ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜 作:ガスキン
……ところで、画面の向こう側にあるチョコレートを取り出す方法をご存知の方はいらっしゃいませんかねぇ(切実)。
特撮の世界に迷い込んだんじゃないかと思わせる様なトンデモスケールの決戦にたった今決着がついた。最も、怪獣を倒したのは光の巨人では無く紅の後輩だったのだが……。
とりあえず、兵藤君とドライグさんの最後の合体攻撃を目の当たりにして瞬時にグランティード・ドラコデウスを思い浮かべた俺は相変わらずのスパロボ脳だと思いました。先生の雄姿をOGでも見たかったなぁ。統夜? あんないつの間にかハーレム築いてるヤツなんか知らん!
『フッ……あなたがそれを言いますか』
何か知らんが博士に笑われてしまった。俺、変な事言いましたか?
『いいえ。それよりも気を抜くのはまだ早いですよ。報復対象はまだ残っているのですから』
そうだ。まだサマエルが残っている。……っと、その前にコイツをどうにかしないと。とりあえずグレイフィアさんに引き渡しておこうか。
脇に抱えたシャルバに目線を遣る。博士に言われるがままにボコボコにしてしまったが、罪悪感は欠片も湧いてこない。
―――あなたは、報復の意味を正しく理解していますか?
そう問われ、上手く答えられなかった俺に博士は言った。報復とは、報いを復す事。不当な行いに対し、同じく不当な行為で以って返す事であると。今回、シャルバ・ベルゼブブとサマエルは兵藤君の命を奪った(魂は生き残っていた)。だからこの場合の報復とは、同じ様に両者の命を以って償わせるという意味合いになるのだが……。
―――あなたはあくまでも不殺を貫くと宣言しました。ですが、生かしておけば相手は再びあなたやあなたのお仲間に牙を剥くかもしれません。報復の連鎖……それはあなたも望む事ではないでしょう。
ではどうするのか。博士はいっそ清々しさを感じるほどの声で俺に教えてくれた。
―――二度とあなたに歯向かう事の無い様、完膚なきまでに叩き潰す事です。心も体も完全に屈服させ、あなたの言う“痛み”を思い知らせる事で初めてこの報復は完遂となるでしょう。同時に、今現在、あなたを狙う他の勢力達への見せしめにもなります。あなたを、そして、あなたに近しい者達に手を出せばこうなると。
そうする事が自分達を守る抑止力になる。だからこそ、今回の件が完全に片がつくまで、一切の手加減や躊躇いは無用。博士はそう締めくくった。言ってる事は滅茶苦茶物騒だが、同時に説得力も滅茶苦茶あった。だからこそ、俺はシャルバに対し、過剰とも言える攻撃を繰り返した。俺なりに“魔神”を肖ってみたつもりだが、傍から見たらどんな感じになっているのだろうか。
途中で変な事も口走った気がする。『戦車級』って何だ? 知らないはずなのに、知っている気がする。うーん、上手く説明出来ない。
『ククク、中々楽しませて頂きましたよ。流石、鋼の救世主は演じるのが得意の様ですね』
グハッ……! 褒めているはずなのに容赦無くダメージを与えて来る……流石は博士やでぇ……。
「せんぱーーーい!」
お、兵藤君が呼んでる。元のサイズに戻ってるって事は……ああ、いたいた。グレートレッドさん。どうやら次元の狭間に帰る様だ。色々お世話になったし、声は届かないだろからせめて見送らせてもらおう。
「……!」
? なんか急にスピードが上がった様な……。寝てる途中で起こしてしまった様だし、早く帰って二度寝したいとかそういう感じかな。
向こう側へ去って行くグレートレッドさんの背中を見送り、俺は兵藤君やグレイフィアさん、黒歌達のいる場所へ向かった。
「何とか片付きましたね」
「え、ええ……」
ん? グレイフィアさん他数名の方々の表情がまだ強張っている。流石、まだ警戒を解くなって事か。
「……神崎様、『超獣鬼』を討伐した今、一度元のお姿に戻られてはいかがでしょうか?」
「そうしたいのは山々ですが、皆さんと違って私は生身で空中に浮かぶ事が出来ませんからねぇ。申しわけありませんが、この状態のままでいさせて頂きます」
「そ、そうですか」
「ああ……なんか俺、あの後輪を見てたら気分がボーっとして……」
「しっかりなさいベオ! 戻って来られなくなりますよ!」
「ではせめて、その後輪の光を弱めて頂けませんか。それは悪魔……いえ、全ての生物にとってよくないものです」
え、何それ。博士、この後輪……バリオン創出ヘイロウの光ってそんなにヤバいものなんですか?
