私はブラックトリガーになりたい   作:駄作製造工場長

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どんどん文字数が減って謎の前後編に、もしかしたら次話の投稿は4話に追加する形かも?


第4話

「それしてもズルいよな」

 

学校の昼休み、向かい合わせた机の先でコンビニパンをモソモソと食べていた米屋がボソッと呟いた。何が?と聞き返す前に米屋が口を開く。

 

「公平だよ、公平。あの弾バカ、俺達を差し置いてあっち側に行くなんて本当に意地キタねぇよ」

 

机に突っ伏した米屋が出水の事を非難した。非難された等の本人は米屋の言った通りボーダーの遠征部隊として近界に旅立っているのでこの場には居ない、なので言われたい放題だ。

 

「そんなに行きたかったら交渉すれば良かったのに、米屋なら選ばれたかもだぞ?」

 

未だ机に突っ伏している友人にアドバイスを送る。米屋程のアタッカーなら部隊編成無視して遠征部隊に選抜されるのは難しくはないだろう...まぁ、この時の一番の問題は三輪なんだけど。

 

「遠征部隊って言葉を知ったのはつい最近なんだが!?なんで誰も教えてくれなかったんだよ!!」

 

机に突っ伏していた米屋が起き上がり、クラスメイトの視線を無視して思いっきり叫ぶ。なんだお前も知らなかったのかよ、そんな仲間意識が生まれた直後にある疑問の答えに気が付く。俺が遠征部隊について一切知らされてなかった理由だ、きっと本部長達は俺達が先程のアドバイスみたいな行動を取られたくなくて俺と米屋に遠征部隊ついて知らしていなかったのだろう、(まぁ普通に人の話を聞いていなかった可能性もあるが)。良い手だとは思うが本部長達には一言だけ言いたい、俺は頼まれたって近界に行くつもりはない。なんで広報任務でヒィヒィ言ってる俺が更なる死地に向かうと思ってんだよ。本部長達には俺が米屋と太刀川先輩みたいな戦闘狂に映っているのだろう。

 

「共に怒ってくれるのは嬉しいが、仁も皆と同罪だからな。俺よりも早く知ったんだから教えてくれよ」

 

本部長達への不平不満を同情と捉えられたのか米屋が突っ掛かって来た。なんで同罪なんだよ槍バカ。

 

「今の今まで同族が居ると知らなかったんだから無理言うな。それに此処数日は本部に缶詰めで遠征部隊にリンチされてたんだぞ」

 

遠征部隊が任務に赴くまでの数日間の大半は近界民への訓練に費やされた、よって敵役の俺はずっと本部の訓練室に居たのだ。思いっきり監禁なので携帯で外部に連絡を取ろうとしたが風間先輩に没収された。最初はS級の2人が居たが、あまりの面倒臭さに2日目からは来なくなったので遠征部隊の相手は宇佐美と俺が設定したトリオン兵と俺だけが相手をしていたのだ。後で知ったが累計で300戦近くもしているそうだ...若干他人事なのは時間が進むにつれて記憶が薄れているからだ。記憶がなかった間に俺がナニをしでかしたかは知らないが遠征部隊や宇佐美達に妙な距離感を取られているのでいつぞやみたくブキ切れまくったのだろう...ヤられまくった遠征部隊に謝るつもりはないが、宇佐美にはキチンと謝りたい。

 

「遠征部隊に選ばれなくても、せめて敵役で皆とバトりたかった~なんで仁だけなんだよ俺も呼べよ裏切り者」

「そんな事を言われても米屋の番号とか知らないし」

 

因みに俺の携帯電話のアドレス帳には家族以外には綾辻さんと時枝の2人しか登録されていない。理由は下手な厄介事に巻き込まれたくないが、皆と連絡を取れないのは不味いので二人を半ばマネージャーもしくは仲介役にしているからだ。米屋、出水、木虎の三人は過去の減給に関わっているのでボーダーで付き合いが長いが絶対に連絡先を教えたくない。

 

「そうだった~」

 

再び米屋が机に突っ伏しシクシクと泣き始める、どうせ嘘泣きなのだろうがクラスメイトの視線を一身に浴びてしまうので止めて欲しい。米屋を宥めようと放課後に適当に奢ろうと提案したのだが気に入らなかったのか嘘泣きを止めようとしない。何でだよ?俺にどうしろと?物に釣られない戦闘狂米屋の機嫌を治すナニかを探していると、一つだけ良いモノを思い付いた。

