ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第九章 学園祭のライオンハート
第百二十一話 重要度・・・測定不能


駅で兵藤君達を迎え、はい解散・・・と思っていたら、どういうわけかアザゼル先生達を含めて全員で俺達の家に向かう事になった。

 

「先生、ここまで来て言うのもあれだけれど、イッセー達も疲れているみたいだし、話なら明日でもいいと思うのだけれど」

 

リアスの言う通り、兵藤君達は長時間の移動に参ってしまったのか、お疲れムードを漂わせている。けど、その顔はどこか晴れ晴れとしていた。・・・向こうで何か凄い事でもやったのだろうか。

 

「まあな。だが、お前達には早めに教えておいた方がいいと思ってな」

 

そう前置きし、アザゼル先生は京都で起こった事件について俺達に説明した。その内容にリアス達は目を丸くし、au派とかいうペロリスト達が現れたのは知っていた俺も、連中が具体的にどんな事をやらかしたのかを聞いて驚かされた。

 

九重ちゃんと八坂さん。去年、俺が京都で出会ったとても仲の良かった親子。そんな彼女達が実は妖怪だった。しかも、八坂さんはau派に誘拐されて酷い目に遭わされたらしい。それも、九重ちゃんの目の前でだ。・・・マジでテメエ等の血は何色だよau派。

 

この時点でどう考えてもギルティだが、連中の非道はそれだけでは無い。学園一優しい先生で、俺にとっての恩師でもある山田先生を人質にしようとしたらしい。・・・マジでテメエ等何様だよau派。

 

そして・・・俺だけが知ってしまったであろう、女性の四肢を奪い、放置するという鬼畜という言葉すら生温い連中の所業。今も目を瞑れば鮮明に思いだせる。赤黒い液体の中心、仰向けに転がされ、虚ろな目で空を見上げていた女性の姿を。・・・マジでテメエ等腐り過ぎだろau派。

 

きっと、筆舌に尽くし難い様な残虐な行為をされたのだろう。もしかしたら、女性としての尊厳を奪われる様な事もされたのかもしれない。あのまま死んでいた方が幸せだった。・・・ひょっとしたら、女性はそんな風に考えていたのかもしれない。

 

でも、俺は目の前で人が死んでいくのを黙って見ていたくはなかった。だから、効果があるかはわからなかったが、『友情』や旧『愛』といった回復系の精神コマンドを含めた、ありとあらゆる精神コマンドを発動させて女性を助けようとした。

 

結果は・・・奇跡的に成功だった。『奇跡』を使ったおかげかもしれない。公園へ女性を運び、目が覚めるまで物陰からずっと様子を見守っていた。目を覚ました時、男の俺がいたらパニックを起こすかもしれないという判断だった。

 

しばらくして目を覚まし、公園を去って行った女性。その表情が絶望では無く、希望に満ち溢れた様に輝いていたのを見て、俺は自分の行動が正しかったと思えた。

 

その後、俺は兵藤君達と顔を合わせる事無くオカンに頼んで家に帰してもらった。たぶん、あの時の俺は、人に見せられるような顔はしてなかったと思う。現に、唯一別れの挨拶を交わしたセラフォルーさんはどこか怯えた様な表情をしていた。

 

au派・・・。どうやら連中を構成するのはペロリストではなく、正真正銘のテロリストのようだ。今までに現れた他の変態共とは違い、残虐性、非道性の方に目が行く。けど、それでも・・・連中の所為で悲しむ人が生まれるのは同じだ。だったら難しく考える必要は無い。ペロリストだろうがテロリストだろうが、皆等しく制裁コース一直線だ。

 

「・・・吐き気すら催してきそうですね」

 

アザゼル先生の口から語られた内容に、俺はついそんな風にもらしてしまった。ああ、みんな心配する様に目を見開かないで。本当に吐くわけじゃないから。

 

(リ、リョーマ、なんて冷たい目をするの・・・)

 

(この心臓を穿たれる様な感覚・・・これがフューリーの“殺気”か)

