なので主人公のブラックトリガー化を期待している人には期待ハズレな展開になると思うので申し訳ないですm(_ _)m
ぼんち揚げを美味しそう食べている空閑を近界民だと言い放った迅さんだったが、
空閑の反応を前に迅さんが突然の両膝を付いて項垂れ始めた...お腹でも痛いのか?
「予知と違うからまた勢いで喋っちゃった...
これもどれも全て広瀬が原因だ、折角カッコいい台詞を考えてたのに...」
なんだか分からないが俺のせいで未来が突然変化して迅さんが割りを食らったらしい。
「ざまぁみろって事でいいですか?」
「絶対良くない前々から言いたかったがお前のサイドエフェクトは味方殺し過ぎるぞ!!
俺の心身の為にも面倒臭いサイドエフェクトを制御するか消してくれ、ホントに頼むぞ」
無茶言わないで欲しい。俺のサイドエフェクトが通用しないサイドエフェクトは常時迅さんの予知のサイドエフェクトにガッツリ影響を与えている(らしい)、この件に関してそれなりの負い目を感じているが俺自身のサイドエフェクトの発動に一切の自覚がないので制御なんて無理といった状況なのだ。
「ふぅ...かなり美味しかった。
頂いた物も食べ終わったし俺はこれで、じゃあね~」
「ちょっと待て!」
「空閑君止まろう...」
ぼんち揚げを食べ終えた空閑が帰ろうとしたので俺と迅さんで止める。
この状況で帰ろうとするなんてトンでもないメンタルの持ち主だな...
「...その人の言う通り俺は近界民だけど、なんか問題あるのか?」
あっさりと認める空閑、迅さんのホラだと思ったがまさか近界民だったとは...
なんとなく近界民は角とか羽とか生えているイメージだが普通の人間だったとは。
「いやいや待て待て、俺はお前を襲うつもりは全くない。
俺は過去に何回も近界に行ってて近界民にも良い奴が居るってのも知ってる、
それに今回の騒動とお前が無関係なのは知ってる、だから話しをさせてくれないか?」
「うむ、分かった」
迅さんの胡散臭い釈明を素直に受け入れる空閑であった。
なんで信じるんだ?人が良い?それとも馬鹿?自分の力に絶対の自信を持ってるとか?
迅さんと空閑の話し合いを邪魔するわけにはいかないので、遠巻きで二人を観察する。
「先に明かすが俺のサイドエフェクトは予知、目の前の人の少し先の未来が見えるんだ。
ちょい昔にメガネ君を助けた際に、この騒動を解決する為にはお前の協力が必要となるみたいな感じのイメージが見えたんだ、それでお前に声を掛けたんだよ...因みに分かりそうか?」
イレギュラー門の解決について妙な自信があると思ったらそういう理由なのか...
「原因か...俺には分からないけど多分大丈夫だ」
「おぉマジか!?すまないが頼ってもいいか?代わりに後でなんでもするからさ」
「なんでもか?それなら修の違反をチャラにしてくれないか?取り合えずはそれでいいや」
「お安いご用だ、この実力派エリートに任せてくれ絶対に悪いようにはせん」
お互いの名前さえ知らない状況ながら話が進む。
近界民が俺達に協力するとは思えなかったのだがすんなりと協力を約束してくれた。
この二人の独特な雰囲気は俺にはちょっと理解出来そうにない。
「んじゃ、俺とメガネ君は本部に行くから三人は原因究明を頼む。
それと広瀬は俺の分も含めて新型の報告書を頼む、対策立てる必要があるから早めな~」
いつの間にか話が終わっていたのか、迅さんが三雲を連れて本部へ向かった。
どうやら残った三人で原因を探るそうだ...あれ?迅さんに報告書を押し付けられた?
