私はブラックトリガーになりたい   作:駄作製造工場長

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第8話

「広瀬さんいい加減に起きて下さい、彼が来ましたよ」

 

木虎に肩を叩かれて目が覚める。

寝るつもりなどなかったのだが、いつの間にか寝てしまったようだ。

空調の良い部屋なのだが悪夢でも見たのかジャージの下のTシャツが汗でびっしょりだ。

ソファーの上に座って居たので身体の節々が痛いし、長時間寝てたのか頭が痛い。

木虎がなにか言っていた気がするが無視してどれくらい時間が経っていたのか確める。

 

「何時間寝てた?」

「30分程ですね。聞いてなかったみたいなのでもう一度言いますけど例の彼が来てますよ」

 

彼?誰の事だろうと周辺を見渡すとドアを背に二人の学生が立っていた。

数拍の時間を置いて二人の学生の正体を思い出した、三雲と...白髪の少年だ。

何故俺が此所に居るのかも二人の姿を見て思い出した、相当寝惚けてるな。

 

「コーヒー煎れましたけど飲みますか?」

「ありがとう...貰うよ」

 

テーブルにコーヒーカップが置かれ、木虎が煎れたという事もあり恐る恐る口にする。

イタズラにせよ目が覚めるなら良いやという気持ちでコーヒー飲んだのだが、普通の味だった。遅延系の薬品かも知れないが、俺好みにミルクをたっぷりと入れられたコーヒーを味わったらそれが失礼な考えだと察した。なんだよ鬼の木虎さんでも優しい時もあるのかい。

 

「まさか此処で寝るとは思わなかった...すまなかった」

 

緊張の糸が切れたとかで気を失ったのだろう、大した事はしてないが相当参っていたようだ。

同じ隊員の木虎と三雲、トリオン兵に襲われた白髪の少年でさえ平然としているのになんという体たらく、そんな思いから思わず謝罪を口にしてしまった。

 

「本当ですよ。広瀬さんが寝てるから気を使って校門の近くで生徒の相手をしてたんですからね、何処かのアイドルみたいに見世物にされて不愉快だったんですよ」

「滅茶苦茶喜んでたじゃん、偉そうな顔して嘘吐くなよ」

「余計な事を言わないでくれる?、そもそも部外者がどうして此所に居るのよ?」

「なんでって...俺はここの生徒だからな」

 

木虎と白髪の少年が言い争う。此所に居るのでなんとなくボーダー関係者だと思っていたが違うみたいだ。自己顕示欲に強い木虎さんが学生達に囲まれて内心綻んでいる姿を容易に想像出来たが、理由はどうあれ俺の為になっているので一応礼を言っておく。

 

「ありがとうな木虎、それじゃあ本部に行こうか」

 

概ね目が覚めたので、此所に留まった目的を果たそうとする。

あ~自ら提案したまでは良かったが規則違反の常習者二人が三雲の助けになるのか...?

 

 

 

 

 

「だから何で部外者の貴方が付いて来てるのよ?」

「帰り道が同じだけだよ、それに付いて来てるのはそっちの方だろ」

 

またも木虎と白髪の少年が言い争っている。

俺以外の奴と言い争っている木虎は珍しい、やっぱり同年代だからか?

さっきから言い争っている少年を頭の中とは言え身体的特徴で呼ぶのは失礼だな。

 

「そういや君の名前は?」

「空閑遊真、そういうあんたは...ヒロセだっけ?

こいつじゃ話にならないからあんたに質問してもいいか?」

「コイツって言わないでよ!それと年上には敬語を使いなさい」

 

空閑に煽られた木虎が叫ぶ、初対面の筈なのだが仲が悪いなぁ。

一般人相手に木虎がブチキレるとは思えないが、万が一を考えて木虎を脇に置くように空閑と話をする。

 

「それで質問って?」

「修の事なんだけど、本当にクビとかにはならないんだよな?

こいつとヒロセがさっき言ってた事が真逆だから不安なんだけど」

 

なんとなく冷たい雰囲気を纏っていた空閑だったが友達思いの良い奴らしい。

 

「半ば機密扱いだから詳しくは言えないけど、

ボーダーの隊員は上位に行けば行くほど癖のある奴が多いんだよ」

「ほぉ...どの国もそういうのは一緒なのか」

 

空閑の相槌に小首を傾げる...国?部活動とかの話だよな?

