ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

148 / 187
第百四十一話 覚悟はいいか?オレは出来てる

???SIDE

 

・・・聞こえる。あの子の声が。あの子の名を呼ぶ声が。

 

「サイラオーグ様、いい顔をしていらっしゃる。こうしてテレビ越しでもあの方がどれほど喜んでいるのかわかりますな」

 

サイラ・・・オーグ。私の愛しい子・・・。

 

「奥様、今回もきっとサイラオーグ様は勝利されますぞ」

 

「・・・グ」

 

「え?」

 

「・・・オーグ。サイラ・・・オーグ」

 

「お、奥様・・・!? い、医者を・・・!」

 

???SIDE OUT

 

 

 

イッセーSIDE

 

「まったく・・・リョーマったら」

 

口調は呆れた様な感じだが、部長の顔は嬉しそうだった。俺にはその理由がわかる。事情を知っている者なら、神崎先輩が何であんな話をしたのか、その真意を理解出来るから。

 

「へへ、ああいう事がサラッと出来るから先輩は凄えんだよな」

 

「そうだね。ある意味、今の悪魔業界の在り方を真っ向から否定した様なものだし」

 

『それでは、両『王』は台の前にお願いします!』

 

いよいよ試合が始まる。部長とサイラオーグさんの振ったダイスの結果で俺達の誰が出れるのかが決まる。

 

『出ました! リアス選手が二! サイラオーグ選手は一! 合計は三となります! 本来『兵士』の価値数は一ですが、両者の『兵士』は複数の駒を消費されているという事なので、今回は価値数が三となる『騎士』か『僧侶』の一名を送り出す事が出来ます!』

 

俺は八つの駒を使ったから、八以上の数字じゃないと出れないってわけだよな。てか最初で最小の数字かよ。いきなり悩まされるぜ。

 

『作戦タイムとなる五分の間に出場する選手を選出してください。では作戦タイムスタート!』

 

待機用の椅子の座り、俺達は話し合いを始めた。

 

「部長、誰を出します?」

 

「もう決まっているわ。・・・祐斗、お願い出来るかしら?」

 

「もちろんです」

 

迷い無く木場の名を呼ぶ部長に、木場も力強く頷いた。確かに、三が出た以上、ウチから出れるのは木場にゼノヴィア、そしてギャー助だ。ギャー助はサポートタイプだから単独で出すわけにはいかない。必然的に『騎士』のどっちかになるのは俺も納得だけど。

 

「初戦は確実にとりたい。誰が出て来ても祐斗の聖魔剣なら応用が効くから臨機応変に対応出来るはずなの」

 

「なるほど」

 

その時、審判役のあのイケメンさんから制限時間終了間近だとアナウンスがあった。木場がバトルフィールドへ転送される魔法陣へ向かう。

 

「それじゃあみんな・・・行って来ます」

 

振り向いた木場が俺達に笑顔を向けた次の瞬間、魔法陣が光を発し、木場の姿が光の中へ消えて行った。

 

続けて陣地の上空にいくつかの映像風景が現れた。観客の様子も映されている。それらを眺めていると、一番大きく映しだされている映像に広大な緑の平原、そしてそこに立つ木場の姿が見えた。さらにそれと向かい合う様にして青白い炎を全身から放つ馬に乗った甲冑騎士の姿があった。

 

『両選手がフィールドに登場しました! この広大な平原でぶつかり合う事となったのは互いに『騎士』! まずはグレモリー眷属より木場祐斗選手!』

 

実況の紹介直後、観客から木場へ大きな歓声があげられた。木場のヤツ全然動じて無いみたいだ。すでに集中して自分の世界に入ってるみたいだな。

 

『対するバアル眷属は、ベルーガ・フールカス選手!』

 

甲冑騎士が馬を進ませ、兜のマスクを上げて顔を見せた。・・・なんて鋭い目で木場を睨んでるんだ。戦う前から気力は十分ってわけか。

 

『私は主君サイラオーグ・バアル様に仕える『騎士』が一人、ベルーガ・フールカス。聖魔剣使い木場祐斗殿。こうして貴殿と剣を交わせる事、剣士冥利に尽きるばかり』

 

『それはこちらも同じ気持ちですよベルーガ殿』

 

「フールカス家は馬を司るのが特色だったわね」

 

「だから馬に乗ってるんですね」

 

「ええ。それにあの馬はただの馬じゃないわ」

 

炎を噴き出してる時点で普通じゃないですもんね。そこへ実況がアザゼル先生に馬について尋ねた。先生曰く、あの馬は地獄の最下層に生息すると言われる「青ざめた馬」という魔物らしい。死と破滅を呼ぶ馬とも呼ばれ、気にいられなければ主すらも蹴り殺すのだとか。