イレギュラー門の原因を探る事となったボーダー隊員2名と近界民1名。
原因について心当たりがあるらしく空閑を先頭に何処かへ向かう。
その道中会話は一切なく、流石に気不味くなったので空閑に聞きたかった事を質問する。
「聞きたかった事があるんだけどいい?」
「こっちの質問に答えてくれるなら良いよ」
「単刀直入に聞くが新型をヤったのは君か?」
先程の戦闘で俺と迅さんが関与していない新型が一体、山にぶつかって自爆した。
傍目には俺が放った一撃が起こした奇跡にも見えるがそれを信じるほど楽観的な性格ではない、どうやったかは知らないが空閑が引き起こしたのだろう、それを確かめる。
「違うよ、なんて嘘は通用しないか...ヒロセの言う通り俺がやった、それが?」
空閑が警戒を強めるが、そんな物騒な話をするつもりはない。ただお礼を言いたかっただけだ。
「空閑君が新型を撃破してくれたお陰で誰も死なずに済んだ。
俺なんかの言葉じゃ安いと思うけどそれでも言わせてくれ...ありがとう」
「うわぁ...まじめ」
真剣にお礼を言ったのだが何故か空閑が引いている。
「もしかして学校の件も貴方が?」
「あ~しまった認めなきゃよかった...うん、それも俺がやった」
「ふふーん聞きましたか広瀬さん、やっぱり彼は只のC級隊員だったみたいですよ」
空閑の発言で眠気が吹き込んだのか生き生きとした表情を俺に向ける。
なんで俺に話を委ねるのだろうか?ってか三雲の実力はC級隊員相応だったらしい。
C級隊員が緊急時とは言えモールモッドと戦おうなんて無謀にも程がある、
ベイルアウト機能がないんだがら戦闘体がヤられたら死に等しい...三雲には後で説教だな。
三雲の件は本人に会った時にするとして、また空閑にお礼を言わなくてはならないな...
「空閑君...」
「お礼なんていらないよ、俺は修を助けただけだ。
学校の奴等は修が助けた、だからあれは修の手柄だよ」
空閑の名前を口にした直後、またお礼を言われると予測されたのか遮られた。
「そろそろ此方が質問してもいい?」
そう言えば俺の質問に答えてくれる代わりに空閑の質問にも答えろという条件だったな...
「修を連れてった奴が言ってた面倒臭いサイドエフェクトってなに?ヒロセに関係あるの?」
迅さんがうじうじと愚痴っていた内容の事を聞かれた。
俺のサイドエフェクトの事は迅さんから口止めされているが、色々と助けて貰っている相手に対して嘘や誤魔化しはしたくない達なので正直に答える。
「俺のサイドエフェクトは...」
「広瀬さんがサイドエフェクト?そんな事はありえません嘘を吐かないで下さい」
空閑の質問に正直に答えようとしたのだが木虎に台詞を遮られる。
俺と接点の多い木虎が否定するのも分かるが、せめて最後まで話を聞いてくれ。
「十分にありえるだろ。だって普通のトリガーでイルガーを2体も撃ち落としたんだぜ」
「それは、そうかもしれないけど...でもありえないわ」
そんなに俺がサイドエフェクト持ちなのが嫌なのか...
それとも宿敵に先を越されるのを認められないのか?
そんな事を思い浮かべなから遮られていた話を無理矢理進める。
「俺のサイドエフェクトは他人のサイドエフェクトが通用しないヤツらしい...」
「スゴく納得した、確かに面倒臭いサイドエフェクトだな現に俺が迷惑してる」
俺の説明に合点がいかなかったのか木虎が不思議そうな表情を浮かべる。
俺の説明不足かと思われたが空閑は納得したみたいだ...現に俺が混乱している?
空閑の発言の意味を考える。今の発言から空閑のサイドエフェクト持ちは確定だろ、
ならサイドエフェクトの種類は?まずは菊地原の普段の反応から強化五感系は外れる。
把握しているサイドエフェクトの種類は少ないが俺のサイドエフェクトが最も力を発揮するのは天羽や迅さんといった本来は見えないモノが見える系統のサイドエフェクトだ...空閑もそのタイプだろう。こっからは只の勘だが空閑は胡散臭い迅さんの話をすんなりと信じていたので相手の心を読む系統のサイドエフェクトかも知れない、やや早計だが本人に答え合わせをする。
「心を読むサイドエフェクト?」
「バレてたか、正確には嘘が分かるだけどな。
ぶっちゃけた話をするとヒロセの考えが全く分からなくてかなり警戒してる」
正解は当たらからずも遠からず嘘を見抜くサイドエフェクトだった。
心を読むという回答に訂正を入れたので、もしかしたらまるバツ方式で見抜くのか?
