ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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大変お待たせしました。イッセー対サイラオーグまでの道のりが難産してます。前回のゲームではリアス以外の活躍を全く書いていないので、今回はなるべく全員に出番を作ろうと思います。

それに伴い、原作から色々変えてます。原作好きの方、そして何より原作のロリ小猫が好きな方は閲覧注意です。

12/31加筆しました。


第百四十二話 姉の想いと未来の私

「グレモリーチーム、木場選手、兵藤選手と立て続けに勝利を飾りましたぁ!」

 

興奮した様子で叫ぶガミジンさん。俺もまた彼と同じ様に興奮していた。この試合が終わったら彼等の事は木場=サン、兵藤=サンと呼ぶ事にしよう。え? ダメ?

 

「イッセーの野郎、最近燻ってやがると思ったら、いつの間にやら吹っ切れてやがる」

 

「良いですね、彼。あの迷いの無い目・・・。強い決意と覚悟を感じます」

 

アザゼル先生とベリアルさんが兵藤君を褒める様な発言をする。本人が聞いたら喜ぶだろうな。・・・いや、彼の性格からして謙遜しそうだけど。

 

「ひょっとしたらひょっとすると、面白いもんが見れるかもしれねえな」

 

「面白いものとは何でしょう?」

 

「それはまあ・・・後のお楽しみという事で」

 

「期待しておきましょう。さあ! 第三試合の出場選手を決めてください!」

 

リアスとサイラオーグさんがダイスを振るった。出た数は二と三。合計して五か。ええっと、五だと『騎士』と『僧侶』と『戦車』の中から一人出れるんだったっけ。木場君かゼノヴィアさん、ヴラディ君に小猫。果たして誰が出るんだろう。

 

「黒歌、誰が出ると思う」

 

特に意味も無く黒歌に聞いてみると、彼女はあごに指を当てながら自分の妹の名を出し、理由を尋ねてみたらカンだと即答された。

 

「私のカンはよく当たるのよご主人様」

 

その時、リアス達の様子を映すモニターが小猫の姿を捉える。そこで気付いたが、彼女の両手には格闘家等が着けているオープンフィンガーグローブみたいな物が装着されていた。

 

「あのグローブは・・・?」

 

「アレは私からあの子へのプレゼントにゃ」

 

「プレゼントですか?」

 

「そうよ。まあ滅茶苦茶パワーアップするとかそういう物じゃないけど、今のあの子の役には立つでしょうね」

 

口ぶりからしてただのグローブでは無い様だ。果たしてどんな効果があるのだろう。そこも注目しながら見て行こうかな。

 

SIDE OUT

 

 

 

イッセーSIDE

 

「私が出ます」

 

ダイスの目が出てすぐ出場の意を示したのは小猫ちゃんだった。確かにこの合計なら『戦車』の小猫ちゃんも出られる。選択肢には入ってるけど、ここまで自己主張する小猫ちゃんも珍しいな。

 

「小猫? ・・・そうね。お願いするわ」

 

部長もちょっと驚いた様だったけど、真っ直ぐに見つめて来る小猫ちゃんに何か感じたのか、GOサインを出した。それに対し、小猫ちゃんは返事と共に両拳を胸の前で合わせた。

 

「って、小猫ちゃん、そのグローブどうしたの?」

 

初めて見るグローブだ。気になって聞いてみると、小猫ちゃんは少し恥ずかしそうに答えた。

 

「これは・・・その・・・修行をやり遂げたご褒美にって姉様から。仙術を使う際の気の練度を高める力があります」

 

「あら、素敵なプレゼントね」

 

「うふふ、黒歌さんもやりますわね」

 

「妹想いのいい姉じゃないか」

 

「おかげで秘蔵のお酒を手放してしまったってぼやいてましたけど」

 

部長達にそんな風に返す小猫ちゃん。でも顔が嬉しそうなので照れ隠しなのがバレバレだぜ小猫ちゃん。

 

「ただのグローブじゃなさそうだね。僅かにだけど魔力を感じる。黒歌さんは誰に作成を頼んだんだろう」

 

木場も興味深そうにグローブに目をやる。

 

「オリガの所にお酒を持って行ったらすぐに作ってくれたって姉様は言ってましたけど」

 

「オリガ? ・・・ッ!? まさか、魔具師オリガかい!?」

 

「知っているのか木場!?」

 

心底驚いた様子の木場に、俺も驚きながら説明を求めた。オリガっていうのは冥界でも有名な女性魔具師で、彼女が作る魔具(神器とは違う武器みたいな物)は出来によっては神器を上回る力を秘めた物になるらしい。あれ、サラッと説明されたけどそれって結構凄いんじゃねえの?

