ガンダムビルドファイターズ~EDGE OF THE FAITH~   作:鷲塚慶一郎

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最終話 『風の吹く場所で』

ジュウゴロウは詰め寄る。

「わかっているじゃないか!バトルの本当の“楽しさ”を。お主は一方的に戦って勝つ事が楽しさではないとわかってるんだろ!どうしてもっとそれを上手く出来なかったんだ!だったら楽しいバトルをしよう!互いに思いっきりぶつかって周りも楽しめるような・・・」

「黙れぇぇぇぇぇ!!!!!わかったように口聞くんじゃねぇよ!!!そんなんで気が済むか!!!ぶっ壊す!!!」

グラッヅエッジが怒りを込めて突進した時突如、目の前にGアクセルが両手を広げて立ちはだかる。

「もうやめろ!!!カケル!!」

「お前・・・ユウヤか!どの面下げて俺の目の前に!」

「お、お兄ちゃん!?」

ユウヤの突然のバトルの乱入にミワが驚く。

「すまないね、ジュウゴロウくん。バトルに水さして。久しぶりだね・・・。カケル、破壊するなら俺のガンプラを破壊しろ!気が済むまでやれ!」

「ああ、今日まで溜め込んだお前への憎しみを全部ぶつけてやる!望み通り壊してやる!」

グラッヅエッジはサーベルで憎しみを込めてGアクセルを切り裂いていく。

Gアクセルの胸にサーベルを貫く。

各部が切り落とされ、無数に切傷を付けられ無惨な姿となったGアクセルを最後、粗末に扱うような蹴りを入れる。

「気が済んだか・・・!?」

「ほう・・・そんなに壊されたいか!!」

「俺は“あの日”のバトルが終わったあと、苦しいほど後悔した。謝る事も後ろめたくなるほどに・・・。怒りに任せて戦うことが、悪意を持って相手のガンプラを破壊することが・・・。本当に申し訳ないと思ってる。だからカケルが気が済むのなら、何度でも直して何度でも壊される!元のカケルに戻るなら!!!」

「今更懺悔など見苦しいわ!!!!!だったら直せなくなるまで粉々にしてやる!!!!!」

サーベルを振りかざす。

「だったらまた新しいのを作ってくる!!!!!カケルが気が済むまで何度だって作って直して・・・またカケルとバトルがしたいんだ・・・!!」

「お、お前・・・」

グラッヅエッジの振り降ろそうとするサーベルがGアクセルの寸前で止まる。

ユウヤのそのあまりの純粋さと改まった態度に狼狽える。

「だからもう破壊はやめて、昔のようにバトルをしよう・・・。」

カケルはしばし考え込む。

その頭の中ではいろいろな事が駆け巡る。

純粋だった頃、復讐に囚われて破壊に尽くす日々、いつしか忘れていた、あの頃本当に“求めていた”物。

「でも・・・今更遅いだろ・・・積み重ねた罪は消えない・・・もう引き返せない。」

「難しく考えなくていい。目の前を見ろ、ほら・・・」

そこには意気揚々と微笑むジュウゴロウの姿が。

「気が済んだなら、バトルの続きをしよう!楽しいバトルを!」

バトル開始から変わらぬ姿勢に今カケルは実感した。

「ミワ、今からガンプラがボロボロになるかもしれない・・・いいか?」

ミワは無言で拳を前に突き立てる。

楽しむことを前提での了承だった。

「ありがとう!よし、行くぞ!シドウ!!推して参る!!」

「そうか・・・何も考える必要ないな・・・ただ、」

カケルはニヤッと笑う。

「本気で行くぞ!!あさっり負けるなよジュウゴロウ!!!この俺を楽しませろ!!!」

「望むところ!!!」

その時のカケルの顔は“あの頃”の表情に戻っていった。

火花を散らしながら、二つの刃がぶつかり合う。

二つの閃光が衝突しながら、周囲に爆発を巻き起こして宇宙を駆け巡る。

 

