私はブラックトリガーになりたい   作:駄作製造工場長

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前後編じゃなくて3話構成に...どうしてこうなった?


第5話

「なんで本部の私達が玉狛支部に行くのよ?おかしいと思わないの?」

 

思いません。玉狛支部に向かう道中、俺と米屋の後ろに引っ付いて俺達の行動を非難する木虎を心の中で否定する。米屋なんて面倒臭いのか知らん顔だ。

 

「なんで俺達が玉狛支部に行ったら駄目なんだ?木虎に不都合でもあるのか?」

 

不可解な行動をする木虎に突っ込んだ質問をするが、余程言い難い訳があるのか木虎が言い淀む。

 

「っ、そ、それは...他支部に迷惑を掛けるなって話よ、それに広瀬さんのトリオン兵は本部でも使える予定なんだからそれまで待てばいいじゃない」

 

「俺は待てねぇんだよ。訓練実施前にヤらせて貰えるなんてスゲェ美味しい話じゃん」

 

今まで知らん顔だった米屋が気ダルそうな口調で答える。誘った俺が言うのも何なんだが、俺と宇佐美が造ったトリオン兵との訓練は必須になるって話なので、わざわざ今やらなくてもよくね?と思ったが槍バカの台詞からそんな事は微塵も考えていないのだろう...ってか必須って事は俺もやらされるのかよ...面倒臭いな。自身が悪ノリで造ったトリオン兵が本当に訓練の一部となり、尚且つ自身も参加させられるという説明出来ない恥ずかしさに襲われていると、目的地である玉狛支部が視界入る距離まで近付いていた事に気が付く。

 

「木虎、後で金は払うから両手の菓子類を寄越せ」

 

木虎との騒動で居たたまれなくなったので、俺と米屋は菓子屋に入ることなく退散したので玉狛支部へのお土産が用意出来なかったので、木虎から奪う事にした。同期の俺が遠征部隊が選抜されたと勘違いして、プライドの高さからストレス食いに走ったんだろうが今の木虎には必要ないだろ。その事に木虎自身も気が付いているのか両手に持った袋を無言で渡してくれた。

 

「重っ...」

「両手を切り離せば軽くなるわよ?」

 

受け取った袋が予想以上に重く、思わず声に出してしまった。それを宣戦布告と受け取ったのか木虎が再び懐からトリガーを取り出した。此方もトリガーを取り出したら決闘が始まるので平謝りで事を流す、まさか生身相手に戦闘体で襲いかからないよな?下手しなくても死ねぞ?それにしても本当に重い、試しにダンベルみたいに腕を上下に上げるが片方の袋だけでも1kgはないか?重さは体感としてもこれを常習的に食い続けていれば何をどうしても太るだろう。コートとフードで全身を隠しているが脱げば相当弛んだ身体が...

 

「思考が駄々漏れだからマジでやめろ、木虎が戦闘体になってる」

「貴方って一回殺されないと分からないのかしら?」

 

いつの間にか木虎が戦闘体になり、左右にハンドガンとスコーピオンというフル装備になっていた。このままでは殺されると思い、両手の土産物が崩れない様にダッシュで玉狛支部へ逃げた。

 

 

 

 

 

ダッシュで逃げた為に逸早く玉狛支部の玄関に到着した、後ろから米屋と木虎が近付いて来ているが米屋が上手く宥めてくれたのか木虎の戦闘体が解かれていた。遠目だから分からないが木虎が落ち込んでいるとように見える。なにをやったか分からないがよくやった米屋、後で奢ってやる。

 

道中本当にゴタゴタしていたが、ようやく目的地に到着した。俺と木虎にとっては初めての玉狛支部なので、玉狛支部に遊び慣れた米屋が玉狛支部のインターホンを鳴らす。暫く経った頃に宇佐美の声と共に玄関の錠が開かれた音が鳴り、玄関のドアが開かれる。

 

「陽介遅かったけどどうしたの?」

 

米屋と宇佐美は家が隣通りという訳ではなかったが従兄弟なのだ、そんな事を思い浮かべながら改めて宇佐美を見ていると宇佐美と目が合う。

 

「...ヒロ君?どうして此処に!?」

 

宇佐美と目が合った瞬間に玄関のドアが勢い良く閉められた。半端ない拒絶だ。

 