『ククク……』
あ、答えなくていいです。その含み笑いで全て理解出来ました。とりあえず弱まれ弱まれと念じてみる事にした。
「ありがとうございます。これで落ち着いてお話が出来ますね」
そう言ってグレイフィアさん達が近づいて来た。どうやら制御出来たみたいだ。
「先輩! 先輩のおかげであのデカブツをブッ倒せました!」
「私のやった事など大した事ではありませんよ。あなたこそ、最後の一撃は見事でした。思わず見惚れてしまいましたよ」
「へへ、ありがとうございます!」
「ドライグさんも、まさしく“赤龍帝”の名に相応しい雄姿でした」
―――……。
あれ? 返事が無い。褒めたつもりだったけど不快にさせてしまったのだろうか?
「あー……その、先輩。ドライグのヤツ、今は先輩の声だけ聞き取れないみたいなんです」
Why? 何故に俺の声だけ?
「まさか、この短時間で何かの病気に?」
「ええ……まあ、(先輩恐怖症という)病気ですね。あ、でもしばらくしたら勝手に治ると思います」
放置でいいのか? どこか病院に連れて行ってあげた方がいいんじゃないのか? こういう時こそアザゼル先生がいてくれたらいいんだが……。
「んぎぎぎぎ……!」
などとドライグさんの心配をしている間に黒歌の様子がおかしい事に気付いた。何やら飛びかかる様な姿勢のまま必死の形相で俺を見つめている。
「黒歌、どうしました?」
「気を抜くと全力でご主人様の胸元に飛び込んじゃいそうだけど、まだそういう空気じゃないから全力で我慢してるのにゃ」
見れば、レイナーレさん達もその綺麗な瞳を潤ませながら黒歌の横に佇んでいる。……相当心配をかけてしまったんだろうな。
「申し訳ありません黒歌。それにレイナーレさん達も。私が不甲斐無いばかりに、いらぬ心配をかけてしまいましたね」
「そんな! 私達に謝罪して頂く資格なんてありません!」
「神崎様が敵の策略に嵌められていたというのに……!」
「ウチ等は何も出来なかったっす……」
それは仕方無い。俺だって、まさかド腐れペロリスト共が直接やって来て、しかも曹操さんまでもがau派だったなんて思いもしなかったんだから。
「いいえ、今回の件は向こうが一枚上手でした。……ですが、こうして私と兵藤君は帰って来ました。ですから、これ以上あなた達が気に病む必要などありませんよ」
「神崎様、その事について詳しくお聞かせ頂きたいのですが……」
「ええ、もちろん全てお話させて頂きます。ですが、生憎と私にはまだやるべき事が残っていますので、それらを全て片付けてから改めてお話の場を設けさせて頂けないでしょうか」
「それは?」
「報復です」
俺はキッパリと言い切った。グレイフィアさん達にと言うより自分自身に言い聞かせる様に。
沈黙。周囲の人達が愕然とした様子の中、グレイフィアさんがそれを破った。
「……それは、何に対しての報復なのでしょうか?」
「無論、兵藤君の命を奪った者達へのです。実行犯であるシャルバ・ベルゼブブにはすでに済ませました。残りは……その“毒”で兵藤君を苦しませたサマエルとやらに報いを受けさせる事で、私の報復は完遂します」
それ以外の人や物に手を出すつもりは一切ない。あくまでも報復対象は今挙げた両者だけなのだから。
「確か、先程サマエルは冥府にいるとおっしゃいましたね」
『居場所がわかるのなら、後は座標を指定して跳ぶだけですね。解析しますので少しばかり時間を頂きますよ』
サラッと言ってのけましたけど、そんな事まで出来るんですか!?
