神を喰らいし者と影   作:無為の極

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第214話 重い空気

 情報管理局が介入した事は少なからずアナグラにとってはストレスが溜まる部分が多々あった。

 一番の要因は職員の目。何をするにしてもまるで監視するかの様な視線は何もしていないにも関わらず、まるで犯罪者でも見るかの様な視線にされされる事から、職員だけでなくゴッドイーターにも影響をもたらしていた。

 

 

「ったくいい加減にしてほしいよね。まるで自分達のやっている事が全部正しいみたいな目で見るんだよ」

 

「リッカさんの気持ちは分からないでもないですけど、今は取敢えず榊博士も管理局の行動の邪魔はしないって言ってる訳ですし、多少は仕方ないんじゃ…」

 

 リッカの言葉にヒバリも思う部分は多々あった。ここ数日の間のミッションに関しては何かにつけて管理局の職員が監視しているかの様な視線を何度も送っている。もちろん被害妄想だと言えばそれまでの事ではあるが、リッカが言う様に視線による集中力の低下は認めざるを得なかった。

 

 

「だってあいつらって態々こっちが開発している物までもジロジロ見てくるし、気味が悪いんだよ!あいつらに部外秘って言葉は理解出来ないんじゃない?」

 

「リッカさん。声が大きいですよ」

 

 余程腹に据えかねたのかリッカの語気が徐々に強くなる。しかし、ここはアナグラのラウンジ。今は偶々管理局の局員が居ない為に問題無いが、ここに誰かが居ようものならば何かと都合が悪くなる可能性を秘めていた。

 もちろんそんな事をリッカも知らない訳では無い。誰も居ないのを確認した上で口に出していた。

 

 

「このままだとストレスでどうにかなりそうだよ……」

 

 今回の作戦群に関しては情報管理局とブラッドが合同で任務に就く事はヒバリも事前に耳にしている。既にお互いの力量と極東のアラガミの強度の確認で何度かミッションに出向いているのは知っているが、問題なのは極東支部のゴッドイーターの処遇だった。

 リッカの言葉通り、職員は当然の様な顔であっちこっちに出没している。どんな支部にも最低限の秘匿事項があるのは当然の事ではある。今回に至っても事前に螺旋の樹の調査だと聞かされているが、やはり完全に意識はそれだけに向いていない事だけは誰の目にも明らかだった。

 技術班でこれならば、現場はどうなっているのだろうか。ヒバリもオペレーターの立場で見れば討伐に対して集中力の低下は最悪の結果を招く事を誰よりも理解している。

 このままでは問題が起きるのも時間の問題だと思い出していた。

 

 

「一度、弥生さんに相談するのはどうでしょうか?きっと何らかの対策を練る事も出来ると思いますけど」

 

「でも最近って弥生さんも忙しいんじゃないの?ここ最近はここでもカウンターに入ってないみたいだしさ」

 

「そうですね……そうだ。適任者がいるじゃないですか」

 

 ヒバリの顔に笑みが浮かぶ。この場合の適任者が誰なのかは直ぐにリストアップされる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、俺に何をどうしろって?」

 

 新兵の教導の合間にヒバリとリッカがナオヤの下を訪ねていた。既に休憩なのか、まだ新米とも言える人間が訓練室の真ん中で息も絶え絶えに大の字になって寝ている。

 ナオヤを見れば汗も碌にかいてないにも関わらず、大の字のゴッドイーターの周囲には汗が水たまりの様になっていた。

 

 

「最近、管理局の局員が何かと居るでしょ?いくら螺旋の樹の調査だと言っても度が過ぎるからこっちも困るんだよね。少し前もリンクサポートシステムの事で根掘り葉掘り聞いて来たかと思ったら、何かメモしているし……あれはまだ部外秘の技術がまだあるんだよ」

 

「ああ……あれな。俺の所にも来たな」

 