「博愛主義の栞があそこまで嫌うとはスゲェなぁ」

「広瀬さん、また何かしたんですか?」

 

木虎からお決まりの質問をされるが言い返す気力がない。俺が宇佐美に嫌われたのは遠征部隊との訓練が関係している...のは分かっているがぶちギレ過ぎて当時の記憶が飛んでいるのだ。過去の経験からトンでもない暴言を吐いてしまったのだろう。俺がこの場に居ては二人が中に入れないので帰ろうとした最中、玄関のドアが開かれる音がした。

 

「ヒロ君怒ってない?いつものヒロ君?」

 

拳ひとつ分しか開かれていないドアから宇佐美が顔半分だけを出して、じっと俺を観察している。いつものヒロ君がなんなのか知らないけど広瀬仁は普段通りです。そんなアピールを身ぶり手振りで必死で表現していると伝わってくれたのか宇佐美がドアを全開にしてくれた。

 

「いや~まさかヒロ君が来てくれるとは思ってなくてビックリしちゃったよ。陽介もアポ取るぐらいなら事前に言ってよ」

 

米屋が俺の事を伝えてなかった?こういう自体を避けるために米屋に事前連絡をさせたのだがどういうつもりだ?非難の目を米屋に向けると目を逸らされ、そそくさと建物の中へと消えていった。あれだな絶対に謀られたのだろう。米屋に不満は感じるが結果は良かったので、友人にいらん気でも回されたと考えて木虎を手招きしながら建物の中に入った。

 

「ところで実力派エリートは居ないの?」

 

まずは宇佐美達に木虎から奪い取ったお菓子を振る舞いたいので客間と向かう、その短い道中にボーダーで一番面倒臭い人の所在を確かめる。

 

「迅さんのこと?迅さんなら人探しで外出中だよ。呼ぶ?」

 

宇佐美に案内された客間のソファーに適当に座る。そっか実力派エリートは人探し中なのか、携帯電話の常備が当然とした世の中で人探しとはキナ臭い気がするが下手に首を突っ込むのも面倒なので今の話は忘れよう。

 

「別に用事が合った訳じゃないからいいよ、それよりも宇佐美さんに言いたい事と渡したい物があります」

 

まだちゃんと謝っていなかったので仕切り直し。必要以上に真剣な雰囲気に押されたのか一同が沈黙する。

 

「遠征部隊との訓練で色々と助けてくれてありがとうございます、それなのに宇佐美殿に対して数々の失礼申し訳なく思う。これはお詫びと感謝の気持ちで現れでごじゃる」

 

自分で作った真剣な雰囲気に耐えきれずに意味不明な口調でお茶を濁す、すると動物の足音と共に小さな拍手が鳴る。

 

「ひろせがそこまでいうなら、ゆるしてやろう」

 

音の正体は陽太郎と雷神丸だった。絶好のタイミングで現れてくれたので殿様と家来の体で陽太郎に頭を下げる。

 

「そんな畏まる必要ないって、そもそも失礼ってなに?私自身に害なかったから気にしないでいいよ」

 

ふざけまくった謝罪に怒ると思ったが許して貰えた。宇佐美が慌てながら直接的な害はなかったと言っていたがどういう意味だ?当時の記憶はないが、ぶちギレた俺に八つ当たりをされて玄関先みたいに畏縮していた訳ではないのか?じゃあ何に畏縮してたんだ?

 

「宇佐美先輩、さっきから聞いてて話が見えないんですけど。広瀬さんがなにをしたんですか?...まぁどうせロクな話じゃないんだと思いますけど」

 

室内にも関わらずコートとフードで全身を隠している木虎が俺の代わりに質問をしてくれた。いい加減上着脱げよ。

 

「話は省略するけど、遠征部隊との訓練で負け続けたヒロ君が壊れちゃったの。私はその姿を見て怖くなっただけ、だからヒロ君は悪くないよ」

 

「実は壊れてからの記憶がないんだけど教えて貰っていい?遠征部隊が旅立つ日に全員から無視されてかなり堪えてるだよ」

 

「事情が事情とは言え仕方ない...かな?

