とある科学の極限生存(サバイバル)   作:冬野暖房器具

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 ちょっとホラーです
 いつも通りの茶番です
 そこそこいちゃいちゃです(たぶん)
 けっこう捏造です(すいません)
 凄く話が進んでません(ホントすいません)






078 《運命》は舞い降りる 『9月1日』 Ⅸ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……直径1センチ重さは約10g、全長5センチの円筒形。側面のスリットから出てくる()()は薄さ0.1ミリ以下の液晶。同時発音数は256和音?……よし、これにしよう!」

 

「落ち着きなさい」

 

 場所は地下街のとある一角。家電屋と携帯会社が融合したそこそこ大きい店舗の携帯電話コーナーである。あらゆる会社(キャリア)の最新機種と学園都市の最新技術(表に出せないえげつないのは除く)の融合群体(テレフォンハザード)を前に何やら湧き上がるモノを抑え込めず、本能の赴くままに手に取った見本を掲げるおバカ高校生と、それを窘める女子高生の二人組がそこにいた。

 

「……はっ、俺は何を?」

 

「それは私が聞きたいわね。主に、よく吟味せずにそのゲテモノ携帯電話に即決した理由を」

 

 そう言われて手に取った携帯をもう一度しげしげと眺めてみる。大きさは口紅ほどのサイズで、重さはそれ以下の不思議な代物だ。記憶が正しければ確かコレは常盤台中学の変態淑女、白井黒子のと同じか同系統の機種だな。おバカな未来志向に持てる技術を全振りしたが故に、機能性についてはお察しな代物である。彼女が何故この機種を愛用しているのか。オシャレなのか単なる変わり物好きかは不明だが……存外この小型フォルムと軽さが空間移動(テレポーター)には好印象なのかもしれない。

 

「……特に理由は無いかなぁ」

 

「なら止めておきなさい。これだけあるのだから、それよりマシなモノは必ずあるわ」

 

 布束に諭され、それもそうかと俺は手に取った見本をいそいそと商品棚に戻した。そんな様子を見て、少し遠くで構えていた店員さんは揉み手に前傾姿勢のまますりすりと後退りで見切れていく。そりゃあの勢いなら購入決定だと思うだろう。なんかすいません。

 

「やはり、かなりの数があるわね。目的や用途、欲しい機能で絞り込んでいかないと今日中には決められないわよ」

 

「お、おう……いや別に、そこまで張り切って決めなくてもいいと言うかなんと言うか。そりゃ今日中に決める気ではあるけどさ。適当に幾つか手に取って良さげなのをこう───

 

「ダメよ。内面(ソフト)外面(ハード)、長所と短所、優先するべき必須機能とそうではないモノを徹底的に吟味、選別して最高の物を選ぶべきだわ」

 

「………………んん?」

 

 呆気に取られた俺を置いて、まずはカタログねと呟きながら布束は商品棚の向こう側へと早足で歩いて行った。原因は不明だがまず間違いなく、こちらの想定の10倍増しくらいの勢いで彼女は張り切ってしまっているらしい。一体何が、どのタイミングで彼女のやる気スイッチを押したのかは不明。本日何度目かもわからない想定外のパートナーの姿に、俺こと木原統一はただただ狼狽えるばかりであった。

 

(……そういや俺、布束に携帯を()()()()()()って言ったし、もしかしてそれか? いやでもあそこまで血眼(ちまなこ)になって探すのはちょいと妙な気も……わからん。最高の携帯を選ぶのはいいとしても、ゲーセンで待ってる上条たちを待たせるのはなぁ)

 

 白い悪魔が爆走した昼食からしばらくして。俺と布束、そして上条たち3人は別行動を取っていた。当初の予定通り上条たちは娯楽を求めゲーセンに、俺と布束は携帯を購入しにという具合である。買い物が終われば合流すると予め上条たちには言い含めているため、いつまでも俺たちが姿を見せなければ訝しんだ彼らがこちらへと顔を出す可能性は非常に高い。となれば、せっかく楽しんでいる所へ水を差すのも忍びないわけで、そこまで時間をかけるのはナンセンスではないかというのが俺の見解であった。

 

(でも、せっかくここまで親身に選んでくれている布束を窘めるのも違う気がするし……予め上条に連絡を入れておくか? ……って連絡を入れる携帯が俺には無いんだったな。あれ、そういや上条の奴も携帯───

 

「何をしているの統一君」

 

 思考が途切れ、目を向けるとそこにはジットリとこちらを見つめる布束がいた。何冊かのカタログを両手に持ち、口元はチャックを締めたかのように横一文字である。なんだこの可愛い生き物は。

