ガンダムビルドファイターズ~EDGE OF THE FAITH~   作:鷲塚慶一郎

3 / 12
本編
第一話 『士(さむらい)』


とある模型屋のガンプラバトルルーム

今日もいつものようにガンプラバトルが行われている。

そこに一人、腕を組んでバトルを観戦する彼女がいる。

可愛げの無い感じにバトルを見つめている・・・

見た目は背中まで伸びたストレートな黒髪にクール系の顔立ちをしているがほのかに美しさも漂う。

「うーん、違うなぁ・・・」

ボソッと呟いた・・・声は女の子らしい高い声ではなく、クールな低めの声である。

どうやら彼女は“誰か”を探しているようである。

バトルが終了、片方は勝利に喜び、片方は敗北に落胆している。

 

「ごよーあらためであるっ!!」

青年が来店して来た。

なんだこいつと言わんばかりの視線が集まる。

彼女は相変わらず無表情。

「池田屋じゃねぇっつの。」

レジで肘をついて模型雑誌を読んでる若い店長がツッコム。

「今日はなんだ。」

雑誌を流し読みながらめんどくさそうに対応する。

青年の雰囲気はまさに侍。

時代錯誤している・・・いや、時代を間違えて生まれてきたと言っても言い過ぎではない。

服装は至って普通なのだが、顔が厳つく、髪の毛は長く束ねて、一言で言えば沖田総司の様な髪型である。

「以前買ったガンプラの試し斬りをしに来た。」

「おお、出来たのか?確か・・・」

「ジンハイマニューバ2型だ。」

(試し斬り・・・?)

彼女は疑問に持つが表情は変らず。

 

バトルシステムにガンプラとGPベースをセット、同時にプラフスキー粒子が散布される。

フィールドは平地

「ジュウゴロウ、ジンハイマニューバ2型、参る!!」

相手はゲルググ。

敵がライフルで仕掛けるが、スラスターを活かして横に水平移動して避けるジンハイマニューバ2型

このガンプラは高機動仕様のジンであり、一般的なビームライフルとシールドを持つが、特徴的な武器として腰に日本刀を拵えている。

撃ち返すも、シールドで防がれる。

互いに距離を詰め寄りながら、敵はビームナギナタを展開、ジンは抜刀する。

鍔迫り合い、両者共に譲らない。

敵が蹴りを入れ、ジンを弾き飛ばしそのまま襲いかかる。

間一髪、シールドで防ぐも徐々にナギナタがシールドに食い込んでいく。

刀を突き刺すもシールドで止められる。

「はあああああっ!!!」

スラスターを最大出力で押し返す。

退いて体勢が崩れるがジンが突っ込むの見据えてシールドを構える。

そのまま攻撃するかと思いきや・・・

「なっ、飛び越えた!?」

背後を取り、渾身の一太刀を浴びせ、シールドで防ぐも真っ二つに

「なかなかの斬れ味・・・研ぎ澄ました甲斐がある。」

ゲルググはナギナタを振り回す。

ジンは華麗な身のこなしで避け、刀でも受け流す。

(ずっと探してた・・・この人なら・・・!?)

静観していた彼女は何かを確信する。

「くそっ!当たれ!」

「フンッ!なっておらんなお主!まずは武器を知る事だな!!」

「何をっ!!」

ナギナタ大きく振り下ろすが、懐が大きく空く

「隙あり!!!」

躱して大きく横一閃に一刀両断

ゲルググは胴体に線が走って二つにズレ、爆破

バトルが終了

 

「機体の性能をよく理解しているのが動きでわかるよ。それよりもその刀の斬れ味が見事だ!ゲルググのシールドをスパッと斬ったね、スパッと!」

店長が刀を絶賛。

模型やガンプラに関することには目が無い。

「本物の刀の如く、忠実に手入れをした。何もなくとも、触っただけで指が切れる程だ・・・斬れ味も今のバトルでより実感した。」

「ねぇ、君・・・ジュウゴロウとか言ったね・・・?」

「うん?誰だお主は・・・!?」

「お、ミワちゃんも興味を持ったのかい!?この刀に」

「いや・・・」

ジュウゴロウはこの模型店の常連だが、彼女を見るのは初めてのようだ。

「ああ、そうか、ジュウゴロウは初対面になるか・・・この子は最近隣町から引っ越して来た、キサラギ・ミワちゃんだ。よくバトルを観戦しにくるよねー。お父さんにはバトルシステムに関してお世話になってるよ。」

「ほう・・・キサラギ・ミワ・・・俺はセキトバ・ジュウゴロウ。で、何のようだ?」

「君の操作技術を見込んで、お願いがあるの。」

「“お願い”・・・?とは?」

「私のガンプラを使ってバトルして欲しいの。」

「お主のガンプラを!?」

「それで全日本ガンプラバトル高校選手権大会を目指して欲しい。」

「それって今、開催中の“ガンプラ甲子園”のことか?」

腕を組んで、考え込む。

同時に店長も疑問に思い、それを口にする。

「今からは当然無理だろうなぁ。予選を通らないといけないし、それ以前にいろいろとやることがあるだろうし・・・そう考えると来年になるが」

「本当は今年の出て欲しかったけど、求めていたファイターが見つからなかったし、中途半端に誰かに任して負けるんなら、しっかり準備してファイターを見つければ来年でも構わないと思った。それにまだガンプラも完全じゃない。」

「てか君ら高校同じか?」

「俺は“井野高”だか・・・」

井野高―正式名称は井野山高校

「うん、同じだね、私も井野高。仮に別の高校だったとしても、求めていたファイターならどこだろうと構わない。ガンプラを使ってもらうだけなら、他校でも問題無いはず。」

顎に手を添えて考えるジュウゴロウ

「ダメ・・・かな・・・?」

不安を感じて問いかける。

ジュウゴロウは考えていたことを捨てるようにミワに真正面に向き直る。

「良いだろう。喜んで引き受けよう。」

微笑ましく承諾した。

「ありがとう!よかった・・・よろしく!」

ミワは手を差し出し、ジュウゴロウは躊躇いもなく手を握った。

「おお!ラブラブだね~!」

チャチャを入れる店長にジュウゴロウはギラりと睨みつける。

ミワは冷めた顔で見やる。

「なに!?」

「なにそのつまんない冗談」

「そ、そんな怖い顔すんなよ・・・」

そんなこんなで暗くなりかける前の夕方になっていた。

「また詳しい話は明日するから、明日の1時に同じくここ、ファーデーン模型に来て。私の工作室に案内するから」

「ほう、興味深い・・・わかった。明日の1時、ここ、ファーデーン模型だな。では。」

「じゃあ、明日」

2人は約束して別れた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。