『私と……このネオ・ラフトクランズにかかれば造作もありません』
これ以上に説得力のある言葉が他にあるだろうか? いや無い!(反語)
「申し訳ありませんが、魔王眷属として、それを承服するわけにはいきません」
心の中で熱弁していた俺に向かって、グレイフィアさんは否と答えた。
「神崎様、あなた様のお気持も十分理解出来ます。ですが、どうか思いとどまって頂けないでしょうか」
「理由をお伺いしても?」
「……今、冥界と冥府は水面下で緊張状態となっております。その状態の中、あなた様が冥府に赴けば悪魔、そして死神を巻き込んでの戦争に発展する可能性があります」
戦争? いやいやいやちょっと待ってくださいよグレイフィアさん。何で俺が冥府にケンカ売りに行く様な感じになってるんですか。そもそも冥府についてだってよくわかってないのに。
「グレイフィアさん。私の目標はあくまでもサマエルです。冥府と事を構えるつもりはありませんよ」
「いえ、サマエルに手を出そうとすれば、ハーデス神が黙っていません。本来、サマエルはハーデス神によって厳重に封印されている存在なのです。それが解かれたという事はつまり、今回の件には冥府……ハーデス神も絡んでいるという何よりの証拠となります」
「……何ですって?」
俺は兵藤君からサマエルの外見の特徴、ヤバい毒を持っていてそれが致命傷となったという話を聞いている。だからこそ、サマエルをぶちのめすと決めた。だが、今のグレイフィアさんの話を聞くに、そんな物騒な存在を解き放った黒幕がいたという事になる。
「神崎様?」
「どうやら……サマエルとは別に問い詰めなければならない相手がいた様ですねぇ……」
(……どうしましょう。説得するつもりが地雷を踏み抜いてしまったかもしれません)
自分でも若干引いてしまうくらい、低くおどろおどろしい声が口から紡ぎだされた。兵藤君の顔が真っ青だ。うん、多分俺も自分のじゃなかったらそんな感じになってると思う。
「現在、サーゼクス様とアザゼル総督がハーデス神に説明を求め冥府に赴いています」
つまり、ハーデス神とやらも冥府にいるという事でいいんだな。
「先程倒した『超獣鬼』で、冥界に放たれた魔獣は全て討滅されました。後日、正式な抗議声明も出されるはずです。……“騎士”として、この様な侵略行為はきっと許せないのでしょう。ですがどうか、その怒りを飲み込んで頂けないでしょうか」
“騎士”……“騎士”か……。違うんですよグレイフィアさん。今の俺は、皆さんが受け入れてくれた“フューリー”でも、“鋼の救世主”でもありません。
「グレイフィアさん、どうやらあなたは勘違いなされている様です」
「え……?」
「百歩譲って、兵藤君が怪我を負わせられただけで済んでいたのであれば、私も自分を抑える事が出来たでしょう。ですが、兵藤君は命を奪われました。肉体を失い、魂も消滅しかけた所で何とか復活する事が出来たのです。私は、私から大切な後輩を奪おうとした者達に、理不尽に奪われる“痛み”を思い知らせるつもりです」
今だけは、躊躇いも自制も、倫理も道徳も必要無い。今の俺は、理不尽に理不尽で以って返す“魔神”なのだから。
「言ってしまえば、これはただの私怨。報復に正義も大義名分も存在しません」
「先輩、どうしてですか。何でそこまで……」
どうして……か。やっぱり、あの話を聞いたからだろうな。
「兵藤君、先日あなたの家にお邪魔した時の事を憶えていますか?」
「え? あ、は、はい」
ゴメンね唐突に。だけど、話させて欲しい。
「あなたが起きて来るまでの間に、私はあなたのご両親から、あなたが生まれるまでの話を聞かせて頂きました。内容は私ごときが語っていいものでは無いので割愛させて頂きますが」
(すみません、ガッツリ聞いてました)
「その後、昼食までご馳走になってしまいましたが、その席には笑顔が溢れていました。兵藤君がおどけて、お母さんがそれに乗っかり、お父さんがそれを見て笑う。私にはそれがとても温かく、そしてとても眩しく見えました。……私が失って久しい“家族”の姿がそこにはありました」
だからこそ、俺は心から思ったんだ。“兵藤家”という素晴らしい家族の日常は、誰が、どんな理由であろうとも絶対に壊してはならないものなのだと。この人達に俺と同じ“痛み”を負わせるわけにはいかないと。それなのに……。
「その日常を……彼等は壊そうとしました。それだけではありません。確かに兵藤君は復活しました。ですが、ご両親が懸命に祈り、絶望を乗り越え、ようやく授かった息子としての体は消滅してしまった。あのお二人の必死の努力を冒涜した者達が……私には許せないんですよ。グレイフィアさん。お腹を痛め、苦しみの先で子どもを授かった喜びは、私よりもあなたの方が良くわかっていらっしゃるんじゃないですか」