 

「オリガの魔具はとても強力だけれど、彼女は気に入った相手にしか魔具を作らないって聞く。そのスタンスの所為で敵も多いから決まった拠点を持たずに冥界を転々としていて、一般の悪魔の前にはほとんど姿を見せないんだ。黒歌さんはどうやって彼女とコンタクトを?」

 

「は、はぐれ時代に知り合って、今もたまに交流してるみたいです」

 

小猫ちゃんもビックリしている。まさか、そんな有名人にわざわざ自分の為にこのグローブを作らせたなんて思っても無かったんだろう。あのお姉さん、飄々としていつも小猫ちゃんをからかったりしてるけど、やっぱり小猫ちゃんが大好きなんだな。妹の晴れ舞台の為にこんな凄い物をプレゼントしちゃうなんて。

 

「き、きっとそのグローブには黒歌さんの想いが込められてるんだと思いますぅ」

 

「ええ、ギャスパーの言う通りね。小猫、あなたは一人で戦うけれど一人じゃないわ。あなたを想う黒歌の気持ちが、きっとあなたを勝たせてくれるはずよ」

 

「姉様の・・・想い」

 

ジッと両手を見つめる小猫ちゃん。その表情がフッと笑みに変わった。

 

「不思議ですね。何だか本当に姉様が傍にいる様な気がします」

 

「・・・どうも死んでしまった様な言い方だが、黒歌さんはまだ生きて・・・」

 

「シッ! 今良い所だから黙ってなさいゼノヴィア!」

 

横からツッコミを入れようとするゼノヴィアの口を塞ぐ。確かに俺も一瞬そう思ったけど、この状況で口に出す勇気はありません。

 

『時間です。出場選手は魔法陣へ移動を』

 

「行って来ます」

 

歩きだす小猫ちゃんの背を見送る。やがてその姿は魔法陣の中へ消え、モニターの向こうに再び姿を見せる。バトルフィールドは神殿の様な場所だった。そして、その対戦相手の姿もまた俺達の目に映るのだった。

 

「デカイな・・・」

 

それが対戦相手を見た俺の第一声だった。三メートルくらいの巨体に相応しい極太の前腕が目を引く。おそらくパワータイプだろう。

 

「あれは『戦車』のガンドマ・バラムだね。記録映像で見た彼のパワーは凄まじかったのを覚えてるよ」

 

「バラムは怪力が特色の家よ。一発でももらえば致命傷必至でしょうね。逆を言えば、当たりさえしなければいくらでも攻め手はあるわ」

 

『おおっと! 第三試合は『戦車』同士の戦いとなりました! グレモリーチームからは塔城小猫選手! そしてバアルチームからはガンドマ・バラム選手です!』

 

『第三試合、開始!』

 

選手紹介から間もおかず試合開始が宣言される。同時に小猫ちゃんは全身に気を漲らせ、猫耳と尻尾を出現させる。あの子が戦闘モードに入った証拠だ。

 

『行きます・・・!』

 

俊敏な動きで瞬く間にバラムの眼前に飛び込んだ小猫ちゃんが、その顔面に向かって右ストレートを叩き込む。派手な音と共に衝撃波が周囲に散らばる岩等を吹き飛ばすが、当のバラムは小猫ちゃんのパンチを顔面で受け止めながらその拳をゆっくりと振り上げた。まさか、あの状態のまま殴り返す気か!?