 

「そんな馬を従えている。それだけで彼の実力が相当なものだという証明になるわ」

 

『それでは、第一試合開始してください!』

 

俺達の見守る中、ついに二人の勝負が始まった。

 

『木場祐斗殿。魔帝剣使いを退けたという貴殿の妙技、是非とも見せて頂きたい』

 

『やはり情報は広まっているみたいですね。けれど、期待して頂いて申し訳ありませんが、師匠に無断使用がバレてしまって今回は使用してはダメだときつく言われてしまいまして』

 

『それは残念』

 

互いに距離を取りながら会話を行う二人。どっちが最初に相手に切りかかるのか。見ているこっちも緊張して来た。

 

『・・・わかっているな、アルトブラウ。この試合、我等の命を懸け、必ずや主君へ勝利を捧げるのだ。そして証明するのだ。これを見ている観客・・・そして騎士殿へ』

 

『ブルル・・・!』

 

な、何だ? 馬の炎がベルーガの全身と持っているランスを包み始めたぞ。それだけじゃない、周囲までもが馬の炎で燃え始めたぞ!

 

『さあ、駆けよアルトブラウ! 我等これより人馬一体となりて敵を討つ!』

 

『ヒヒィィィィィィィン!』

 

「ッ・・・ぐうっ・・・!?」

 

炎だけをその場に残し、ベルーガ達の姿が消える。刹那、甲高い金属音と共に木場が吹っ飛ぶ。態勢を整える間も無く、さらに連続して金属音が鳴り響き、その度に木場は剣で防御しながらも吹っ飛ばされていた。

 

『な、なんという速度! ベルーガ選手、木場選手を怒涛の勢いで攻め続けています! 私には彼の姿を視認する事が出来ません!』

 

『ベルーガ選手、今日は調子がいい様ですね。私がアドバイザーとして指導している頃にはあれほどの速さを見せた事は一度もありませんでしたよ』

 

『ベルーガ選手の速さに皇帝も驚いています! 木場選手、防戦一方のこの状況を打開する事は出来るのでしょうか!』

 

「木場・・・!」

 

「まさか、あの『騎士』があれほどの速さを持つなんて・・・」

 

『どうした! 貴殿の力はその程度ではなかろう!』

 

ベルーガがそう吼えた瞬間、激しい突風がフィールドを奔り、周囲に燃え広がっていた炎がその風によってかき消された。

 

『少々熱かったからね。消させてもらいましたよ』

 

木場のヤツ、風属性の魔剣を使ったのか! 炎に風なんざ、下手すりゃ勢いを増すだけだってのに・・・。そんだけアイツは風の魔剣に自信があるって事か。

 

『我が炎を一瞬で消し去るとは・・・流石は聖魔剣使い』

 

『そちらこそ、素晴らしい速さです。以前のゲームまでのデータは見させて頂いていますが、これほどのまでの速さを見せた事は一度も無かったはずです』

 

『自分でも驚いている。今日に合わせて調子は整えていたが、それにしても体が軽すぎる。自分自身、どこか恐ろしさを感じてしまうほどに』

 

『ブルル・・・』

 

『はは、その馬も同じ気持ちみたいですね。だからこそ厄介だ。まずは様子見と思ったらあっという間に攻め立てられてしまったのですから』

 

『やはりそうであったか。貴殿ほどの剣士があの程度のはずが無い。私の実力を見極めるため、あえて防戦に回っていたという事か』

 

『それをわかっていて誘いに乗ってくれた。相手の企みに気付きながらも正面から立ち向かう・・・あなたは正に騎士ですね』

 

『私にはこんな戦いしか出来ないのでな。愚かと言われようともこのやり方を貫いてみせる』

 

『愚かだとは思いませんよ。だって、僕の親友もあなたみたいに真っ直ぐですから』

 

『ふっ、貴殿とは一度落ちついて話がしてみたいものだ』

 

『そうですね。けれどここは勝負の場。そしてあなたと僕は敵同士。だからこそ・・・』

 

『『僕(私)達は剣で語り合う!』』

 

馬を走らせるベルーガ。木場が迎撃の為に地面から剣を伸ばすが、ベルーガは巧みに馬を操りそれらを全て回避。意味が無いと判断した木場が自らベルーガに跳びかかるが・・・。

 

『いない!?』

 

『そこだ!』

 

ベルーガの姿が馬の上から消えていた。馬はそのまま木場の横を高速で通り過ぎて行く。すぐさまベルーガを探す木場を、上空からランスを突き出したベルーガが襲いかかった。

 