それとも嘘を言われた時だけ反応するのか?どっちにしろ俺の発言は空閑のサイドエフェクト上では嘘を付いていないと反応されるので面倒臭いことこの上無いだろう...ん?ちょっと待てよ嘘を見抜ける空閑にとって、それが通用しない俺はかなり危険な存在なんじゃないのか?そんなの普通の人間関係と変わらないと言い捨てられるが、嘘を見抜く能力を有している人はその能力が常時効いているのが正常なので無理な話だろう...とにかく俺は空閑に警戒されているって話だ、本人も言ってたし。
「木虎から見て俺ってどう?空閑に分かりやすく評価してくれないか?」
「はぁ?なんですか突然...」
俺の発言の真偽は空閑には分からないが、木虎の発言の真偽は空閑に確かめられる。
それを利用して俺の印象を木虎を経由して空閑に伝えようとしたのだが、疲労で察しが悪くなったのか木虎に聞き返された、これは詳しく説明しなきゃな...と思っていたのだがなにを察してくれたのか木虎が俺の印象を語り始めた。
「広瀬さんの評価ですか...ハッキリ言って駄目駄目ですね。
だって人並み外れたトリオン力を有していながら、やっている事は固定砲台さながらの射撃なんてトリオン力の成長に不安を感じている私にとっては見ていて腹が立つレベルです。あのような単調な戦術はトリオン兵に対しては有効ですが、他の精鋭隊員にとっては的でしかありません、私のような優秀なパートナーが居て始めて有効に作用する戦術なのに当の本人は一人で勝手に前に出るは私のアドバイスは無視したりと尻拭いをする私の身にもなって下さいよ...でも広瀬さんの単調な戦略と前に出る無謀な性格は味方のトリオン消耗を抑えると同時に盾になる為だって最近は気が付きました。昔から広瀬さんは一人で重荷を背負う癖があります、今回だって玉狛の変なのと裏でコソコソと暗躍しているみたいですし...広瀬さんなら無事だと思うんですけどやっぱり頼って貰えないのは寂しいですね...それに」
「長っ!?」
「...きもいな」
思わず叫ぶ。どうせ悪口なのだろうと思って木虎の発言を聞き流していたので、発言の内容は全く頭に入っていなかったが、歌を歌っているような木虎の長々とした語りに思わず叫び声を上げてしまった。発言の内容は全く分からないが、空閑の呟きからかなり不穏なものだったと推測出来る。前々から思っていたが木虎はガチでヤバイヤツなのか?恐る恐る木虎に先程の発言の内容を確かめようとすると、自身がヤバイ発言をしたと気が付いたのか突然叫び声を上げて俺達から消えるように走り去った...お互いに激務で心身ともに疲れ果てているのかも知れない。
「追い掛けなくていいのか?」
木虎が走り去った方向を見詰めていると空閑が追い掛けないのかと聞いてきた。
今追いかけても俺が返り討ちに会うのは目に見えているので追いかけない方がいい。
「追い掛けない方が懸命だろ」
「だな。五月蝿いのも居なくなったしこれで集中出来る」
木虎の事はほっとこう、そしてさっきの発言は忘れよう、そう決心して話の本筋に入る。
「それで原因の心当たりは?勝手だが見付けてくれないと困る」
「安心しろ、相棒が既に一匹仕留めている。
空閑の相棒?誰なのかと質問する前に路地裏に入った空閑に手招きをされた。
路地裏の先に相棒が待っているのだと察して、空閑の後ろに付いて行く。
路地裏を進んで行くと空閑が突然止まる、ここに相棒が居るのか?
空閑の前方を確認すると黒い炊飯器が空中に漂っていた...