 リッカの言葉にナオヤも何かを思い出したかの様な表情を浮かべていた。元々リッカとは違い、ナオヤが手掛けている物は神機の開発に関する物が多く、実際には殆どの内容は本部にも知られた内容だった事もあってか、あまり来る事は無かった。

 

 

「やっぱり来たの?」

 

「来たけど追い出した。普段なら問題無かったんだが、丁度エイジの神機と北斗の神機の調整中だったんでな。何かブツブツ言ってたけど、そこは話合いで…な」

 

 技術班の中でも最大の問題でもあるエイジと北斗の神機の調整はナオヤが事実上一人で請け負っていた。本来の性質とは違う両者の神機の調整は緻密な作業を求められる事が多く、エイジの神機は本来の機能が暴走しない様に厳重な封印が施されていた。

 

 神機使いが神機に殺される訳にもいかず、また万が一の際にはアリサからもクレームが来る。ナオヤとて親友の命を軽々と扱う事を良しとは考えていない以上、それに関しては作業の際には誰一人部屋に入れる事はしていない。

 また北斗の神機に関しても北斗の喚起の能力を活かした戦いは時として神機の性能をギリギリまで引き上げる。

 その結果、常時確認しない事にはエイジ同様神機が暴走する可能性があった。

 

 

「話合いって、まさか拳で語ったの?」

 

「そこまでの事はしないさ。やっても良かったんだが、そうなると兄貴の手を煩わせる事になるからな。俺だって面倒事は嫌だから少しだけ殺気を込めて睨んだだけだ」

 

「へぇ……そう」

 

 半ばジト目とも言えるリッカの視線にナオヤは何か思う事があったのか、自分の視線を逸らしている。ここに居る時点でゴッドイーター相手に教導する人間が一般人が相手になるとは思えないのはその場にいたリッカだけでなくヒバリも同じだった。

 教導教官に殺気を込めた視線を向けられれば、曹長クラスのゴッドイーターとて怯む。

 昇進試験の際に避けて通れない関門を何の心得も無い人間が受ければどんな結果が待っているのかは考えるまでも無かった。

 

 

「で、俺に何か用なんだろ?でなきゃこんな所に来るのは珍しいだろ?」

 

「そうそう。実は今回の件で弥生さんに相談したいんだよ。でも、弥生さんも最近は忙しいのかラウンジには見ないから、ナオヤから連絡取って欲しいんだ」

 

 その時点で何となく何を依頼したいのかナオヤも想像出来ていた。

 確かに意識するなと言われても常時監視の様な視線があれば誰だってストレスは溜まる。ここ最近の整備を見ればそれが顕著に出ているのか、これまで大した傷もつけずに居た人間が今では大きな傷を作って帰投してくる。

 集中力の低下が引き起こすそれがどれほど危ういのかは直ぐに理解出来た。

 

 

「今後の生存率の事もあるからな……取りあえず連絡はしてみるさ」

 

 ナオヤの言葉にリッカの表情が晴れ渡る。ナオヤが連絡した事によって事態が変わればと思いながらヒバリは2人のやり取りを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だか癒される~」

 

「当初の目的とは違う様にも思えるんですけど…」

 

 弥生からの回答は極めてシンプルだった。ここでは何かと話がしにくいからと、リッカが呼ばれたのは屋敷だった。アナグラとは違い、屋敷の存在を完全に情報管理局が認めているのは現時点では局長のフェルドマンだけだったのか、ここに職員の姿は見えなかった。

 元々アナグラからの直通の通路は隠し扉の向こう側にある事だけでなく、通路の情報そのものも開示されていない。

 そんな中でリッカは久しぶりに羽を伸ばすかの様に温泉を堪能していた。

 

 

「あのままだと絶対に息が詰まるんだよ。流石に居住部分にまでは来なくても、やっぱり同じ空間に居るかと思うと気分が悪いんだよ。ヒバリだってそうでしょ?」

 

「それは確かに否定しませんけど……何だか私達だけみたいで申し訳ないですよ」

 