『やらせない!』

 

木場が両手持ちの馬鹿でかい剣を創り出す。あれでベルーガを受け止めるつもりか。ランスと大剣がぶつかり合い、ギャリギャリと音が鳴り響く。けれど、落下速度も加わったベルーガの重さに、木場の体が徐々に押され始める。

 

『このまま押し切らせてもらう!』

 

『舐め・・・るな!』

 

木場が思いっきり剣を薙ぐ。結果ベルーガの体が再び上空に打ち上げられるが、空中で器用に体を回転させながら落下。その着地点にはあの馬がいて、ベルーガはそのまま馬にまたがって再び駆け始めた。

 

『いつの間に・・・!』

 

『我等は人馬一体! 互いの考えを共有するなど造作も無い!』

 

『ただの乗り物では無い・・・か。まるで二対一で戦わせられている気分ですよ!』

 

二人の姿がまたかき消える。金属音と火花だけが戦場に奔り、フィールドそのものが二人の激突の余波で見る見る内に抉られていく。

 

『またしても両者の姿が見えなくなりました! 果たして木場選手、挽回出来るのか!』

 

確かに、今までの流れだと木場の劣勢だと思われてもしょうがない。けど・・・。

 

「私の『騎士』を甘くみないでちょうだい」

 

反論する様に呟く部長。俺だって同じ気持ちだ。木場を・・・俺達の『騎士』を侮ってもらっちゃ困るぜ。

 

『くっ・・・!』

 

僅かながらも焦りを含んだその声は木場では無くベルーガのものだった。

 

『そこだぁ!』

 

木場の叫び声と共に平原に血が迸った。間違い無い、木場の剣がベルーガに届いたんだ!

 

『今の私達の速さを越えるとは・・・それが貴殿の本当の力か!』

 

『少し前の僕なら、おそらくあなたに追いつく事は出来なかったでしょう。ですが、京都で枷を外してから、僕が持つ本来の速さも上がっていました。それに風の魔剣の力を合わせれば、こうしてあなたを越える事だって出来る!』

 

『見事! だがしかし! 我等の全力がこの程度だと思っては困る! アルトブラウよ! 神速と呼ばれしその脚の真価を見せよ!』

 

二人の激突はさらに激しさを増していく。けれど、形勢は徐々に木場の方へ傾き始めていた。

 

『ぐっ・・・はあっ・・・はあっ・・・』

 

『すう・・・はあ・・・』

 

ベルーガが姿を見せる。けど、その甲冑からは血が滴り、馬も体のあちこちに怪我をしていた。対する木場も致命傷こそ見られないが、頬や腕から出血していた。

 

『ここまで追い詰められたのはいつ以来だろうか。だが、それでも私は負けられん! 我が主の為、私に敗北は許されんのだぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

ベルーガがありったけの声を振り絞りながら馬の炎のたてがみに手を突っ込み、そこから二本目のランスを取り出した。

 

「あのたてがみ、違う次元に繋がっている様ですわね」

 

「槍を二本も持って何をするつもりだ?」

 

『アルトブラウよ! 我等の最後の奥義、見せてやろうぞ!』

 

『ヒヒィィィィィィィン!』

 

馬の全身からかつてないほどの極大の蒼炎が放出される。それに合わせるようにベルーガが両手のランスを勢いよく振り回し始めた。

 

『こ、これは・・・! 「青ざめた馬」から放たれた炎がベルーガ選手の回転する槍の勢いで巨大な炎の竜巻になりましたぁ! あれほどの緑が広がっていた平原が今や炎の海となっています!』

 

『これぞ我等の奥義! 『地獄より現れし蒼炎』なり!』

 

『いいのですか? まだ初戦だというのにその様な奥の手を見せてしまって』

 

『貴殿に勝つにはもうこれしかない! 初戦だろうとなんであろうと、我が誇りに懸け、貴殿は私が倒してみせる!』

 

『・・・わかりました。ならば、僕も見せますよ。それが、あなたの誇りに対する僕の敬意です!』

 

自らの誇りを懸けると言い放つベルーガの覚悟を正面から受け止め、木場は自分が持つ風の聖魔剣から小さな風を発生させた。それは瞬く間に大きさを増して行き、荒れ狂う暴風となって木場の周囲を回り始め、いつしかベルーガと同じ竜巻となっていた。

 

『な、なんと! 木場選手も竜巻を作りだしました!』

 

『私は負けん! 蒼炎よ! 敵を飲み込めぇぇぇぇぇぇぇ!!!』

 

