな。ストーリーだけでも結構面白いと思うけど。

 

よし、そうと決まれば、俺がストーリー的に一番気に入っているαシリーズについて語ってみようか。

 

「ミリキャス君。今から話すのは、人々の為に己の命や想いを鋼に乗せて駆け抜けた勇者達の物語だ」

 

そう前置きして、俺はαからα外伝、第二次、第三次のストーリーを順番にミリキャス君に語り始めた。

 

バルマー戦役。イージス計画。荒廃した未来での戦い。封印戦争。そして、自らの野望の為に、勇者達を集めていた真の黒幕との全宇宙をかけた壮絶な決戦。二度と戻れないと知りつつ、愛する者の為、守りたいものの為に決戦の地へ旅立った彼らの事を、人々はこう呼んだ。―――『鋼の救世主』と。

 

「(コントローラーを通じて)彼らと共に戦った記憶を、俺は一生忘れる事は無いだろう・・・」

 

そう締めくくり、俺は話を終えた。いやー、語った語った。なんか久しぶりにαシリーズがやりたくなってきたわ。でもこの世界にスパロボは存在しないんだよな。残念。

 

さすがに全シリーズを語るには時間が足りなかったから、αの中盤くらいまでしか話せなかった。それでも語り始めて数時間は経過しただろう。ちょっと調子に乗り過ぎたかな。

 

「・・・ありがとうございました。フューリー様。では、僕はそろそろ失礼しますね」

 

そそくさと立ち上がり、ミリキャス君は部屋を出て行った。あらら、やっぱり二時間も拘束しちゃったから怒ったのかな。ゴメンね。

 

・・・あ、最後にゲームの話だって言うの忘れてた。まあ、あんな内容が現実であるわけない事くらいミリキャス君だってわかってるだろうし、別にいいか。

 

ああ、なんかしゃべり過ぎて喉が渇いた。どっかに飲み物無いかな。

 

俺は飲み物を探す為に部屋の中を調べ始めるのだった。

 

SIDE OUT

 

 

 

ミリキャスSIDE

 

フューリー様のお部屋を出た僕は、すぐ近くの壁に背を預けた。興奮が収まらない。まだ心臓がドキドキしている。

 

フューリー様に語ってもらったお話。それは、彼の戦いの歴史そのものだった。あの方の世界が闘争に溢れた世界だとは聞いていたけど、まさか、宇宙すらも巻き込む壮大なものだったなんて・・・!

 

何度も何度も危機を迎えても、その度に勇者達が・・・『鋼の救世主』達が立ち上がり、人々の為に戦い続けた。これほどの英雄譚を、僕はこれまで聞いた事は無い。ううん、おそらく、これからどれほどの時が経とうとも、あの方を越える英雄なんてきっと現れないだろう。

 

伝えたい、この話を。『鋼の救世主』の物語を! これは、僕だけが知っていていい話じゃない。出会ったばかりの僕に、フューリー様が語ってくださったのには、きっと意味があるはずなのだから!

 

「フューリー様・・・。僕はやります! あなたの戦いを、あなたの物語を、決して忘れない為に!」

 

決意を新たに、僕は自分の部屋に向かって歩き始めた。よし、まずは充分なペンと紙を用意しないと!

 

ミリキャスSIDE OUT

 

 

こうして、一人の少年が抱いた決意は、これより数ヵ月後に形となって悪魔達の前に現れる。

 

ミリキャス・グレモリー著『鋼の救世主』。人々の為に戦い続けた勇者達の壮絶で壮大な物語は、発表から何千、何万年経とうとも、決して色褪せる事無く悪魔に、そして堕天使や天使の心に残り続ける事となる。

 

それは同時に、フューリーの名を永遠のものとするものであった。冥界だけでなく、全てを救う為に戦い続けたとされる騎士。

 

その誇り高き名を有する青年は、未だ己の歩む事となる道に気付いてはいないのだった。

 

「・・・なんだろう。変な悪寒が・・・」




ミリキャスェ・・・。いや、実際悪いのはオリ主なんですけどね。お前、マジで自重しろや。

夕食の席でミリキャス君がぶっちゃけたらどうなるでしょうね。

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