 

「まずはこのメーカーから。ページの最後にスペック表が載っているから、気になるモノをチェックしていきなさい。写真は見ずにまずは性能からね。デザインは直接本体か、あるいは見本を手に取って吟味するべきだと私は思うわ」

 

「…………」

 

 色々と問題はある。ここまで布束が張り切っている理由もわからん。だが正直なところ、彼女がここまで積極的になってくれているこの現状を、俺はとても嬉しく思っていたりもする。なるようになれ、上条が様子を見に来てしまったら素直に謝ろう。優先するべきは今この瞬間、彼女との大切な時間であると結論づけた俺は、差し出されたカタログを手に取った。

 

 

 


 

 

 

 科学の街、学園都市。東京都西部に位置する完全独立教育研究機関。あらゆる教育機関・研究組織の集合体であり、学生が人口の8割を占める学生の街にして、外部より数十年進んだ最先端科学技術が研究・運用されているという、文字通りの近未来都市である。この街の最も優れている所は科学技術であると。そんな意見は言うまでもなく自明の理。誰しもがそう思い、そう考え、その前提の元に学園都市という街を語るのだ。

 

 だが、学園都市の外から来たとある経済学者は違った。予てより学園都市のインフラに興味を示し、実際に街へと招かれたその学者が街の様子を見た際に。優れた知識と思考力で以って、この街の恐ろしい側面を想像できてしまった事。それが彼自身の生涯最大の功績であった。そして───それを口にしてしまった事。それが生涯最大の失敗である。

 

「この街の最も優れた所は流通だ……いや、恐ろしい所と言い直してもいいかもしれない。如何にしてこれほどの科学の結晶を、未来都市を維持・管理しているのか。どれだけ計算しても物的流通の帳尻が合わないのだ。技術の進化がどうとかそういう次元ではない。流れる川にも砂漠のオアシスにも例えられない。まるで()()()()()()()()()()()()()()()かの如く、物理法則が歪んでしまっているように、私は思える」

 

 この発言を契機に彼は表舞台から姿を消す。数年後に再び姿を現した時には、彼は学園都市の脅威を訴える活動家になっていた。頭にアルミホイルを巻き、腕に付いた小さな傷を「マイクロチップが埋め込まれていた」と喧伝し、学園都市統括理事長は宇宙人であると、動画サイトで主張していた。目は据わっており、姿を消す前となんら変わっていない仕草、話し方で以って狂言を繰り返すだけの毎日。唱える説に何ら信憑性は無く、公開された住所は最低限の通信環境が整った海外の山奥という事もあって、誰も彼を直接訪ねようとはしなかった。あくまでも画面上の存在として、彼は一定の期間活動し、そしていつかひっそりと。彼はネット上からも姿を消した。

 

(然して、学園都市のインフラ網には触れてはならない闇がある。学園都市に潜入する者への教訓的な都市伝説……コレを守れないド三流スパイは生き残れず、順守したスパイは後継にコレを言い伝える。定向進化と言えば聞こえはいいが、要は学園都市の都合のいいように俺たち(スパイ)を品種改良するための剪定だな)

 

 そして現在。多重スパイこと土御門元春は第7学区の変電所に潜入していた。電力だけではない、ここに来るまで土御門はあらゆるインフラ関連施設へと潜入し、目的の資料を片っ端から漁っている。三流スパイなら廃業決定、事によっては背後にいる組織全てが壊滅に追い込まれかねないほどの愚行。深淵を覗き見るどころか釣り竿を垂らすが如き恐ろしい行為を、土御門は涼しい顔で行っていた。

 

(虚数学区の存在を隠蔽するためとはいえ、アレイスターも限度を知らない。お陰で調べ物をするだけでも命懸けだ)

 

 命懸けと言うには緊張感が欠けた面持ちで、土御門は端末を操作する。第7学区全ての電力事情、過去の工事計画や停電履歴など。あらゆる資料を画面に映した上で、手持ちの携帯の画面に映った資料と整合し、目的の場所を絞り込んでいく。ようやく目的地の輪郭が見えてきたというところで、土御門の携帯が鳴り着信中のポップアップが表示される。少し眉に皺を寄せながら、土御門は通話ボタンを押しスピーカーをオンにした。

 

『俺だ。今は忙しいから手短に頼む』

 

『そりゃよかった。僕としても、深夜にこんな電話を好きでしてるわけじゃないんでね。ひと眠りして、そっちが真夜中の頃にかけなおすよ』

 

