ガンダムビルドファイターズ~EDGE OF THE FAITH~   作:鷲塚慶一郎

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第二話 『プロトタイプ』

日曜日の午後1時、ファーデーン模型前

既にミワが待っていた。

そこへジュウゴロウがせっせと小走りで近寄って来た。

「ふぅー、ギリギリだった。すまん、待たせたか?」

「別に。んじゃ早速工作室に行くから。自宅だけどね。」

「楽しみだの~!」

期待を胸にミワに付いていく。

そんな様子をガンプラを展示してる窓ガラスを拭きながらニヤニヤと店長が覗いている。

「おお!展開が早いねー。友情と恋とガンプラってか!?」

それに察したジュウゴロウはあっかんべーをした。

「あのガキ!!次ガンプラ買いに来たら値上げしてるやるからな!!」

 

模型屋から歩いて10分弱

学校の話をしながら歩いてると到着した。

「ここ。」

豪邸とまではいかないもの、立派な家である。

よくある一般的な門を抜けると真正面に玄関があるが、その家の隣に車庫にも似た建物がある。

だが、車を出すようなシャッターがあるわけでもなくコンクリート製の壁の右端にドアがある。

中の様子に検討がつかない。

そのドアを開けて入ると、奥行きのあるスペースにまず目に入ったのが真ん中のバトルシステム、奥の右角には制作机、その左に棚があって下段はガンプラが積んであり、上段には完成品が飾ってある。

入ってすぐ左の角にはエアブラシ、スプレー、筆などの充実した塗装スペースがある。

バトルシステムもあって恵まれた工作室

「バトルシステムではないか・・・」

「私のお父さんはヤジマ商事で働いてて、模型店や関連施設に積極的にバトルシステム設置を働きかけてる。お兄ちゃんもガンプラやってるから『これがあれば兄弟でバトルが出来るだろう』ってお父さんの図らいで設置してくれたの。」

「父上殿はあのプラフスキー粒子を復活させたヤジマ商事の方であったか・・・なるほど・・・昨日の店長の話はそういうことだったのか。にしても充実した工作室だな。」

ファーデーン模型のバトルシステム設置もミワの父によるものだ。ラ買いに来たら値上げしてるやるからな!!」

「早速、ガンプラを・・・って言いたいところだけど、改めて操作技術がどれ程か身をもって知りたいからバトルしよ。」

「良いだろう・・・だが女とて容赦はせぬぞ。」

「上等、生半可な気持ちで君を選んだ訳じゃない。私も本気で行くから。」

「ジュウゴロウと呼べ。この手合わせを持って、パートナーの契りとしよう。」

「わかった。なら私のこともミワって呼んで。」

「行くぞ、ミワ!」

「負けないわよ、ジュウゴロウ!」

 

共にバトルシステムにGPベースとガンプラをセット。

フィールドは桜が咲き誇る森。

ミワはマラサイ、ジュウゴロウはジンハイマニューバ2型。

だがミワのマラサイは少し違う。

腰に日本刀を拵えている。

ジンはライフルとシールドを捨てるやいなや、抜刀。

そのままスピードを上げて詰め寄る。

「そういうことなら私だって!」

手持ちを捨ててマラサイも抜刀

鍔迫り合い、互いの斬撃を交わし合う

「なかなかの太刀筋!」

「ジュウゴロウには及ばないけど、負けてられない!」

マラサイの鋭い太刀筋をスラスターを活かして回避。

(やっぱり凄い・・・あのスラスターを活かしての回避、そして刀での捌きや受け流し・・・日本刀を扱う機体としてはぴったりの操縦・・・まさに侍)

「はああっ!」

ジンが隙を突いて斬りつけるが、右肩のシールドで防ぎ、シールド上部が斜めにスパッと切り落とされる。

更に横一閃、斬撃を舞い散る桜と共に断ち切る。

マラサイは退いて回避

(なんといってもこの刀の斬れ味・・・油断出来ない)