 

『ぬんっ・・・!』

 

バラムの剛腕が唸りを上げて小猫ちゃんに迫るが、落ち着いてそれを避ける小猫ちゃん。その数瞬後、小猫ちゃんの後方の壁が勢い良く吹き飛んだ。

 

『なんとぉ! バラム選手の拳圧で壁が吹き飛びました!』

 

『ッ・・・! なんて力・・・!』

 

『サイラオーグ様・・・比較・・・児戯・・・』

 

冷や汗を流す小猫ちゃんにバラムがボソッと呟く。

 

「サイラオーグ・バアルの力に比べれば今のですら児戯になるんだね・・・」

 

言うなよ木場! 俺もバラムが何を言いたかったのか理解出来たけど言うなよ! グローブの件で空気読まなかったゼノヴィアですら何も言ってないのに何で気遣い上手のお前が言うかなぁ!

 

『外部からの攻撃は通じない。なら、内部から突き崩します!』

 

距離を取った小猫ちゃんが両手を向い合せにして構える。その中心に生まれた青白い光が急速に大きさを増して行く。以前に比べれば倍以上の早さだ。これがあのグローブの効果か!

 

「確かに仙術なら、内部から破壊も可能でしょうね」

 

「けれど、向こうも仙術について研究しているはずです。何か対抗策を考えているかもしれません」

 

木場がそう言った時だった。何を思ったのか、バラムが傍の柱を引き抜くと、それを小猫ちゃんに向かってぶん投げた。冗談みたいな速度で迫って来る柱を回避する小猫ちゃんだが、バラムは二本目、三本目と次々に柱を引き抜き、連続で小猫ちゃんへ投げていく。小猫ちゃんを近付けさせない為の作戦だろうか。にしても豪快というか乱暴というか。というか、そんなに柱を抜きまくったら神殿崩れるんじゃ・・・。

 

『接近させないつもりですか。なら・・・!』

 

柱をかいくぐりながらどうにか接近しようとする小猫ちゃんがその場で思いっきり跳躍した。

 

『行って!』

 

続けてバラムに向かって両手を振り降ろす小猫ちゃん。瞬間、その両手から無数の青い光弾が放たれた。って、光弾!? 小猫ちゃんが遠距離攻撃を使った!?

 

「どこを狙っているの小猫!?」

 

部長が叫ぶ。小猫ちゃんが放った光弾はバラム本人ではなく、バラムの周囲に着弾し、大量の砂煙を立ち昇らせただけだった。どうした小猫ちゃん!? まだ遠距離攻撃に慣れて無いのか!?

 

『塔城選手の攻撃によってフィールドが砂煙に包まれました。両選手の姿が確認出来ません!』

 

『へっ、小猫のヤツ・・・』

 

『これが狙いだったようですね』

 

アザゼル先生と皇帝が納得したとばかりに発言したその時だった。砂煙の中に再び青白い光が出現した。

 

『そこです! 白虎咬!』

 

小猫ちゃんの叫び声と共に、砂煙が一気に吹き飛ぶ。視界が晴れた俺達が目にしたのは、バラムの腹部へ一撃を放っている小猫ちゃんの姿だった。

 

『・・・不覚・・・』

 

巨体を傾けさせ膝をつくバラム。そうか! あの光弾は外れたんじゃなく、最初から砂煙を発生させてバラムの視界を奪う為にわざと外したのか! 自分の視界も潰れるけど、小猫ちゃんならバラムの気を感じられるから見えなくても近付けたってわけか!

 

『もう一撃!』

 

間髪入れずに追撃をかけようとする小猫ちゃん。これで決まりかと思ったが、バラムはそれを左腕で以って受け止め、僅かに動きを止めた小猫ちゃんを右手で捕まえる。

 

『しまっ・・・!』

 

『ぬうぅぅぅぅぅぅぅぅん!』

 

滅茶苦茶に右手を振り回すバラム。小猫ちゃんは地面や柱に何度も叩きつけられ、最後には上に向かって放り投げられ天井に激突。地面に落下した。

 

「小猫ちゃん!」

 

俺の叫び声が届いたかどうかはわからないが、小猫ちゃんは立ち上がった。けれど、全身傷だらけで、額から血が流れていた。脳を揺さぶれた所為か、足下もおぼついていない。

 

『バラム選手の反撃で塔城選手大きくダメージを負ってしまいました! これは形勢逆転かぁ!?』

 

「まだよ・・・。まだ小猫の目は死んでいないわ」

 

ボロボロになった自分の眷属の姿を見ているのはきっと辛いはずだ。でも部長は目を逸らさず、モニターの向こうの小猫ちゃんを見つめていた。部長は信じているんだ。傷だらけになりながらも、瞳の輝きを失っていない小猫ちゃんを。