『行きます!』

 

得物を突き出す両者。互いが互いを飲み込まんと凄まじい勢いで激突する竜巻。だが、勢いを保つ木場の竜巻に対し、ベルーガの竜巻が徐々に勢いを弱め始めた。

 

『ど、どうしたというのだ!? 我が蒼炎が・・・!?』

 

『・・・この技によって生み出された風の渦の役目は相手の動きを止める事』

 

『ッ!?』

 

『そして・・・この一撃こそが本命となる!』

 

竜巻に気を取られていたベルーガの眼前に突如として現れた木場が放った全速の一閃がベルーガの腹に深々と食い込んだ。

 

『ご・・・ふ・・・』

 

『これが僕の奥義・・・風刃閃です』

 

木場が剣を抜くと同時に呻きながら落馬するベルーガ。主に続いて馬も倒れ、いつしか竜巻も消滅し、荒れ果てた大地に木場だけが立っていた。

 

勝負あり。誰もがそう思っていた。だが・・・。

 

『―――まだだ』

 

『ッ・・・!』

 

『私は・・・まだ・・・戦える』

 

『無茶しないでください! もう勝負は尽きました! それ以上出血したら危険です!』

 

『それがどうしたというのだ。我が主が・・・サイラオーグ様が不等な扱いを受けている時に何も出来なかった頃の悔しさに比べれば・・・この程度の痛みがなんだと言うのだ!』

 

目を見開く木場の前で、ベルーガはランスを杖に再び立ち上がろうとしていた。出血はさらに激しくなり、周りを真っ赤に染め上げていた。けれど、その兜の向こうに光る目は未だに力強く輝いていた。その光を直視した木場がたじろぐ。確かにこの時、敗者であるはずのベルーガが、勝者であるはずの木場を圧倒していた。

 

『さあ・・・木場・・・殿・・・いざ、決着を・・・』

 

グラリとベルーガの体が地面へと倒れる。直後、光と共にベルーガの姿が消えた。

 

『サイラオーグ・バアル選手の『騎士』のリタイアを確認!』

 

この瞬間、木場の勝利が確定した。だけど、あの『騎士』の壮絶な最後を見てしまった俺達は素直に喜ぶ事が出来なかった。そして、それは木場も同じだった。魔法陣から戻って来たアイツの顔には悔しさが滲んでいた。

 

「・・・試合に勝って勝負に負けたってこの事を言うんだろうね。最後の最後、僕はベルーガ殿の気迫に完全に圧されていた。・・・いや、正直に言うよ。僕は怖かった。満身創痍のはずのベルーガ殿のプレッシャーに僕は恐怖を感じていた」

 

「木場・・・」

 

「それだけの決意と覚悟で戦っていたというわけね。そして、それはあの『騎士』だけじゃない。サイラオーグを含め、眷属全員が同じ決意と覚悟を持ってあそこに立っているはずよ」

 

『両『王』は台の前へお願いします!』

 

第二試合のダイスを振る部長とサイラオーグさん。出た目の合計は八。俺が出れる数字だ。

 

「八か・・・。ここはゼノヴィアと・・・」

 

「部長、俺に行かせてください」

 

名乗り出る俺に、部長は首を横に振った。

 

「イッセー、あなたは私達の主力なのよ。サイラオーグとの戦いに備えてあなたは温存しておきたいの」

 

「部長の考えは最もです。けど、サイラオーグさんとの戦いに備えるなら、余計な戦力の低下を防ぐのも大事じゃないですか?」

 

「それも一理あるわ。けど、それであなたが消耗したら意味が無いじゃない」

 

「お願いします。必ず勝ちますから」

 

「けど・・・」

 

「リアス、イッセー君に任せてみたらどうかしら。ここまで言うのだから彼にだって何か考えがあるはずよ」

 

「・・・わかったわ。けど、気は抜かないでちょうだい」

 

「はい」

 

朱乃さんが援護してくれたおかげで何とか部長が折れてくれた。

 

―――いいのか相棒? 相手のチームには女もいる。もし出て来たらお前は戦えるのか?