―そうだよな、カケル。

あの頃の俺が全部悪かった。ただ単純に俺が下手だったから、カケルと釣り合わなかったんだ。

“あの日”の戦いも憎しみなんて持たず普通に戦えば、普通に楽しめたかもしれないのに。

だから次は―

 

「まだまだこんなもんじゃないぞ!ジュウゴロウ!!」

「拙者も同じ!まだまだ!!!」

止むことのない激しい戦闘。

そのバトルの凄まじさに周囲が興奮して湧き上がる。

カケルは突如、間合いから離脱して、ユウヤのガンプラに向かう。

「ユウヤ、お前のガンプラを借りるぞ!!」

「“あれ”を使うのか。ああ、構わない!」

グラッヅエッジはGアクセルの右手と握手した。

Gアクセルの粒子がグラッヅエッジへと流れる。

「フルチャージ!!このシステムもこれで最後だ!GZシステム、起動!!!」

それは同時に破壊行為を辞める宣誓でもあった。

背中のゾークブレイドを両手に装備、素早い斬撃を繰り出す。

「く、速い!捌ききれない!」

「この素早い斬撃からは逃れられない!グラッヅスラッシュ!!!」

シドウの各部アーマーが切り落とされていく。

四方八方からの攻撃とその俊敏さに追い詰めらる。

ゾークブレイドを刃を水平にして受け止める。

「こうなったらこっちも名刀システムだ!」

勢い込んで弾き返して、相手の体勢を崩したところで流れるように納刀する。

「させるか!」

シドウが抜刀斬りの好機を伺う為、猛スピードで逃げる。

それを追いかけるグラッヅエッジ。

戦艦の残骸の陰に潜めたシドウは、敵を見失い何も知らないグラッヅエッジが目の前を通り過ぎるのを確認して抜刀斬りを浴びせる。

「隙あり!!」

「しまった!!」

背後を取られたグラッヅエッジだったがなんとか振り向いて刃を受け止める。

だが、フィアーフルゴッドの刃がグラッヅエッジの粒子を吸収していく。

「GZシステムが切れたか!!」

グラッヅエッジを蹴り上げる。

体勢が崩れるが、無理矢理シドウを横から蹴りを入れる。

シドウは一旦距離を取って納刀した。

「今からとっておきの刀を見せてやろう!」

そう言って、後腰にマウントされていた柄を取り出した。

その柄から刀の刃を模したビームサーベルが展開する。

「和泉之守兼定、通称カネサダ。高威力のビームサーベルだ。」

刀を突き立て突進。

横に躱すグラッヅエッジだが、その状態から思いっきり蹴っ飛ばす。

吹き飛ばされたグラッヅエッジをシドウが追尾して、斬りつける。

躱し切れず、右肩が切り落とされる。

「くぅ!!」

必死に反撃して貫こうとするが、惜しくも右の腰アーマーに直撃。

今度はシドウが左腕こど切断しようと左肩を狙うが、回避により胸部に大きく切傷が出来る。

そのまま後退して、ライフルを拾って狙い撃つ。

左肩に被弾。

「なかなかに手強い!」

「やるじゃないかジュウゴロウ!」

『だが、まだまだぁ!!!!!』

二人は言葉を揃えて互いに突進して、更に激しく殺陣を繰り広げる。

「狼牙斬り!!!!」

「なに!!!」

大きく横一閃に斬り広げる。

だが、横腹に傷を付ける程度だった。

「惜しい!!ならば最大出力で!」

カネサダを後ろに構える。

グラッヅエッジもゾークブレイドを連結してブーメランにする。

「粒子を柄磁器旋光システムに集中!推進力をブーストアップ!真・狼牙斬り!!!!」

更に大きくなった日本刀型のビームサーベルで急速に突進して、横一閃で斬り抜ける。

シールドを構えるも腕ごと切り裂かれた。

「くそ!左腕まで!これでもくらえ!」

ディプラヴィティブーメランを投げ付ける。

「やられるか!!」

フィアーフルゴッドを抜刀して刃を立てて受け止めようとするも、その重い威力に弾き飛ばされる。

同時に名刀システムが起動する。

「くそ!」