 

「米屋、玉狛支部の訓練室で俺と宇佐美が造ったトリオン兵と戦うか?」

 

遠征部隊に勝ちたくて宇佐美と共に製作したトリオン兵、俺にエンジニアに関しての知識がないのと製作期間が短い事もあって粗悪品が大半を占めるが、前衛的なトリオン兵達は遠征部隊に好評価だった(一部のトリオン兵に関しては生身で殴られるぐらい不評だったけど)。あまりにも受けが良かったので一部は本部の訓練室で実施され、未知の敵と戦う可能性のある正隊員の必須訓練になるそうだ。訓練室で使用される為の最終調整は知識のない俺に代わって玉狛支部に任せられており都合が合えば実施前に使わせて貰えるかもしれない。そんな提案をすると余程気に入ったのか机に突っ伏していた米屋が起き上がった。

 

「おう、それそれ待ってました!」

「知ってたのか?知ったんなら一人で行けばいいのに」

「栞からのメールで知ったんだよ、因みにヤるには製作者様の仁の許可が必要なんだと」

 

米屋の発言に首を傾げる。製作したトリオン兵の使用に許可制があったとは知らなかった、だとしても俺と宇佐美の2人で製作したモノなのだから片方の許可さえあれば大丈夫な話じゃないのか?よく分からないが権利って面倒臭いんだな、まぁ宇佐美には遠征部隊の訓練でのお詫びと感謝の気持ちを伝えたかったので丁度いいや。そんな訳で放課後に米屋と共に玉狛支部に向かう事が決定したのであった。

 

 

 

 

 

 

なんやかんやで放課後となった。ボーダーとして任務の関係で学校では珍しい帰宅部の俺と米屋は約束通り玉狛支部に向かう事となり、その為の準備を進める。

 

「俺達は玉狛支部に行くんだよな?」

「そうだけどどうした?」

「じゃあ俺達はどうして女子共の列に並んでるんだ?」

 

玉狛支部に行く為の準備が不服そうな米屋。

(本音は宇佐美のご機嫌を取る為なのだが)本部の人間が他支部に遊びに行くのだがら土産物は必須だ、その為に俺と米屋は三門市で一番人気の菓子家に並んでいるのだ、俺の味覚センスが間違ってない証明に学校帰りの女子中高生でそこそこの列を作っている。

 

「そりゃ玉狛支部の方々におみやげを用意する為だ。因みに此処のお店はケーキ屋だがプリンは絶品、そしてパウンドケーキは保存料を使ってないがかなり日持ちするので忙しい林道支部長にも食べて貰える」

「真面目だね~」

 

俺の発言をどう捉えたのか米屋が真面目発言をするが、残念ながら買い被りだ。このお土産には宇佐美のご機嫌を取る以外に、素晴らしい意味があるのだ。

 

「林道支部長に気に入られるといざって時にクビにならなくても済むからな」

「前々から思ってたけど仁ってバカだろ?」

 

米屋の真面目発言を訂正すると、バカ呼ばわりされた。世渡り上手と言って欲しいものだ。林道支部長は俺が嵐山隊に入隊するきっかけをつくった張本人だが、城戸司令と真逆の思想を持っている林道支部長は言ってみれば規律に緩い。聞けば数々の違反を犯している俺が減給ぐらいで済んでいるのは林道支部長の口添えあっての事らしいので今後の為にも菓子折りの一つはしておくべきだろう...極力問題は起こさないつもりだが。

 

「それにしても長ぇよ、いつになったらバトれるんだよ」

 

店に行列をつくっていると言っても高々一桁程度だ、どんだけ我慢弱いんだよ。

米屋の退屈を自作したトリオン兵の説明で潰そうとすると、店から奇妙な客が出てきた。背丈や服装からお嬢様学校の生徒だと分かるが店から出てきたばかりだと言うのにコートのフードを深々と被っているので個人までは分からない、何処と無く足取りが隠れるように見える。お店のロゴがプリントされたビニール袋を両手一杯に持っているのが印象的だ、パーティーだとしても多過ぎる量だ。一体誰なんだろう?丁度良い事に奇妙な客は此方に向かって来ているので、誰だか確かめてやろう。米屋との会話を中断して奇妙な客の正体を確かめると、その正体は見知った者であった。

