ガンダムビルドファイターズ~EDGE OF THE FAITH~   作:鷲塚慶一郎

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第五話 『破壊』

「楽しみはこれからだ・・・!」

その微笑みは悪意に満ちていた。

本来なら既に終了しているガンプラバトルがまだ続いている。

誰が見ても決着は付いている―しかし

「楽しい“破壊”はこれからだ!!!」

戦意のない、跪く相手を蹴り飛ばし、倒れたところに乗り掛かって殴りまくる。

「ハハハっ!!」

腕を引っ掴んで無理矢理立たせようとするも、気を失っているかのように崩れ落ちて跪く。

「もう決着は付いてるじゃないか!なんで終わらないんだ!!」

「おい、誰か止めさせろよ・・・!」

「・・・っ!俺が」

観戦していた一人が強制終了のボタンを押そうとする・・・が、

「おいっ!!!!止めるって事は次はお前が俺の相手をするってことだよな・・・!?ああ?」

「そ、そんな・・・」

当の相手は頭を抱え怯えて縮こまっている。

ビームサーベルで左肩を切り落とす。

次に右肩、蹴り倒し仰向けに倒れ込んだところで両足を切断。

胴体を何度も、何度も何度も突き刺す音がその場に響き渡る。

「ハハハハハハっ!!!壊れろ壊れろ!!!」

落ちている右腕を頭部に投げつける。

「ハハハハハハ!!!!」

破壊し尽くされたガンプラ達 の無惨な姿にその場に戦慄が走り凍りつく。

彼の恐怖に萎縮して誰も止めることが出来ない。

 

しかしそんな中、突如として乱入者が現れた。

「ジュウゴロウ、Gモノノフ!!参る!!!」

カタパルトから出撃し、地面に着地する

「なんだ、てめぇ・・・!?」

「ファーデーン模型でもこのようなことをしていたな・・・貴様のその所業、許せぬ!!」

「ふんっ!あの時すれ違ったあいつか!?せっかく人が楽しんでるのによぉ、自ら相手して欲しいってか?」

頭を掴んで持ち上げているガンプラを投げ捨てた。

「楽しいだと・・・!?ふざけるな!!!どれだけの思いでガンプラを作ってバトルしているのか貴様にはわからないのか!!!!」

「だからこそさ!!!!お前こそわからないのか!!!!そんなガンプラを痛めつけて!バラバラにして!直せないほどに破壊して!相手の悲痛な顔を拝める!この快感が!!!!」

「わかりたくもないわ!!断じて許せん!!!!成敗する!!!」

「待って!ジュウゴロウ!」

「!?なんだミワ!止めるな!」

「このまま頭ごなしに突っ込んでも負けるだけ。私がサポートする。私の指示に動いて!」

「なんだと!!」

このまま怒りに任せて戦ってはただ負けるとミワは判断しての行動だ。

「言っとくけどその機体、仮にもあたしのなんだから!まだいろいろ試作段階だし、壊されたら困るし。」

「ごちゃごちゃうっせーぞ!!!かかってこねぇなら、こっちから行くぞ!!!!」

銀色と漆黒の青い機体が襲いかかる。

「くっ!指示されるのは気持ちよくないが・・・相わかった!そうしよう!頼む!」

「来る!」

背中の刀を抜刀し、攻撃を受け止める。

容赦のない斬撃が繰り出され、ひたすらに刀で捌く。

「どうした!!!出しゃばった割には大したことねぇじゃねぇか!!!!」

「くっ・・・!どうしたらいい!!!」

「耐えて!!今読んでる!じっくり見てる!」

「くらえぇ!!!」

「蹴りが来る!しゃがんで!」

しゃがんで、横からの大振りな蹴りを回避する。

「なっ!?ちっ!!避けたところで!!!」

斧を大きく振りかぶる。

「今!右が空く!」

「右!?」

斧の刃を刀の刃で受け流して、そのまま右に向かって斬り上げた。

「なに!?」

衝撃で退けぞる・・・機体の胸に大きな切傷が深く入り込んでいた・・・このバトルで初めての傷である。

 

―“あの日”の記憶が脳裏に蘇る。

 

