ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第四十九話 サプライズだからってやり過ぎたら駄目でしょうが

ついに終業式を迎えた。明日から夏休みという事で、教室内は色めき立っていた。みんな、口々に自分の予定を話したり、友達に聞いたりしている。それ自体は別に問題無いと思うけど、三年の夏休みって、受験の為に勉強するのも大事だと思うよ? 前世の俺も、最後の夏休みはほとんど勉強してた記憶がある。

 

べ、別に、友達がいなかったとかいうわけじゃないんだからね! ただ、志望校に対して俺の偏差値がヤバ過ぎたから必死こいて勉強してただけなんだからね!

 

朝のSHR終了後、俺達はすぐに体育館に移動した。そこで、夏休み中も学生らしい行動を~等といったありがたいお言葉をこれでもかと頂き、終業式は幕を閉じた。

 

「それじゃ、みんな、怪我や病気だけには気をつけてな。以上、解散」

 

先生がそう言い終わった途端、一斉に教室を出て行くクラスメイト達。それを見送り、俺もゆっくり席を立った。さて、これからどうするかな・・・。

 

支取さんに話す事があると言うリアスと朱乃と別れ、俺は一人玄関へと向かっていたが、その途中で山田先生と遭遇した。

 

「あ、神崎君。これから帰るんですか?」

 

「ええ」

 

「そうですか。夏休み、楽しんでくださいね。でも、勉強も疎かにしたら駄目ですからね?」

 

「はい、気をつけます。そういう山田先生は、何かご予定はあるんですか?」

 

「夏休みはあくまでもあなた達生徒のみなさんのお休みですから、私達教師は仕事があるんですよ。でも五日間だけお休みを頂けたんで、それを使って先輩と小旅行に行く事になりました」

 

「その先輩というのは、以前話していた人ですか?」

 

「そうですよ。急に「私より強い男(ヤツ)に会いに行く」とか言い出して、なんか一人にするのが不安になっちゃったからついて行く事にしたんです」

 

それなんてストリートファイター? その人、出席簿アタックだけじゃなくて、手から気弾とか衝撃波とか出したりしないよね?

 

「・・・大丈夫なんですか?」

 

「一応、先輩の弟さんも心配だから一緒に来る事になってますから、無茶はしないと思うんですけど・・・」

 

なぬ!? 可愛い年上女性と旅行だと!? おのれ、羨ましいぞ弟君! ・・・あ、でもストリートファイターなお姉さんも一緒か。そっか、うん、頑張れ・・・。

 

「神崎君はどこか行かないんですか? ほら、彼女とデートとか」

 

「生憎、そう呼べる相手がいないので」

 

「え!? そ、そうなんですか!?」

 

先生、俺に彼女がいないのがそんなに意外ですか。つか、何でみんな彼女がいて当然・・・みたいな感じに言うんですかね。

 

「そっか・・・。うん、そうなんですね・・・」

 

・・・何でちょっと嬉しそうなんですか先生。あなた、人の不幸を笑う様なキャラじゃないでしょうが。

 

いいさ、別に今すぐ彼女が欲しいわけじゃないし。・・・今「負け惜しみ乙」とか思ったヤツ表出ろ。存分に拳で語り合おうじゃないか。

 

「先生、何か?」

 

「ふえっ!? い、いえ、何でもありませんよ! そ、それじゃ、私はそろそろ行きますね! 神崎君、いい夏休みを!」

 

慌てた様子で立ち去って行く山田先生。後ろからビターン! という音がすると共に「きゃわっ!?」とか「ひゃあっ、スカートが!?」とか聞こえてくるが、決して振り返りはしない。何故なら、俺は紳士だから。この場面では手を差し出すのではなく、あえてスルーするのが正解のはずだ。

 

「・・・行くか」

 