 

「木虎だよな?」

 

奇妙な客の正体は同職同輩の木虎でだった。

木虎にとって気不味い状況であるのだが、意外にも見知った相手だったので思わず声を掛けてしまった。声を掛けられた木虎が一瞬だけ体をビクッとさせ、ゆっくりと顔を上げる。正体を隠してまで行っていた事を同輩にバレたのだ、さぞ慌てるのだと思ったのだが木虎の反応は予想外のものだった。

 

「広瀬さん...?どうしてここに?え、いや、だって、広瀬さんは...」

 

まるで死人にでも出会ったかのように木虎の目が大きく見開き、譫言を口にする。

どうしたんだ?そんな疑問を浮かべている最中に、動揺を戻したのか木虎がいつもの通りの憎たらしい表情を浮かべ、尚且つ問いただすような口調で質問をされた。

 

「広瀬さん、貴方は遠征任務に就いてたんじゃなかったの?」

 

俺が遠征任務に?なんでそんな勘違いをしているのだろうと考えていると答えはすぐに見付かった。遠征部隊が決定してから出発するまでの数日間俺は本部に半ば監禁されていたので、嵐山隊の面々とは一切連絡を取っていなかった。見方によっては俺が遠征任務に就いていたと勘違いしてもおかしくはない。そうなると木虎の雰囲気が虚ろに見えたのは同期の俺だけが遠征部隊に選ばれたと勘違いしたからだろう、木虎の子供っぽさに心の中でニヤニヤしながら数日間音信不通だった理由を話す。

 

「ざっくりと説明すると、ここ数日遠征部隊の練習台になってたんだよ」

「よく考えれば広瀬さんが私を差し置いて遠征部隊に選ばれる訳がないですもんね、最初っから分かってましたよ。それにしても練習台って...カカシの広瀬さんにピッタリな役回りですね」

 

俺の説明を聞いて安心したのか、木虎が自身の勘違いを悟られないような態度を取る。いつもならここで喧嘩になるのだが、木虎の子供っぽい行動に怒りを忘れて米屋と吹き出してしまった。笑われた木虎は俺達を睨むが、人目の多い町中では睨む以上の事は出来ないので知らん顔だ。米屋という強力な味方もいるので更なる追撃をしようとした最中、木虎の異変に気が付く。

 

「木虎、少し肥えた?」

 

目に見えて肥えた訳ではないが、心なしか肥えている気がする。いや確実に太ってる。全身を覆うコートと顔を隠すフードで巧妙に隠した様だが顎が微かに二重に見えたのだ。そもそも両手一杯に持ったプリンを食べれば誰だって太る。自身の推測を答え合わせするような感覚で口に出す、そして直後に後悔をする。額に青筋を立てた木虎が懐からトリガーを取り出したからだ。

 

「すまなかった、すまなかった、本当にすまなかった。俺が悪かった。ごめんなさい。後でなんでもするから怒らないで許して下さい。此処で木虎に暴れられるとリアルに首が飛ぶ」

 

木虎が想像以上にキレたので腰を直角に曲げて誠心誠意かけて謝る。

女性に対して太ったという単語はタブーだと聞いた事があるが、ここまでとは思わなかった。

 

「...っ、特別に許して上げるわ。でも次は刻むわよ」

 

俺の謝罪で冷静になってくれたのか、取り出したトリガーをしまってくれた。

 

「木虎さんもこのお店に?」

「あ?」

 

辺り一体を支配した沈黙を払拭しようと木虎に敬語で話し掛けたのだが、人に向けてはいけないレベルの殺気を向けられた。こえぇよ、ってか怒ってるんなら帰ってくれよ、道行く人からの視線が痛いんだが...ってそこの女子高生写メをとんな!!拡散されたらまた支部長に怒られるだぞ!!

