私はブラックトリガーになりたい   作:駄作製造工場長

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今話は文字数が少なめです。あと特にオチなしです。


第11話

尋常ではない大きさのバムスタータイプのトリオン兵に向かって弾丸を放つ。放った弾丸の大半が目標の装甲一点に当たり、装甲を大きく損傷させた。もう一押しでトリオン兵を沈黙出来ると確信したのだが、突如損傷させた装甲が元通りに修復された。信じられない事だが目標のトリオン兵は装甲を回復させる事が出来るようだ。もう一度トリオン兵に向かって攻撃しようと銃口を向けたが、目標のトリオン兵に付けられた多数の砲台が此方を向き一斉に射撃を開始した。

 

左手にシールドを発動。トリオン兵の攻撃を防ぎつつ、右手の銃手用のトリガーで攻撃を加える。トリオン兵は装甲を回復させる能力を持つが、装甲そのものも異常な程の強度を持つ。大雑把な射撃では一点集中は難しく、トリオン兵の装甲の表面を焼くのみで終わる。

 

左手に発動されたシールドはトリオン兵の攻撃を防いではくれるが、徐々にひび割れてきた。シールドが破損する前に右手のトリガーをテレポーターに切り替え、目線をトリオン兵の右斜めに移した後に、視線に向かってテレポーターを発動する。

 

トリオン兵の攻撃範囲から逃れた。テレポーターのお陰でトリオン兵に僅かな隙が生まれた。もう一度攻撃を開始するが先程と同様に装甲を回復されて無意味に終わる。これで17回目の攻撃なのだが全て無意味に終わった。「俺」が造ったトリオン兵なのだが徐々に気力が削がれてきた。気力が削がれた事によりトリオン兵の攻撃に気付けなかったのか、自身の胴体が突然吹き飛んだのがハッキリと確認出来た。

 

一瞬の暗転と浮遊感を楽しむ間もなくマットレスのようなモノの上に落下した。

疲労で思考がボヤけているのでこのまま寝てしまおうとしたのだが、頬を軽く叩かれる。

 

「ヒロくんお疲れさま、汗だくで寝ると風邪引くよ~」

 

億劫だが瞼を開けると困ったら様子の宇佐美が紙パックのジュースを片手に立っていた。

適当な返事を述べた後に宇佐美からジュースを受け取り一気に飲み干し、思いっきり噎せた。

 

「ぷっ!...子供みたいだよ」

 

俺の行動が幼稚だったのか宇佐美に笑われてしまった。

木虎みたいにバカにされたのなら反論出来たのだが、宇佐美のは反応に困る。

話題を逸らそうと先程戦ったトリオン兵の話をする。

 

「回復型巨大バムスターのバグチェックは終わった?もう戦いたくないんだけど...」

「終わった終わった、これで全部のバグチェックが終わったから明日にでも実施出来るよ」

 

先程戦ったトリオン兵は俺と宇佐美が製作したモノの一つだ。

それらのトリオン兵はボーダーの対応力を向上させる為に本部の訓練に実施される事になった、その為に最終的な調整を数日かけて行っていたのだが今日のは特に疲れた。自身の損傷を回復させるというありきたりなコンセプトなのだが、実際に戦うとコレ以上に面倒臭いのはないと確信させられる。俺は制作者という立場上免れるのだが、俺と宇佐美が製作したトリオン兵による訓練は全隊必須課程となっている。ぶっちゃた話をすると製作されたトリオン兵はデータのみである事を最大限発揮している、つまりはチート、ヤられそうになると装甲が固くなったり不自然に強くなったりとか平気で行う。個人最強の太刀川先輩であろうが集団戦闘に長けている風間隊や嵐山隊でも倒せないだろう。話によるとポイントが動くそうだし、全隊のポイントが仲良く下がるのは目に見えている。実施される前に高飛びでもしておいた方が良いのかも知れない。そんな事を計画していると洋服の袖が引っ張られる。

 

「ヒロくんはこれからどうするの?まだ明るいしカラオケでも行っちゃう?」

 

2日間に渡る激務を終えたばかりだと言うのに宇佐美にカラオケに誘われた。

折角の遊びの誘いなのだが、今の俺に遊びに行ける程の元気はないので断る事にした。

 