山田先生と別れ、俺は再び玄関へ向かって歩き始めるのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

玄関でアーシアと塔城さんに会ったが、アーシアは友達と遊びに行くらしく、塔城さんは買い物してから帰ると言ってそれぞれ去って行った。なので、俺は一人帰り道を歩いていた。最近は登下校はずっと誰かと一緒だったから、こうして一人で下校するのは久しぶりだ。

 

「少し、寄り道でもするか」

 

どうも真っ直ぐ家に帰る気が湧かなかったので、特に目的も無く公園に立ち寄った。はしゃぎ回る子ども達に目を向けながら、ベンチに腰掛ける。・・・そういえば、レイナーレさん達に出会った時も、俺ってここに座ってたっけ。アザゼル先生から今の彼女達の事も聞いてるけど、やっぱりもう一回直接会って話とかしたいな。

 

「ッ・・・!」

 

・・・疲れてんのかな、俺。向こうにレイナーレさんの姿が見える。幻覚見えるってヤバくね? 今から帰って寝ようかな・・・。

 

目を擦りながら立ち上がる。だが、レイナーレさんは消えない。幻覚の彼女は酷く驚いた顔を見せながら、俺に向かって近づいて来た。おっかしいなぁ。幻にしては妙にリアルな気がする。

 

「あ、あの・・・!」

 

「ああ、幻覚に加えて幻聴まで聞こえて来た・・・」

 

「ち、違います! 私は本物です!」

 

そっかそっか。本物・・・。え、本物!? 幻覚じゃないの!?

 

「ほ、本当にレイナーレさんなんですか・・・!?」

 

まさかの登場に愕然となる俺に対し、レイナーレさんは可愛らしくはにかんだ。

 

「お、お久しぶりです、フューリー様。まさか、つい立ち寄ったここであなたにお会い出来るなんて思ってもみませんでした」

 

それこっち! こっちのセリフですから! 何であなたがここにいるんですか!?

 

・・・はっ! もしかして、アザゼル先生について来たとか? そうだ、確か助手だって言ってたし、きっとそうだ。それならそうと言ってくれたらよかったのに。

 

ちょっと冷静になった俺は、レイナーレさんと一緒にもう一度ベンチに腰掛けた。それから少しだけ間を空けて、改めて彼女と話した。

 

「まずは、お元気そうでなによりです」

 

「え、ええ。フューリー様もご健勝のご様子で・・・」

 

ずいぶん難しい言葉知ってるんですね。日常会話でご健勝とか言われたの初めてだわ。

 

それはともかく、ちょっと・・・いや、かなり緊張してる様子のレイナーレさん。アザゼル先生から聞いたのか、俺がフューリーだって事も知ってるみたいだし。それが関係してるのかな。

 

「レイナーレさん。そんなに畏まらなくても、以前と同じような感じで接してもらっていいんですよ?」

 

「と、とんでもありません! 私ごときが伝説の騎士様にそんな・・・! 知らなかったとはいえ、あの時はとても無礼な真似を働いてしまい、本当に申し訳無く思っています」

 

うーん、本当に気にしなくてもいいのに。けど、この様子じゃ無理に言うのも悪いし、諦めるか。

 

「ところで、この街に来たのはレイナーレさんだけですか? それともカラワーナさんとミッテルトさんも来てるんですか?」

 

「はい。あの二人も一緒です。アザゼル様の勅命で、今日からこの街に滞在する事になりました。よろしくお願いします、フューリー様」

 

「ええ、こちらこそ。それと、俺の名前は神崎亮真です。どうぞ好きなように呼んでください」

 

「で、では、神崎様と呼ばせて頂きます」

 

もの凄く今さら感のある自己紹介を終えた所で、俺はあの別れからずっと気になっていた事を聞いてみた。それはもちろん、アザゼル先生とレイナーレさんの恋の行方についてだ。助手なんてかなり近い立場になったのだから、ひょっとしたら上手くいったかもしれない。

 

そう考えながらレイナーレさんに尋ねると、彼女は少し寂しそうな表情で答えた。

 