 

「広瀬さん、また怒られるような事をしたんですか?」

 

営業スマイルで無遠慮な女子高生に近付こうとしたのだが、木虎に声を掛けられたので足が止まる。嫌味な台詞だが、このタイミングで声を掛けられたという事は木虎が俺を許してくれたのだ。木虎からの珍しい歩み寄りに動揺を隠しながら質問の返答をする。

 

「今回は別件。ちょっと玉狛支部に遊びに行くんだよ」

 

ちょっと友達んちに、そんな気軽な返答だったんだが木虎から「駄目ぇぇ!!」という悲鳴が上がった。

 




ちょっとした追記(いつか登場する...かも?)
遠征部隊との訓練で負け続けて頭がおかしくなった広瀬が「打倒遠征部隊」を掲げて造られたトリオン兵達。広瀬が大まかなコンセプトを述べ、それを元に宇佐美が造り上げた。

・拠点型バムスター
宇佐美が造った100mバムスターを破格の1km級にスケールアップ、全身に施設防衛用のトリガーを至るところに設置した。近付く者を蜂の巣にする...予定だったのだが弱点のコア部分まで大型化したので狙撃に弱い。自重はともかく実際に造るとなるとボーダー本部2つ分のトリオンが必要らしい。


・防御型バムスター
コアを守る為に常に口を閉じ、全身を強固な装甲で覆った防御型のバムスター。口を閉じているので周辺の状況が分からないので半ば山勘で攻撃してくる迷惑なトリオン兵。主な攻撃はがむしゃら、じたばた、あばれる。


・自爆型バムスター
敵が近付くと問答無用で自爆するバムスター。とにかく自爆を優先するので近くに味方が居てもお構い無し。


・バムスター1
手足をなくした代わりに空を飛ぶことを可能としたバムスター。地面を向いた腹部からメテオラを放つ、その様は爆撃に近い。機動力は皆無で、上に乗られるとなにも出来ない。

・バムスター2
手足をなくした代わりに地下へ潜ることを可能としたバムスター。攻撃方法は体当たりと噛み付くのみ、どちらもトリオン体には効果が薄い。なんで造ったのか意味が不明。

・バムスター3
手足をなくした代わりに水中での活動を可能としたバムスター。三門市を流れる川を想定して造られた、深く潜り潜水艦のようにハウンドを放つ。水中ではトリガーの出力が落ちると思ったがそんな事はなかった。


・突撃型モールモッド
10本あるブレードを全て歩行に費やした潔いモールモッド。小回りは効かないがとにかく速い。頭部に生えた鋭利な角による突撃力は凄まじい...のだが三次元の機動が皆無なので敵がビルの上に登るとなにも出来ない。その場合はつぶらな瞳で相手を見つめるように設定した。


・回転型モールモッド
10本あるブレードを全て攻撃に費やした潔いモールモッド。当然ながら移動は出来ないが、腹部が出っ張っているのでコマのように回転出来る...のだが三次元の機動が皆無なので敵がビルの上に登るとなにも出来ない。その場合はつぶらな瞳で相手を見つめるように設定した。


・狙撃型モールモッド
モールモッドの背中にスナイパー用のトリガーを設置した。トリオン兵初の狙撃を可能としたものだが繊細な狙撃を再現出来るわけがなく命中率はかなり低いので、連射で補うように設定した。スナイパーに大事な「隠れる」という設定を一切を行っていないので熟練者スナイパーには良い的。


・撹乱型モールモッド
相手と一定の距離を保ち、チマチマとハウンドを放つウザイ奴。実際に敵として現れたら凄くウザイ。

・偵察型モールモッド
小型サイズのモールモッド。偵察を主な役割としているが、訓練室で偵察って必要なの?と宇佐美に質問された。


・カザマサン
一般的なモールモッドより一回り小さいが「ステルス」を装備している。モールモッドとステルスの相性は良く、攻撃時もステルスを発動出来る...だが鋭利なブレードによる足跡で位置はバレバレ。因みに同型にキクチハラとウタガワが居る。


・モールモッド(CV宇佐美栞)
負けそうになると命乞いをするモールモッド。血も涙もない遠征部隊には通用しなかった。


・名称なし。
精神攻撃を目的としたバムスター。遠征部隊の悪口が全身にペイントされている、リアルファイトにまで発展した。


・手乗りモールモッド
手のひらサイズまで小さくしたモールモッド。可愛い。商品化に成功したら一大ムーブメントを巻き起こしそうだが、捨てモールモッド問題が発生しそう。


・モールモッド饅頭
もちもちしてる。おいしい。

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