 

『・・・負けません』

 

小猫ちゃんが構えを解き、両腕をだらりと垂らす。試合を放棄したかのように見えるが、俺達はそれが何かの準備なのだとすぐに気付いた。だって、小猫ちゃんの両手から溢れだした光が彼女の全身を包み始めているから。

 

『私は負けられない。信じて送り出してくれた部長達に応える為に。応援してくれている神崎先輩やアーシア先輩に応える為に。そして・・・私にこんな素敵な物を託してくれた姉様の想いに応える為に! 私はあなたを倒します!』

 

自分は決して諦めないと叫ぶ小猫ちゃんが、光の中でその姿を変貌させていった。モデルの様な身長。すらりと伸びる白い手足、大きく自己主張する胸。ちっぱいロリだった小猫ちゃんが、スタイル抜群の爆乳美女へと進化した。

 

「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? こ、小猫ちゃんんんんんんんんんんん!?!?!?」

 

「え、小猫・・・え・・・」

 

「私は・・・夢でも見ているのか・・・」

 

「あわわわわわ!! こ、小猫ちゃんが大きくなっちゃったぁ!!」

 

大混乱に陥る俺達。それは会場も同じ様で、おおきなどよめきが聞こえて来た。

 

『と、塔城選手、なんと試合中に成長してしまいました! 成長期なのでしょうか!?』

 

「なわけねえだろ!」

 

『黒歌、ありゃどういう事だ?』

 

アザゼル先生がお姉さんに話を振る。なんであの人落ちついてるんだ!

 

『ある程度の実力を持つ猫魈は体内で気を練り込む事で一時的に全盛期の姿を取る事が出来るにゃ。未来、過去関係無くね。わかりやすく言えば、あの姿はあの子が一番実力を発揮出来る姿。あの子の未来の姿よ』

 

『って事は、小猫はこのまま成長していけばあんなボインちゃんになるってわけか』

 

『それはわからないにゃ。姿形なんてきっかけがあればいくらでも変わるもの。あくまでも可能性の姿だと思えばいいにゃ。あの子がこの段階に至るのはもう少し先だと思ったけれど、あのグローブが、何よりあの子の想いが届いたんでしょうね』

 

よ、よくわからんが、とにかく色んな意味でパワーアップしたって事だよな! すげえぜ小猫ちゃん! これなら行けるぞ! 猫又モードを越える新たなモード・・・アダルトモードだな!

 

『お、おお・・・これが“持つ者”だけが体験できる重みですか・・・!』

 

ちょ、小猫ちゃーん! なに自分の胸をタプタプさせてるのぉ! 気持ちは何となくわかるけど、今試合中ですから! 肩が凝ります・・・とか言ってる場合じゃないから!

 

『おい、大丈夫なのかアレ?』

 

『黙って見てなさい。全盛期の猫魈の実力をね』

 

お姉さんが意味深な発言を聞きながら俺がモニターに目を戻した正にその瞬間、小猫ちゃんの膝蹴りがバラムのアゴに炸裂した。凄まじい激突音と共に、先程は顔面を殴られてビクともしなかったバラムの巨体が宙を舞った。

 

『今なら誰にも負ける気がしません!』

 

不敵に笑む小猫ちゃん。大人の女性の艶っぽさが感じられ、俺はつい見惚れてしまうのだった。

 

『は、速い! 塔城選手の目にも止まらぬ攻撃がバラム選手にヒット! 三メートルはあるであろうバラム選手が吹き飛んだぞぉ!』

 

『白音は『戦車』の特性を得てパワー寄りの戦いを得意としてる。でも猫魈は元々速さを活かして戦うスタイルが主流にゃ。さすがに『騎士』までとはいかないけれど、それでもあのデカブツ相手なら十分過ぎるわ』

 

『パワー+スピードか。単純だが、単純故に恐ろしいな』

 

本人のポテンシャルそのものが高くなれば技の威力とかも上がるもんな。今の小猫ちゃんがさっきの技撃ったらとんでもない事になるんじゃないか?