 

「とにかく上位の隊員は大なり小なり規則違反を犯していて、それを一々クビにしてったら周りの印象も悪いし、なにより貴重な精鋭が居なくなっちゃうからある程度の規則違反は許されちゃうんだ。良い方は悪いけど強者なら許されるって話だ」

 

そうじゃなくてもボーダーの責務である人命救助を果たしたんだから処罰されるのはおかしい、だって規則の目的は責務を果たす為のモノなのだから、そんな様な説明をすると空閑は納得したように頷いていたが小さく唸り始めた、なんか納得出来なかったのか?

 

「...説明して貰って言うのも悪いんだけどボーダーって極悪集団?

事前に聞いてた話とかなり雰囲気が違くてビックリしてるんだけど」

「広瀬さんが誇張するから彼が困惑しているじゃないですか...

さっきの話だとA級の全員が違反者みたいな扱いですけど、実際には片手にも満たないわよ

そもそも部外者にこんな話をしないで下さい、私達の仕事が無駄になるじゃないですか」

 

因みにA級隊員で規則違反を犯したのは俺と木虎、米屋と出水、そして最近は大人しくなったと忍田さんが呟いていた太刀川先輩の5人だ。何が片手に満たない程度だよ...自然に自分の名前を外すなよ。木虎の説明に引っ掛かりを覚えるが、ボーダーの印象を下げてしまったのは流石に不味いだろ。何が悲しくて俺達が必死に上げた好感度を自らで下げなきゃならないんだよ。空閑に向けて今までの話は実は嘘でしてたみたいに告げてお茶を濁そうとする。

 

「空閑君、さっきの話は嘘だから忘れてくれ。

そして三雲君の事は俺達が全力で庇うから二人共安心してくれ」

「あんた一体...」

 

空閑がなにかを告げようとした瞬間、地鳴りと共にゲートが現れた。

町中の上空に現れたゲートから、見たことのない形のトリオン兵が現れる。

上空から現れた新型のトリオン兵は地面には落下せずに空を漂う。

バムスターの手足を切り落としたようなフォルムは俺が製作したバムスター1に酷似している...もしも設計時のコンセプトまで一緒だとしたらこの上なくヤバい。即座に戦闘体に切り替えて町中では使い勝手の悪いライトマシンガン風のガンナー用のトリガーを両手にセットして、銃口を新型の下を向けて引き金に思いっきり力を込める。二つの銃口から放たれた弾丸が新型の下を通過、直後に何もない空間が爆発した。

 

「やっぱりか、やっぱりかよ、造った奴は頭イカれてんのかよ...」

 

自身の予想通りの反応が起こり、思わず悪態を口にする。

何もない空間が突然爆発したのは新型が投下した爆弾が俺の放った弾丸に迎撃されて爆発したからだ。つまりあの新型のコンセプトは爆撃型、俺が製作したバムスター1とまんまのコンセプトだが、実際に造った馬鹿が居るとは思いもしなかった。不幸中の幸いは新型が放ったのは爆弾であり、遠くでは視認しにくいが新型の真下を撃ちまくれば迎撃可能だと言うことだ、もしもメテオラやアステロドなどといった弾丸だった迎撃する手はなかった。

 

「木虎と三雲君、悪いけど新型の撃破を頼んでいいか?」

 

新型が爆撃するタイミングが分からないので常に新型の真下に弾丸を放っていないといけない、それだと被害は押さえられるが新型を撃破出来ないので意味がない。救援を待っている余裕はないので俺達だけで新型の対処しなくてはならない、果たして運が良いのか悪いのか...