『はじめましてヒロセ、私の名はレプリカ。ユーマのお目付け役だ。
今回の騒動について私が詳しく説明しよう、まずは私の真下を向いてくれ』
「あっ、はい、どうもです、嵐山隊の広瀬です?」
黒い炊飯器が突然喋ったので慌てて返答をする。
このトリオン兵が空閑の相棒なのか...ってか意志があるのか。
レプリカと名乗るトリオン兵の言われた通りの方向を向いてみると亀のような甲羅を纏ったトリオン兵の姿が確認出来た...なんだコイツ?
『これは隠密小型偵察用の小型トリオン兵「ラッド」だ、
ただし普通のラッドではなく門発生装置を備えた改造型のようだ』
ラッドと呼ばれるトリオン兵を持ち上げて見ると背中の装甲に黒い水晶みたいなモノが埋められていた。これが門発生装置なのか...こんな小型のトリオン兵に振り回されていたとは。
「その発生装置付きが撃破されたから騒動は終わり...って話じゃないよな?」
相手は異世界の軍隊、当然ながらコイツ一体だけ送り込んで終わりなんて訳がない。
そもそもイレギュラー門の発生は同時に複数を観測しているので一体の筈がない。
「そうだな」
「つまり全てのラッドを倒せば騒動は収まると...」
「簡単に言うけどかなり難しいぞ」
『ラッドは攻撃力を持たないいわゆる雑魚だが、数が膨大だ。
今探査しただけでも町中に数千体は潜伏している、全ての排除は困難だろう』
数千体とはゴキブリかなんかだな。確かに数は膨大だがレプリカがラッドの位置を探査出来ているのなら隊員総出で潰せばいいだけの話だ、ボーダーの正隊員は百人弱だがラッドは戦闘力を持たないのでC級隊員や技術スタッフなども作戦に投入出来るのでかなり楽になるだろう。この作戦の問題はレプリカの存在を本部の人達に晒す訳にはいかないので、本部の技術者が自力でラッドの探査をしなきゃならないのだ...まぁ本部の技術者ならイケるだろ。終わりの見えない騒動だったがこれでなんとかなりそうだ...本当に生きた心地がしなかった。
「いやなんとかなりそうだ。同じ台詞しか言えないがありがとう助かったよ。
ボーダーに言えばかなりの手柄になるんだが空閑君的にはそれは不味いんだよな?」
学校と新型の一件で空閑がボーダーに関わりたくないのはなんとなく察している。
「話が早くて助かる、手柄は全部修に付けといてくれ」
本人の身の丈に合わない手柄が三雲に集まる。
これで処罰は逃れB級確実と喜ぶべきか、本人の為にはならないと空閑を非難すべきか悩むが本人がそうしてくれと言うのなら仕方がない。三雲の事情を知る先輩としては三雲に合った配属先ぐらい探してやろう、嵐山隊か茶隊がいいかもな...三雲の配属先を頭の片隅で考えながら話を進める。
「それだと悪いから困った事があったら呼んでくれ、どんな用件でも協力するよ」
具体的には他の正隊員に見付かった時の誤魔化しとか弁護とか撃退とかだ。
ボーダーには近界民に対して尋常ではない敵意を抱いている者が多いので実は空閑の安否が心配なのだ、これをやると流石の俺でも首は必須だが学校と新型の一件で空閑には多数の人命を救って貰って言葉では表現出来ない程の恩を感じているので首で済むなら安いものだろう。
「それは便利そうだな、連絡付けたいからレプリカを付けてもいいか?」
てっきり携帯番号でも交換すると思ったのだが、そこは近界民らしい。
空閑が要った内容を深く考えずに肯定するとレプリカの体の一部が餅みたいに伸びた。
伸びた先が本体と分離して、子機という表現が似合うレプリカの分身が現れた。
『よろしくヒロセ』
子機にもレプリカの意志があるみたいだ、かなり便利だな。
子機レプリカをポケットに仕舞い、空閑に別れの挨拶を述べた後にラッドを片手に本部を目指す。今日一日で色々な事が起こったが空閑のお掛けで迅さんの言っていた最低最悪の未来は回避出来そうだ。