神を喰らいし者と影   作:無為の極

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第123話 覚醒

「極東支部の人間との連携は思ったよりも良かった様だな。フランの話だと指揮を北斗が執っていたと聞いているが、全体的な戦局が見えているようだな」

 

 帰投した際に、労いの言葉と同時に戦闘のログを確認していたのか、戦闘時の内容にまで突っ込んだ話がジュリウスの口から出ていた。本来であれば新兵の場合、ベテランでもあるギルが現場を統率するのがセオリーだが、今回は北斗が状況を判断した事に感心していた。

 

 

「偶々です。アラガミの雰囲気が何となく変わった様な感じだったので、ナナに指示しただけですから」

 

「…そうか。なら、そう言う事にしておこう。ナナとは良いコンビの様だな。今後も上手く連携出来る様にしておいてくれ」

 

「努力します」

 

 そう言いながらもジュリウスは意外と高い評価をしていた。ここは実験的な意味合いが強い部隊であると同時に、他の支部とは違い教導に対する概念が余り無い。

 人員が少なすぎるのも理由の一つだが、その根底には常時移動し続ける以上、その場に長期に留まっている事が難しく、また支部だけではなく、個人の考え方が変われば教導の内容も大幅に変わる可能性が高い事が理由としてあった。

 

 隊長だからと言ってジュリウスも何もしていない訳ではない。事実として北斗はミッションが入っていない日には自主的に訓練している事も知っているし、またその内容がどんな物なのかも大よそながらに見当がついていた。

 

 北斗の訓練内容は殆どの場合で実戦を想定しているが、それはアラガミだけではなく対人に関してもだった為に、詳細までは見なくても概要がそうだと告げている様な物の様に思えていた。

 以前の任務が終わってから改めて北斗の経歴を見たが、支部内部や外部居住区に住んでいた事は無く、人里離れた様な所で少人数で住んでいる所をデータベースから引っ張り上げられていた事になっていた。

 それ故に詳細については完全に理解できる事は無かったが、今回の任務のログから判断すれば何らかの形で軍事訓練を受けていた様にジュリウスは考えていた。

 

 

「今回の候補生は中々ユニークな人間が入ってきたのかもな」

 

「これはジュリウス大尉。お時間が宜しいならば一時の憩いで紅茶などは如何かな?」

 

 ジュリウスの思考を中断したのはエミールだった。どうやら先程のミッションに思う所があったのか、仲間内に紅茶を振舞っていた。見れば既にナナだけではなくロミオやギルまでもが飲んでいる。

 差し出された紅茶を疑う事もなくジュリウスは口に運んでいた。

 

 

「これは…良い茶葉を使ってますね」

 

「おおっ!どうやらジュリウス大尉は紅茶と言う物を良く分かっている様だ!これは当家が栽培している専用の茶畑から取り寄せた物なので、市販品に比べれば味わいは大きく違う事を分かって頂けるとは!」

 

 その後は紅茶に対しての熱い思いがあふれ出しているのか、何かと熱く語り出す。ロミオから何となく聞いていたが、こうまで熱く語られるのは想定外の出来事だった。未だに手つかずの書類が幾つも残っている。ジュリウスから言い出した事もあってか、今はそれ以上の言葉を告げる訳には行かなかったからなのか、紅茶談義は暫くの間続けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?ロミオ先輩、こんな所でエロ本でも見てるんですか?少し自重してくれませんか?ここにはナナやフランさんも居ますし」

 

 自主訓練が終わり、やる事が無い北斗は何だかんだとエントランスに来る事が多かった。

 毎日何かしら身体を動かさないと気持ち悪いと考えているのか、それともこれが日課なのか戦闘時以外では制服を着る事もなく、Tシャツにジーンズと何時も同じような格好で居る事が多かった。

 何気に来ればロミオが何となくにやけた表情で本を見ている様にも感じた事から、改めて声をかけていた。

 

 

