とある科学の極限生存(サバイバル)   作:冬野暖房器具

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 慎重すぎるのも考え物。
 勢いって大事だなと思います。

 そんな話です。

 そしてどうでもいいオリキャラが出ますので注意です。

 若干短いです。

 茶番です。

 ……つまりおおむねいつも通りです。



 








076 欠けゆく《月》と願いの退魔師  『9月1日』 Ⅶ

 

 

 

 

 

 

「迂闊すぎる」

 

「Exactly……失敗だったのは認めるわ。あの時はこれが最善だと思ったのだけど」

 

 ドタバタとした食堂での一幕からしばらくして。ありったけの爆発を終えた小萌先生に、俺と布束は職員室へと連行されていた。「このクソ忙しい時に問題を増やしやがるなです!」と、珍しくキャパオーバー気味な小萌先生は上条とインデックスを早々に食堂から叩き出し(「え? 今からここでご飯じゃないの?」と言い放ったインデックスを上条は羽交い絞めにして出て行った)たところで、さて問題である。

 

 問:小萌先生の顔見知りであるインデックス、早々にフェードアウト(まさかの透けていく方向の)した風斬に続く3人目の侵入者。布束砥信が、どうみても小学生にしか見えないピンク色の幼女を教員だと気づいた瞬間、とっさに取った行動とは?

 

『初めまして……き、木原統一君の能力開発担当の者です。彼が倒れたと聞き、様子を伺いに参りました』

 

 解:なんだかよくわからん設定をでっちあげての誤魔化し作戦

 

 ……何だ能力開発担当って。

 

『担当者さんですか? うーん、研究者さんの中に貴方を見た覚えがないのですが……そもそも木原ちゃんに担当者なんていたんです?』

 

 当然と言うかそんな言は信じてもらえず。それどころか小萌先生の純粋無垢なベクトル変換によって、不意打ちで流れ弾が飛んできた。ここでシレッと嘘が吐けていたなら何とかなったかもしれないのだが。悲しきかな、凡人たる俺にはそんな技量なぞあるはずもなく。

 

『へ? えーと……まぁいたようないなかったような。もしかしたら居たかもしれないですねー、はは』

 

 そんなこんなで。微妙な空気の中『怪しいので、とりあえず二人とも職員室まで来てくださーい』と召喚要請(ラブコール)。小萌先生の机の横に立たされ、当の本人は教頭先生とお話に行ってきますのですと、ぴょこぴょこと職員室から出て行ってしまったのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 

「いやいや、アレは上手くフォローが出来なかった俺も悪かった。ただ……一応聞いとくとだな。どの辺りが最善だったんだ? 小萌先生にはまったく通用していなかったみたいだけど」

 

超能力者(レベル5)の貴方になら、相応の研究者が付くのは珍しい事じゃないでしょう? 常盤台や長点上機学園とは違って、この学校の研究水準なら外注の研究者が呼ばれる可能性が高いと踏んだの……それに、私は貴方の能力開発の初期段階には実際に関わってるもの。完全に嘘というわけではないのよ」

 

 そういうものなのか。専属の研究者なんて聞いたことも無いのだが……まぁ俺の知る原作(知識)を総動員しても、それを否定する材料も無ければ肯定できる物語(ストーリー)もない。せいぜいが親父、木原数多が一方通行(アクセラレータ)の能力開発に関わっていたり、超能力者(レベル5)の第5位たる食蜂操祈が研究機関、才人工房(クローンドリー)に所属していたことくらいだろうか。

 

(もしかしたら、布束が言っているのは学園都市の暗部組織が絡まない表の話なのかもしれないな。どう考えても今挙げた二つの例は公に出来るモノではないし……ふむ。まぁ仮に布束の言う通り、高位能力者には研究者が専属制で付くとしてだ)

 

「……それって本物の担当がいたら即バレする案件なのでは?」

 

「本物がいるとしたら、それは貴方のお父様で間違いないでしょう?」

 

 さもありなん。能力調整(物理)の時にはいつも木原数多(親父)が来ていたのだから、その推測はおそらく正しいだろう。親父に連絡が行けばそれはそれでなんとかなりそうな気もしなくもない。まぁ、何故布束が俺の親父をそこまで信用しているのかについての謎は残るのだが……それにだ。