 場所はイギリス、相手は炎の魔術師である。皮肉屋の彼の性格を熟知していた土御門は、その嫌味を無視することに決めた。

 

『それで、シェリー=クロムウェルの足取りは掴めたのか?』

 

『……そう簡単に調べがつくわけがないだろう。最大主教(あの女狐)が直々に下した極秘任務だぞ? それに、もともと僕と彼女では所属する部署が違い過ぎる……あとさっきも言ったが、つい昨日イギリスに帰ってきたばかりの僕ではなく、イギリスに常駐していた神裂に聞くのでは駄目なのかい?』

 

『ダメだ。神裂火熾は『聖人』、必然的にアレが動くのはかなり規模のデカい特殊な案件に限られてしまう。秘密裏に使いパシられる人員の動きやノウハウをアイツは知らないからな。イギリス清教に身を置いている年数も、その戦果の数も……ステイル、お前には遠く及ばない』

 

『褒められているのかどうか、判断に困る評価をどうも……とにかく、想定以上に時間がかかりそうでね。少なくともイギリス国内から出ている事は確実だが、位置を絞り込むのは至難の業だな』

 

『……つまり、現状わかっている事は何も無いのか?』

 

『やめてくれ。僕たちは用も無いのに電話をするような間柄でもないだろう……手掛かりになるかはわからないが、わかった事ならある。シェリー=クロムウェルの任務はどうやら、先日のウィンザー城の件が絡んでいるらしい。騎士派とフランス、その仲介役を担っていた魔術結社を追っていると。もちろんその組織については一切が不明。まぁ、イギリスとフランスの板挟みに嬉々として名乗りを上げるほどだ、碌な組織でない事は確かだな』

 

 ため息交じりのステイルの言葉を聞いて、土御門は眉をひそめた。魔術師狩りを生業としている必要悪の教会(ネセサリウス)において、魔術結社を追うことは日常茶飯事だ。それをわざわざ極秘と称し、暗号解読が専門のシェリーを派遣する理由が見当たらない。魔術結社の手掛かりに暗号が使われているのだとしても、シェリーが直接赴く必要はないのだ。むしろ、必要悪の教会(安全な後方)に待機して必要な資料をすぐに閲覧できる状態にするのが最適解。なぜなら今どきの携帯にはカメラ標準装備。現地の情報はすぐに手に入れることが出来るのだから。

 

『裏があるな』

 

『ああ、間違いない。あの女狐の悪巧みは見過ごせないからね。ここまできな臭くなければ、今すぐにでも僕は君の依頼を忘れてベッドに飛び込む所だ』

 

 そう言ってステイルは通話を一方的に切った。あまりにも唐突だが、言うべきことは言ったという所だろう。如何に機嫌が悪くとも仕事はする男である。

 

(シェリーの任務も気になるところだが……こっちも片手間でやるような事じゃない。向こうはステイルに任せて、俺はこちらに専念することとしよう)

 

 目的の候補は絞り込めた。個人が有する資産で保有あるいは借用可能、監視カメラの多い公共機関周辺を避け、水道やガスと比較して電力使用量が不自然に高く、そして今年の7月半ばに使われなくなった建物。これだけでも候補は3桁ほどに上るが、コレを()()()()()()から近い順に総当たりで探って行けば、そう遠くないうちに目的地へたどり着けると土御門は確信していた。

 

「ボコボコにしてくれた礼だ、必ず見つけ出してやるぜ木原っち」

 

 

 


 

 

 

 事態は困難を極めた。

 

「おいおいおい、全体が有機ELディスプレイになってる透明携帯だってさ! 映画を見る時には全身を使って奥行きを表現してくれる3D機能が───

 

「どこに置いたかわからなくなるのがオチよ、やめておきなさい」

 

 いつもの知性溢れる彼は何処へやら。キラキラした眼差しと共に繰り出される変化球を、私はただひたすらに打ち返していく。

 

「ぐぬぅ。あ、コレも凄いぞ。脳内インプラントで携帯を脳波で操作───

 

超能力者(レベル5)肉体再生(オートリバース)がどうやって手術を受けるのかしら? たとえ成功しても、何かの拍子に鼻から電子機器を出す貴方は見たくないわよ」

 

 幸いにして、興奮はしていても言葉は通じた。こちらが現実へと引き戻してやれば彼は大人しく承諾し、その暴走路線のレールを瞬時に切り替える。

 

「そ、それは俺も嫌だなぁ……あ、コレは悪くないんじゃないか? 腕時計型携帯電話───

 