原因は色々あるけど、一番は悪口かも。ヒロ君、遠征部隊全員に悪口を言ってたし...風間さんには声変わり小学生で、太刀川さんにはA級5年生、冬島さんには...」

「分かった、分かったから止めて下さい宇佐美さん」

 

宇佐美からの説明で俺が普段から心の中で愚痴っていた内容を暴露したのだと察する、これ以上は俺の精神が危ういのでストップをかける。

 

「本当に色々会ったけど皆それほど怒ってないと思うよ。風間さんと太刀川さんなんて良い訓練になったって喜んでたし...でも、帰ってきたら絶対に借りは返すって言ってた」

 

目に見てて落ち込んでいる俺をフォーローしてくれた宇佐美だったが最後の一言が余計過ぎる、あまりのダメージに隣に座っていた米屋に倒れ込んでしまった。嫌そうな顔で俺を引き離そうとする米屋に対抗していると、廊下から男女の声が聞き取れた。

 

「客人って広瀬さん達の事だったんですか、珍しいですね」

 

玉狛支部の隊員である鳥丸が俺達三人に挨拶をしながら客室に入り、フランス人形みたいな少女が続く。鳥丸は木虎繋がりで知り合いなので、俺の興味は自然と見知らぬ少女へと向けられる。玉狛支部の小南って人に容姿は似ているが髪型がまるで違うので別人だろう。玉狛支部の隊員は木崎、鳥丸、小南の三人と嵐山先輩から聞いている、女性職のオペレーターは宇佐美だし、異性に飢えている技術部からこんな少女が技術部に所属しているという話は聞いた事がない、そうなると少女はボーダーの隊員じゃないのか?

 

「鳥丸、もしかしてボーダーの施設に彼女を連れ込んでいるのか?」

 

自分なりの推理を鳥丸の近くまで寄って耳元で囁く。真面目だと思ったが大胆な奴だ、一般人をボーダーの施設に連れ込んだのがバレたら城戸司令が怒るぞ。周りに聞こえない声量で鳥丸に確認をしていたのだが、鳥丸の隣に居た少女に聞かれてしまったらしく頬を赤らめて必死に否定している。あれ?違うの?

 

「そうですけど、なにか不味い事でも?」

 

少女は否定しているが、鳥丸からはキレ気味の肯定を頂いた。えっ、どっち?双方で食い違う返答に混乱する。さっきまで必死に否定していた少女が固まり、ぶつぶつと何かを呟いている。

 

「すいません二人とも、今の話は嘘です」

 

鳥丸が無表情で真相を告げる。

 

「よくも騙したわね!!」

 

騙されたと知った少女が鳥丸に飛び掛かる。本人の話なんだから部外者の俺と違って嘘だと分かるだろ、この子は馬鹿なのか?この子の正体を知ってそうな米屋と宇佐美に視線を合わせるがいつの間にか姿が消えていた、話が長くなると踏んで訓練室に行ったのだろう。陽太郎も雷神丸とセットで消えているし、残った木虎に目を向けると危機迫る表情で鳥丸と少女を交互に見詰めていた...本人にとっては突然の恋のライバル登場だもんな、まぁ頑張れ。

 

「それでこの子は誰なんだ?新入隊員か?」

 

鳥丸に襲い掛かっていた少女の動きが止まり、少女が俺に詰め寄る。鳥丸の時にみせた飛び掛かりを警戒する。

 

「この私を新入隊員呼ばわりなんて、つまらない冗漫ね」

「あれ?もしかして二人とも面識ないんですか?」

 

鳥丸の質問に俺と少女が声を揃えて肯定する。そんな俺達を不思議そうに眺めながら双方の知り合いである鳥丸が紹介を始める。

 

「この人は嵐山隊イエローの広瀬仁さんです」

 

ヒーローショーみたいな紹介を無表情でされた。ってか情報量少なくね?

 

「嵐山隊、広瀬...あぁ思い出した、ボスが言ってた本部の技術部が造り出した人型トリオン兵なんでしょ?ふ~ん見た目は人間そのまんまなのね」

 

思わず俺と木虎で目を合わせてしまう。

 

「すいません小南先輩、その話も嘘です」

 

騙されていた小南と呼ばれる少女がまたも鳥丸に襲い掛かる。自分の生まれを疑ってしまった俺が言えた台詞じゃないがコイツ馬鹿だろ。あ~それにしても心臓に悪い嘘だった...