 

(……俺が倒れたことを知ったのはついさっきなわけだから、この嘘は完全なアドリブってことだよな? とっさにこんなハッタリをかますとは肝が据わっているというかなんというか。伊達に、単独で絶対能力進化(レベル6シフト)計画に反抗してねえなこの人は)

 

「なるほど、まぁ言いたい事は理解した」

 

「oh dear? その割には『理解はしたけど納得はしていない』なんて台詞が後に続きそうな雰囲気を感じるのだけれど。言いたい事があるなら言いなさい」

 

 現在進行形で取っ捕まり、審判が下される直前なのに何故ここまで自信たっぷりなのだろうか。そんな疑問を直接ぶつける度胸は当然と言うか、小市民たる俺にはない。

 

「あー……それじゃあもう一つ質問だけど。そもそも何で学校(ウチ)に不法侵入ぶちかましてんの?」

 

「……ついうっかり」

 

「いきなり知能指数(I Q)だだ下がりやがったなオイ」

 

 ぷいっと顔を背けた布束を見るにどうやら冗談ではないらしい。よくよく思い返してみると、マネーカードをばら撒いてる時にはついうっかり不良に囲まれたりしてたなこの人は。しっかり者な研究者でありつつも、少し抜けてる所があるのが彼女らしさというものなんだろうか。

 

 さて、いつまでもこの可愛い生き物に癒されている場合ではない。くるりと職員室を見渡してみれば。二つある出入口の内、片方には災誤(ゴリラ)。もう片方にはじゃんじゃんな先生が控えているのが見えた。特段何か用があるわけでもなく、パイプ椅子をわざわざ持ってきての待機状態。その目的はまず間違いなく、唇を尖らせてそっぽを向いてしまっている彼女で間違いないだろう。

 

(完全にバレていらっしゃる……コレ、意外とピンチなのでは?)

 

 一見して、この平にして凡な学校に不法侵入を敢行した所で、そこまで大事には至らないようにも思える。実際問題、同じ侵入者であるインデックスは何もお咎めなしに脱出を成功させているのだ。見た目(銀髪幼女なシスター)と挙動(インデックスには悪いが完全に子供のソレ)、そしてなによりも小萌先生(教員にして歩く学園都市七不思議が一人)の知り合いという要素が大きかったに違いない。

 

(一方で。高位能力者の俺に接触を図りに来た、長点上機学園の制服を着た長点上機学園の生徒ではない女性。唐突に学校を退学し、つい最近まで行方不明だった経歴を持つと。付け加えるなら、昨日はやたらダンディな声の魔術師の侵入騒ぎの影響で、学園都市の警備強度(セキュリティコード)第1級警報(コードレッド)まで引き上げられていて……疑惑の世界記録(ワールドレコード)でも狙ってんのかこの人は)

 

 ここまで揃ってしまえば、いくら小萌先生でも「はいそうですか」と布束を解放するわけにはいかないだろう。能力者のデータ、DNAマップなどの機密情報を取り扱う際のマニュアルは、学園都市の全ての学校で共通なはず。高レベルの能力者を有する学校ともなれば、そこに加えてもう何段階かのセキュリティが加えられるわけなのだが、そんな例外を除いたとしてもだ。見張りを立たせているだけという今の対応が奇跡に近いって事ぐらいは、無知な俺でも察することができる。

 

(おそらく、小萌先生が出て行ったのは長点上機学園への連絡のためかな。布束が退学している事がわかれば、今度は警備員(アンチスキル)のご到着か……さてどうする? 最悪の場合、俺は災誤(ゴリラ)を燃やす羽目になっちまうのか?……そういえば、黄泉川先生なら一応布束と面識があるはずなんだが……)

 

 チラリと黄泉川先生(超警備員)に視線を送ってみるも、彼女はこちらを一瞥した後に首を横に振った。俺の言わんとしている事を察してはくれたようだが、どうやら増援は見込めないらしい。あの人の気質を鑑みれば、こういった場面ならば助けてくれそうな気もするものだが……それが無いという事は、何かしら動けない理由があるのだろうか。警備員の管轄や組織図には明るくないので、その辺りは想像するしかない。

 

「ダメか……」

 

「どうかしたの?」

 