 当初呼ばれた際には今後の事もあるからとリッカだけでなくヒバリも呼ばれていた。局員のクレームだけならここに来る必要は無いはず、にも関わらずヒバリまで呼ばれた以上何らかの目的がある事だけが分かっているだけだった。

 

 

「あれ、リッカさんとヒバリさんも来てたんですか?」

 

 浴室の扉が開くと同時に、そこに居たのはアリサとフランだった。ここに来る際にフランがここに来る事をヒバリは聞いて無かったのか、少し驚きを見せながらも持ち前の頭の回転の早さで自分と同じ様な要件がある事を悟っていた。

 

 

「アリサは分かるけど、フランが何で?」

 

「実は弥生さんから呼ばれました。詳細についてはヒバリさんにも関係があるので、恐らくはこの後にその話が出るかと思います」

 

 身体を洗い、湯船に浸かる。フランもやはりストレスを感じていたのか、お湯に浸かる事でリラックスした表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで来て貰ってごめんなさい。忙しかったでしょ?」

 

「いえ。こちらこそ久しぶりストレスが少し解消できましたので」

 

 温泉から出ると、そこには弥生が机の上に置かれた書類を積み上げ、何かと格闘していた。普段であればこうまで仕事をため込む姿を見た事が無いのかフランも含めた3人は物珍しそうに見ている。

 既にアリサは用事があるのかこの場には居なかった。

 

 

「そう。なら良かった。この後エイジが食事作ってるから食べて行くと良いわよ。今回来て貰ったのは情報管理局の件なんだけど、これは私からでは無くて当主からフランさんに依頼された要件があるの」

 

「私に…ですか?」

 

「ええ。そんなに緊張する必要は無いんだけどね」

 

 そう言いながら弥生は今まで見てい居た書類を片付け、3人に対し今後の予定を話していた。既に情報管理局から極東支部に対し、一切の情報の開示が無いだけでなく、今後の予定をひとしきり説明していただけに過ぎなかった。

 当初は驚いた表情で話を聞いていたが、既にフランは弥生から聞かされていたのか、改めてその内容に頷いている。

 ヒバリとリッカも何となくだが、ここで何かの極秘の会談があったのではと推測はするも、弥生の考えを全部理解した訳では無かった事から、終始話を聞くに留まっていた。

 

 

「となると、フランさんの分を穴埋めする必要がありますね」

 

「その件に関しては既に問題無いの。奥様と榊支部長は了承しているから。後は向こうの目を少しだけくらます程度なんだけど、それもこちらの方で手は打ってあるからフランちゃんが心配する必要は無いから」

 

 笑顔で言われるとそれ以上の事は何も言う事は出来ない。既に水面下で事が動いている以上、今出来る事はこの事実を知らなかった事にするだけだった。

 

 

「それと、リッカちゃんの件だけど、これもあと少しだけ我慢してほしいの。近いうちに何とかするから…ね」

 

「…弥生さんがそう言うのであれば分かりました」

 

 ウインクまでされた以上、リッカも弥生の言葉を聞く事しか出来ないでいた。対策が既に立っているのであればそとはその日が来るのを待つしか出来ない。

 今は少しだけ我慢するしかないと思っていた矢先だった。

 

 

「お食事が出来ましたよ」

 

 アリサが何気なく襖を開けると、その先には既に用意されていたのか食事の準備が出来ている。元々業務が終わってから来た事もあってか、既に時間もそれなりになりつつある。先ほど聞かされた以上、今はその好意に甘える事にしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、ここ最近コレット特務少尉とよくミッションに出てますが、その後何か分かったんですか?」

 

 情報管理局の下でブラッドは螺旋の樹周辺のアラガミの一掃と同時に、特務少尉でもあるリヴィとの連携を受けたミッションを何度もこなしていた。極東支部の中でもブラッドとそれ以外の部隊の扱いが異なるのはある意味では仕方ないものの、介入してからの情報が一向に開示されない事から、徐々にブラッドに対する視線も厳しい物へと変化しつつあった。