 

(こんな顔見たくないにゃ。ご主人様にはやっぱりいつもみたいな優しい笑顔の方が似合ってるにゃ)

 

「すみません、話の腰を折ってしまって。続けてくださいアザゼル先生」

 

「・・・ああ。とにかく、イッセー達の奮闘で、連中の計画は防げた。幹部クラスも二人倒せ・・・てはないが、アレじゃもう出て来ないだろう。だが、俺の予想が正しければ、きっと近い内に活動を再開させるだろう。再戦の時を迎えるまでに、今よりもっと強くなれよお前等」

 

リアス達と一緒に俺も頷いた。平穏な日常を送るという俺の夢は変わらない。けど、俺一人だけが平穏に過ごしたって意味が無い。ここにいるみんな。そしてここにいない人達。全員で一緒になって毎日を楽しく過ごしたい。それが、それこそが、今の俺の望みだった。

 

「よし、テロリストに関する話は以上だ。・・・話は変わるが、修学旅行は終わっても、お前達にはまだまだたくさんのイベントが待ってるぞ。忘れてないだろうが、サイラオーグとの戦いに向けての準備を怠るなよ」

 

「そうね。若手交流戦最後と呼ばれているし、絶対に気は抜けないわ」

 

「ああ、それともう一つ。近い内にフェニックス家の娘が駒王学園に・・・」

 

「あ、あの、アザゼル先生」

 

「ん? どうしたアーシア?」

 

「その・・・この子の事も説明しておかないといけない気がするんですけど」

 

そう言って、アーシアは鞄から赤いモフモフ・・・すやすや眠っているスコルを出した。おのれワンパクっ子め! こっちがどんだけ心配していたかも知らずに可愛らしい寝顔晒しやがって! 起きたら一応説教した後で、思いっきりモフモフの刑に処してやるからな!

 

「アーシア、スコルがどうかしたの?」

 

「じ、実は・・・」

 

そうして、アーシアから語られたスコルの秘密に、俺達はただ仰天するのだった。

 

SIDE OUT

 

 

サーゼクスSIDE

 

「サーゼクス様、アザゼル総督よりお電話が入っております」

 

「繋いでくれ」

 

受話器に耳を当てると、電話の向こうからアザゼルの疲れ声が聞こえて来た。

 

「やあ、アザゼル。セラフォルーから聞いているよ。色々大変だったみたいだね。お疲れ様」

 

『労いの言葉を寄越すくらいなら代わってくれ。あの野郎の所為で、初日くらいしか酒は飲めなかったし、あの薬まで服用するはめになったんだぞ。ちくしょう・・・もっと芸者遊びとかしたかったのに』

 

「頑張れ。キミなら出来るさ!」

 

『ええい、その無駄に爽やかな声止めろ! 逆にムカつくわ!』

 

「はは、ゴメンゴメン。・・・さて、おしゃべりはこのくらいにして、そろそろ本題に移ろうか」

 

『だな。今からの内容は後日データとして纏めて送る。とりあえず聞くだけ聞け』

 

「わかった。頼むよ」

 

京都に現れた英雄派。上位の神滅具を三つも所持し、さらに構成員の多くが禁手に至っている。その目的が、まさか、グレートレッドを呼び出す事だったとは流石に予想していなかった。

 

そうやって、アザゼルの報告にしっかり耳を傾けていた僕だったが、次に挙げられた報告には流石に声をあげずにはいられなかった。

 

「スコルが人の姿に・・・!?」

 

『そうだ。そしてヤツの手で英雄派は幹部クラスの二人を一気に失った』

 

「ま、待ってくれ。一から順に説明してくれないか。そもそも、どうしてスコルが京都に・・・」

 

『・・・お前、胃薬は近くにあるか?』

 

「は? そ、そんな物置いてはいないが」

 

『なら、今後は常に携帯するようにしておけよ』

 