「いや、黄泉川先生……向こうのドア近くに座ってる人な。あの人ならこっちの事情を汲んでくれるかなと思ったんだけどさ」

 

 俺の言葉に一瞬不審気な顔を見せた布束だが、黄泉川先生を注視して数秒。納得した表情の後に、何故か顔を真っ赤にして俯いてしまった。何か勘に障る事でもあったのだろうか? 黄泉川先生と布束が出会ったのは、暗部組織『スタディ』(ムカつく三下インテリ集団)を壊滅させた時だったが……まぁ、あまりいい記憶じゃないのは確かだな。

 

「すまん。その、思い出させちまったみたいだな」

 

「……」

 

 返事はない。それどころか、頬の赤みが増した気さえする。無理もない、彼女は間近で人造人間(フェブリとジャーニー)が弄ばれているいるのを目の当たりにしていたのだから。主犯格が逮捕され、事件が終わったとしても。感情的な面では、まだあいつらを許せないのかもしれないな。

 

「こんな事なら、もっと徹底的にやっておくべきだったな」

 

「て、徹底的!?」

 

「ああ。あんな終わり方じゃ、布束も満足してなかったんだろ? なんなら今からでも遅くない───

 

 スパンッ! と小気味よい破裂音が鳴り響いた。それは、布束が高速で机の上の雑誌を手に取り、俺の頭へ一閃した音である。夏休みの大人の宿題に格闘する教員たちが手を止め、黄泉川先生が天井を見上げ、ゴリラが思わず立ち上がった職員室。エアコンの稼働音が嫌によく聞こえる静寂の中。俺がゆっくりと振り向くと、何故か驚きの表情を浮かべる布束の顔が見える。

 

「あ……その……つい───

 

「いや、すまん。もうこの話はしないから、それで許してくれ」

 

 自分でも驚くほどに平坦な声が出たが、内心ではかなり焦っていた。表情を読まれないよう布束から視線を逸らし、聞こえないぐらいのため息を吐く。まさか叩かれるほどとは思わなかった。しかも、本人も驚くほどの感情任せの一撃。あの布束が八つ当たりとは、これはもしかしたらとんでもない大事件ではないだろうか?

 

(無自覚でここまで怒らせるなんて……もう一刻の猶予も無い、今すぐにでも姫神に相談するべきだ。というか、原作ならこの時間は小萌先生の手伝いをしているはず。この気まずい雰囲気をぶち壊す意味でも、頼むから早く来てくれーっ!!)

 

 希望の念を込めてゴリラの方角へと目を向ける。厳格そうな顔でこちらを見やるゴリラと睨めっこをする事数秒。祈りは届かず、相談窓口として機能する巫女さんではなくピンク色のふわっとした小さなモノが、ふらふらと不規則な動きで職員室へと入ってくるのが目に入った。

 

「はわわわわわわわ……」

 

 何かと思えば、なにやら小刻みに振動している小萌先生その人である。素ではわわなんて言う女性がいたのかというツッコミはさておき、小萌先生は生まれたての小鹿のような頼りない足取りでこちらへと歩いてきていた。布束の事で進展があったはずだが、果たしてどういった結果になったのかとこちらが身構えていると───

 

「ふべぇっ!!」

 

 目的地まであと少しという所で、小萌先生は盛大にすっ転んでしまった。思わず災誤先生が駆け寄り、あっという間に事案発生、犯罪現場のような光景が完成したがそれはそれとして。小萌先生がすっ転んだ拍子に手に持っていた何かが勢いよく飛び出し、職員室の床を滑り俺のつま先へとぶつかることでその物体は動きを止めた。

 

「これは……俺の学生証?」

 

 それは丁度、俺が俺として目覚めた日にステイルによって燃やされた、顔写真付きの学生証であった。名前と能力名、そして能力強度。数少ない項目の中で、あの日に見た学生証とはたった一つだけ違っている。そしてそれこそが、小萌先生がここまで動揺してしまっている原因にして元凶であった。

 

 超能力者(レベル5)。学園都市の頂点たる証が、白日の下に晒された瞬間である。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「遅いなー木原のやつ」

 