「ばっ……何でこんな所でそんなもん見ないとダメなんだよ。普通は自室だろ!って言うか、これは違う!」

 

 何か思う所があったのか、ここにはロミオと北斗しかおらず、態々大きな声を出す必要は無かった。しかし、突然声をかけられた事と事実無根の言葉を直ぐに訂正する必要があったからだったのか、ロミオは必要以上に大きな声が周囲に響いていた。

 

 

「これはフェンリル内部向けの広報誌だよ。ユノさんが出てるから見てたんだ」

 

「ユノ?…ああ、あの時の人ですか。で、何が書かれてるんです?」

 

 当時の事を思い出すも、やはり自分の関心が薄いからなのか、何となく顔がおぼろげになっている。表情からすれば恐らくは記憶に残っていない事が理解出来たのか、ロミオはすかさず広報誌を北斗へと向けていた。

 

 

「へー。インタビュー記事なんですね。この場所ってどこで撮ったんですかね?」

 

「このグラビアの事か?これ極東支部の施設らしいけど、詳細は…書かれていないな。一体どこなんだろう?」

 

 ロミオが疑問に思うのは無理も無かった。グラビアはユノの艶やかな着物姿が数点載っており、場面によっては他の極東支部の面々までもが紙面に出ていた。

 

 広報誌は事実上、内部に向けての物と外部に向けての物とで区分けされており、内部の物と外部の物を比較する事が出来ない為に、詳細については案外と知らない人間が多かった。本来であれば内部向けの広報誌にグラビアが乗る事は今まで一度も無い。

 しかし、ユノのファンでもあるロミオはこの情報をどこからか仕入れたのか、フライアには来るはずの無い広報誌を入手していた。

 

 

「こんなの見た事無いので分かりませんが、広報誌なのにグラビアが載るなんてフェンリルは凄いですね」

 

「いや。今までこんな事は無かったんだ。ただ、記事を見ているとサテライトに関する事が幾つか書いてあったから、多分それの絡みかも」

 

 北斗は気が付かなかったが、今回の広報誌はいつも発行されている物よりも数段厚みがあり、恐らくはグラビアやインタビューに大きく紙面を割いた結果でもあった。

 実際にロミオを見ればグラビアとインタビューの部分は見るも、それ以外の部分には一切関心が無いのか見ている様には思えなかった。

 

 

「サテライトって、例の極東支部が主導してやってる外部居住区の中に入りきらなかった人用の施設ですよね?」

 

「おお、よく知っているな。記事を見ればそれに関する事が殆どで、今はそこを中心に慰問する事が多いらしいよ。ここにはあんまり関係無いと言えば、それまでなんだけどさ…」

 

 話の内容が徐々にグラビアから今の世界情勢へと移り出す頃、暇を持て余したナナが二人を見つけたのか、気配を消しながらコッソリと近寄ってきた。

 

 

「ロミオ先輩。いかがわしい本なんかこんな所で見ない方が良いと思うな」

 

「うわぁ!…ってナナまで北斗と同じ事言うなよ。これはフェンリルの広報誌だ」

 

 今さっきまで北斗と同じやり取りをしていたが、やはりナナも同じような事を考えていたのか、このやり取りの内容は北斗と同じだった。ナナとロミオのやりとりから、誰だって同じ事を考えるのは、あの表情を見れば当然だと北斗は一人心の中で呟いていた。

 

 

「ユノさんが載ってるんだ…でも、この前ここで見た人がこうやって載ってるなんて不思議な感じだよね~」

 

「だろ!なのに北斗の奴は……羨ましいんだよ畜生!」

 

「あれは不可抗力であって、自分から進んで触れた訳じゃないんですけど」

 

 当時の事を思い出したのか、ロミオの矛先が北斗へと移り出す。これ以上は藪蛇になるならと、この場を逃れる準備をし出していた所に、頭上からジュリウスの声が聞こえてきた。

 

 

