神を喰らいし者と影   作:無為の極

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第149話 解決

 

「ロミオ先輩が居ない?」

 

 ロミオが走り去ってから暫くした後、姿を確認できないとナナから報告を聞いていた。当初は居たたまれなくなったから自室にでも行ったかと思っていた物の、扉を叩いても声をかけても返事がなく、その結果としてヒバリに確認してもらった際にアナグラには居ない事が判明していた。何らかの形跡があれば違ったのかもしれない。だが、ロミオの部屋は最初から誰も来ていなかったかの様にひっそりとしていた。

 

 

「さっき部屋に行ったんだけど、反応が無かったからヒバリさんに確認してもらったんだ。だけど、この近辺には居ないって」

 

「あれから時間もそれなりに経過してますし、このままでは偏食因子の投与のリミットを超える可能性があります。ロミオとてそんな基本的な事位は知ってる筈ですが」

 

 ゴッドイーターの超人的な能力は、適合試験の際に投与されるオラクル細胞の影響によるもの。もちろんこれがノーリスクで使える訳では無く、一定時間に対抗となるアポドーシスを含んだオラクル細胞を摂取する事が義務付けられている。

 万が一規定の時間を過ぎた場合、待っているのはアラガミ化の未来のみ。それはP53だけではなく、ブラッドに投与されたP66も同じだった。ゴッドイーターになった際に、真っ先に教えられる事実。最低限やらねばならない事が出来ないとなれば、最悪の未来になる可能性が濃厚だった。

 

 既に時間が差し迫っている以上、早急に見つけない事には今まで仲間だった者が討伐対象となる。これは神機使いとして一番遵守しなければならない物でもあった。シエルの言葉に、されもが僅かに背筋が冷える。これまで仲間だと思った人間に神機を向ける未来を無意識の内に想像したからだった。

 

 

「でも、どこに行ったのか分からないんだよな?」

 

「手がかりが無さ過ぎるんだ……予測すら出来ん」

 

 焦りから来る焦燥感は思考を閉ざす。このまま手をこまねいている訳にも行かず、今はどうした物かと悩んでいた時だった。

 

 

「あの~皆さん。私はアナグラには居ないとは言いましたが、場所が分からないとは言ってませんが?」

 

 ヒバリの何気ない一言に今まで悩んでいたブラッドの面々が固まる。一番最初に聞いた際にはロミオの事情は伏せたままだった為に、ヒバリは何も聞かず、純粋に答えただけだった。

 しかし、シエルの一言でヒバリもまた気が付く。無断で外に出ている事を理解したからなのか、その作業は早かった。元から極東の所属であれば気にしないが、他から来るゴッドイーターにはビーコンの識別情報を設定する事が義務付けされている。本来であれば各自にも伝えた方が良いのかもしれないが、ここではそれを伝える事はしなかった。

 信号から来るのは位置情報だけでなく、バイタルなど生体信号も送られる。オペレーターとしての常識をそのまま事実を伝えていた。

 

 

「ヒバリさん。それはどう言う事でしょうか?」

 

「えっと。皆さん、腕輪には生体確認の為にビーコン信号が出ているのを知らないんですか?」

 

「え………」

 

 

 ヒバリの言葉に沈黙が支配する。アナグラでは当たり前の話ではあったが、恐らくフライアではそんな事になる可能性がないからなのか、誰もそれ以上の言葉を発する者は居なかった。だからなのか、誰もが完全に固まって反応が遅れている。今はただヒバリを見る事しか出来なかった。

 

 

「ロミオさんでしたら、ここから北に向かった所に……すみませんが、皆さんにはこれから緊急出動して頂きます。ロミオさんの反応地点にアラガミが接近しています。詳細は不明ですが、反応の大きさから中型種以上の可能性があります。皆さんは速やかに出動して下さい」

 

「ロミオは今丸腰だ。すぐに出るぞ!」

 

