ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第三十六話 キミは一人じゃない

プールではしゃぎまくっていたら、いつの間にか夕方になっていた。いや、遊んだ遊んだ。こんなに遊んだのはいつ以来だろう。前世じゃ彼女のいない野郎どもだけでプール行ったら負けだという今にして思うとわけわからん感情の所為で全く行ってなかったからなぁ。

 

それはともかくとして、今日はもうこれでお開きだ。みんな着替えを済ませ、今は校門の前に集合している。別れ前の最後のおしゃべりってヤツだ。

 

「騎士様」

 

話しかけて来たのはヴァーリさんだ。まだ完全に乾いていないのか、夕日に照らされた髪がキラキラ光っている。

 

「今日は楽しかったわ。初めはただの興味本位。なのに、気付けば自分でも驚くくらいはしゃいでしまった。不思議だわ。私にもこんな感情がまだ残っていたなんて。私が求めるのは強さだけ。・・・そう思っていたのにね」

 

そう話すヴァーリさんの笑みは、年相応のとても可愛らしく素敵なものだった。初めてだ、彼女のこんな表情を目にするのは。・・・それを見てドキッとしてしまったのは秘密だ。

 

「ふふ、こんな事言われたって困惑するわよね。今のはただの独り言。だから忘れてちょうだい。それじゃあね」

 

俺に背を向け、歩きだすヴァーリさん。そんな彼女に、俺はたまらず声をかけた。今の独り言とやらを聞いて、どうしても彼女に言いたい事があったからだ。

 

「待ってくれ、ヴァーリさん」

 

振り向いた彼女に俺は続ける。

 

「いつでもいい。また遊びに来てくれ。キミはもう、俺にとっては大切な友人の一人なのだからな」

 

俺の言葉に、ヴァーリさんは僅かに目を見開き、そして再び微笑んだ。

 

「・・・伝説の騎士の友人になれるなんて光栄だわ。なら、またいつか、お邪魔させてもらうわね」

 

「ああ、待っている。それと、俺の名前は神崎亮真だ。覚えておいてくれ」

 

「いい名前ね。それじゃ、亮真。今度こそ失礼するわ。次に会う時を楽しみにしているからね」

 

今度こそ、ヴァーリさんは去って行った。あの子・・・ひょっとしたら、友達とこういう風に遊んだ事無いのかもしれないな。先程の独り言を聞いて、俺はそう推測した。いや、下手したら友達と呼べる相手すらいないのかもしれない。やっぱり露出強に対する世間の風当たりは強いんだろうな・・・。

 

そこで思いついた。だったら、俺が彼女の友達になればいいのだと。そして、一緒に露出強からの脱却を目指せばいいのだ。それさえ何とかすれば、きっと他の友達だってすぐに出来るはずだ。うん、我ながらいい考えではないか。

 

「リョーマ。ヴァーリは?」

 

いつの間にか隣にいたリアスがそう聞いて来たので、帰った事を伝えた。

 

「そう。なら私達も帰りましょうか」

 

「そうだな」

 

兵藤君達と別れ、俺達は家に向かって歩き始めるのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

帰宅して荷物を置くと同時に、みんな慌ただしく動き始めた。

 

「もうこんな時間ね。すぐに夕食の用意をしないと。ええと、今日の当番は・・・」

 

「あ、私です!」

 

「それじゃ、お願いね、アーシア。その間、私はお風呂の掃除でもしようかしら」

 

「では、私はお洗濯を」

 

リアス、アーシア、塔城さんが各々の場所へ向かう。さて、俺は何をしようかな。

 

「ご主人様。ちょっといい?」

 

俺の服を引っ張りながら、黒歌が神妙な面持ちで話しかけて来たので、俺は彼女とソファーに腰掛けた。

 

「どうしたんだ、黒歌?」

 

「ありがとね、ご主人様。今日はとっても楽しかったにゃ」

 

一瞬だけ微笑むが、すぐにまた表情を戻す黒歌。

 