「お前たちは相変わらずだな。これから一つ中型種の討伐任務が入る。今回も前回同様に連携を考えたミッションとなる。30分後には改めて集合してくれ」

 

 ミッションの言葉から先程までの何とも言い難い雰囲気が消え去り、改めて任務に入る為の準備とばかりに各自が真剣表情へと切り替わる。

 以前であればこんな顔になる事は無かったが、やはり戦闘を繰り返せば自然とこんな表情になるもんだとジュリウスは人知れず納得していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《今回の討伐対象はコンゴウです。各自気を付けて任務に入ってください》

 

 フランの声が通信機越しに響く。眼下にはコンゴウとオウガテイルがセットの様に動いていた。この場から下れば恐らくは音で察知されることは間違いない。この状況下での奇襲は不可能な状況だった。

 

 

「対象はコンゴウだが、オウガテイルも居る以上こちらも合わせて討伐する。各自問題無いとは思うが気を引き締めてやってくれ」

 

「ジュリウス大尉!我が騎士道にかけてその誓いを守ろうではないか!」

 

 返事をする間もなくエミールが返答をする。短い期間ではあるが、どうやらこのエミールの特性を各自が気が付いたのか既に言葉の半分以上は流している。

 この場に留まった所で何かが変わる訳でもなく、そのままミッションに突入する事となった。

 

 

 

 

 

「どっか~ん」

 

 ナナの渾身の一撃がコンゴウの顔面の結合破壊を促していた。ブーストが利いたハンマーは見た目の質量をそのままに、勢いよくコンゴウを直撃していた。リーチが短いと言った欠点はあるが、その分取り回しが利くのと同時に破壊する事にかけては右に出る物は無い。その特性を上手く活かした攻撃は見る者を圧倒していた。

 

 

「みんな!今だよ!」

 

 顔面が結合崩壊すると同時に、コンゴウは尻餅をつく。分かり易い隙を逃がす必要性はどこにも無かった。ロミオのヴェリアミーチはチャージクラッシュの態勢に入るべく闇色のオーラを刃に纏う。渾身の一撃が背中のパイプを破壊し、ギルも胴体を狙ったチャージグライドで突進していた。

 北斗も他のメンバーと遜色なく腕を斬り刻む。ここまでは思った以上のチームプレイで戦闘は終始していた。しかし、コンゴウもこのままむざむざと一方的にやられるつもりは無いと、ナナに向かって全身で転がりながらこの場を脱出していた。

 

 

「ひゃぁああああああ~」

 

「ナナ!気を抜くな!」

 

 転がってきたがギリギリで躱したと思われた瞬間だった。間合いが僅かに足りなかったのか、回避しきれずにナナが弾き飛ばされ宙に舞う。中型種とは言え、当たればかなりのダメージを受けると同時に、地面に叩きつけられれば多大な隙を生む事に間違いなかった。最悪の事態は回避する。そんな事を考えながら北斗はナナのフォローへと回っていた。

 

 

「お前ら大丈夫か!」

 

 ギルは援護すべくリボルスターから火炎属性のバレットを乱射する。弱点属性がそのままダメージにつながったのか、コンゴウは着弾するバレットによって動きが制限されていた。その隙を活かしてナナは態勢を整える事に成功していた。

 

 

「うん大丈夫!」

 

「油断するな!一気に決めるぞ!」

 

 ジュリウスの言葉を皮切りに各自が一番の攻撃方法でコンゴウへ多大なるダメージを与えていた。既に顔面だけではなく背中のパイプも結合崩壊を起こし、このまま討伐が完了するまでには然程時間がかかる事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいナナ、もう少し回避には距離を取れ。でないとさっきみたいに巻き込まれるぞ」

 

「いや~完全に躱したと思ったんだけどね。そういえば北斗もフォローありがとね」

 

 ベテランらしいギルのアドバイスと同時に、素早くフォローした北斗にも気が付いていたのか、ナナはギルと北斗に礼を伝えていた。このまま帰投に入る予定だが、先程からエミールの姿が何故かこの場に見る事が出来なかった。