 既に立ち位置が特殊である事は支部内の人間は頭では理解しているが、一方的な命令と吸い上げた情報の共有化、周囲にもたらす雰囲気はこれまでの中でも最大とも言える険悪感は管理局の局員が居ない場合、ブラッドへと向けられる。

 本来であれば公言したい所だが、守秘義務が課せられている事もあってか、厳しい視線に耐える事しか出来ないでいた。

 

 

「いや。周囲の掃討だけだ。ただ……」

 

「どうかしたんですか?」

 

「気のせいかもしれないけど、リヴィの腕輪の色が黒かったな。今は包帯で隠しているけど何となく俺達の腕輪に似ている。何で隠してるのかは分からないが」

 

「黒い腕輪…ですか」

 

 腕輪の色が赤ではなく黒の時点で、リヴィには通常のP53偏食因子ではなくブラッド同様のP66偏食因子が適合しているのは間違いない。しかし現時点で態々隠す必要性は何処にも無く秘匿しておく必要性がどこにも見えなかった。

 ただでさえ情報の開示がされない所に加え、腕輪の色まで違うとなれば更に空気が悪化する。最悪はその悪意がブラッドに向く可能性も出ていた。

 

 

「情報管理局がこれまでに情報を開示したケースはそう多くありません。一先ずは今あるミッションをこなすしか無さそうですね」

 

 シエルの言葉に北斗も頷く事しかできない。既に提示されたミッションの半分程が消化された事もえり、漸くゴールが見え始めていた。

 

 

「饗庭隊長。すまないが少し時間は大丈夫だろうか。今後のミッションの件で確認したい事がある」

 

「それは構いませんが……念のため、副隊長のシエルも同行させます」

 

「……まあ良いだろう。今後の事はブラッド隊の事だけでは無いからな」

 

 既にミッションの数をこなした事で、漸く馴染みつつあったのか、リヴィの動きが理解出来る様なレベルにまで追い付いていた。

 完全に背中を預けるにはまだ遠いが、それでもこれまでのミッションの行動から考えれば及第点とも考えるまでに達していた。

 

 

「忙しい所すまない。次からのミッションに関してだが、これまでとは違い、当初の予定通り螺旋の樹の調査の下準備に入る。先だっての説明であった様に、巨大装置の安定化と周囲の探索も含まれてくる。これまでの調査で分かっている事は、説明の通りだ。何か質問はあるか?」

 

 以前のフェルドマンから説明されたのは今回の最大の目的でもある螺旋の樹の内部調査に関する特殊ミッションだった。

 事前に分かっているのは螺旋の樹は巨大なアラガミであると同時に生体反応がハッキリと確認出来る点。これに関しては既に一定の調査を極東支部もしていた事からブラッドとしてもある程度の内容は既に知っていた。

 

 

「特にありません」

 

 全員の言葉を代弁する様にシエルが答える。螺旋の樹の内部調査に伴うミッションは人知れず開始される事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで来たのは久しぶりだな」

 

「ジュリウスは今もあそこで頑張ってるのかな」

 

 螺旋の樹を護るかの様に居たアラガミはブラッドの手によって討伐が完了していた。 感応種では無かっただけでなく、何時もであれば複数の討伐内容だったが、今回は単独だった事もあり、危なげない内容で完了していた。

 最接近した事により、何時もとは違い上空を見上げる程の高さ。ナナが言う様にこの中では未だジュリウスが一人戦っている。

 あの時の場面が脳裏に浮かんだのか、それ以上の言葉を発する者は誰一人いなかった。

 

 

「接地する場所をある程度ピックアップしてくれないか。今回の任務は接地場所の確保と同時に実地調査も含まれている。手分けして幾つかのポイントをピックアップしてほしい」

 