「てめぇ!!!!!!!よくもこの俺を!!!!許さねぇ!!!!」

突如、ガンプラの残骸へと向かった。

残骸に穴を空け、片手で持ち上げて斧を捨てたその手を穴に突っ込んだ。

「な、なにをする!!!」

ガンプラの持ち主が罵倒する。

「黙れぇ!!!!!!!」

残骸の粒子を機体が吸収しているのがわかる。

「な、なんなんだ・・・!?」

十分溜まったのか、残骸を捨てた。

機体が粒子の光に包まれて、輝きを放っている。

「怒らせたこと後悔すんなよ!!クソ野郎!!!」

「・・・!?」

「GZシステム機動!!!!」

光を吸収して、機体全体が蒼く発光する。

「おらあああああ!!!」

「頭に血が上って、突っ込んできたか!!!」

狙って斬りかかる・・・が、

「ダメ、後ろ!!!」

「しまった!!!!」

回し蹴りを横腹にくらい、勢いよく吹っ飛ぶ

右横腹に深い切傷が・・・脚の刃の切傷だ。

「なんて速さだ!」

「あの“システム”を使えば、動きを止めれるかもしれない・・・けど・・・」

「なんだ、その“システム”っていうのは」

「タイミング計るから待って!」

「無茶な事を!!」

背中の羽を外して両手に装備させた。

「こいつの斬れ味は最高だぞ・・・!覚悟しろ!」

機体の速さを活かして、いろんな方向からモノノフを手玉に取るように斬り付ける。

「おい!持たないぞ!」

「もう少し耐えて!!」

「ハハハハハっ!!!ほらほら!!どうした!!もう反撃は無しか!」

とうとう、刀が耐えきれなくなり折れる。

「終わったな!!!くらえぇ!!!!」

二つの刃を大きく振りかぶる

「今、突っ込んで!!」

「うおおおお!!!!」

「くそぉ!!!!」

退けぞり、体勢が崩れる。

「納刀して!!」

「わかった!」

モノノフは折れた刀を納刀。

「そのまま抜刀すれば刀が相手の粒子を奪える!!この“名刀”の“覇気”の前では動けない!その名も名刀システム!!!!」

「名刀システム!!!解放!!!」

抜刀し、刀身が相手から粒子を奪う。

「なに、GZシステムが切れた!?」

「動きまでは止めれなかった・・・。」

「でも十分だ!!」

「舐めるなぁ!!!」

再び納刀して、腰のビームサーベルを二刀流で展開する。

激しい激突、斬り合い、鍔迫り合い・・・

「右、下、横から蹴りが来る、次は―」

指示通りに動き、互角に渡り合うモノノフ。

ミワは相手の動きを完全に読み込んでいる。

「くっ・・・!しぶとい野郎だ!!!」

GZシステムを起動したい所だが・・・

粒子残量が僅かで起動するにはもう一度吸収するしか他ない。

「ちっ!仕方ねぇな!!!」

退いて残骸の元へ―モノノフが追いかける。

「待てぇ!!!また吸収か!?させない!」

「深追いしないで!」

「しかし!」

勢いのまま斬りかかる。

「これならどうだ!!!」

振り向きざまに残骸を盾にした。

「そんな!!小癪な!!」

咄嗟に回避して敵とすれ違い、そのまま転ぶ。

「すぐ立て直して!!“あれ”が来る!!!」

「これでお前らも終わりだ・・・」

気づいた時には既に敵は蒼く発光していた。

「やられはせん!!!」

闇雲に突っ込む。

「待って!指示を聞いて!!」

ビームサーベルが空振りする―敵は真後ろに回り込んでいた。

「また後ろか!!」

だが間もなく背中から一気に大剣を貫いた。

「手こずらせやがって・・・」

ガンダムフェイスに黒い影がかかり、緑色の眼光を瞬かせてモノノフを睨み付けた。

モノノフはガックリと力尽き、両手のサーベルの柄を落とした・・・貫かれた大剣に支えられている状態である。

「ま、負けた・・・」

ミワは唇を噛み締める。

大剣を横に振って、亡骸を投げ捨てた。

 

ようやくバトルエンドのコールがかかる。

プラフスキー粒子が消え、ガンプラを手に取り、そのまま立ち去ろうとするがジュウゴロウが呼び止める。

「待て!拙者の名はセキトバ・ジュウゴロウ!!!貴様の名は!?」

「アマギ・カケルだ・・・」

「アマギ・カケル!貴様に再戦を申し込む!!!場所はファーデーン模型、時は2週間後の午後1時だ!!!」

「良いだろう・・・受けて立とう・・・ガンプラをきっちり仕上げて来い・・・ぶっ壊してやるからよぉ!!」

「全力をもってして貴様を倒す!!」

「フンッ!どけぇ!!!」

ギャラリーを罵倒し、道を開け、そのまま出て行った。


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