 

『ッ・・・』

 

「小猫?」

 

小猫ちゃんが一瞬だけふらつく様な動きを見せた。表情からも何だか疲労している感じが見てとれる。

 

『どうした事でしょう。塔城選手、苦しそうです』

 

『黒歌』

 

『私、解説じゃなくてゲストなんだけど』

 

『いいから説明しろ』

 

『あの技は仙術の中でも相当高度な技よ。気の消費だって普通の仙術の比じゃないわ。あの姿になって確かに力も速さも上がったけれど、気の総量は元のあの子の物。枯渇すれば当然あの姿ではいられなくなるにゃ。その前に相手を倒せなければ、あの子にはもう成す術は無いわ』

 

時間制限付き!? そう言う事は先に説明しててくださいよ!

 

『時間が無いなら、一気に押し込むまでです・・・!』

 

小猫ちゃんが技の準備に入る。おお! 光の色がさっきに比べて濃くなってる。見ただけで滅茶苦茶威力がありそうだ!

 

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

 

バラムも負けじと柱を小猫ちゃんに投げつける。そして、ここで小猫ちゃんがとんでもない動きを見せた。なんと飛んで来る柱の上にピョンピョンと飛び移りながらバラムの元へ突っ込んだのだ! あんなん俺にはとても真似出来ない。

 

『相棒、別に避けずとも正面から全て破壊していけばいいではないか』

 

まあ、確かに俺にはそっちの方が合ってるけどさ。

 

『止めです!』

 

バラムまで残り五メートルの距離まで来た所で小猫ちゃんの姿が霞んだかと思ったら、二人、三人、四人とその姿を増やしバラムを取り囲んだ。あらやだ! 分身したわよあの子! さっきの曲芸みたいな動きと合わせて忍者に見えて来たわ!

 

『『『『白虎咬!!!』』』』

 

バラムを取り囲んだ四人の小猫ちゃんが一瞬の狂いも無く同時にバラムに技を叩き込む。四つの青い光がバラムの体を飲み込んでいった。光が消えた時、そこには横たわるバラムの姿があった。

 

『はあっ・・・はあっ・・・やりました・・・』

 

バラムの傍で小猫ちゃんが地面に座り込む。気がすっからかんになったのか、元の姿に戻ってる。

 

「やったぜ小猫ちゃん!」

 

ガッツポーズを取る俺。これでめでたく三勝目・・・。

 

「小猫ちゃん! 早くバラムから離れるんだ!」

 

焦った様にそう叫んだのは木場だった。

 

「木場? いったいどうし―――」

 

「審判からリタイヤのコールが無い! バラムはまだ戦闘不能になっていないんだ!」

 

「『え?』」

 

俺と小猫ちゃんの声がハモったと思った次の瞬間、動かないはずのバラムの右腕が小猫ちゃんへと伸びた。

 

『バラム選手が意地を見せた! 塔城選手またしても捕まってしまったぞ!』

 

『くっ、は、離して・・・』

 

『・・・離さん・・・。ベルーガ・・・コリアナ・・・無念・・・晴らすッッッ!!!』

 

手の中でもがく小猫ちゃんを潰さんばかりに握り締めながら、バラムが左手に柱を持つと、それを上に向かって振りかぶった。

 

『バラム選手、何をするつもりだ!?』

 

「・・・まさか!?」

 

部長が戦慄の表情を見せる。バラムの意図に気付いたんだろうか。

 

「部長、バラムのヤツ何をするつもりなんですか!?」

 

「バラムが柱を抜いた事で神殿内の強度はかなり低下しているはずよ。加えて、さっき小猫が激突した事で天井にも罅が入っている。そんな場所へ衝撃を与えようものなら・・・」

 

「ッ・・・神殿が崩壊する・・・」

 

「で、でもそれじゃ自分まで・・・」

 

「最初から覚悟の上だったのよ。柱は武器にしただけじゃない。ひょっとしたら自分が追い込まれた時に小猫を道連れにする為の手段として・・・!」

 

「小猫ちゃん! 早く逃げて!」

 

朱乃さんが叫ぶ。でも、疲弊した小猫ちゃんがバラムの拘束から逃げ出す事は叶わず、その間にもバラムの最後の一撃が放たれ様としていた。

 

『サイラオーグ様・・・勝利・・・確信・・・!』

 