 あの性格から逃げるなんて選択肢は無いだろうが、この場に居ない事だけが不思議だった。

 

 

「ぬおおおお~またもやピンチだ!まさか神機が!…こんな所で出くわすとは!!」

 

 狭い通路からエミールの声が響き渡る。この場には乱入されるようなアラガミの指示は何も来ていない。ならばエミールの叫び声の現況は一体何なんだろうか?そんな疑問が出ると同時に、フランから緊急入電が現在の状況を表していた。

 

 

《想定外のアラガミです。生体反応から登録不明の為データは有りません。各自気を引き締めて下さい》

 

 通信機からの入電内容は正体不明のアラガミとの内容だった。この場での新種討伐となれば、このメンバーでは些か不安要素が大きすぎる。このまま撤退も視野に入れるが、恐らくはそれも不可能だろう事を悟っていた。

 

 

 狭い通路から出てきたのは大きな叫び声の持ち主でもあったエミールだった。逃げる様に出てきた背後には今までに見たことも無い白い大型種がエミールを捕喰せんと力強く走り寄る。走るついでとばかりに振り払った前足は動かす勢いのままエミールを遠くへと弾き飛ばしていた。

 

 

「あれは何だ?今までに見た事が無いぞ」

 

 北斗の呟きは誰の耳にも届かないほどに、緊迫した空気が漂っていた。突如として表れたアラガミは先ほどの通信にもあったように、データベースには登録されていない。可能性とすれば新種である以上、今の北斗達には荷があまりにも重すぎた。

 

 様子を見んとするその大型種は似たような系統としては狼に似たガルムの様だが、色が全く違う。それと先ほどのエミールの行動からすればこの種が感応種である事が推測されていた。

 

 

「まさか、感応種なのか?おい北斗!お前は捕捉されてる!常に警戒しろ!」

 

 ギルの声は届くが、耳には入ってこない。感覚的に、この白いアラガミが危険な事だけは自分の頭の中で警報が鳴り響いている事からも理解している。この状態で少しでも気を逸らす事があれば一足飛びに襲い掛かられる距離まで一瞬にして詰め寄られていた。

 

 お互いが警戒しあっているのか、視線が逸れる事はなく今は僅かな隙すらも油断に繋がり兼ねないとばかりに睨み合っている。このままの状態が続けば、体力的な事を考えてもアラガミに分があるのは間違いなかった。このまま永劫にこの状況が続くのかと思われた瞬間、アラガミの後ろ足の部分に衝撃が加わっていた。

 

 

「北斗!これを使って!」

 

 アラガミの後ろ足を捕喰したのはナナだった。お互いがギリギリの部分まで警戒していた事が影響したのか、それとも知っていて無視したのかは分からない。しかし、ナナはその影響もあってなのか、背後に回り込む事に成功していた。

 

 捕喰と同時にギリギリまで高めあった緊張感が突如として崩れる。ナナはここが勝負だと判断したのか捕喰によるアラガミバレット全てを北斗へと託した。

 

 ナナからのリンクバーストによって一気に身体に力が漲り出す。まるでそれが何かの合図になったのか、先程まで拮抗していたはずの空気は突如として崩れ去っていた。

 

「うぉおおおお!」

 

 雄叫びと共に荒々しい動きで北斗はアラガミへと突進する。バースト状態が一気に来た際に、あの当時のミッションの事がジュリウスの脳裏に思い出されていた。今までの様な精密な動きが鳴りを潜めると同時に、荒々しい動きが今まで以上に行動予測を不可能へと塗り替える。

 一撃に込める力の度合いが違うのか、剣戟は洗練された物ではなく、荒々しい事によって乱れた刃筋は幻惑した動きの様にも見えていた。歪に見える剣閃は既に剣閃と呼べるレベルでは無くなっている。

 ここまで来ると最早剣戟と言うよりも鈍器で殴りつける様な勢いさながらに、かえってアラガミの反撃を許す事が無かった。

 