ブーメランは旋回して主の元に戻ろうとする。

その帰路には逆さまに体勢が崩れたシドウが浮いている。

「避け切れん!!!」

闇雲にスラスターを吹かして回避しようとするも左脚に直撃して切断される。

そのままグラッヅエッジに戻ろうとするが、名刀システムにより身動きが取れない。

「動け!!!粒子の回復はまだか!!!」

粒子回復のパーセンテージのゲージが上がっていく。

好機を逃さぬと、間合いを詰めようとするシドウ。

「最悪だ!!」

粒子回復100%、粒子が機体が浸透して、動きが取れる。

なんとか、ブーメランをキャッチするも、その後のシドウの突きが避け切れなかった。

フィアーフルゴッドはグラッヅエッジの右横腹を貫いた。

ブーメランを切上げて、フィアーフルゴッドを持つ右腕を切断。

シドウは更に蹴り上げる。

グラッヅエッジもブーメランを解いて、片方は捨てて切りかかるがカネサダで遮られる。

蹴りを入れて体勢を崩し、突きを入れる。

その突きがシドウの頭部に直撃して半壊する。

右腕にシドウが蹴りを入れて、ゾークブレイドを吹き飛ばしてそのまま斬撃を加え、グラッヅエッジは回避をするも、右脚が切り落とされた。

グラッヅエッジも腰のビームサーベルを抜き放って斜め上から胸元に突き刺す。

止まぬギャラリーの歓声。

ミワはその熱いバトルに静かに胸躍らせる。

ユウヤもいつの間にかバトルから離脱して、ギャラリーに混ざり見ていたがカケルのその戦いっぷりに高揚していた。

「こんな楽しいバトルは拙者初めてだ!!!」

「ああ、こんなに必死になったのは俺も初めてだよ!!だがもっと・・・」

「戦いたい!!!終わらせたくない!!!!」

互いのガンプラはボロボロだが、闘志はまだ絶えていなかった。

グラッヅエッジは突き刺さった刀を抜いて構える。

シドウは再度、突撃してグラッヅエッジと共に宇宙を駆け巡り、激しい衝突、斬り合う。

互いの画面には次々と〈CAUTION〉の警告が表示される。

戦艦の残骸を挟んで互いに大きな斬撃を繰り出す。

残骸が切り刻まれ、大爆発が起こる。

流石に大破してバトルが終わるかと思いきや、煙幕から2つの機体が飛び出してきた。

「まだまだぁ!!!!!」

「ああ!まだやれる!!!」

また衝突して、互いに切り傷を付けていく。

刃と刃が衝突して、共に弾き飛ばされた。

「流石に限界が来た・・・この最後の一太刀にて、決着を付ける!!!」

「同じだ!!!これで勝負を決める!!!」

同時に勢い良く突進し、最後の一太刀を互いに浴びせる。

そのまますれ違い、どちらも背を向けたまま動かない。

すると同時に2つの機体は真っ二つにわかれ、爆発した。

結果はバトルドロー。

 

周囲の観戦していたギャラリーの拍手と歓声に包まれた。

粒子が消えると共にコントロールルームも消滅し、2人の姿が現れた。

バトルシステム上にはボロボロになった、2つのガンプラ。

緊張が解けるように大きく溜め息をつくジュウゴロウ。

腕で額の汗を拭うカケル。

やり切った感の2人だったが・・・

「もっと、もっとやりたい!!!決着が着かなかったんなら尚更だ!!!」

「ならば、決着は“ガンプラ甲子園”で付着けよう!!!」

「ガンプラ甲子園・・・!!」

ミワはカケルを見ながらジュウゴロウの元に近寄る。

「わしらは今そこを目指すために戦っている。着けれなかった決着はその“最高の舞台”にて!!!!」

「なるほど・・・面白い!!!それまでにもっともっと強くなって、また最高のバトルをしてジュウゴロウ、お前にガンプラ甲子園で勝つ!!」

「拙者とて同じ!!待っているぞ!!ガンプラ甲子園で!!」

「ああ!それまではさらばだ・・・楽しみにしているぞ。」

そう言い残して、ガンプラを回収して店を去っていった。

 