遺言の様な言葉と共に、バラムが柱を投げる。放たれた柱は罅の中心部に直撃し、神殿が轟音と共に崩壊していくのを俺達は成す術も無く見つめ続けるのだった。

 

『リアス・グレモリー選手、サイラオーグ・バアル選手の両『戦車』一名のリタイヤを確認しました!』

 

こうして、第三試合は引き分けに終わったのだった。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

 

小猫SIDE

 

・・・目を覚ました時、私は見知らぬベッドの上で横になっていた。

 

「ここは・・・」

 

「会場に設置された医務室よ」

 

「姉・・・様・・・? 医務室? どうして私が・・・」

 

そこまで言って記憶が蘇って来た。そうだ、こんな所で寝ている場合じゃない!

 

「ゲームは!? 試合はどうなったんですか!?」

 

「落ちつきなさい。そんなに勢い良く起きあがったら」

 

「ッ・・・!?

 

瞬間、全身を激痛が襲った。視界に映った自分の右腕には両腕には包帯が巻かれていた。おそらく足の方も同じ様な感じになっているだろう。

 

「ついさっき第四試合が終わったわ。赤龍帝と相手の『騎士』が戦って赤龍帝が勝ったにゃ。重力を操る相手だったけど、大して苦戦もせずに勝ったわよ」

 

「そうですか」

 

流石イッセー先輩だ。それに引き換え私は・・・。

 

「私は・・・負けたんですよね」

 

「正確には引き分けだけどね」

 

「祐斗先輩とイッセー先輩がいい流れを作っていたのに、私が台無しにしてしまいました」

 

「途中まではすっごくよかったんだけどね。最後の最後で気が抜けちゃったのかにゃ。けどまあ、私は頑張ったと思―――」

 

「・・・う・・・」

 

「白音?」

 

頬を熱い物が流れて行く。それが涙だと気付いた時にはもう止める術が無かった。情けなさ、不甲斐無さ、色んな感情がごちゃ混ぜになっていた。

 

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。信じてくれたのに応えられなくてごめんなさい・・・。応援してくれたのに応えられなくてごめんなさい。姉様の想いに応えられなくて・・・裏切ってしまってごめんなさい・・・」

 

泣いたらダメだ。私には泣く資格なんて無いのに。あと一歩で勝てたのに。力を使い果たしたからなんて理由にもならない。

 

「・・・白音」

 

それなのに、姉様はそんな私を優しく抱きしめてくれた。

 

「姉様・・・?」

 

「馬鹿ね。そんな事を考えていたの?」

 

「だって、あんな凄い物を用意してくれたのに、私は不甲斐無い結果しか残せなかった・・・」

 

「魔具の事? ああ、あんなのお酒さえ渡せばいくらでも作ってもらえるわよ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「うん」

 

祐斗先輩の話では気に入った相手にしか作らないはずなのに。どれだけ気に入られてるんだろう姉様。

 

「それにね、確かに試合には勝てなかったけど、私には白音がとても立派に見えたわよ」

 

「え?」

 

「あなたがあの技を使えるのは当分先だと思っていた。でも、魔具の補助があったとはいえ、あなたはやってのけてみせた。白音は私が思っていたよりもずっとずっと成長していた。それだけで私は嬉しかったにゃ」

 

慈しむように私の頭を撫でる姉様。その手から姉様の温かさが伝わって来て、いつしか私の涙は止まっていた。

 

「姉様、私はまだまだ未熟者です。ですから・・・その・・・これからも、色々教えてくれますか?」

 

私のお願いに、姉様は満面の笑みで答えた。

 

「ええ、もちろんよ」

 

私は弱い。だから、これからも精一杯努力を重ねて行こう。姉様と一緒に。

 

「とりあえず・・・第一歩として明日から毎日牛乳を飲む事にします」




成長した小猫ですが、黒歌の言う通りあくまでも可能性の一つの姿です。なので、今後ちっぱいのまま成長する可能性だって十分あります。今回のは今回だけの特別な姿です。原作で言うとグレートレッドと合体したイッセーみたいなものです。

先日、騎士(笑)の日常も更新しましたので、興味ある方はご覧になって頂けると嬉しいです。

それと、今回が2015年最後の更新です。みなさん、今年も色々お世話になりました。少し早いですがよいお年を。


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