どんよりとした声を発するアザゼルに、僕は嫌な予感しかしなかった。そして、アザゼルから伝えられた内容に、僕は胃がヒュっとなった。

 

「で、では、神崎君は英雄派が京都で活動していた事も、キミ達の前に現れるであろう事も全て読んでいた上でスコルを・・・!?」

 

『正確にはアーシアを守る為だろうがな。だが、イッセー達が予想以上の頑張りを見せてくれたおかげで、ヤツの出番は無いだろうと思っていたんだが・・・』

 

「一人の女性の出現で全てが狂った・・・」

 

『ああ。人質にされた真耶ちゃんを見て、スコルがブチ切れた。グレイプニルを外されたスコルは封印された力を完全に解放し、俺達の目の前で人の姿へと変貌した』

 

「何故人型に?」

 

『憶測でしかないが、スコルの母親は元々巨人だった。それが関係していると俺は思っている。ロキが持っていたであろう神喰狼に関するデータさえ手に入ればより正確な意見が出せると思うがな』

 

「・・・驚いたという言葉しか出ないな」

 

『この程度で驚いて貰ったら困るぞサーゼクス。・・・そういや、フューリーもかなり驚いてたな。流石の騎士様も、ペットが人になるなんて思って無かったんだろうぜ。はは、いつもいつもやられてばかりだったから、見ていてスッとしたぜ』

 

アザゼル・・・。そんなちょっとした事で発散しないと駄目な所まで追い詰められていたんだね・・・。今度、いいスパを紹介してあげるよ。

 

「・・・で、スコルの件をその程度と言ってしまうキミの話の続きを聞かせてくれないか」

 

『サーゼクス、以前俺達はアーシア・アルジェントという人間の重要性についてとことん話し合ったよな?』

 

もちろん憶えている。現在、神崎君に最も近い場所にいる少女。さらに、神崎君をこの世界へ送って来た異世界の神と交信する術を持つ聖女。それがアーシアさんだ。

 

『洗脳された八坂姫を救い出す時・・・アーシアはオ・クァーンの力を使った』

 

「なっ・・・!?」

 

『あの時、アーシアが発した聖なるオーラの質と量。とても人間が発せる様なモノじゃなかった。俺の記憶の中のミカエルの全力のオーラすら霞んで見えたぞ。イリナも同じ様な事を言っていた。・・・確信したよ。世界に位というものが存在するならば、フューリーの世界は、俺達の世界の遥か上に存在する世界・・・上位世界だとな。向こうの世界のレベルを100とするならば、俺達の世界は・・・30もあれば上々だろうよ』

 

「上位・・・世界」

 

気付かない内に声が震えていた。アザゼルの分析力は本物だ。その彼をしてそう言わしめるほどの世界・・・。その世界の神の力を振るう・・・。それが何を意味するかわからないほど僕は馬鹿では無い。

 

「・・・ミカエルには?」

 

『この電話を切ったらすぐに連絡するさ』

 

「彼がこの話を聞いたらどう思うだろうか・・・?」

 

『さあな。ただただ驚くか。逃した魚のデカさに改めて後悔するか。何にせよ、前回の話し合いで決めた案は白紙に戻さないといけねえな』

 

「彼と関わった者は皆変わっていくな。いい意味でも、悪い意味でも」

 

『その内、リアスも悪魔王みたいになっちまうかもなぁ』

 

「悪魔王? ちょっと待てアザゼル。今のはどういう意味だ?」

 

『あ、やべ・・・。ん、んん! おおっと、電話のバッテリーがそろそろヤバいな! 一旦切るぜサーゼクス』

 

「ま、待ってくれアザゼル! 話はまだ終わって・・・!」

 

僕の制止も虚しく、電話は切れてしまった。というか切られたんだ今のは。

 

「・・・何だかリーアの声が聞きたくなってしまった」

 

どうしても我慢出来ず、僕はリーアへと連絡を入れるのだった。




というわけで、待機組への説明回でした。まだまだ十分では無いですが、これからゆっくり補足していこうと思います。

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