私はブラックトリガーになりたい   作:駄作製造工場長

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第14話

三輪隊に空閑か近界民であるバレてしまい一悶着起こったが、遠くで様子を伺っていたとしか思えないタイミングで迅さんが登場。あれよあれよという間に一時的ではあるが問題が過ぎ去った。

 

三輪は緊急離脱で本部へ、

迅さんと三雲はこの一件を報告する為に本部へ、

奈良阪と古寺はいつの間にか姿を消していた。

残った面子はレプリカの提案で中断した話の続きと、空閑の今後について話し合う事になった。

 

この場に留まって話し合うとまた襲撃される恐れがあるので、ボーダー隊員が襲撃しにくい市街地で話し合う事を提案した。行き先は密談がしやすく、夕食前の小腹を満たせる場所だ。行き先は俺に任せられたので、皆を案内しようとするが、その前に気になった事を指摘する。

 

「まさかとは思うが付いて来ないよな?」

 

米屋に問い掛ける。

この場に居る面子は俺、木虎、空閑、雨取、そして概ね敵対者と言っても差し支えがない米屋だ。これからボーダー本部には内緒で空閑の今後について色々と話し合うのに、敵対者である米屋が近くに居ると非常に困る。

 

「なんだなんだ、また仲間外れかよ。

俺だって話し合いに参加させろよ、友達だろ?」

 

マジかコイツ。

お前の仲間は本部へ向かっただろ

あれか?スパイなのか?

 

「俺は空閑を守る、米屋は空閑を殺す、

つまり俺と米屋は敵対してんだから来るな」

「別に俺は上の命令に従ってただけだっての、

今は命令がないから敵対してない。だからOK」

 

OKじゃないだろ。

それって命令さえあれば何でもするって事じゃん

 

「そもそも広瀬が近界民に肩入れする理由が分からん。俺達はボーダーなんだからヤっちゃう方が筋だろ」

 

米屋が不貞腐れながらトンデモナイ発言をする。

三輪とは違って本心ではなさそうだが、ドライだな。

 

「空閑には色々と助けられたからな。

筋って言葉を使うのなら、此方が正しいだろ」

 

かなり説明を省いた内容であったが、

米屋が納得した様子で「だな」と呟いた。

結局コイツはどっち寄りの人間なのか分からん。

米屋だし、単純に戦いたいだけなのかも。

 

「広瀬がそこ迄言うなら俺は帰る。

秀次の件、お前があんまり気にするなよ

それとブラックトリガー、次はガチで戦おうぜ」

 

執着していた様子だったのだが、あっさりと諦めてくれた。米屋が本部に向かって歩き出した。米屋の発言を頼りにすると本部は諦めていない様だ。当然と言えば当然だな、相手は一騎当千のブラックトリガーだし。

 

 

 

 

 

 

密談がしやすく、夕食前の小腹を満たせる場所とはカラオケボックスの事だ。かなりの良策だと思ったのだが三人からの反応は薄い。場所の不満はないみたいなので此処で話し合いをする事になった。

 

先輩風を吹かせて利用料金を全額出した。店員さんに誘導された部屋に到着。部屋の中は六畳程度にL字型のソファーと、テーブルが一つといった標準的な内装だ。全員がソファーに座る。

 

「広瀬さん、此処がカラオケですか?」

 

木虎が質問をする。

此処がって言うか、既にだよな?

ちょっと意味が分からないので曖昧に肯定した。

 

「カラオケは何をする場所なんですか?」

 

木虎が再び質問をする。まるで知らぬ場所にでも居るみたいに辺りをキョロキョロと見渡している。あれ?もしかして…

 

「カラオケ初めてとか?」

 

木虎が目線を逸らす。マジかよ。

 

「空閑君と雨取ちゃんは?」

「俺も初めて」

「私も、人前で歌うのは苦手なので…」

 

俺以外、カラオケが未経験者だった事が発覚。だから反応が薄かったのか、納得した。空閑は当然と言えば当然、雨取は理由を聞いて納得したが、木虎が未経験者なのは驚きだ。もしかして友達居なかったのかな。木虎に同情的な視線を向けてしまったが、当の本人は初めてのカラオケボックスに夢中で気が付いていない。

 

「広瀬さん、この端末は何ですか!?」

 

話の本題そっちのけで、木虎が曲をオーダーする機械端末に興味を示す。普段の木虎からは想像も出来ない年相応な反応に面を喰らう。この状態の木虎を無視すると気不味いので質問に答える。

 

「これは歌いたい曲をオーダーする端末、

操作はタッチパネルでスマフォ変わらないから

好きに弄って歌えば?俺達は話し合ってるし」

 

俺の発言に我に帰ったのか、木虎が咳払いをする

 

「すいません、少し取り乱しました。

私達が此処に居る目的は今後の為ですもんね」

 

そう言うが端末から手を離さない。

やりたいがプライドが邪魔してる系だ。

ぶっちゃけた話をすると俺達が此処に居るのって、事の全てを知っているであろう迅さんが来るまでの暇つぶしをする為なのだ。だから遊んでてもOK?