 

「ねぇジュリウス。北斗は一体どうしちゃったの?」

 

 あまりの変貌に驚いているのはナナだけではなかった。ロミオもギルも驚きを隠す事は出来ていない程に今の北斗の変貌が大きすぎた。ロミオにしてもそう多いとは言えない程度にしかミッションをこなしていないが、今までの記憶の中ではこんな北斗を見たのは初めてだった。

 

 

「いや、俺にも分からん。ただ、むやみやたらに神機を振るっている様には見えない」

 

 ジュリウスの指摘は正鵠を射ていた。当初は乱れた刃筋でむやみやたらに襲い掛かっている様にも見えたが、全体を通して見れば本能的にアラガミの行動範囲を狭め、追い立てている様にも見える。

 

 もちろん、攻撃している以上に反撃も受けるが、今の所はギリギリのラインで直撃だけは避けていた。白いアラガミは前足に付いた防具の様な部分が僅かに浮き上がると同時に、その奥にはマグマの様な色合いの何かが見える。

 今までのアラガミの行動範囲から考えれば、北斗だけではなく他のメンバーも攻撃を受ける可能性が極めて高かった。

 

 

「全員盾を展開しろ!、恐らく何かが飛んでくるぞ!」

 

 ジュリウスの指示が早かったのか、予想通り白いアラガミは腕の隙間の部分からマグマの様な物を噴出させたと同時に、それを3方向へと放つ。巨大な炎の飛礫は事前に盾を展開した事もあり、直撃こそは免れたが、それでもノックバックを起こす強烈な一撃はその力を示すには十分だった。

 

 

「ふははははは!」

 

 笑い声と同時に先ほどの飛礫を悠々と回避し、その隙を狙うかの様に顔面へと斬り裂こうと一気に距離を縮めて行く。原因は不明だが、自身の中で何かが膨れ上がった様に北斗は感じていた。これは一体何なのかは自身でも理解する事は出来ない。

 それと同時に周囲の空気が徐々に濃密な物へと変化し始めていた。

 

 

「これは…ジュリウスの血の力と同じ様な感覚」

 

 このメンバーの中で一番ジュリウスと共に戦い、血の力のその近くで感じていたロミオは直ぐにこれが何なのか理解していた。それと同時にジュリウスもそれが何なのか自然と理解している。何かが生まれるのを待っているかの様だった。

 

 

「ついに目覚めるのか」

 

 ジュリウスの言葉そのままに北斗の刀身に赤黒く光る何かが纏い出す。この時点でそれがブラッドアーツである事を理解したのはジュリウスとロミオだけだった。

 赤黒い光を纏った刀身が白いアラガミの顔面へと襲い掛かる。ギリギリの部分で避けたはずの剣戟は躱しはしたが、その衝撃までは躱す事が出来ず、一旦距離を置くようにアラガミは高台へと上り詰めた。

 この時点ではスナイパーでも届くかどうかの距離。気が付けば大型種は目の部分に大きな裂傷を作っていた。

 

 

「何だあれは?」

 

「あれがブラッドアーツだ」

 

 ギルの呟きにジュリウスが簡潔に答える。今までのゴッドイーターの経験では考えられない事実にギルの思考は少しだけ麻痺したかの様な感覚があった。それ程までに今の攻撃方法は常識が外れていた。

 

 これ以上の戦いは無理だと悟ったのか、白いアラガミは大きく遠吠えを残したままこの地から過ぎ去った。

 

 

 

 

 

「そう、ついに目覚めたのね」

 

戦場から遠く離れたフライアの一室で、一人の女性がモニター越しに確認していた。先程の戦いから何らかの影響を受けたからなのか、誰も居ない研究室で笑みを浮かべている。

 この場に誰かが居たのであれば、恐らくはその笑みに戦慄を覚えたのかもしれない程に、冷たい微笑だった。

 

 

 


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