「…………それ、携帯をよく置き忘れる人向けの商品だと思うわ」

 

 確かに私は「気になるモノをピックアップして」とは言った。だが蓋を開けてみればどうだろう、彼が目を付けた商品は全て技術がダメな方に振り切れてしまったモノばかりだった。彼の眼を見れば、決してふざけているわけではない事は明白だ。木原統一はただひたすらに、純粋に、まっすぐに、本気でこれらが良いと主張しているのである。

 

(でもそれはちょっとだけ嬉しい。ようやく彼と、本音で会話が出来ているのはきっと喜ぶべき事だと思う)

 

「最薄0.2ミリ、丸めて持ち運べる地図型携帯だと……?」

 

「……」

 

 だがしかし。如何にこの状況が喜ばしくとも限度はある。弾む心を押さえつけながら、努めて平坦な声色で、私はこの爆走するパートナーを止めにかかる。

 

「このままじゃ埒が明かないわね、やり方を変えましょう」

 

「?」

 

 可愛く首を傾げる彼に私は「最優先するべき機能は何?」と尋ねた。これまでの全体から絞り込んでいく形式ではなく、目的の機能をピックアップする、トップダウンからボトムアップ形式への変更である。携帯電話の機能なんて、特殊なモノを除けばどれも似たり寄ったり。消費者(ユーザー)が求める機能を吸い上げグレードアップした結果、生き残ってきたモノがこの商品棚には並んでいる。よって機能をピックアップする方式はすこぶる効率が悪いと判断したのだが……彼があちらこちらに目移りしてしまう現状では、一考の余地のある方針転換だと私は思う。

 

「うーん、最優先か……やっぱり日常で使うモノだしなぁ」

 

(一応日常で使う事は考えていたのね……防水……防塵とかかしら。壊れた原因が衝撃によるものだったから、対衝撃とか……それなら候補は───

 

「摂氏3000度の熱に耐えられるやつとかかな。火だるまになって俺は無事でも携帯が、なんて展開結構ありそうだし」

 

「…………」

 

 たまに、彼の考えが本気でわからない時がある。長く付き合えばそういう事も減るのだろうかと考えながら、私はカタログを開き耐熱の項目に丸印が付いている機種を探し始めた。

 

 

 


 

 

 

 

「ありがとうございましたー」

 

 溶鉱炉に落ちても大丈夫。キャッチフレーズはあいるびーばっくな2つ折りの携帯電話を布束が見つけ出し、無事に購入の運びとなった。箱やら取説やらは一切不要と店員に伝え、さっそく使えるようになった携帯を持て遊びながら店を後にする。目指すはゲーセン、上条たちが仲良くやってる所への合流だ。

 

「しかし……何で出来てんだろコレ。100歩譲って外板はいいとして、中身の基盤は熱でやられちまうんじゃねーか?」

 

「企業秘密という事だけれど、学園都市の戦闘機にも使われている機構とのことよ。火で炙ると充電も可能らしいわ」

 

「あーあのお化け戦闘機の……って軍事企業じゃん。何でそんな技術で携帯作ってんだよオイ」

 

 当然ながら、その疑問に答えられる者はおらず。肩をすくめた布束はどこか嬉しそうに自らの手元を見つめた。俺の購入した携帯のカラーチェンジ版。俺のが全体的に青いフォルムの二つ折りに対して、布束もまた赤色の同じ携帯を購入していたのだ。

 

(何であんなに機種選びに拘ってるのかと思ったら……自分も使うからかぁ。ま、どうせ買い替えるなら一緒にやっちまった方が手間も無いしいいよな)

 

 ちなみに、原作において上条と御坂が結んでいたペア契約キャンペーンはまだ始まっていなかった。まぁ俺自身ゲコ太に興味は無く、ハンディアンテナサービスもあったらいいな程度のモノ。具体的な利点は料金が安くなるただその1点だけだったのだが……思いのほか布束ががっかりしていたので、適当な家族プランへ俺と布束を放り込んでおいた。これなら安くなるぞと布束を元気づけたところ、何故か華麗なローリングソバットを頂いた次第である。解せぬ。

 

(わからねえ……ハンディアンテナなんてにっちな技術にはたぶん興味が無かったはずだし……まさかのゲコ太ファンか? ゲコラーなのか?)