 誰も聞いていない独り言が上条当麻の口から零れ落ちた。場所はとある高校の正門前。居候が危うく学校で取っ捕まりそうになるという危機を乗り越え、そういえばこの件は自分の内申点に影響があるのだろうかというどうでもいい未来(なお本人は真剣である)にまで思いを馳せ始めた頃。無駄に居残りをしていた生徒たちを幾人か見送った所で、上条は学校に設置されているアナログ時計に目をやった。

 

「1時間は経ってないか。でも、そろそろインデックスさんの機嫌が急降下してくる時間帯だったりするわけで……うーむ」

 

 別段、上条と木原は一緒に帰ろうなどという約束を交わしているわけではない。だが木原統一の突然の昏倒や、自分のとこの居候が、これまた木原統一の知り合いを連れて学校に突進してきてしまった件について。一言二言話しておきたいとは考えていた。

 

(そして、あわよくば……木原を連れて買い物へ。そう、あくまでもついでに! 別にインデックスさんが目を離した隙に、冷蔵庫に大打撃を与えていたとかそういう事とは関係なく! 魔術師に襲われて買い物1回分(超豪華バージョン)を無駄にした事とも関係なくっ!! どうせ帰り道は同じなんだなら一緒に帰ってもいいだろうついでに買い物なんかしちゃってもいいしそうなると木原がいつもインデックスに受講料と称して渡している食材が今日上条家に降臨するのは極めて普通で自然で必然で運命と言っても過言ではないだろうそうだろうそうでないという奴がいるならその幻想をぶち殺す!!)

 

 しみじみと、だが力強く己の右手を握りしめる。最低な事を企んでいるかもしれないという自覚はあるがそれが何だというのか。この右手に宿る幻想殺し(イマジンブレイカー)、あらゆる異能を打ち消す能力を以てしても。あの白い悪魔を止めることは出来ないのだ。

 

 そんな益体もない事を考えながら、上条は視線を件の修道女へと向ける。上条から少し離れた場所、街道沿いに等間隔で植えられた樹木の傍に彼女はいた。残暑の熱に耐えかねた彼女は木陰へと避難し、風斬氷華と名乗る少女と共に飼い猫(スフィンクス)と戯れている。

 

「ほらスフィンクス、ひょうかに挨拶するんだよ」

 

「スフィンクスって言うんだ……変わった名前だね」

 

 ぼすっ、という擬音語と共にスフィンクスは風斬のとある場所に埋まり、もたもたと脱出を図る様をインデックスと風斬は見守っていた。そんな二人の様子を見て上条は勢いよく顔を背けた。

 

(ホントだったら学校への不法侵入の件を注意しておきたかったけど、保健室の一件でなあなあになっちまったしなー……それに)

 

 一度は顔を背けたものの、やはり気になり流し目を送ってしまうお年頃上条当麻。じたばたと暴れる三毛猫の動きに合わせて、母性の象徴が形を変える様が視界に入り再び彼は視線を戻した。あの風斬という少女とは初対面から大きな心の壁が出来てしまっている。無論被害に遭ったのはインデックスも同じなのだが、彼女はそのストレスを噛みつきという形で昇華しているため、ここまでわだかまりが残る事は滅多にないのだ(無論上条に無数の噛み跡は残るのだが)被害者と加害者、この構図が崩れる気配は依然無く、ただひたすらにその現状が維持されるという拷問が続いていた。

 

(やりづらい……こうなっちまうといつもすぐ爆発してくれるインデックスの方がありがたいのか? 噛みつかれた方がマシとは……なんたる不幸っ!)

 

 そんな心境もあり、共犯者にして同罪にして同性の。隣人にして救世主な友人を待つ上条であったのだが。

 

「……Well,どうやら待たせてしまっているようね」

 

 そんな彼に声をかけてきたのは、目撃者にして断罪者にして異性の知り合いであった。侵入者その2、何故かインデックスと共にこの学校へと来た少女、布束砥信である。

 

「……不幸だ」

 

「何があったかは知らないけど、人の顔を見てその第一声はとんでもなく失礼ではないかしら」

 

 そんな事を言われても上条の本音は変わらない。幸いにして彼女の恥ずかしい姿は見ていないが(というかその場合、深夜の盆踊り大会第2弾が開催される可能性が高く、上条の命が危ない)それ以前に犯罪の目撃者なのだ。味方をしてくれる可能性は限りなく低い、上条の逃げ場をなくす存在。それが上条から見た彼女の立ち位置であった。

