ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第百二十三話 背負い続けるという事

「・・・あれ、ここって・・・」

 

すべてが真っ白に塗りつぶされた世界。俺がここへ来るのはコレで二度目だ。一度目は、トラックから子どもを庇って死んだ時。なら二度目の理由は? ・・・まさか、また俺は死んでしまったのだろうか?

 

「いや、アンタは死んどらんよ。ただ、ちょーっとシャレにならんくらいの精神的ダメージを受けたんでウチがここへ呼んだんよ」

 

おっと、その見事なパンチパーマはまさしくオカンじゃないですか。ところで、精神的ダメージって? ええっと、なんだ・・・っけ・・・。

 

―――かつて、フューリー様が別の世界で経験した戦いの歴史を書き記した本なのです!

 

「・・・ファッァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?!?!?!?!?!?」

 

なんだっけ? じゃねえよ!! どうなってんの!? どうなってんのよ!? なんでゲームの話が俺の過去の話になっちゃってんのよ!?

 

「あー、ちょっと落ち着きぃ。せっかくのイケメンが台無しやで」

 

「これが落ちついていられますかぁ! ようやくフューリーとしての立場を受け入れようと決めたばかりなのに、ここに来てまたしてもトンデモ設定がついちゃったんですよ!」

 

しかも、よりにもよって鋼の救世主とか・・・。(笑)どころか(泣)がつきそうだわ!

 

「まあ、ウチもまさかこんな事になるとは思っても無かったけど、この事態を招いたのは、アンタ自身なんやで? アンタがもう少し上手に話をしとったら、あの男の子も勘違いせえへんかったはずや」

 

「いやいやいやいや! だって、アレはゲームの話ですよ!? あんな色んなモンが混ざりまくったカオスな世界が現実に存在するわけないじゃないですか!」

 

「それを知っとるのはアンタだけや。それに、アンタの存在、アンタのこれまでの行動そのものが、勘違いのはずの話に説得力を持たせてしまったんや」

 

俺の存在や行動って・・・。俺がこれまでやって来た事って、大昔の戦いに乱入したり、教会の変態集会に乱入したり、婚約パーティーの会場に乱入したり・・・って、乱入ばっかじゃねえか!

 

それ以降だって特にこれといった事はしてない。Dとの一件は、リアス達のおかげで乗り切れたんだから除外だし。・・・ええい、まるで思いつかんぞ!

 

「小学生の頃から「落ちついて人の話を聞きましょう」とか「自分の気持ちはハッキリ伝えましょう」とか通信簿に書かれとったみたいやけど、その部分はまるっきり成長しとらんようやなぁ」

 

「ちょ、何で知ってるんですか!?」

 

「ウチ、神様やもん」

 

それ言われたらもう反論のしようがないじゃないですか! けど、自分の気持ちをハッキリ伝えるって部分は実践してるつもりだぞ。これまでだって、リアス達に服装とかの意見を聞かれた時にはちゃんと似合ってるって伝えて来たし。悩みを聞かされた時だって、自分の思ったままに答えて来たつもりだ。

 

そうオカンに言うと、方向性が違うと呆れられてしまった。解せぬ。

 

「そもそも、そこまで嫌がるんなら、何で質問された時に違うって言わんかったんや?」

 

「それは・・・」

 

―――・・・初めてでした。ここまで何かに没頭してしまったのは。

 

―――この物語を後世に残す事が、私の・・・ミリキャスという悪魔に与えられた使命だと思ったからです!