「……」
「冥府も神も、今の私には関係ありません。私は、私の心(と博士)の命じるままに戦います」
『では、早速動いてもらいましょうか。座標の特定は完了しましたので、いつでも跳べますよ』
ありがとうございます博士。なら、いざとなったら強行突破させてもらいますよ。
「私とサマエル、ハーデス神との間で何が起ころうとも、それは全て私の責任です。罰したいのならば、それも受け入れます。ですが、私はもう止まるつもりはありません」
「先輩、俺は……」
「私の事は気にせず、あなたはリアス達に会いに行きなさい。みんな、あなたの事を待っているはずですよ」
『ちょうどあの都市にあなたのお仲間が集結しているみたいですよ。……何やらヴァンパイアの少年が豹変している様ですが、それも伝えてあげたらどうですか』
ヴラディ君の事か? 豹変って……はっ、まさか悪のカリスマに肖り過ぎて性格が……!? とにかく兵藤君に伝えなくては。
「わかりました。なら俺は部長達の所へ行く事にします」
「兵藤君、行くならその子も連れていってください」
さっきからじーっと俺を見つめているオーフィスちゃんを示す。こんな子を連れて行く様な場所じゃないしな。
「ご主人様、私達も……!」
「黒歌、あなた達も兵藤君と一緒に行きなさい」
俺の勝手に彼女達を巻き込むわけにはいかない。
「嫌! 絶対について行く!」
「黒歌?」
「罰を受けるのなら私達も一緒に受ける! 消えるのなら私達も一緒に消える! もう……もうご主人様と離れ離れになりたくないの!」
「神崎様……!」
「どうかお傍に……!」
「もう……ウチ等を置いて行かないで欲しいっす……!」
「レイナーレさん、カラワーナさん、ミッテルトさん……」
『連れて行ったらどうですか? 眷属……なのでしょう?』
博士……。
『戦力は多いに越した事はありませんからね』
そういうオチですか!
『ですが、実際無理矢理にでもついて来そうな勢いですよ。頼まれたら断れないあなたに彼女達を拒む事は出来ないでしょう?』
流石博士! 俺の性格読んでるぜ!
「……わかりました。では、“王”としてあなた達に命じます。黒歌。レイナーレ。カラワーナ。ミッテルト。私の傍から絶対に離れない様に」
「「「「「はい!」」」」」
俺の宣言に声を揃える四人。……ん? ちょっと待て。今一人多かった様な気が……。
「にゃにゃ!? アンタ……カテレア!?」
ッ!? ほ、ほんとだ! カテレアさんがいつの間にか紛れ込んでる! バァァァァン!みたいな効果音が鳴りそうなポーズとドヤ顔でミッテルトさんの横にいる!
「い、いつからいたの!?」
「フューリー様が『女王』と話し始めたくらいからですけど」
そんな時からいたんですか!?
『ほお……このネオ・ラフトクランズのセンサーを以ってしても捉えられていなかったとは……面白い物を持っている様ですね』
ナニソレコワイ。てか面白い物って何!?
「フューリー様、まずは御帰還された事を大変嬉しく思います。このカテレア、あなた様の美しく、気高く、尊いオーラを感じ取り、馳せ参じた次第でございます。盗さ……邪魔にならぬ様ステルスモードでお話を聞かせて頂きました。冥府でふんぞり返っているあの腐れしゃれこうべに会いに行くのならば、このカテレアもお供させてください。そこの四人よりお役に立つ事を証明してみせますわ!」
「はっ! 行き遅れド変態BBAは引っ込んでろにゃ!」
「おい……おいっ!」
ど、どうしよう。ほっといたら取っ組み合いになりそうだ。
『連れて行きましょう。彼女の言うステルスモードが気になります』
わ、わかりました。カテレアさんも一緒に連れて行きます。
『では、転移の準備を始めます』
その言葉と共に、俺達の足下に“穴”が出現した。
っと、その前に……。
「すみませんが、この男をお願いします」
「お、おう」
一番力のありそうな男性にシャルバを渡した所で、俺の体は“穴”にゆっくりと沈み始めた。これを潜れば、その先は冥府。そこにサマエル……そしてハーデス神が待ち受けている。
「ええっと、CameraモードからRECモードへの切り替えは……っと、この神器、性能は良いですが操作が面倒なのがネックですね」
背後からカテレアさんの呟きが聞こえて来た。生憎声が小さすぎて聞き取る事は出来なかったが。
そして、俺達は冥府へと突入するのだった。余談だがこの時、俺は自分の口調が博士のそれに似たものになっていた事に最後まで気付かなかった。
Q:オリ主のキャラが変わってない?
A:激おこぷんぷん丸状態だから。
なお、この後オリ主は先乗りしているペット達と一緒に某先の副将軍のノリではっちゃける模様。