 

 当たり前だがゲコ太界隈には詳しくはない。もし布束がゲコラーなら、その道のアドバイザーに今度アドバイスでも───

 

「ところで統一君。貴方、携帯をもう一つ購入していたけど……」

 

 布束のそんな声が、俺の思考を中断させた。チラリと布束を見れば、彼女は腕を組み首を傾げながらこちらを見つめている。

 

「ああ、コレか。コイツは俺用じゃなくて上条にだよ。アイツも確か携帯粉々にされちまってたはずだからな」

 

 傍迷惑なアステカ式やつ当たりにより、上条の携帯も先日お亡くなりになっていた。上条家の家計を考えると、一番安い機種を買うとしても上条の食費を削りかねない。今後、上条自身が海外に飛ばされたり魔術で飛ばされたり極太メイスで河川に錐揉み大回転で飛ばされたりする事を考えるならば……イギリス清教から頑丈な携帯を支給するくらいはしてもよかろう。

 

「上条君に……ね。私が思うに、携帯を買い与えるのはちょっとお友達の範疇を越えている気がするのだけれど?」

 

「んー? ま、そこのところは少し複雑でなー……」

 

 言葉を濁すと、布束は訝し気な表情を見せた。布束の疑問も尤もだが事情を説明するのは難しい。イギリス清教、魔術、インデックス、そして幻想殺し(イマジンブレイカー)。これらを端的に説明するのはほぼ不可能である以上、今は濁す事しかできないのが実情である。

 

「複雑……まさか、ライバルは彼だったなんて……」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

 聞き返しても返事は無かった。ぶつぶつと独り言を呟いてる様を見るに、どうやら彼女は完全に自分の世界に入り込んでしまったらしい。こちらとしても追及されると困る話題だ、しばらくそのままそっとしておくことにしよう。

 

(でも、いつかは話そう。隠し事がダメってのは俺が学んだ数少ない教訓だ。彼女を傷つけるかもしれない事は絶対にしたくない……少しずつでもいいから、歩み寄っていくんだ。そうすれば必ず……幸せな結末(ハッピーエンド)に───

 

「みつけた! とうま、こっちなんだよ!」

 

「……ん?」

 

 目的地たるゲーセンにはまだ遠い。にも関わらず、俺と布束のもとにティーカップ風な修道服が駆け込んで来ていた。

 

「インデックス!? 何でこんなところ、に……?」

 

 いや、インデックスだけではない。その後ろには上条と風斬も付いてきていた。肩で息をして、何故か深刻そうな表情で……何だ? ぶっちゃけ携帯選びにそこそこ時間かけちまった自覚はあるが、それでもそこまで心配されるほど待たせたわけでも───

 

「木原、すまん。インデックスがどうしてもお前と合流しなきゃって言い張って……」

 

「きはら、緊急事態なんだよ! あっちのゲーセンってところの近くで、魔力の流れが束ねられてるみたいで───

 

「おいおい。こちとら遥々(はるばる)海の向こうから会いに来てやったのよ。それをいきなり逃走……それもよりによってそのクソガキの方へ逃げるなんて、予定が狂っちまうだろうが」

 

 その刺すような口調は、和やかな日常から一気に俺を引き戻した。上条たちが走ってきた道のりの遥か後方、原作とは違い停電も起きていない地下通路のその先。明かりで照らされているにも関わらず、その姿は俺たちに闇を運んできたかのように錯覚させる。

 

「……久しぶりですね、()()

 

 来ているはずがない。それがあの土御門にも調べさせて、裏を取ったはずの前提だった。予知は外れ、俺はただの登場人物(一般人)へと()()()()()()()()なのに。運命(悪魔)は俺を嘲笑うかのように、未来を容易く収束させる。

 

「引っ込んでろ()()。用があるのはテメェじゃねえんだよ」

 

 遥か昔に友を失い、幸せな結末(ハッピーエンド)には辿り着けなかった先輩。

 

 イギリス清教必要悪の教会(ネセサリウス)の一員、魔術師シェリー=クロムウェルがそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 









統一「圧倒的な通信速度に高性能CPU。そして高負荷のかかるアプリを起動しても本体が熱くなりにくい熱拡散構造。AIカメラ内蔵でプロ顔負けの写真も撮れる! そしてなんと洗剤を付けて洗える耐水性能!! 今ならカラーバリエーションは白金青の選べる3タイプ!」

布束「変化球から一転してすごく直球できたわね。そのスマホ型携帯のどこに惹かれたのかしら?」

統一「いやそれが、学園都市第3位と第5位のお勧めらしいんだよな。あの二人が愛用してるならそれはもう───

布束「……駄目よ」

統一「え?」

布束「駄目」

統一「え、でも……タイアップ……」

布束「もっと駄目よ」







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