ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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前回の感想のほとんどが『エクスカリバアッー!』に関してのものだった件について・・・。もっと他に見るとこあったでしょ!? よりにもよって思いつきのネタにそこまで食いつかれるとは思ってませんでしたよ。

それと、なにげに連載初めて一ヶ月が経ちました。よくもまあ飽きずにほぼ連日投稿出来たものです。


第二十八話 時にキミはSかMか?

紫藤さんとゼノヴィアさん。彼女達との再会は思った以上に早かった。夕飯の買い物に出かけた俺の前に、二人が並んで姿を現したのだ。

 

「む、フューリーではないか」

 

「あ・・・」

 

ゼノヴィアさんがまず俺に気付く。続いて目を合わせた紫藤さんがゼノヴィアさんの背中に隠れる。はあ、やっぱり前回の件が尾を引いているみたいだな。とりあえず、今からでも関係を修復しておかないと・・・。

 

「神崎亮真だ。出来れば名前で呼んでくれると助かる」

 

「ふむ、ならば神崎殿と呼ばせてもらおうか。それで、こんな所で何をしているのだ?」

 

「ああ、夕飯の買い出しに向かう途中だったんだ」

 

「夕飯? まさか・・・あなたが作るのか?」

 

目を丸くするゼノヴィアさん。え、そんなに以外な事?

 

「おっと、すまない。別に変な事を考えたわけじゃない。伝説の騎士が料理を作る姿を想像して驚いただけだ」

 

まあ、周りから色々言われてますけど、中身は至って普通の人間ですからね。てか、さっきから紫藤さんが一言もしゃべらないのが気になるんですけど。

 

「紫藤さん」

 

「ひゃ、ひゃい!?」

 

思い切り裏返った声で返事しながら体をビクつかせる紫藤さん。いや、マジでトラウマ一歩手前レベルになってない?

 

「先日は済まなかった。身内の事とはいえ、強く言い過ぎたと反省している。どうか、許してくれないだろうか」

 

スッと頭を下げると、紫藤さんが驚いてるのが気配でわかった。「あ・・・」とか「う・・・」とか、言葉になってない声が途切れ途切れに聞こえて来る。

 

「イリナ。いつまで彼に頭を下げさせているつもりだ」

 

「え、あ、そ、そうね! き、騎士様! 頭を上げてください!」

 

ゼノヴィアさんに促され、紫藤さんがようやく言葉を発した。頭を上げると、苦笑いを浮かべているゼノヴィアさんと、真剣な面持ちの紫藤さんの顔があった。

 

「騎士様、あの時のあなたの怒りは尤もだと理解しています。私達は目先の事実に囚われ、その裏にあった主の本当の御心に気付く事が出来なかった。それを気付かせてくれたあなたにはむしろ心から感謝しています」

 

「そういうわけだ、神崎殿。あなたが気に病む必要は無い。・・・まあ、先程までのイリナの態度を見ていればそういうわけにもいかなかったのかもしれないがな」

 

二ヤリという擬音が相応しい笑みを見せるゼノヴィアさんに対し、紫藤さんがどういう意味だと尋ねる。

 

「お前はさっきまで神崎殿に対し、怯えていた。それを察したからこそ、彼は謝ってくれたのだろうさ」

 

「なっ! 別に私は怯えてなんか・・・!」

 

「ふん、どの口が言っている。これだからプロテスタントは・・・」

 

「ちょっと! 今それは関係無いでしょ! 何かあればすぐそうやって比べようとするのがカトリックの悪い所よね!」

 

「何だと、異教徒!」

 

「何よ、異教徒!」

 

えーっと、なんか突然宗教絡みのケンカが始まってしまったんだけど、どうしたらいいんだろう。おっかしいなぁ。紫藤さんもようやく落ち着いてくれたみたいだったのに、ゼノヴィアさんの怯え云々のセリフからおかしな方向へ向かい始めたぞ・・・。

 

「・・・おいイリナ」

 

「何よゼノヴィア」

 

「このやりとり、最近した覚えがあるような気がするのだが。私の記憶違いか?」

 

「・・・奇遇ね。私もそう思ってたわ。具体的には・・・二時間くらい前?」

 