 

「わ、分かりました...」

「貴方は引いてなさい、新型は私一人で相手をするわ」

「頼むから喧嘩するな!!絶対に防げる訳じゃないんだぞ!!!」

 

新型の真下の空間が再び爆発する。

町中に落ちている気配はないが、次の爆撃を絶対に防げる根拠にはならない。

もしも次の爆撃の迎撃に失敗したらと想像するだけで吐きそうになる。

二人に怒鳴り声を上げて早く戦闘体になることを促す。

俺の本気の怒りでビビったのか二人が慌てて戦闘体に切り替え、各々のトリガーをセットしようとする、だが三雲のトリガーだけが具現化されなかった、トリオン切れなのだろう。いきなりの戦力減だが嘆いている時間はない、今やれる戦力で最善を尽くすかない。

 

「木虎は一人で新型の撃破。あの巨体だ、絶対に町の上空で撃破するなよ」

「分かってます」

 

あの巨体で町の上空を漂っているのだ、残骸一つでも人が死傷しかねない。

じゃあ何処で撃破すれば?町中を見渡すと川が見えた...あそこなら問題ないだろう。

幸いな事に新型は川を巻き込むように周回軌道で爆撃をしている。

川の上なら爆弾の迎撃をする必要がないので、気兼ねなく新型に弾丸を喰らわせられる。

俺一人では不安だが、上下同時攻撃なら撃破出来る筈だ。急いで木虎に作戦を伝える。

 

「川の上で待ち伏せて木虎は上、俺は下から一斉攻撃で確実に撃破する。

新型はバムスター1に酷似しているけど弱点は絶対に同じじゃない、気を付けろ」

 

新型は俺が製作したトリオン兵に酷似している。バムスター1は製作時間の短さにより上部に取り付かれた際の迎撃方法がないという見たまんまの弱点があったが、新型は歴としたトリオン兵だ。兵器を名乗る以上は素人でも思い付く弱点なんて克服されているだろう

 

「分かってます」

 

さっきから同じ返答しかしないが本当に分かっているのか?...いや愚問だな。

同期の木虎だが俺よりも優秀だし、今だってテンパっている俺に比べて落ち着いている。

予想外の連続だったが作戦に穴はない、俺と木虎ならなんとかやれる筈だ、

そう意気込んでいると意識から外れていた三雲に声を掛けられた。

 

「僕はなにをすれば!?」

 

突然の事態に爪が甘くなるのが俺の欠点だ、これから作戦を行うのに幸先が悪い。

 

「三雲君は地上から新型を追い掛けて、俺が迎撃に失敗した際の救助を頼む。

C級のトリガーはベイルアウトが出来ないんだから絶対に爆弾には巻き込まれるな」

「分かりました最善を尽くします!!」

 

二人に命令を与え、作戦を開始する。

大丈夫だ、作戦は絶対に成功して、誰一人として死傷者は出さない、

そんな決意を自分に言い聞かせる様に頭の中で連呼した。

 

 

 

 

五回目の迎撃を成功させた頃に、新型がようやく川の上空を通過しようする。

橋のアーチ部分に待機していた木虎が無事に新型の上部に取り付いた。

作戦通りに同時攻撃をしようとした最中、新型の上部が爆発したような光を放つ。

 

「平気か?」

《こんな子供騙しに...シールドを張ってたので問題ないです。それでは始めましょう》

 

上部に取り付いた木虎を攻撃した新型だったが、事前に予想してたのもあって無事で済んだ。

木虎の無事を確認したので作戦を開始する。引き金には終止力を込めているので、新型の真下に向けられていた銃口を新型に直接当てるように動かすだけだ。

 

絶え間なく放たれた弾丸が新型に浴びせられる。

空を飛んでるだけあって耐久力は高いみたいだが、弾丸が当たった箇所の装甲が割れたのか新型からトリオン漏れが微かに視認できた。木虎の攻撃も効いているようなので撃破はもうすぐだろう。新型の高度も下がり始め、なんとか死傷者を出さずに撃破出来たのだと安堵していると木虎から信じられない内容の通信が入る。

 

《なんなのコイツ...もしかして自爆するつもり!?》

 

通信の内容を確める間もなく、新型の異変を感じ取れた。

突然周回移動を止めた新型が町中に落下しようと全身を捻ったのだ。

もしかして撃破されかけると人の多い場所で自爆するように設定されているのか!?

新型の設計者は本当に頭がイカれている、只の殺戮兵器じゃねぇか...