 

―――この本が、ずっと冥界に残り続けて欲しい。・・・それが、私の夢です。

 

「・・・俺一人だけが嘘つき呼ばわりされるのならいくらでもかまわない。でも、あの場で違うと言えば、俺だけでなくミリキャス君まで非難を受けていたかもしれない。俺はあの子が・・・ミリキャス君が心血を注いで作り上げた物を絶対に台無しにしたくなかったんです」

 

先日、グレモリー家にお邪魔した時、俺に出版の許可を求めた際のミリキャス君の不安に溢れた表情。そして、その直後の輝きに満ちた笑顔。彼があの本にどれほどの情熱を傾けていたのか容易に想像できた。あの笑顔を、悲しみに変える事だけは絶対にしたくないし、するわけにはいかなかった。だから俺は、あの時肯定したんだ。

 

「雰囲気に流されたわけやない。アンタが自らの意思で肯定した瞬間、勘違いは真実になった。それが保身の為じゃなく、あの子の為やったとしても、アンタはもうこの道を引き返せない」

 

・・・わかってる。これは俺が犯した罪。誰も知らない、だからこそ誰にも許してもらえない俺の大罪だ。ならば、俺はこの罪を・・・鋼の救世主(泣)の名を死ぬまで背負い続けよう。

 

「俺って最低ですね」

 

自重気味に呟く俺に対し、オカンは小さく首を横に振った。その否定の表現に俺は目を丸くした。

 

「確かに、嘘をつく事は悪い事や。けど、アンタはそうする事で、あの子とあの子の夢を守ろうとした。・・・ようやったよ、アンタは」

 

「ッ・・・!」

 

オ、オカァァァァァァァァァァン! あなたって人はぁ! 見た目だけじゃなく、寛容さまでオカンじゃないですかぁ! そんなあなたのオカンっぷりに、俺の涙腺は大崩壊ですよぉ!

 

「ふふ、男の子がそんな簡単に涙を見せたらアカンで。・・・どうしても泣きたいっちゅうんなら、ウチの胸で良ければ貸したるよ?」

 

だから、なんでそういう事を平然と言いますかねあなたは! パンチパーマなのに、オカンなのに、不覚にもドキッとしちゃったじゃないですか!

 

「・・・いえ、大丈夫です」

 

「確かに、その顔ならもう大丈夫そうやな。さっきまで喚いていた子とはとても思えんわ」

 

覚悟は出来た。たった今から、俺は鋼の救世主(泣)としての道を歩み始める。そうとも! ずっとしていた勘違いに気付けたんだ! こんなとんでもないレベルの勘違いなんて、きっと最初で最後だろうし、ここはプラスに考えようじゃないか、俺!

 

「それじゃ、そろそろお別れや。現実のアンタが起きそうやからな」

 

「現実? そういや、そもそもどうやって俺をここへ呼んだんですか?」

 

「憶えてへんの? アンタ、家に帰って自分の部屋に入ったと思ったら、そのままベッドに倒れ込んで眠ってしもうたんやで?」

 

そうだったのか。あの会見が終わってからの記憶が無いんだが、よく帰って来れたな俺。

 

(・・・救世主、英雄、そう呼ばれる存在に必要なのは力だけやない。ウチのあげた力を欲望の為じゃなく、あくまでも他人の為に使い続けるアンタも、十分そう呼ばれる資格はあると思うで。そんなアンタやから、ウチはアンタを気に入ったんや)

 

オカンの微笑みが光の向こうへ徐々に消えていく。現実の俺が目を覚ますまでもう間も無くだろう。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

「ん・・・」

 

瞼を開けると、見慣れたを通り越して見飽きた天井が広がっていた。窓からは朝日が差し込んでいる。時間は・・・六時四十分過ぎ。いつもの起床時間とほぼ同じだ。ひとまず起き上がろうとして、俺は違和感に気付いた。なんか右腕が重い? というか、なんかふにょふにょしたものがくっついてる? ナニコレ? 新手の金縛り? 右腕だけとかピンポイント過ぎだろ。

 

とりあえず、右腕の状態を確かめようと、左腕だけで布団を捲りあげると、そこには信じがたいものがいた。

 

「すぴー・・・すぴー・・・」

 

・・・皆さんに質問です。朝起きて布団を捲ったら、鮮やかなオレンジ色の髪で褐色肌の幼女が右腕に抱きついて幸せそうに寝てたんですけど、この場合の適切な行動を教えてください。

 

というか・・・昨日の俺マジで何したんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!




シリアルという皮を被った開き直り回でした。次回からオリ主は通常運転に戻ります。

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