ガンダムビルドファイターズ~EDGE OF THE FAITH~ 作:鷲塚慶一郎
前日となった今日も工作室で特訓をしていた。
バトル終了のコールと共にプラフスキー粒子とコントロールルームが消え、ジュウゴロウとミワの姿が現れる。
「うん、これでもう完璧だね。完全に仕上がってる。」
「ふう・・・。刀も満足の行く斬れ味だ。それに“あの武器”の威力も凄まじい。」
「刀はびっくりだよ。もう本物の刀を超えてる斬れ味よ。ありえない。ジュウゴロウって本当に武道に精通してるんだね。」
「幼き頃から士道を教え込まれた。『どんな時であれ、冷静に刀を握り、怒りはあっても鎮めて信念を持って刀を振るい、懸命を尽くして戦う。それがなければいくら剣術に長けていても、棒を振るだけだ』と。」
「へぇー。最初変な奴だと思ってたけどちょっと感心した。」
「なに!?」
「そりゃそうでしょ。その身なりで思わない方がおかしい。」
「まぁよい・・・それよりミワ、いよいよ明日だがこれはあくまで通過点だと思ってる。目標は・・・」
「ガンプラ甲子園。わかってるって。明日が終わったら本格的に活動ね。部活設立や部員集めやら・・・。」
「ああ、いろいろ忙しくなるな。だからミワ、ガンプラ甲子園に連れてってやるからな!」
「うん・・・うん!?何その言い方!?なんか彼女みたいな扱いで嫌だ!違うから!むしろ私のガンプラで連れてってもらうんでしょ。声かけたのは私だから。」
「なんだと!?戦うのはお・・・」
「とにかく!!明日は勝ってね。応援してるから。」
“応援してる”という自分の言葉に少し恥ずかしいため、それを悟られないように背を向ける。
「相わかった。それと、シドウを作ってくれてありがとう。感謝している。」
「そ、それはまぁ・・・その・・・ジュウゴロウの思いに答えたかったていうか、私のガンプラの活躍する姿を見たいというかなんというか・・・」
思いもよらぬ言葉に赤面するが、ここはしっかり向き合おうと振り返るが・・・
「・・・っていないし!!」
決戦当日の午後1時のファーデーン模型。
そこには噂を聞きつけたギャラリーで集まっていた。
バトルシステムの前には既にジュウゴロウが待っており、それを見守るように腕を組んだミワの姿がいる。
ジュウゴロウのその姿は“やれることは全てやり尽くした”と言わんばかりに自信と逞しさで満ち溢れていた。
万全の態勢である。
「壊されに来たか、セキトバ!!」
アマギ・カケルが罵倒しながら現れた。
「いや、バトルを楽しみに来た!」
「気持ち悪いこと抜かしやがって・・・随分と自信気な顔だな。すぐにその顔も恐怖に変えてやる・・・!」
ジュウゴロウは更に笑ってみせた。
「気持ち悪いんだよ!!始めるぞ!」
カケルはグラッヅエッジガンダムをセットした。
ジュウゴロウもシドウをセット。
「グラッヅエッジ、アマギ・カケル!!!出る!!!」
「シドウ、セキトバ・ジュウゴロウ!!!いざ、出陣!!!」
ステージは宇宙、残骸や岩礁が漂う。
カタパルトから発進して、その勢いのまま更に加速する。
敵を認識するやいなや、射撃して来た。
シドウは速さを活かして、駆け巡るように回避する。
「なんて速さだ!?」
ギャラリーがざわつく。
「くっ!ハエみたいに鬱陶しいんだよ!!」
キリがないと急接近してアックスを振り下ろす。
それを抜刀して受け止めるシドウ。
刃と刃が火花散らして擦り合う。
「はっ!!!」
シドウは押し返して、後ろの戦艦の残骸に叩き付ける。
そのまま体を使って大きく切り下げる。
咄嗟にグラッヅエッジは退避。
すると、戦艦が綺麗真っ二つに斬れる。
「これが我が愛刀、鬼神丸国重、別名フィアーフルゴッドの斬れ味だ。」
「どんな斬れ味してんだ!あのでっかい戦艦を真っ二つなんて・・・」
ギャラリーが更にざわつく。
ジュウゴロウの渾身の手入れにより、刀は今まで以上に斬れ味が計り知れないほどに研ぎ澄まされていた。
「くっ・・・!そんなもん当たらなければどうということはねぇ!!!」
更にシドウが斬り込んでいくが、グラッヅエッジは必死に躱す。
代わりに周りの岩礁がスパスパと斬れていく。
最後の横一閃もグラッヅエッジが急上昇して回避するが、そのまま目の前の大きな岩礁が二つになるだけであった。
「なるほど・・・ただ二週間過ごしてきた訳じゃないようだな・・・だが、まだこんなもんじゃないぞ!!!」
本腰を入れるかのように、射撃しながら接近してシールドからビームサーベルを展開する。
シドウは回避しながらサーベルを受け止め、鍔迫り合いに持ち込む。
直ぐに弾き返してシドウを蹴り飛ばす。
ライフルで追撃するが、必死に回避して射線から離れる。
「逃がすかぁ!!!」
「苦しい状況だ・・・!」
斬撃を幾つも繰り出すも全て回避される。
「見切られているだと・・・!?くそっ!当たれ!」
やっけになってサーベルを振り降ろし、シドウが受け止めてまた鍔迫り合いになる。
「何の為にお主はガンプラの破壊をしている!?理由はなんだ!?」
「破壊されたガンプラを前にして絶望した顔を見るためだ!!!」
「やめろと言っても、聞いてはくれないだろうか・・・?」
「馬鹿な事を抜かしやがる・・・ふざけやがって!聞くわけ無いだろ!俺はお前のガンプラを破壊しに来た!それだけだ!」
シドウを押し詰める。
「ならせめて、拙者の話を聞いてくれ。」