おい! 何からツッこんでいいかわからねえよ! てか二時間前の記憶すらうろ覚えとかゼノヴィアさんヤバくね? まだボケる年じゃないでしょうが。

 

と、とりあえず、ちょっと冷静になってるみたいだから、今の内に話を変えて意識を逸らせよう。・・・何で出会ってまだ数日しか経って無い相手にこんなに気を遣ってるんだろう、俺・・・。

 

「ところで、ゼノヴィアさん達は何をしていたんだ? 例の聖剣を奪った犯人を探している最中だったとか?」

 

「ん? ああ、実は先程まで悪魔・・・いや、ドラゴンと呼ばせてもらおうか。その力を宿す少年達と話をしていてな。彼の提案で今回の件について協力体制を取る事となったのだ」

 

ドラゴンの力? ・・・それって、もしかして兵藤君か? けど、悪魔である彼と協力するのって彼女達からしたらあまり好ましくないんじゃ・・・。

 

「元々、私達二人だけで聖剣を三本も回収するのに加え、あのコカビエルを相手にする等ほぼ無理だと思っていた。そこへ現れた協力の話。任務の成功確率を一パーセントでも上げる為なら、私は手段は選ぶべきでは無いと思っている」

 

その話に、俺は感心していた。目的達成の為なら仲が悪い相手とも力を合わせる。その柔軟な考えは素直に凄いと思う。嬉しいな。アーシア以外にもまともな人間がいたなんて。

 

「それと、『聖剣計画』の被験者である少年とも手を組む事となった。名前は・・・確か木場と言ったか? 随分と渋っていたが、彼と後輩の女の子の説得で一応の了解をしてくれた」

 

そうか、木場君が・・・。あんなに誰も寄せつけようとしなかったのに。それを説得するなんて。兵藤君には交渉人の素質が・・・。いや、違うか。きっと彼の木場君を思う心が届いたんだろうな。やはり、偉そうな先輩よりも、友達の言葉の方がよかったんだろうなぁ。

 

にしても、『聖剣計画』か・・・。具体的な内容は教えてもらってないけど。幼い子ども達に手を出すような連中が考える計画なんてどうせクズみたいな中身なんだろうな。

 

「あの・・・出来れば騎士様にも協力してもらうと嬉しいんですけど」

 

紫藤さんが躊躇いがちにしながら上目使いでそう言って来た。答えはもちろんイエスだ。

 

「俺でよければ喜んで力を貸すよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

紫藤さんが心から嬉しそうな笑顔で頭を下げる。うーむ、ここまで喜んでもらうと、何も役に立てなかった・・・なんて事にならないようしっかり頑張らないとな。

 

「いいのか? 私達の事情に巻きこんでしまって?」

 

「ああ、構わない。・・・個人的に、今回の首謀者に報いを受けさせてやりたいからな」

 

ホント、同じ堕天使なのに、レイナーレさん達とはえらい違いだよな。今度はグレモリーさんが(社会的に)消そうとしても俺は止めんぞ。

 

思わず表情を引き締めると、ゼノヴィアさんと紫藤さんの顔がまたしても凍りついていた。なんで? 今回はキミ達に対して何か怒ったわけじゃないよ?

 

「な、なんて殺気・・・。いったい騎士様とコカビエルの間に何が・・・」

 

「わ、わからない。だが、コカビエルの行いが彼の逆鱗に触れてしまい、最早激突は免れない事は確かなようだ」

 

 

ヒソヒソ話で盛り上がる二人。なんだよ、俺も混ぜてくれよ。こうやって発言すると、たまにグレモリーさん達も同じ様にヒソヒソ話するから気になるんだよ。不思議だよなぁ。そんなに変な事言っているつもりはないんだけどなぁ。

 

「何か気になる事でもあるのか?」

 

「い、いや、こちらの話だ。とにかく、感謝する。この協力を機に、教会とあなたとで良い関係を築きたいものだ」

 

「・・・俺としては、教会では無く、キミ達二人と関係を築きたいんだがな」

 