 捜索から一転し、急遽討伐へと移行する。万が一の可能性を考え、今は任務へと意識を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拙い。今はここからすぐに離れないと」

 

 サイレンが未だ鳴りやまないままなのは、アラガミの接近を意味しているから。サイレンを聞いたからなのか、ロミオはアラガミの気配が少しづつこちらへと向かっている事を感じ取っていた。

 幾らゴッドイーターと言えど、神機が無ければただの人と何ら変わらない。となれば、今出来る事は見つかる前にどこかに身を隠すか、この場から離れる事しか出来なかった。なぜ神機を持ってこなかったのか。丸腰のままで何ができるのか。今のロミオには自分に対する憤りしかなかった。

 

 

「ここにアラガミが来るのか?」

 

「絶対とは言えないけど、この感覚だとこっちに向かっている気がする。この辺に集落とかある?」

 

 ロミオがここに来るまでに民家らしいものを目にした記憶は一切なかった。実際にこんな開けた様な場所にアラガミ防壁もなく家があればアラガミにとっての格好の餌食となる。そんな事は分かってはいたが、敢えてロミオは老夫婦に確認していた。

 

 

「この辺りはそんな物は無い。わしらの家の周辺がこうやって山に囲まれているからここに居るだけで、他には無いな」

 

 老夫婦の言葉に、ロミオは思わず舌打ちしたい気持ちになっていた。本来であればアラガミの気配を感じるなんて事は戦場以外ではまずありえない。にも拘わらず、こうまで存在感が分かるのであれば、それは紛れも無く大型種である事が容易に想像できていた。だからと言ってそれをそのまま口にする事は出来ない。下手に情報を開示すれば、今後の行動に差支えが出る可能性があった。

 自らを護る神機が無い以上、ロミオはどうすれば良いのかと思考する。やれる事は一つだけだった。

 

 

「多分、あそこから来るから反対側に逃げるんだ」

 

「ロミオちゃんはどうするの?」

 

「俺?……俺はゴッドイーターだ。皆を護るのが仕事だから大丈夫。アナグラには高感度のレーダーもあるからすぐに誰かがここに来るから大丈夫だって。だから来る前に早く逃げて……いや、どこかに隠れてくれ。今からだと多分間に合わない」

 

 神機を持たないゴッドイーターが何も出来ない事位は子供でも知っている。今のロミオには武器となるべき神機を所持していない。そんな分かり切った事を敢えて口にする事でロミオはここで時間を稼ぐ事を決意していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「到着まであと1分です。各員の準備はよろしいですか?」

 

 移動のヘリの内部では、現地の情報が刻一刻と流れてくる。討伐の対象はガルム種。感応種で無い事は間違いないが、それ以外に安心できる要素は何処にも無かった。警報が出てはいるものの、近隣で動く部隊は何処にも無い。元から人の気配が薄い場所の為に、精々が警報を発する程度の施設しか無かった。そんな場所にロミオの反応がある。ミッションの合間であれば時間稼ぎも出来るが、丸腰で出来る事は何も無い。

 万が一、間に合わない様であれば最悪の未来しかありえない。前回のナナの際にはギリギリだったが、この距離であれば確実に間に合う事だけが唯一の救いだった。

 

 

「もう……ロミオ先輩には困ったもんだよね。神機も持たずに出るなんて」

 

「ここからなら十分間に合うだろう。後は現場に着いてからの判断になる。ロミオの事はともかく、事前情報では一般人もそこには居るらしいからな。総員心してかかれ」

 

 ジュリウスの言葉に改めて全員が気を引き締める。時間が経つにつれて現地が肉眼でも見えてくる。幸いにして被害は無いが、それでも何か起こる様な事だけは避けたいと、その場にした全員が再度認識していた。逸る心を落ち着かせるかの様に誰もが神機に視線を動かす。ここから先、やるべき事は一つだけだった。

 

 

「これより、ロミオの救出とアラガミの討伐任務を開始する」

 