 

「木虎は降りろ!!俺が潰す!!」

 

木虎に退くように命じて、返事を待つ間もなく攻撃を続ける。

気合いの良し悪しでトリガーの威力が変動する事はないらしいのだが、少しでも早く撃破出来るようにと思いを込めて雄叫びを上げる。その間にも新型は町中への落下を進め、聞こえる筈のない住民達の悲痛な叫びが耳にこびり付く。自身の目から涙が溢れ、視界がぼやけるがそれでも新型への視線は外さない。極限の心理状態で覚醒でもしたのか、二つの銃口から放たれた多数の弾丸が新型の一点に寸分狂わずに着弾、新型に大きな風穴を空け、新型が閃光に包まれる。

 

新型が引き起こした爆発が収まると、見慣れた町並みが目に入った。

間一髪で自爆の阻止に成功したみたいだ...良かった、本当に良かった...

緊張の糸が途切れ、その場に崩れ落ちるように倒れる。

極限まで集中していたせいなのか頭が割れそうなくらいの頭痛がする。

身体を休めようと意識を手放そうとした最中、再び地鳴りが響いた。

 

飛び上がるように起き上がり、地鳴りの正体を確めようと辺りを見渡すと地獄のような光景が映っていた。上空にゲートが三ヶ所も現れ、そこから一体ずつ新型が現れたのだ。合計で三体の新型が現れ、最初から自爆をするつもりなのか三体が別々の場所を目指して落下を始める。

 

一度倒したからこそ、一体を倒すのにどれくらいの時間が必要なのか考えなくても分かる。

一体撃破するのにギリギリだったのだ、三体撃破など出来る筈もないのは馬鹿でも分かる。

底知れない絶望を感じながらも自身の掲げた使命を守るために無理矢理身体を動かす。

三体の中で自身に最も近い一体に狙いを定めて、先程同様の攻撃を加える。

距離が近いというのもあって先程よりも好調に新型にダメージを喰らわせているが、この一体と同様に落下をしている他の二体の撃破を考えると喜んでいられる状況ではない。どうにかして三体を撃破しなくてはならないのだがどうすればいい?なにをするのが最善だ?様々な手段が走馬灯のように一瞬で頭の中を駆け巡り、一つの案に辿り着いた。弾丸の密度を高めるのではなく、弾丸のそのものの威力を極限まで高めればいいのだ、銃バカらしい単純で豪快な作戦だ。

 

《広瀬さんなにを?もしかして諦めるつもりですか!?》

 

自身の案を実践すべく、両手に具現化されている銃器用のトリガーを消す。

降伏にも捉えられる行動に、通信機から木虎の焦った声が聞こえるが説明する暇はない。

お気に入りの銃器用のトリガーを消した代わりに、シューターのように銃器用のトリガーを使用せずに両手にアステロイドのキューブを具現化する。当然只のキューブを具現化するつもりはない、たっぷりと時間を溜めて身の丈を超えるレベルのキューブを具現化するのだ。体質などの関係で規格を超えたキューブを具現化する際にはそれなりの時間を有する、と言っても時間にして数秒程度なのだが今は永遠にも感じる。

 

この案で良かったのか?

もし倒せなかったら?

もしかしてたら撃ち続けていた方が良かったのでは?

ガンナーの俺が一発で当てれるのか?

戦闘体制に移るまでの数秒間で様々な不安が過るが、それを余所にキューブの大きさが自身の想定を達した。両手に具現化されたアステロイドは身の丈を優に超え、手の位置によっては自身を巻き込みかねない。両手に具現化されたアステロイドのキューブを混成して、徹甲弾を造り出す。弾丸の混成なんて初めてだが成功して良かった。これで現状で最も優れた弾丸を生み出す事に成功した、後はこれをバラけさせずに放って新型に当てればいいだけだ。

 

「当たる!!」

 

言い聞かせるように雄叫びを上げ、一体の新型に向けて両手を伸ばす。

両手から放たれた大口径の砲弾は新型に吸い込まれるように着弾、強固な装甲を有している筈の新型を一瞬で爆散させた。これで一体撃破、残りは二体、二体の高度を考えるとイケる。残った二体を撃破するために先程の動作を繰り返そうとすると、目の前に突然ゲートが開かれ、2体のモールモッドが現れた。

 

「一日に何回開くんだよ!?」

 