 感慨深い感情の事はまるで無かったかの様にリヴィはブラッドに指示を出す。元々それが本来の任務である以上、一旦ジュリウスの事は置いておく事にし、それぞれが設置できる場所の選定作業へと移っていた。

 

 

 









「そう言えば、弥生さんが奥様とって言ってたけど、それって誰?」

 食事の準備が終わったからと先ほどの言葉を思い出したのか、リッカは何気ない一言の様にアリサに聞いていた。弥生もエイジとナオヤ同様にここに住んでいるのは以前にも聞いて事が有ったので気にもしてなかったが、奥様の言葉に誰が該当するのかは想像すら出来なかった。


「奥様って何の事です?」

「さっき、今回の件でフランにお願いするからって事で榊博士と奥様にも了承を貰ってるって聞いたからさ」

 次々とお盆から出された食事をリッカとヒバリの目の前に置いて行きながらも、アリサは少しだけ困っていた。この屋敷に於いて当主は無明の事を指すのは周知の事実。しかし、奥様と言われる人物に該当するのは一人だけだった。
 果たしてその事実を言っても良いのだろうか?既に弥生が話した以上口に出しても問題無いが、果たして理解してくれるのだろうか。そんな葛藤がアリサの中に存在していた。


「ええっとですね……」

「リッカさん。ツバキ教官の事ですよ」

 言い淀むアリサに助け船を出したのはヒバリだった。以前にもハルオミから聞かされた事で随分と驚いた記憶はあったが、どうやら本当にそれ以降は何の音沙汰も無かった。

もちろん、秘匿事項で無い為に態々公表出来ない訳では無いが、それでも普段から接する状況はアリサにとっては言い淀んでしまうのは仕方ない事でもあった。


「ひ、ヒバリさん。良いんですか?」

「別に秘匿事項って訳でもありませんし、よく見れば左手に指輪もしてますから問題無いんじゃないですか?」

 ヒバリの言葉に漸くアリサもそれを思い出していた。ここ最近は屋敷に2人が居るケースは多く無かった。現時点では情報管理局が来ている事も一因だが、何かにつけて本部へ出張する事も多く、その際には晩餐会の参加が事実上義務付けられている事もあってか、よく見れば左手の薬指には鈍く光るリングは確かに存在していた。


「ヒバリさんはそれでも良いですが、私にとっては…身内みたいな物なので」

「まあ、アリサはそうだろうね。でもさ、普段はアナグラだと言いにくいけど、ここでは何て呼んでるの?」

「えっ?」

 リッカはからかうのではなく、単純に好奇心から来る言葉ではあったが、これまでの事を思い出せば、確かエイジはツバキさんと呼んでたが自分が直接呼んだ記憶は無かった。それ故にどう答えていいのかアリサには分からなかった。


「あの、それってリッカさんが将来の事を考えた上での質問でしょうか?」

「なっ……そんなんじゃ無いよ。ただ好奇心から聞いただけで…」

 援護射撃とばかりに飛び出た言葉はフランからだった。色恋にはまだそこまで関心は無くても、目の前居る3人はそれなりのはず。フランとて普段のツバキが厳しい事はオペレーターである以上は知っていた。


「そうだったんですか。いや~リッカさんがね~」

「もう!そんなんじゃないから」

「そうだったんですか…詳しい事は私もエイジから聞いておきますね」

 顔が赤いままの反論に説得力は無かった。アリサは既に結婚し、ヒバリとタツミとの仲はアナグラでは中堅以上は殆どが知っている。
 既にツッコミ所は少ないが、このメンバーの中では一番リッカがそのやり玉にあげやすかった。


「あのさ、フランの分が出来たから持って行ってくれる?」

「あっ。すぐに行きます」

 エイジに呼ばれた事によってアリサはこの場から離脱していたが、まだヒバリとフランがこの場に居る以上、回避は困難を極めるのは間違い無い。まだ時間にはゆとりがあるからなのか、4人は暫し時間を忘れ話に夢中になっていた。





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