 ジュリウスの言葉に全員がヘリから飛び降りていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ああは言ったけどさ)

 

 ロミオの言葉に納得はしないながらも、素の肉体での移動を考えればロミオの言葉に従うより無かった。誰かを庇いながら移動する事は極めて困難なのは言うまでもない。事実、ロミオ一人であれば恐らくは何とか出来るかもしれない。アラガミの事を理解すれば当然だった。

 

 スタングレネードも無い中での逃走が不可能である事は誰もが知っている。老夫婦もまた同じだった。アラガミの前に立てば他に意識が向く事は無い。幾ら獣の様な姿をしていても、嗅覚までがそれではない。だからこそロミオは自身を鼓舞するかの様に老夫婦の姿を完全に見送ってた。

 自分の感覚が正しければここに来るまでそれ程かからない。先程までは何となくだったが、ここに来て明らかに大型種である事を実感していた。丸腰で出来る事は一つだけ。この場から少しでも遠くへと移動する事だった。

 

 

 

 

 

「ロミオ先輩!忘れ物しちゃダメだよ」

 

 丸腰のままに立ち向かおうとした矢先だった。自分よりもはるかに上からナナの声が聞こえてきた。アラガミの襲撃に対して派遣されたのは第1部隊ではなくブラッド。本来であれば聞こえて来るはずのない声にロミオは戸惑っていた。

 

 

「なんで?だって俺……」

 

「ロミオ。何を考えているかは分からないが、今は目の前のアラガミに集中するんだ。ここには守るべき人もいるのだろ?」

 

 まるで見ていたかの様なジュリウスの言葉に少しだけ驚くも、今は目の前のアラガミを一刻も早く討伐する必要があった。ガルム種の最大の特徴は遠吠えによって他のアラガミを呼び寄せる能力を持っている。

 ただでさえ面倒とも取れるアラガミに増援が来られた日には苦戦する以外の何物でもなかった。実際にガルム種が厄介なのはデータ上でも知られている。ジュリウスの言葉にロミオは無意識の内にナナの持つケースへと視線が動いていた。

 

 

 

 

 

「ロミオ先輩。これで貸し一つだからね」

 

「ああ。分かった。後で何でも言ってくれ」

 

 ケースから取り出した神機を接続すると、今まで無機物とも言えた神機が眠りからさめるかの様に稼動しだす。今のロミオは飛び出す前の様な散漫な雰囲気は既に消え去り、今は純粋にアラガミだけを睨むかの様に見ていた。明鏡止水。まさにその境地だった。

 そんなロミオを見た北斗も僅かに驚いていた。この短期間で何があったのかは分からない。何らかの心境の変化があったのかもしれない。だが、その思考はそれで終わっていた。

 迫りくるアラガミの存在に戦闘態勢へと切り替わる。ロミオの事であれこれ考えるのはこれが終わってからで問題無い。そう判断した為に、今はガルムに向けて視線を固定していた。

 

 

 

 

 

「ちょこまかと図体がデカいくせに何であんなに俊敏なんだ!」

 

「落ち着け!シエル。援護射撃を頼む!北斗は着地点を狙え!」

 

 ロミオを落ち着かせると同時にジュリウスはシエルと北斗に指示を飛ばす。ガルム種の特徴は、同じ場所で留まる事が一切無いと言わんばかりに、動き回る事が殆どだった。

 元々巨躯ならば本来は動きは鈍く、また、見てから次の行動に動いても十分に間に合っていた。その為に、先読みする事によってこちらかの一方的な攻撃で終始するはず。だが、この種に関してはその限りでは無かった。

 強靭な四肢は元々の狼を連想させるからなのか、動きはどこか洗練された様にも見える。跳躍したかと思った瞬間、狙いを定めて突進する。その為に動きを封じる事が最優先だった。援護射撃の指示はそれを狙った物。本来であればこれが最適解のはずだった。だが、それが正解かと言われれば言葉に詰まる。同じアラガミと言えど、明らかに動きにキレがあった。