 

「今回は只の話し合いだから俺だけで充分

そもそも木虎に歌って貰わないとかなり困る」

 

隣でやりたい事を我慢している同僚が居ると、気が逸れるので適当な嘘を吐く。

 

「困る?何がですか?」

 

「カラオケボックスで最低10曲は歌わないと罰金取られちゃう」

 

流石にバレると思ったのだが、木虎の身体が硬直した。ゆっくりとした動作ではあるが端末を弄りだしたので信じだったぽい。

 

「ヒロセ、今の嘘だろ?」

 

木虎に聞こえない声量で空閑が質問をする。

俺には空閑の心を読む(?)サイドエフェクトが通用しない筈なのだが嘘がバレたみたいだ。小さく頷いて肯定をすると「悪い奴ですな」と親指を立てられて言われた。

 

「そろそろ話に入りたいけど何から始める?」

 

問題は山積み、しかも何一つ解決してない。

雨取と空閑、どちらの問題から片付けるべきか…

 

「私は後からでも大丈夫です…」

「じゃあ、お言葉に甘えて俺からで

まずはボーダーが俺達をどうするのか聞きたい」

 

空閑からボーダーの今後の動きについて質問をされる。今更だけど話し相手が俺で良いのか?知識浅いし、空閑のサイドエフェクトは通用しないし…本人が良いなら良いけど。

 

「空閑君がボーダーに対して何をするのか分からないけど、空閑君が黙っていれば今回みたいな襲撃は暫くないと思う」

「ふ〜ん、理由とか聞いてもいい?」

「戦力が足りない」

 

俺の返答に空閑が小首を傾げる。

ラッド大掃除の時に数百人規模の隊員を見ていたからだ。

 

「俺の言っている戦力は数じゃなくて質だ。今は最精鋭部隊が遠征任務で出張らっている。どれぐらい先かは分からないけど、最精鋭部隊が遠征任務を終えて帰ってくるまで、本部は空閑を刺激しない筈だと思う…よ」

 

最後言い淀んでしまったけど確率は高い。

忍田本部長は空閑を保護すると思う、そうなると城戸司令は秘密裏に独断で自前の戦力だけで戦わなくてはならないが、最精鋭部隊を除くと動かせる戦力の数と質は少ない。空閑が逃げたり反撃される恐れがあるので作戦は一回のみ、その一回を最精鋭部隊を除いて行うとは思えない。因みに大半の隊員はどの派閥に所属しているとは言えない。隊員全体の年齢が低いのとか、主力部隊が歩合制とかで、そういう部分だけ妙に緩い組織なのだ。詳しく説明をすると空閑は納得した様子だ。

 

「あの、遠征任務って近界に行くんですか?」

 

終始傍観者気味だった雨取から突然質問をされた。あれ?もしかしなくてもコレって機密だよな?まぁ空閑の時点で近界に人間が居るってバレちゃったから問題ないだろ。もしも問題が合ったら三輪を巻き込んだ連帯責任の方向で行こう。

 

「そうだよ。話では交渉とかをして惑星の調査とか、未知のトリガーを譲り受けたり、捕まっている行方不明者の救出とかするらしい」

 

風間さんから聞いた話をそのまま伝える。

どの部分に興味を惹かれたのか、雨取の目が輝いた様に見えた。

 

「遠征は最精鋭部隊がやるんですよね?」

「えっ?あ、うんうん」

 

食い気味の雨取に押される。

 

「最精鋭部隊にはどうやったらなれるんですか?」

「最遠征部隊は俺の造語なんだけど、とにかくその部隊はA級一位から三位までで構成されてるから…簡単に言ってしまえば彼等に勝てる実力があれば選ばれるのかな?いや、そう言えば城戸司令は遠征の規模を増やすらしいから勝つ必要はないのか?ってかそうなると次は草壁隊か俺等の隊じゃん…」

 

自分で言ってて落ち込んで来た。

広報部隊は遠征部隊に選ばれませんように…

そんな事を静かに祈ってるが、再び雨取に質問をされた。今度はボーダーにどうやったら入れるかだ。

 

「千佳はボーダーに入りたいのか?