夕陽が照らす堤防の芝生でジュウゴロウは寝転んで、その隣でミワが座っている。

「最高だったよ、今日のバトル。」

「そうか・・・ありがとう。でももっと最高のバトルをお主に見せてやる。それが夢なんだろ?」

「え!?う、うん・・・。」

照れるのを隠そうと顔を埋める。

ジュウゴロウは立ち上がって夕陽を見つめる。

「あそこには凄い風が吹いてるんだろうな。強者たちの風が・・・。」

その背を見つめるミワ。

「その“風の吹く場所”であいつとの決着を着けるんだ・・・。」

2人は夕陽を見つめ、夕陽はいつまでも2人を照らしていた。

 

END




最後までこの作品を読んで頂きありがとうございます。
そしてガンプラを提供頂いた有志、dawawa氏とRe-ta氏、そして前後しますが、『ガンダムビルドファイターズA』にてジュウゴロウを登場させて頂いた、その作者アストロ氏の皆様にご協力頂いたこと心から感謝致します。
本当にありがとうございます。

自分の中で溢れるアイデアを全てぶつけました。
とりあえず自分の中では綺麗に終えたことに満足しています。
今回はジュウゴロウにスポットを当てたスピンオフなので世界観は狭いです。
キャラクターも少ない。
ミワも店長も最初はいなかった。
この話を書き出したのは「二つの記憶」が始まりで(何気なくその場でパッと思いついたのを書くタイプ)、そこからどんどん話を盛っていって作り上げたんですが、まずジュウゴロウとカケルの出会いを書こうってなって「染み渡る恐怖」でジュウゴロウが破壊行為を目にしてキレて乱入するって構図が出来たんです。
そのジュウゴロウが乱入して戦おうとしてる最中、突然「待って!」って頭ん中で聞こえて来たんですよ。それがミワなんです。
当初はその場面がミワ初登場だったんですが、流石に唐突過ぎるかなと思い、設定詰め込んで第一話からの登場になりました。
ちなみに元ネタはもちろんあのmiwaです。
タイトルも曲名入ってたり・・・
店長は風景みたいなもんかな。
あとキャラクターの風貌に関してはジュウゴロウとミワ以外はご想像にお任せします。
まぁ言うとしたらユウヤは少しインテリの誠実系、カケルは少しチャラい感じ。

恋愛描写は当初、寒いので入れなかったんですが、コントの意味でほんの少し入れました。
ラブラブにすると気持ち悪いので。(隣のカップルがイチャついてるの見るの嫌でしょ?)
ラストシーンもあくまで青春程度に
その方が爽やかなので
ただミワがジュウゴロウの事が好きかどうかは流石にわかりませんけどね・・・(笑)

最終話の戦闘シーンはもっとアイデアがあって、書くつもりだったんですが、流れ的に無理と判断して没になったのがいろいろあります。
ざっと書くと、シドウが刀一振りで無数の斬撃を飛ばす(ゾロの阿修羅みたいな)とか
名刀システム発動して、動きを奪うも咄嗟の判断でブーメラン投げられて妨害されて、結局一太刀しか切りつけれなかったとか
あとは真・狼牙斬りももっと大規模な技にしようと、グラッヅエッジは避けるが、その背後の岩礁、戦艦にその攻撃が直撃して一斉に大爆発するみたいな(VVVのハラキリブレードかよ)のもあったんですが、流石にビームサーベルでそれはないなと。
しかも超越的な破壊力描写はフィアーフルゴッドで既にやってますしね。
もっとあったような気がしたけど忘れた()

今後はアストロ氏の作品『ガンダムビルドファイターズA』にての活躍にご期待下さい。
再度、ジュウゴロウが登場するとのことです。

続編とかは考えてませんが、また何か思いついたらサラッと書きたいなと思ってます。
書くとしたら一回の投稿で終わるようなカケルとかミワのサブストーリーかな

本当にありがとうございました!

連載中の『ガンダムビルドファイターズA』もよろしくお願いします!

ではまた会う日までさよなら!!

※『ガンダムビルドファイターズA』はpixivにて連載中です。

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