 元々空中に浮けば回避は困難になる。だが、攻撃が散発であれば脅威では無かった。だからなのか、援護射撃に関しても、直接狙う事をしなかった。 

 

 

 

 

 

「ここだ!」

 

 飛び跳ねる着地点を見切ったのか、北斗はガルムが恐らくは足を付くであろうその場に向けて刃を振りかざす。その場に打ち合わせたかの様な攻撃は、ものの見事にガムルの前足を捉えていた。肉を斬り裂く手応え。北斗の攻撃が確実にガルムに届いた証拠だった。

 全体重が乗ったその一点を突いた事によってガルムは大きく動く事を止め、恨みがましく感じるかの様に北斗へと視線を向けていた。しかし、ここにいるのは北斗だけではない。そんな僅かとは言え分かり易い行動を見逃す様な人間はこの場には誰も居なかった。

 

 

「今です!」

 

 シエルの言葉のキッカケは完全にガルムの目を狙った狙撃だった。一対一であればそれは有効だったのかもしれない。しかし、この場には他にもギルやジュリウスも居る。対峙したかと思った瞬間に視界を塞がれれば、後は一方的とも言える怒涛の攻撃をただ受ける以外に何も出来なかった。

 

 

「うりゃああああ!」

 

 ナナの掛け声と共に後ろ足の付け根が何度も集中的な攻撃を受ける。ナナのブーストラッシュは血の力を発揮しているのか、コラップサーは赤黒い光を帯びていた。ハンマーの後方にちらつく炎。ナナの感情を表すかの様にその炎は推進力を高めていた。全てを破壊すると言いたくなる様な衝撃音。面の部分が直撃された瞬間、ガルムからは僅かに声が漏れていた。

 

 

「喰らえぇぇぇぇ!」

 

 もちろん攻撃をするのはナナだけではない。中距離からはギルもチャージグライドを準備しているのか神機のパーツが解放され、所々にオラクルをまき散らしながら今にも突撃せんと構えている。それを援護すべくシエルは牽制の意味を込めてガルムの急所へと精密な狙撃を続けていた。

 

 

「ロミオ先輩!このまま止めを!」

 

 北斗の声に反応したのか、ロミオは自信のヴェリアミーチを肩に担ぐと、そのまま闇色のオーラがその周囲に纏いだしていた。刀身よりも長いオーラがヴェリアミーチを覆う。今のロミオを止める手段をガルムは持ち合わせていなかった。

 

 

「これで終われぇぇぇぇ!」

 

 ロミオの放った一撃は視界をつぶされたガルムの肩口からそのまま地面を斬りつけるかの様に大きな衝撃を伴いながら地面へと距離を詰めていた。肩口からバッサリ斬られた瞬間、断末魔の様な物が漏れる。ガルムはそのまま絶命したのか、周囲に血をまき散らした状態で横たわっていた。地響きを立てた事のよって戦闘機動が終了する。漸く終わった事をだれもが鵜意識に実感していた。

 

 今回の任務に関しては特筆すべき事は何も無いが、かつての絶妙なチームワークを発揮したからなのか、討伐時間は今までの中でも上位に食い込む程に早かった。いくら大型種と言えどコアを抜かれた時点で霧散する以外に何も出来ない。まるでこれがいつもと変わらない任務であったかの様に程なくしてガルムは霧散していた。

 

 

「ロミオ。よくやったな」

 

「お、おおう……」

 

 無我夢中で攻撃したからなのか、肩で息をするロミオを労う様にジュリウスは肩を叩いていた。振り向けばジュリウスの背後には老夫婦が立っている。どうやらジュリウスがガードしていた事がここで漸く理解出来ていた。

 

 

「なんだロミオ。お前さん、やれば出来るじゃないか。自信を持ってやれば結果もそのうち付いて来るんだ」

 