 

 指摘を受けても態度を変えない上条から、布束は視線をインデックスたちへと向けた。幸いにして視聴制限(Restricted)光景(シーン)は過ぎており、彼女たちは三毛猫と猫じゃらしで戯れている。

 

「……どうやら、彼女たちに不埒な真似はしていないようね」

 

「もしもーし。とんでもなく失礼はもしかしなくても布束さんじゃありませんかー?」

 

「上条君の普段からの行動を鑑みれば、この懸念は当然でしょう」

 

 普段からの行動? と上条は首を傾げた。上条の記憶が正しければ(破損している事はさておき)知り合って間もない彼女に指摘されるような前歴などないはずなのだ。だが目の前の女性からは当たり前のようにこんな台詞が出てくるとなれば……考えられる可能性はただ一つ。

 

(木原……アイツ俺の事をどんな風に言っちゃってくれてるの!? この前の御坂の件といい、俺のプライバシーに関してガードが甘すぎやしませんかね!!?)

 

 とここまで思考が回り頭を抱える上条であったのだが。その元凶たる木原統一の姿が見えない事に気づき、上条は学校の昇降口の方へと視線を向けた。

 

「あれ、そういや木原はどうしたんだ? 何か用事でも……まさかまたぶっ倒れてたりはしないよな?」

 

「安心して、身体は健康そのものよ……質問攻めに遭って、少し遅れるみたいだけど」

 

「そうか……ッ!?」

 

 質問攻めとはどういう事かと、疑問を口にしようとして布束の顔を見た途端。上条は思わず口を噤んだ。いつもの飄々とした口調に反して、物憂げな表情を浮かべる彼女が目に入ったからだ。理由はわからないが原因はおそらくアイツだろうと、上条は直感した。

 

 かつて、自分を光の下へと導いてくれた彼女の憂い。それを追求など当然ながら出来るはずもなく。未だ戻らない友人を想いつつ、上条は右の拳を握りしめる事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 そして。その元凶たる少年と言えば。

 

「さぁ木原君、君の時間割(カリキュラム)を1から見直そうじゃないか!! 超能力者(レベル5)になったからといって慢心はいかん! 第8位というのはつまり末席、ここからが君の成功体験(サクセスストーリー)の始まりなのだよ!!」

 

「……いやちょっと待って下さい。そもそも超能力者(レベル5)の序列は学園都市における能力研究の応用が生み出す利益、精密性、発展性を加味してのもので───

 

「きょ、教頭。彼のような高位能力者を抱えた実績などわが校にはなくてだな……正直言って、これ以上序列を上げられても困るのだが」

 

「いやだから。俺の肉体再生(オートリバース)、つまり肉体の再生技術なんてのは学園都市では掘りつくされた鉱脈みたいなモノで……これ以上研究の価値は低く、もしかしたら解析が進んで価値が発揮されるかもしれない第7位より上に行くのは───

 

「何をおっしゃる校長! ここが、ここからがわが校の躍進の時っ!! ……そもそも君もだよ木原君、君が自分の能力を頭打ちだと申告したからこそ、これまで調整レベルの時間割(カリキュラム)しか組んでいなかった。それがどうだね、夏休みという時間を利用して、君は自らの壁を叩き壊したのだ! あぁ……これが若さ! これが成長! ここで応えなければ教師が廃る!! そうでしょう月詠先生!?」

 

「あわわわわわ……」

 

「ほら、月詠先生もこう仰っている。これはチャンスなのだ木原君! どうしてもダメだと言うのなら、君の親御さんと相談して───

 

「話を聞けよ! テメェはこのぷるぷるピンクから何を聞き取ったんだよ!? というか、俺の親に相談とか死にてえのか!?」

 

「木原君、その、言葉遣いが──

 

「お前もお前だよ校長ォ!! この暴走特急を止めるのがテメェの仕事だろォ!!?」

 

 

 

 

 

 少女の憂いに気づくはずもなく。校長室のど真ん中で、己の進退について熱弁(エキサイト)する大人と格闘しているのだった。

 

「畜生、誰か……この状況をなんとかしろォォォォォォォォ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 










???「こうして。数少ない出番も奪われる。これも運命」




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