 

「なんで本人がそんなに驚いてるんですか?広瀬さんの両親と弟は健在、人造人間なんてありえない話でしょうに」

 

胸を擦っていると木虎が呆れ顔で見詰めていた。言われてみたら確かにそうなんだけど、ボーダーには記憶操作を可能としているので「もしや!?」と一瞬だけ思ってしまったのだ...あれ?ちょっと待ってくれ

 

「なんで木虎が俺の家族構成を知ってるんだ?言ったっけ?」

 

嵐山先輩じゃあるまいし、家族の話なんてした覚えがないのだが...

 

「言ったっけ?じゃなくて言ったんですよ。覚えてないんですか?」

 

威勢の良い返答だが声が上ずっている。まぁ家族構成なんて話題にしなくても言葉の端々でもバレるし気にする事でもないだろう。それよりもさっきからの疑問を解消しなくてはならない、未だに取っ組み合っている2人を時枝の様に手を打ち鳴らして喧嘩を止めさせる。

 

「鳥丸、いい加減に小南先輩の紹介をして欲しいんだが」

「紹介って、知ってるじゃないですか。この人が玉狛支部のエース小南先輩ですよ」

「下の名前は?」

「桐絵」

 

あれ...小南桐絵って玉狛支部の隊員だよな、木虎みたいな髪型でアタッカーだった気がするのだが鳥丸が紹介した小南桐絵は俺の知っている奴と髪型が違う。本当に同一人物?じゃあ髪はかつらだったのか?いや、もしかして双子か?俺の処理能力を超えた問題に思わず頭を押さえてしまう。

 

「もしかして広瀬さんは小南先輩の戦闘体とゴッチャになってません?小南先輩は戦闘体の髪型を変えているんですよ」

 

頭を押さえる俺を見かねて木虎が俺の疑問を解消してくれた。俺が知っている小南は髪を短くした戦闘体だったので髪型を戻した生身の小南と一致しなかった、知ってしまえばなんてことのない話だったのだが凄く疲れた。

 

「ってか面識合ったんだ」

「高等部の先輩ですし面識ぐらいありますよ。そもそも古参の小南先輩を知らないなんて非常識にも程がありますよ」

 

非常識で悪かったな、そう反論しようとしのだが小南が突然木虎に寄って来たので何事かと黙ると、木虎の顔を隠していたフードが小南によって脱がされた。

 

「藍ちゃん太った?」

「えっ、ええぇ!!止めて下さい先輩、広瀬さんが見てます!!」

 

小南と木虎のやり取りに冷や汗をかいてしまう。相手が同性で先輩だから大丈夫だとは思うが、ぶちギレた木虎は見境なく人の首を跳ねるので完全には安心出来ない。

木虎が隠したかった事を暴いてデブと罵るだけでは終わらず、小南が木虎の全身をまさぐり始めた。木虎が凶行に走ったら即座に止められるように懐のトリガーに手を伸ばそうとすると鳥丸に声をかけられた。

 

「広瀬さんと木虎って付き合ってないって聞いたんですけど本当なんですか?」

「本当だよ。そもそもお互いがお互いを嫌ってるんだから付き合うなんて無理だって」

 

その件の真相は本部では知れ渡っているらしいのだが、他支部は違ったようなので簡潔に説明をしたのだが不服そうだ。

 

「あれ?広瀬さんはともかく、木虎は広瀬さんの...」

 

鳥丸が何かを告げようとした瞬間、突然奇声を上げた木虎が鳥丸に襲い掛かり部屋の外へと追い出した。なにが起こったのか理解が出来ず残った小南へと視線を会わせると、俺同様に木虎の奇行に唖然としていた。よく分からないが木虎は癇癪持ちなので鳥丸がシメられている可能性もなくないので助けなくてはならない、木虎と鳥丸を追うために廊下に出ると同時に玄関のドアが開かれ、非常に面識臭い人が現れた。

 

「宇佐美、どこ探して広瀬に会えないし誰も連絡先知らないんだけど...って此所に居たのかスゲェ探したぞ」

 

現れたのは実力派を自称している男だった。宇佐美から人探しで玉狛支部を出ていると聞いていたが、口振りからその対象は俺だった。何用だと質問しようとしたが、予知されたのか此方が口を開く前に意味不明なお願いをされた。

 

「広瀬、嵐山隊を抜けて玉狛支部に転属してくれないか?」




誤字脱字のチェックする間もなく投稿(._.)

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