あんな変態連中と仲良くするなんて絶対に嫌だ。その点、ゼノヴィアさんと紫藤さんはまともで真面目な子達だからな。何かあったらきっと力になってくれるはずだ。

 

そういう意味を込めての発言だったが、眼前の二人の様子がおかしい。ゼノヴィアさんは戸惑っているみたいだし、紫藤さんは頬が赤い。

 

「・・・イリナ、私達は口説かれているのか?」

 

「ふえっ!? そそそそそ、そんな事聞かないでよ!」

 

「う、うむ、こんな事を言われたのは初めてだからな。正直どう反応したらいいのか・・・」

 

「まあ、あくまでも俺の希望だからな。そこまで真剣に考えてもらわなくてもいいさ。ただ、俺はそう思っているという事だけ覚えておいてくれ」

 

変態共を一掃する・・・。教会という組織と友好的な関係になるのはそれが済んでからだ。

 

「わ、わかった。胸の内にでも秘めておくよ」

 

「わ、私も・・・」

 

それはよかった。満足した俺はそれから少しだけ彼女達と雑談を交わし、その場を後にした。よし、それじゃあ買い物に行きますか。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

それから三日ほど経った。放課後、一人帰り道を歩いている途中、公園から悲鳴と共に、何かを激しく叩く音が耳に届いた。

 

「うわーーーん! 済みません、会長! 許してください~~~!」

 

これって・・・匙君の声だよな? なんかもの凄い涙声なんですけど。・・・見に行った方がいいよな。そう判断して公園に入った俺の目に飛び込んで来たのは、四つん這いになった匙君と、その彼の尻を連打している支取さんの姿だった。他にも、グレモリーさんと兵藤君、それに塔城さんもいる。あらやだ、何この混沌空間・・・。

 

「・・・何をしている?」

 

今の状況でこれ以外に言う言葉があるだろうか? いや、無いね。俺の声に反応したみんなが一斉にこちら振り返る。その中で、支取さんがいち早く口を開いた。

 

「か、神崎君!? こ、これはですね・・・!」

 

おお、ものっそい狼狽してる。ならこんな人目のつく所でやらなければいいのに。

 

「支取さん。個人の趣味趣向についてとやかく言うつもりは無いが・・・流石に外でするような事では無いと思うぞ」

 

「ち、違―――!」

 

「か、会長! さあ、もっと叩いてください! “俺”を! “俺”だけを!」

 

突然活き活きと尻を振り出す匙君。キミ、さっきまで止めて欲しがってたよね? しかも、妙に自慢気というか、得意気というか。え、もしかしなくてもMなの?

 

「サ、サジ!? あなた何を・・・!?」

 

「そうさ! 会長のお仕置きは今は俺だけの物だ! たとえアンタにだって渡しはしねえ! ははは、羨ましいッスか先輩!」

 

うわっ、もう決定的だ。匙君はM、はっきりわかんだね。けど、俺はノーマルだからね? 羨ましいとか全く思って無いよ?

 

「匙、お前ってヤツは・・・」

 

そして兵藤君は何でそんな戦友を見送る様な目で匙君を見てるのかな? ・・・ま、まさか、兵藤君もMなのか? だから同じ性癖を持つ者同士で通じ合うモノがあるとか?

 

「い、いいかげんにしなさぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」

 

「みぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

鞭のようにしなった支取さんの手が、匙君の尻に直撃する。ドバチーン! というド派手な音と共に匙君が悲鳴を上げる。

 

「・・・ドン引きです」

 

「そういえば、神崎君はSなのかしら、それとも・・・。どっちにせよ、応えられる様にしておかないと・・・」

 

塔城さんがゴミを見る様な目で匙君を見つめている。駄目だぞ塔城さん。彼にとってはそれもご褒美になっちゃうぞ? そしてグレモリーさん。俺がSかMかは今関係無いと思うな。

 

既に薄暗くなり始めている空を見上げ。俺は心の中でもう一度呟いた。

 

・・・何このカオス、と。

 




気付けば三巻部も終番。なんかこの回はあまり盛り上がりそうにないですね。

そして、匙君ファンの皆様には今この場を借りて謝罪させて頂きます。ホントすみません!

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