「・・・犯罪者だった私が、こんなに楽しい毎日を過ごせる事が、今でも信じられないにゃ。しかも、離れ離れだった白音ともまた一緒に暮らせるなんて・・・。何もかも、ご主人様のおかげにゃ。あの時、ご主人様が現れなければ、私は今頃・・・」

 

塔城さんと別れた後、一体どれほど辛い目に遭って来たのか。口にせずとも、こうして俺の前で流している涙が全てを物語っていた。

 

「負担にしかならない存在の私に、たくさんの幸せを与えてくれて、大切な妹との関係を取り戻させてくれて、消えかけた命を救ってくれて・・・本当にありがとう、ご主人様」

 

黒歌の心からの感謝の思いがひしひしと伝わってくる。・・・やべえ、俺も泣きそうなんですけど。こういうのめっちゃ弱いんだよね、俺。しかし、騎士(笑)である俺は人前で泣き顔など見せてはならんのだ。なので、必死こいて笑顔を作った。

 

「俺は俺に出来る事をやっただけに過ぎない。それと言っておく。キミを負担に思った事など一度も無い。今までも、これからもな。金輪際、そんな風に自分を卑下するのは許さないからな」

 

「・・・うん」

 

カッコつけたセリフではあるが、これは本心だ。彼女はもう、この家には欠かせない子なのだから。けれど、彼女が自分の立場を重く見ているのも確かだ。

 

「いっその事。今度の会談の時にサーゼクスさんに話してみるか」

 

あの見た目も中身もイケメンで、優しいリアスのお兄さんである魔王様なら、真実を伝えたらきっと情状酌量してくれるはずだ。・・・昔の戦いの借りを返してくれって言ったらいけるかもと思った俺は下衆ですかね?

 

「そ、それは駄目にゃ。そんな事したらご主人様まで罪に問われる可能性が・・・!」

 

確かにその可能性も否定出来ない。ううむ、俺だけならまだいいが、リアスやアーシア、それに塔城さんまで巻き込まれたら嫌だな。だが、行動しなければ黒歌はずっと肩身の狭い日々を過ごさなければならない。それこそもっと嫌だ。

 

「何とかする。いや、何とかしてみせる」

 

黒歌にではなく、自分自身に言い聞かせる。そうだ。騎士(笑)ならば、この程度の苦難を乗り越えられないでどうする! やる前から諦めていては何も出来はしないぞ!

 

心の中のやる気スイッチをこれでもかと連打しつつ、俺は黒歌を安心させるように頭を撫でてあげた。サラサラで触り心地は最高だ。ついでにネコミミもモフりたいが、なんか敏感な部分らしいので自重した。そんな所を許可もなく触ったらセクハラになっちゃうもんね。

 

「・・・不思議にゃ。ご主人様に触れられると、不安とかそういうのが全部吹っ飛んじゃうにゃ」

 

ふ、どうやら俺は気付かない間に、掌から癒しの波動が出せるようになっていたようだな。・・・はいすみません。調子に乗って馬鹿な事言いました。

 

「わかったにゃ。私はご主人様を信じる。でも、無理だけはしないで欲しいにゃ。私は、今の生活で充分幸せだから・・・」

 

「ああ」

 

全ては俺の交渉次第というわけか。とりあえず、本屋に行ってわかりやすい交渉術についての本でも探してみようかな。

 

そうして考えごとに夢中になっていた俺は、黒歌が潤んだ瞳で俺を見つめていた事に最後まで気付く事は無かったのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

さて、時間は飛んで、とうとう授業参観の日がやって来た。授業を受ける俺達の後ろに、クラスメイト達の親御さん達が並んで立っている。その中には、先日の予告通り、サーゼクスさんとリアスのお父さんの姿もあった。

 

しかし、こうしてみると、やっぱりあの二人の雰囲気というか、オーラっていうのは半端ないな。なんかお母様方の視線が子どもではなくあの二人に集中している気がする。

 