 

『むしろ望む所だよね! 今のキミにはあの技があるんだか―――』

 

すみません先輩。ちょっと黙っててもらえますか。

 

『アッハイ』

 

なあ、ドライグ。あの『騎士』を見て思ったんだ。俺さ、全然わかってなかったよ。サイラオーグさん達の覚悟も決意も、俺なんかが想像出来る様なもんじゃなかったんだ。あの人達は文字通り命を懸けて俺達に挑んで来てる。男だ女だなんてくだらねえ考えで戦うなんてあの人達に対する侮辱にしかならねえよ。

 

―――では。

 

けど、それは必要以上に傷付けるって意味じゃねえ。だから俺は・・・。

 

『出場選手は魔法陣へお願いします』

 

俺は振り返る事無く魔法陣へ向かった。たぶん、後ろでは部長達が心配した顔で俺の背中を見つめているだろう。

 

「それがサイラオーグさん達の覚悟だっていうなら、俺も俺の覚悟を示してみせる・・・!」

 

イッセーSIDE OUT

 

 

リアスSIDE

 

祐斗が戻って来てからイッセーの様子がおかしい。結局その違和感が何なのかわからずあの子を送り出してしまったけれど、本当にこれでよかったのかしら。

 

『おおっと! ついにグレモリーチームからこの選手が出てまいりました!『それいけ! せきりゅーてー』で今や冥界の子ども達に大人気の兵藤一誠選手です!』

 

『LoveとbraveryをMy heartに秘め~♪』

 

『今流れているのは『それいけ! せきりゅーてー』のオープニングテーマです。この歌詞はプロデューサーであるセラフォルー・レヴィアタン様が、あの冥界屈指の作詞家であるリー・小柴氏に依頼して作成したものです』

 

『誰だよリー・小柴って!?』

 

『ほお、リー・小柴ですか』

 

『確かに、大胆でありながら繊細・・・彼らしい歌詞ですね』

 

『知ってんのかよ先生!? え、知らない俺がおかしいの!?』

 

『そして、バアルチームからは『僧侶』のコリアナ・アンドレアルフス選手の登場です!』

 

現れたのはスーツ姿の女性。おそらく、向こうはイッセーが出て来ると踏んで彼女を出して来たんでしょうね。

 

「イ、 イッセー先輩、大丈夫なんでしょうか?」

 

「・・・信じましょう」

 

そうしている間に、第二試合の開始が宣言された。籠手を発現させたイッセーを前に、コリアナが口を開いた。

 

『やっぱりあなたが出て来たわね、赤龍帝』

 

『俺が出て来るのを読んでたんですか?』

 

『ええ』

 

『それなのにあなた一人なんですか? 『僧侶』なら他にも出せるはずですけど』

 

『無謀だって言いたいんでしょ? それは私もわかっているわ。おそらく、私一人じゃあなたに勝てない。私はこの試合、はなから勝つつもりは無いわ。あなたの手の内を少しでも晒させて後のみんなに託す・・・それが私の役目よ』

 

『サイラオーグさんがその作戦を?』

 

『まさか! あの方はサクリファイスなんて使わないわ。これは私が望んだ事。あの方の勝利の為ならば、喜んでこの体を捧げるわ』

 

『・・・それがあなたの覚悟なんですね』

 

『そうよ。さあ、そろそろ始めましょうか! 言っておくけど、甘く見てると怪我じゃ済まな―――』

 

コリアナが構えを取ろうとした次の瞬間―――イッセーの拳が彼女の腹部に突き刺さっていた。

 

『か・・・は・・・!?』

 

『怪我じゃ済まない・・・。なら、済まなくなる前に最小限の怪我で終わらせてもらいます』

 

崩れ落ちたコリアナが光と共に消える。それを見送ったイッセーの籠手は三つの噴出孔から赤い炎が噴き出していた。

 

『な、ななななんとぉぉぉぉぉぉ! 兵藤選手、コリアナ選手を試合開始三十秒で瞬殺してしまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

『『『『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』』』』

 

観客達の凄まじい歓声が私の耳に届く。あまりの決着の早さに、私はしばし呆然とモニターを見つめていた。

 

『コリアナさん、これが俺の覚悟です・・・』

 

その向こうでイッセーが呟くように言葉を発する。そして、そのまま魔法陣を通って私達の元へ戻って来た。

 

「勝ちましたよ、部長」

 

勝利したにも拘らず、ニコリともせずに私達に勝利を報告するイッセー。その表情を見て、私はふとこの子が漏らしたあの言葉を思い出した。

 

―――部長、俺、この試合で自分の全てを出し切ってみせます。だから、みんなと一緒に見ててください。俺の・・・夢の形を。

 

(イッセー、この試合であなたは答えを得るつもりなのね)

 

夢を見失ったこの子が苦悩の果てに得た夢の形・・・。それがこの子に何をもたらすのか、私にはわからない。だから私は見守ろう。この子が導き出した答えを。




原作が割とあっさりだったので、無駄に引き延ばしてみました。

ついでに順番も入れ替えてみました。こっからが大変だ・・・。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。