「・・・何もありませんよ。あのお方はどこまでいっても私達を“女”ではなく“部下”として見ていますから」

 

なぬっ!? こんな素敵な女性をフッちゃったのか、アザゼル先生! 人の恋について外からとやかく言うつもりはないけど、それでもレイナーレさんみたいな健気な人を女性として見ないなんて。まさか、あの人ホm・・・。

 

「でも、変なんですよね、私。あれほどあのお方の寵愛を受けたかったというのに、あまりショックじゃないんです。カラワーナとミッテルトもそれほど悲しんでいませんし、今は純粋に尊敬出来るお方として仕えさせて頂いています」

 

強いんだな、レイナーレさん達って。失恋どころか、そもそも告白の経験すら無い俺が想像するよりもずっと辛かっただろうに。

 

「・・・すみません。嫌な事を聞いてしまいました」

 

「気にしないでください。むしろ、神崎様にお話し出来て良かったです」

 

それって俺に聞いて欲しかったって事? それとも、誰かにぶっちゃけてスッキリしたかったとか? おそらく後者だろうけど、それならなおさら俺でよかったのかな? いや、そもそも俺が無神経な質問したのが悪いのか。

 

だけど・・・だけど、せめてこれだけは言わせて欲しい。

 

「レイナーレさん。あなた達は健気で、強くて、素敵な女性です。今回は残念でしたが、その内もっといい出会いが巡って来ると思います。次こそ上手くいくよう、応援してます」

 

何とか励ましたいと感情が高ぶり過ぎて、語りながらついレイナーレさんの手を握ってしまった。おかげで彼女も慣れ慣れしいと思ったのか怒った様に顔を赤らめている。俺は慌てて手を離し、頭を下げた。

 

「すみません、つい・・・!」

 

「い、いえ、別に謝って頂く様な事では。・・・そう言って頂けて嬉しかったですし」

 

小さい声だった事に加え、近くで車がクラクションを鳴らした所為でほとんど聞き取れなかった。おのれ、何でこのタイミングで鳴らすかな!

 

「レイナーレさん。ちょっと聞き取れなかったので、よければもう一度言ってもらえませんか?」

 

「し、知りません・・・!」

 

俺のお願いも虚しく、プイっと顔を逸らすレイナーレさん。結局、さっきの言葉については教えてくれなかった。だがまあ、最後に可愛い表情が見れたから良し!

 

それから、今後の為にと、彼女達が住んでいるという家まで案内してもらったのだが、なんとそこは俺の家から歩いて五分もかからない場所だった。聞けば、アザゼル先生がその方が都合がいいからと用意してくれたそうだ。

 

ついでに後の二人にも挨拶していこうと、レイナーレさんに家の中に通してもらった。彼女に続いて姿を現した俺を見るなり、リビングでのんびりしていたカラワーナさんがソファーから転げ落ち、飲み物を飲んでいたミッテルトさんがそれを口から盛大に噴き出していた。まるでマンガみたいな反応にこっちまで驚いてしまった。

 

だけど、二人も元気そうでよかった。今日は挨拶だけだけど、次はあれを持ってお邪魔する事にしよう。

 

レイナーレさん、カラワーナさん、ミッテルトさん。あなた達がずっと憶えていてくれたように、俺だって、“約束”を忘れていませんよ。

 

「とりあえず・・・予約の電話を入れないとな」

 

三人の家を後にし、俺は自宅までの僅かな道を歩きながらそう呟くのだった。




山田先生は、オリ主を非日常から日常に戻す重要な役目を担っています。しかし、彼女の言う“先輩”とは何者なのか・・・。

それはそれとして、ようやく堕天使三人娘を再登場させる事が出来ました。冥界に行く前に出した方がいいと思って、急遽こういう形での再登場となりました。

口調がおかしい? ははは、気の所為ですよ。ええ、気の所為ですとも。

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