ガンダムビルドファイターズ~EDGE OF THE FAITH~   作:鷲塚慶一郎

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第六話 『ビルダー・ミワのプライド』

ガンプラバトルイベントは終わり、2人は工作室に寄った。

ミワは黙ったまま制作机に座り、ガンプラケースからボロボロのGモノノフを取り出して作業を始める。

その姿に後ろめたさで居心地が悪い。

空気も良くはない。

なんとか和まそうと話しかける。

「あ、後もうちょっとだったな!相手の強さにも参ったもんだ!ハハハ・・・!」

「そうだね。」

作業を続ける。

相手の表情がわからない。

「お、俺もなんか手伝うよ!」

「大丈夫だから。今日はもう帰って。」

「いや、しかし・・・」

「帰って!!!!」

「わ、わかった・・・。」

ジュウゴロウは素直にその場から出て行った。

 

数々のバトルでガンプラが壊れる度に直して来た。

それはジュウゴロウと出会う前からずっと。

戦いの勲章、ビルダーとしての誇り、費やした時間、幾多の経験を積み重ねて来たものが、このガンプラには詰まっている。

そしてこのガンプラに見合うファイターを“あの日の出会い”までずっと探してきた。

そのファイターに出会って、そのファイターが自分のガンプラに合わせて成長する姿が何よりも嬉しかった。

そのファイターの為なら、また強くなれるならまた何度だって直して、また新たに強いガンプラを作る。

だが今回の敗北と相手の“破壊”はミワにとって初めての経験だった。

物言わず朽ち果てたGモノノフにミワの涙が落ちた。

 

次の日、ファーデーン模型に向かった。

2週間後のバトルの事、事の経緯を店長に説明するため。

「なるほど・・・セキトバ・ジュウゴロウさんにはお手上げだねー!」

「申し訳ない・・・思いつく場所がなかった。」

「まぁ仕方ないか・・・事情を話してくれた以上は“彼”がここに来るのも了承しないとね・・・。それと謝る人が違うんじゃないのか?」

「ああ・・・。」

店長は呆れるようにため息をついた。

「君の家系が大切にしている精神・・・あ、いらっしゃいませー!ってミワちゃんじゃないか。」

「えっ・・・」

ジュウゴロウがいる事をお構いなしにミワは黙々とパーツが陳列している棚に向かった。

気まずさを払うかのように話の続きを促す。

「でさっきの話を・・・」

「ああ、だから君の家系が大切にしている精神、『士道』らしからぬ行動なんじゃないかな?」

周りにも聞こえるような声で話す。

「お、おい!もうちょい抑えて」

「これ」

ミワが会計に来たことに慌ててその場から一歩下がる。

互いに黙ったままだ。

店長が気を利かせて話しかける。

「昨日はどうだったい?ミワちゃん。」

「ガンプラが壊れたので直すのに今大変です。」

無表情に答える。

「だって、ジュウゴロウくん」

「えっ・・・ああ、昨日はいっぱい闘ったからなぁ!ハハハ!」

ミワは会計を済ませてそのまま店を出て行った。

「何やってんだよ・・・」

「気まずいんだよ・・・仕方ないだろ・・・」

「ずっとこのままでいいのかい?こんなんじゃ2週間後勝てないよ?」

「わ、わかった!何とかしてみせよう!士道あるまじきとまで言われたんじゃ黙っておれん!」

「そうそう、その粋で」

ジュウゴロウは店を出ていき、ミワの工作室に向かった。

 

ミワの自宅前

なにから話そうかとかうじうじ考えていると家からミワが出てきた。

「よ、よっ!ミワ!」

無視して工作室のドアに向かう。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

呼び止める。

「話したいことがあるんだ・・・」

「なら入って。」

工作室に入り、ミワは制作机に座る。

「昨日は申し訳なかった!怒りに任せて戦う事は武士の精神に恥じる事である。ガンプラもボロボロにしてしまって済まなかった。」

「バトルしよ。」

「えっ・・・!?」

 

訳も分からずバトルシステムにガンプラをセット

フィールドは森

ジュウゴロウは馴染みのジンハイマニューバ2型

ミワはGモノノフ

生い茂る森の中で、2機は対峙する。

「気持ちはわかる。でも・・・私がジュウゴロウを選んだのは実力の事以上に、大事にガンプラを扱って戦ってくれると思ったから!どんなに強いファイターでもガンプラ扱いが悪かったら私はスルーして来た。でもジュウゴロウが現れた時、嬉しかった。」

最初に出会ったあの時のバトルが思い浮かぶ。

「ジュウゴロウが理想のファイターに成長する姿を見て、私は嬉しかった!」

弾幕とドラグーンを見事に完全回避した時のジュウゴロウの横顔が蘇る。

「確かに破壊を楽しむ様なファイターは最低だけど、ガンプラを粗末に扱うファイターも私は嫌い。楽しくバトルして、思いっ切り戦って壊れたなら、何度でも直す!作る!だけどあんな戦いでガンプラが傷付く姿を見るのは胸が痛い・・・。」

ミワは涙する・・・。

 

―俺は大事な事を忘れていた。

“あの日”誓った、どんな相手でも互いに楽しめるような、見てる周りも楽しめるようなガンプラバトルをすると―

このまま忘れていたら2週間後で勝ってもミワは喜ばない・・・楽しいバトルじゃない。

 

「忘れていた・・・やっとわかった・・・。

ミワの気持ちが・・・プライドが。なんて情けないんだ・・・俺は・・・。」

ライフルとシールドを捨てて抜刀するジン。

涙を拭ってモノノフも抜刀する。

鍔迫り合い。

「ミワ、俺の“信念”を話してなかったな。俺はいつか、持てる全ての力を出し切って、最高のバトルをしたい!でも最近少し変わったんだ。」

「なに?」

「“ミワの作った最高のガンプラで最高のガンプラバトルをしたい”ってな。」

鍔迫り合いが解けて、刃を交わす。

「わかった・・・。Gモノノフを完全にして、最高のガンプラに仕上げる!だから約束して、二度とあんなバトルをしないと。そして2週間後のバトル、全力でぶつかって、全力で楽しんで、全力で勝って!もちろんあんな戦い方はビルダーとしても許せない!私の想いも背負って!」

渾身の一太刀をジンに浴びせる。

「承知した!ミワの覚悟、しかと受け止めた!」

ジンは爆破。

バトル終了。

 

「ありがとう、ミワ・・・いろいろ気付かされた。」

「ううん・・・。わかってくれたならそれでいいから。」

「そ、そうか。あ、なんか手伝いたいのだが・・・なんかないか?」

「ならこっち来て、教えるから。」

 

綺麗な夕日が工作室を照らす。


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