そんな感じで授業は進んでいき。気付けば昼休みとなっていた。今、俺は姫島さんと一緒に自販機に向かっている。何だか最近、こんな風に姫島さんと出くわして行動を共にする機会が増えた気がする。まあ、彼女曰くただの偶然との事なので、俺も別段気にはしていないが。ちなみに、リアスも一緒に付いてこようとしていたが、サーゼクスさんとお父さんに捕まっていた。しかしこれは丁度いい機会だ。今日で和解出来たらいいんだけど。

 

そうして、自販機までもう少しという所まで来た時だった。前方から支取さんが、普段の落ち着きはどこへ行ったのだとばかりの全力疾走でやって来た。

 

「支取さん。どうしたんだ、そんなに慌てて」

 

「か、神崎君! お願いです、私を匿って・・・!」

 

「待ってよ~~~~~! ソーナちゃ~~~~~ん!」

 

廊下一杯に響き渡る可愛らしい声に、支取さんが絶望の表情を見せた。そして、俺達の前に、声の正体が姿を現した。

 

片手にステッキ。特徴的な意匠が施された服。ギリギリまで攻めたスカート。そして・・・見憶えのあるその顔。それは間違い無く、支取さんのお姉さんである魔法少女だった。

 

「も~~~! どうして逃げ・・・。ッ!? フュ、フューリーさん!?」

 

俺の顔を見るなり、瞬間的に顔を真っ赤にしてもぢもぢする魔法少女。・・・なんだろう。久しぶりに萌えらしい萌えを見た気がする。

 

「こ、こんにちは、フューリーさん」

 

「ええ、こんにちは」

 

一応、年上なので敬語に改めておく。

 

「あの・・・その・・・はうう・・・。お、おかしいな。お話したい事がいっぱいあったのに、頭の中が真っ白になっちゃったよぉ」

 

ブンブンとステッキを振り回しながら俺を見つめる魔法少女。うん、とりあえず落ち着きなさい。結構固そうだし、万一窓にぶつけたらえらい事になるぞ。

 

「ふふ、やはりいらしていたのですね。セラフォルー・レヴィアタン様。妹を溺愛するあなたならば、必ずいらっしゃると思っていましたわ」

 

そう声をかける姫島さんに、魔法少女が若干の落ち着きを取り戻した。

 

「そーゆうあなたは、リアスちゃんの眷属の子だね!」

 

会話を始める二人を尻目に、支取さんが静かにその場から立ち去ろうとしていた。しかし、魔法少女はそれを見逃さなかった。

 

「どこ行くの、ソーナちゃん?」

 

「い、いえ、ちょっとお手洗いに」

 

「じゃあ私も行く行く~! あ、でもフューリーさんともお話したいし。う~ん、どうしよ~~」

 

「わ、私の事は気にせず、好きなだけ神崎君とお話してください!」

 

「でもでも~。ソーナちゃんとも離れたくないし~~。・・・あ、そうだ! フューリーさんも一緒におトイレに来てくれればいいんだ!」

 

いや、それダメでしょ! 野郎が女子トイレに入ったら即逮捕ですよ! あかん。この子自由すぎる・・・。

 

「な、何を言っているのですか! 魔王であるあなたがその様な発言をしては・・・!」

 

「魔王?」

 

え、おかしくない? 魔王ってサーゼクスさんの事でしょ? 何でこの魔法少女までそう呼ばれてるの?

 

「ああ、そういえば、神崎君は知らないのでしたわね。魔王は一人ではありません。『ルシファー』、『レヴィアタン』、『ベルゼブブ』、『アスモデウス』の名を冠する四人を合わせ、四大魔王と呼ばれているのですわ。セラフォルー様は、現『レヴィアタン』様なのです」

 

「えっへん! そうなのです! 改めて自己紹介しますね! セラフォルー・レヴィアタンです! 魔王やってます! レヴィアたんって呼んでくださいね!」

 

魔法少女・・・いや、訂正しよう。魔王少女が眩いばかりの素敵スマイルとピースサインを向けて来た。対する俺は、あまりに予想外な展開にただただ放心するのだった。




みんなのアイドル、レヴィアたん参戦。前半はシリアスっぽかったのに、後半で彼女が無かった事にしてくれました。これから色々頑張ってもらいましょう。

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