「いや行かない。さっさっと帰って寝る事にするよ」

「付き合い悪いなぁ~大人になると苦労するよ?」

 

宇佐美からアドバイスを頂いたが現段階でも苦労しているのでどうしようもない話だ。

...よくよく考えると仕事とは言え、協力者である宇佐美に対して礼の一つも述べずに帰ろうとしたのはかなり失礼な行為だ。言い方は悪いが物で機嫌を取る必要があるのかもしれない。

 

「宇佐美、今回の一件ありがとうな。プログラムは専門外だから本当に助かったよ。

お礼でなにかプレゼントしたいんだけど、俺にはセンスがないから希望があると助かる」

 

俺の大雑把な性格に見合わなかったのか宇佐美が驚いている。

宇佐美の失礼な反応に対して言おうと思ったのだが、プレゼントの内容を考えているのか宇佐美の顔付きが真剣になる。相当悩んでいるのか唸り始めた...そんなに悩む事なのか?

 

「一応言って置くけど常識の範囲内で頼む」

「それぐらいは分かってるよ。ん~ヒロくんからのプレゼントなんて悩むなぁ~」

「悩んでるなら待とうか?後日会った時までに決めてくれればいいよ」

「ちょっと待って!なんか凄いアイデアが生まれそうだから!!」

 

悩んでるみたいなので時間を与えようとしたのだが宇佐美に止められた。

もの凄いアイデアを出そうとしているのか両手を頭に当てて腰を捻り始めた。

アイデアってそうやって出すものだっけ?宇佐美の考えはよく分からない。

そんな意味不明な体勢ではまともに考える事が出来ないと思ったのだが、宇佐美が歓喜の声を上げた。どうやら素晴らしいアイデアが生まれたらしい...俺にとっても素晴らしいと助かる。

 

「ヒロくんからのプレゼントは私からのプレゼントを受け取って貰える、って言うのはどう?」

 

宇佐美からのアイデアがあまりにも予想外だったので間抜けな声を上げてしまった。

プレゼントを渡そうと思ったら、逆にプレゼントを貰ってたとかどんなミステリーだよ。

この場合のプレゼントってなんだ?鉛玉か?何にせよ受け取りたくない。

 

「そんな顔して疑わないでよ...

私達って年不相応にお金を持ってるから、そんなに欲しい物がないんだよね。

だから私がスゴく満足出来る方法を選んだ方がヒロくん側もありがたいでしょ?」

「それが逆プレゼントになると?因みに内容は?」

「私特製の眼鏡をプレゼントして、ヒロくんにはそれをずっと掛けて貰う」

 

一緒に眼鏡人口を増やそう、そう告げた宇佐美の表情はとてもイキイキしていた。

米屋から生粋の眼鏡っ子だと聞いていたが布教活動をするレベルだと思わなかった。

お礼する側としては宇佐美が喜んでくれるのは嬉しいのだが、裸眼1.3の視力を誇る俺が眼鏡を掛けたら日常生活に支障が出てしまう。その事を宇佐美に伝えると大丈夫だと告げられた。

 

「伊達眼鏡だから安心してよ」

「冷静に考えるとそれって無意味なんじゃ...」

「トリガーの技術を取り入れるからテレビとかパソコンを単体で使えますけど?」

 

宇佐美が胸を張って自慢する。

戦闘体の網膜ディスプレイみたいなモノか、生身で使えるのは興味深いな。

一生装着という枷があるが、宇佐美が製作した多機能伊達眼鏡ならば良いのかも?

出会いは短いが、トリオン兵の一件で信用に値する人だと確信したので大丈夫だろ。

伴侶を決めるような選択なのだが、考えるのが面倒臭くなって来たので案を受け入れた。

 

眼鏡人口が増えたのが余程嬉しいのか脇を上下に動かしている。

そんなに嬉しいのなら配属先が未だに未定の生粋眼鏡男子三雲修でも紹介しようかな。

そんな事を考えていると、懐に忍ばせていた携帯端末が数回震える。メールだろう。

携帯端末を手に取り、画面を見るとメールの送信主は予想通り迅さんだった。

 


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