もしかして千佳のお兄さんとお友達の件か?」

「えっ!どうしてそれを?」

 

空閑の発言で雨取が驚く。どうして雨取が驚いているのか理由は分からないが、空閑が三輪の秘密をバラした米屋みたいなバツの悪そうな顔をしたのでそういう系統なのだろう。

 

「うっ…すまん、修から聞いた。

あ〜、ヒロセ、千佳はその部隊に入れそうか?」

 

気不味くなったのか空閑が話題を逸らした。

 

「トリオンの素質が仮説通りならイケるかも

因みに俺はトリオンだけでA級になった男だ」

 

自慢なのか自虐なのか自分でも判断に困る内容だったのだが、雨取は「もしかしたら…」と小さく呟いた。取り敢えず期待を持ってくれたみたいで良かった。

 

「一旦測るか、レプリカ頼む」

 

空閑が装着している指輪からレプリカが現れた。

なんて言うかデジャブ、話が一周した感じがする

 

「話が逸れたけど大丈夫か?」

「ボーダーからの襲撃は俺とレプリカなら問題ないと思うよ。それに俺は目的があって此処に来たから、さっさと済ませて近界にでも戻るよ」

 

なんでボーダーの近くの学校に転校して来たのか疑問だったのだが、ボーダーに用事があったみたいだ。ボーダー隊員として橋渡し役をしよう。

 

「モガミソウイチって言うボーダー関係者に会いにきたんだけど、ヒロセは知ってる?」

「聞いた事ないな、後で上の人に聞いてみる」

「助かるよ。思えばヒロセには色々と世話になったな。最初は気味が悪かったけど、普通に良い奴だ」

 

気味が悪いと言われた。それも当然か。

何せ空閑には心を読める(?)サイドエフェクトがあるが、俺のアンチサイドエフェクト(迅さん命名)がある所為で空閑にとっては唯一考えている事が分からない奴なのだ。そんな奴に良い奴呼ばわりとは、かなり好意を持って貰えていると言える。

 

「悪いけど戻る前に一度だけでいいから迅さんに会ってくれないか?なんか俺達だけで話が進むのが恐い」

 

空閑が去る前にやって貰わなくてはいけない事を伝える。迅さんの行動から空閑が何かしらの鍵を握っているのは明らか、もしも空閑が一度も迅さんに会わずに近界に帰ったら迅さんがガチギレするかも知れないので、後で会える予定なのだが一応再度お願いをする。俺と空閑が話し合っていると、雨取の計測が終わったとレプリカが告げた。

 

『ここでは可視化が出来ないので数値化した』

 

先程の真っ白いキューブが出てくるのかと焦ったが大丈夫みたいだ。レプリカの口から一枚の紙がFAXみたいに吐き出される。その紙を手にとって見ると見慣れぬ文字が書かれていた。当然意味は分からないが、空閑には分かるのか驚いた様子だ。

 

『先程の広瀬の数値と比較してみよう』

 

俺と雨取の反応の薄さに気が付いたレプリカが比較対象を用意してくれるみたいだが、そうじゃない。レプリカに伝えると「そうだったな」と告げられた。うっかりですな。

 

『では私が直接説明しよう。千佳はトリオンの質、量ともに非常に優れている。この規模のトリオンは私が知る限りでは初めてだ。トリオン兵が効率を無視して執拗に狙い続けるのも納得だ』

 

俺と木虎の仮説は正しかった。

レプリカが俺の方を向く。あれ?何用?

 

『丁度いい機会だから言わせて貰うが、広瀬のトリオンは異常だ』

「はい?」

 

レプリカの発言に素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

『トリオンの量と質は比例するモノだが、

広瀬のトリオンは量が多いが、質は人並みだ。

極端過ぎる。そう言った意味で「文献でしか知れない」と評価したのだが、原因は分かるか?』

 

原因は分かるか、と質問されたが思い当たる事なんかない。そもそもトリオンの質と量ってなんだ?質が良ければ量もあるんじゃないのか?そうなるとレプリカの言う通りに異常なのか?ん?ん?自分で考えてて意味がわからん。

 

『不具合がないのなら気にしなくてもいい。

私の興味本位で不安にさせて申し訳なかった』

 

唸っている俺を心配してからレプリカがフォローを入れる。確かに鬼怒田さんからは特に言われてないので大丈夫なのだろう、大きな疑問は残ったけど。聞かなきゃ良かった。

 

「とにかく千佳に素質はあるみたいだな。

ボーダーに入ってみたらどうだ?修も喜ぶだろ」

 

修の名前を出された雨取が照れる。

ほ〜仲が良いと思っていたがそういう関係か。

良い事思い付いた。三雲と雨取を嵐山隊に入れてレインボー戦隊とかやろう。そして三雲と雨取をカップルにして、俺と木虎は世間にバレない様に静かに恋人を解消しよう。我ながら良い案だと思ったが、そうなると近界に行きたい雨取の為に嵐山隊が遠征任務をするか、雨取が近界行きを我慢するしかないので案が駄目な事に気が付いた。一人でガッカリしているとポケットに入れてある携帯が震える。俺に連絡を取るのは綾辻さん、時枝、迅さんの三人だけだ。誰からの連絡か予想を付けながら携帯を取り出す。メールの内容を確認すると連絡先は案の定、迅さんからであった。

 


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