俺の目の前にゲートが開かれたのは偶然ではないだろう、でなきゃ運が悪過ぎるだろ。

木虎も三雲もこの場には居ない、空閑を含めた市民は全員何処かに避難したので、この場には俺と二体のモールモッドしか存在していない。一秒ですら惜しむ状況でガンナーの俺が接近戦でモールモッドを相手をする暇はないし、折角具現化したアステロイドのキューブを無駄には出来ない、それならばモールモッドを無視して新型の撃破を優先すべきか?無視か?逃亡か?攻撃か?様々な思考によって一瞬だけ身体が硬直する、その隙を突くように二体のモールモッドが俺に襲い掛かり自身の右手が切り落とされた。

 

自身の右手がモールモッドに切り落とされ、折角のアステロイドのキューブが消滅する。

この時点で二体の新型を倒す手は奪われた、俺の失態で多数を人を見殺しにしてしまった。

自身が犯した失態に対する犠牲の多さに発狂しかけるが、それは只の自己満足で詭弁に過ぎない、今まさにベイルアウトしようとしている状況でもやれる事はある、そっちが先だ。

まずはこれ以上の邪魔をされない為にも二体のモールモッドを撃破する必要がある、

折角溜めたアステロイドのキューブを二体のモールモッドに向けて放とうとすると木虎の声が通信機越しではなく直接聞き取れた。

 

「広瀬さん!!」

 

木虎にモールモッドの対処を任せて、自身は急降下を続けている新型の撃破に集中する。

いつの間にか片足も切り落とされているが、奇跡的に左手とアステロイドのキューブは無事だ。

放って当たる体制ではないし、距離的にも厳しい、なにより新型は急降下している、それでも一体の新型に向けて狙いを定めてアステロイドを放った。放たれたアステロイドは奇跡的に新型の腹部に命中したが僅かに軌道を反らしただけで撃破には至っていない。

自身の全てを賭けるように放った弾丸は空しく終わり、万策も尽きた。

二体の新型がそれぞれの場所目掛けて落下し、自爆しようといる、そんな光景を後悔の念に駆られながら見つめていると一体の新型が空中で爆散、驚く間も与えずに残った一体も突然軌道を変えて山に激突した後に巨大な爆発を生み出した。

 

地獄のような状況が僅かの間に一転した。

誰が助けてくれたんだ?そんな疑問を抱いていると通信機から聞き慣れた声が響く。

 

《こちら実力派エリート、目標の新型を撃破》

 

通信機から響いた声の正体は迅さんだった。

撃破のタイミングが絶妙過ぎるだろ、絶対に裏で伺ってだろ...

根拠のない確信で迅さんを非難しようとしたが、それよりも先に迅さんから声を掛けられる。

 

《よくやった広瀬、予知してたのよりかなりハードだったが結果は重畳だ》

「助けのタイミングが絶妙だったんですけど図りました?」

《そんな事するかっての、むしろタイミングを図ったのは敵さんの方だな。

町中にゲートが開かれた頃に警戒区域内でも多数のゲートが開かれてヤバかったんだよ》

 

迅さんから告げられた情報で顔を知らぬ敵の司令官を殺したくなる。

全ては新型で民間人を殺すためかよ、なんの目的があってやってんだよ...

 

《ところで広瀬、ひとつ質問いい?》

「どうぞ」

《俺が撃破した新型は一体、山に激突した方は手を出してないんだけどなんか知らね?》

 

ようやく一段落がついたと思ったのだが、まだ終ってなかったようだ。

お互いが得た情報を共有する為に迅さんに合流しようと提案すると肯定された。

 

 

 

 

 

「広瀬は一日振り、メガネ君と木虎はお久し振り。三人ともぼんちあげ食う?」

 

精神的疲労のせいで動くのが億劫な俺に配慮して、合流場所は俺が居る場所となった。

三雲と何故か空閑が最初に合流場所に到着し、最後に到着したのは迅さんだった。

迅さんが普段通りにぼんち揚げの布教を行うが、今の体調で食べようなら吐くのがオチなので迅さんから渡されたぼんち揚げの袋を空閑に渡す。迅さんの位置から空閑の姿が見えていなかったのか、俺と空閑が話していると迅さんが珍しく驚いた表情を浮かべていた。

 

「お前、近界民の人間だろ?」

 

空閑の様子を窺うと「しまった」みたいな表情を浮かべていたが、

迅さんから貰ったぼんち揚げが美味しかったのかボリボリと食べ進めていた。

 


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