「流石・・・私の目に狂いはなかった。」

「有り難きお言葉・・・だがこれにて決着を着けよう。」

ジンは刀を正眼に構える。

マラサイは覚悟を決めるように八相に構えた。

一枚の桜が目の前を横切って、ひらひらと地に落ちた。

互いのモノアイが光は放つ。

「斬!!!!」

「はっ!」

最大全速で互いに一太刀を浴びせすれ違う。

桜が舞い踊るなか、背を向け合ったまま、動かない。

すると、ジンの左翼の角に斬撃が入り切り落とされる。

同時にマラサイは上半身と下半身で真っ二つになって爆破。

バトルエンデッドのコール。

「うん、間違いない!ジュウゴロウならきっと私のガンプラを使いこなせる!」

「その“ガンプラ”とは・・・?」

Gバウンサーがパケ絵になってる箱から“ガンプラ”を取り出した。

「これがジュウゴロウに使ってもらう、“プロトタイプ Gモノノフ”」

Gバウンサーを素体に改造したガンプラ。

脚はAGE-1ノーマルに装甲とスラスターを追加。

腰にもスラスターが追加されている。

腕は同様、AGE-1ノーマル、肩はレイザー。

背中に刀をマウントしている。

「これが俺の新しいガンプラ・・・Gモノノフ・・・悪くない。しかしジンより細身だな。」

「腕や脚はAGE-1ノーマルを使ってるから運動性能は抜群。ジンよりスタイリッシュだから、軽いはず。更に追加スラスターも相まって俊敏な動きが出来る・・・使いこなせれば・・・。」

「なるほど・・・俺の操作に持って来いのガンプラなわけか。」

「でも、まだ私が思ってる完成形じゃない。だから“プロトタイプ”。これからもっとこいつの完成度を高めて行くつもり。」

「よし、早速こいつの試し斬りをしたい。」

「うん、ただ最初はうまく使いこなせないと思うから、まずはCPU戦で戦うといい。このバトルシステムにはCPU戦プログラムも組み込まれてる。起動するね。」

「わかった。使いこなせてみよう!」

「あと、斬れ味もジン程じゃないから注意してね。」

GPベースとガンプラをセット。

「プロトタイプ Gモノノフ、ジュウゴロウ、参る!!」

カタパルトから勢いよく飛び出る。

フィールドは岩礁宙域

「こいつ・・・なんて性能なんだ!」

無数の岩礁を避け、宙域を自由に飛び回る。

「来るよ!」

敵を認識、 ザクだ。

「フンッ!この程度の敵ならなんのその!!」

抜刀して詰め寄る所にザクマシンガンでGモノノフを狙い撃つ。

ジンと同じようにスラスターを活かして避けるが・・・

「なっ、岩礁!?」

勢い余って、岩礁に衝突。手から刀が離れる。

「やっぱり、性能に振り回されるか・・・。」

ザクに追い詰められ、ショルダータックルが繰り出される。

スラスターを思いっきり吹かして緊急回避。

ザクはそのまま岩礁にタックル、左肩が破損。

モノノフはまた勢い余って、体勢が崩れる。

「くっ!ここまで繊細な操作が必要とは!」

ザクはヒートホークで襲いかかる。

モノノフは体勢を立て直すも及ばず、直撃し、爆破。

バトル終了のコール。

「なるほど・・・。ミワが俺を選んだ理由がより実感できた。よし、練習あるのみだ!」

「パーツの破損は気にせず、戦って。何度でも直すから。」

「承知した。」

再度、GPベースとガンプラをセット。

この後、何度も戦い、徐々に性能に慣れていった。

そして時間が過ぎて、いつしか夕方になっていた。

「なんとかマシにはなってきたが、如何せん、まだまだな気がする。ましてや相手は所詮CPUだ。」

「実は次の土曜日にガンプラバトルの地域イベントがある。特に優勝だとかがあるわけでもなく、交流目的だから気軽に参加出来る。そこで実戦練習しよう。」

「ほう、それはいい機会だ。よし、そろそろ帰るか。今日はありがとう。」

「うん、私もパーツ買い足さないと・・・。ファーデーン模型まで見送ってくね。」

二人は工作室を後にした。

 

ファーデーン模型に向かいながら2人は会話する。

「当日の待ち合わせも同じくファーデーン模型で。イベントは10時からだから、こっからだと確か歩いて15分~20分ぐらいだから9時半に集合で。」

「承知した。俺も少し寄ってくかな。」

ファーデーン模型に到着。

店内に入るやいなや、店長の罵声が飛ぶ。

「こんな戦い方するとは、どんな神経してるんだ!!二度とうちの店に来ないでくれ!!」

「ケッ!!うるせぇ店長だな!!こっちから願い下げだ!」

「な、なんだ!?」

「・・・!?」

入り口付近でジュウゴロウ達と罵倒された青年がすれ違う。

何があったと、バトルルームに向かうと・・・

「な、なにこれ!?」

無残にもボロボロにされたガンプラがバトルシステム上に散乱していた。

その傍らで落胆している持ち主と慰める店長。

ジュウゴロウは拳を握り締め、黙って店を飛び出して行った。

「ジュウゴロウ!!」

ジュウゴロウは店前で周りを見渡す。

「あいつ!どこ行った!!!」

既に青年の気配は消えていた・・・。


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