 ゴッドイーターとは違い、一般人が戦場で見る事は少ない。確かにロミオは戦っている間に老夫婦の事は頭から抜け落ちていたが、戦闘が終わったからなのか改めて見れば暖かい眼差しが向けられていた事が理解出来ていた。

 

 

「あの…俺…」

 

「良いんだロミオ。お前さんは自分の仕事をただ全うしただけだ。わしらの事は気にしなくても良いんだ」

 

「そうよ。私達の事は気にしなくても良いから。また時間が出来た時に出も顔を出してちょうだい」

 

「……ありがとう。俺また時間作って来るから」

 

 この老夫婦にとの間に何があったのかは分からないが、この短時間の間に何かがあったのだろう。ジュリウスはその様子を遠くから眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰投中のヘリで今回の一連内容を改めてロミオは思い出していた。今回の連携した戦いの中では、蟠りとも言える様な物は何一つなく、全部自分の焦りから来る一人相撲だと考えていた。

 確かに北斗やギルの言葉厳しい物ではあったが、決して悪いとは一言も言っていない。今なら当時の言葉を冷静に受け止める事が出来る。全員がただ心配してくれたんだと改めて考えていた。

 そんな中で何か重大な事を忘れている事を思い出していた。

 本来であればロミオはこのミッションには正規で参加していない。それどころか無断で出ている以上、このままアナグラに戻れば待っているのはツバキの厳しい叱責以外の何物でもない。只でさえ、その場に居るだけで空気が完全に引き締まるにも関わらず、今回は無断で出ているのであれば場合によっては逃亡と捉えられても仕方ない。

 このままここから飛び降りたい。そんな考えがロミオの脳裏を横切っていた。

 

 

「今回はご苦労だったな。ロミオも休暇中の所済まなかったな。今回の件は休暇ではなく任務扱いとしてある。もし休暇が必要だと考えるならば改めて申請してくれ」

 

「え、あ、はい。分かりました」

 

 震える身体をごまかしながらアナグラに到着すると、そこには当然の様にツバキが居た。この場をどうやって乗り切ろうかと思った矢先の言葉が労いである。その事に些か疑問が湧く物の、今は何事もなく終わった事に一人安堵していた。

 

 

「ロミオ、後でギルにお礼を言っておいて下さいね。今回の件は休暇の申請を出すと決めたのはギルですから」

 

「え…そうだったのか。ギル、ありがとうな」

 

「馬鹿言うな。お前みたいな問題児がブラッドの全部だと思われたくなかっただけだ」

 

 突然の言葉に照れ隠しなのか改めて帽子を目深にかぶりなおす。心の中で感謝しながらも何か重大な事を忘れている様な感覚だけがそこにあった。

 

 

「さぁて。ロミオ先輩。さっきの貸しを返してもらおうかな」

 

 ナナの一言で先ほどの喉に小骨が引っかかっていた様な感覚の原因が理解出来ていた。確かに神機ケースを渡された際に貸し一つと言われて、それに同意していた。何であの時もっとしっかりと確認しなかったのだろうか。せめてナナの要望が自分の手に余らなければ良いのだがと、一人考えていた。

 

 

「じゃあ、ロミオ先輩の奢りで皆でご飯食べよう!それ位なら良いよね?」

 

「そんな事位なら大丈夫……だけど」

 

 その一言がまるで言質を取ったかの様にニコッと満面の笑顔を見せる。そうと決まれば早速実行だとナナはラウンジへと足を運んでいた。

 

 

「ムツミちゃん。例の物ってまだあるの?」

 

「ナナさん。まだ大丈夫ですけど……でも、本当に良いんですか?あれって結構しますよ?」

 

「それなら大丈夫。今回はちゃんとスポンサーが付いてるから」

 

 上機嫌な声に一体何事なのかとロミオは状況を確認していた。例の物とは一体何なんだろうか?そんな疑問は30分後に解消したと同時に激しく後悔する事となっていた。

 

 

 


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