神を喰らいし者と影   作:無為の極

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第120話 初陣

 ジュリウスからの話で漸く訓練がある程度のメドを迎える頃、突如とした今までに無かった訓練が入っていた。場所はいつもの訓練室ではなく、集合場所は外部。今までに無かった訓練に北斗もナナも興味をひかれていた。

 

 

《ジュリウス隊長、今回の任務に新人2人が同行するとは聞いていませんが》

 

「すまない。あの2人なら実戦に出ても問題ないだろうと判断した結果だ。フランが心配する様な結果にはならないだろう」

 

 2人が到着前の現場ではジュリウスが事前確認とばかりに現地の下調べをしていた。まだ概要しか伝えてはいなかったが、今回の内容は実戦に対する試金石となるべき内容。今回の結果いかんで、今後の内容が大きく変更される予定だった。

 フランには何も言っていないが、外部への出撃となれば知らない訳はない。だからこそ確認とばかりに、突然の通信がジュリウスに届いたのは想定内の事だった。

 

 

《……そうまで言われるのであればこれ以上の事は何も言いませんが、今後はせめて私にも一言声をかけて下さい。でないと、オペレーターとしてのフォローが出来ない可能性があります》

 

「そうだな。でもフランならば何の問題にもならないだろう?」

 

《……大丈夫だとは思いますが、ご武運を》

 

 ジュリウスからの返事はフランにとっても想定外の出来事だったのか、それ以上フランの口からは何も発する事は無かった。時間もそろそろ近くなっている。恐らく新人2人は驚くに違いない。

 そんな事を考えながらジュリウスは集合地点へと急いでいた。

 

 

「フェンリル極致化技術開発局、ブラッド所属第二期候補生二名ただいま到着しました」

 

 言いにくい台詞をよくも噛まずに言えると北斗は内心関心しながらも、この場所における任務にどこか違和感があった。確かに訓練は今までしてきたが、段階を何段かすっ飛ばした内容に違和感以外に何も感じない。

 ここから先は確認とばかりにジュリウスの言葉を待つことにした。

 

 

「隊長のジュリウス・ヴィスコンティだ。時間が勿体ないので手短に言うが、これから実地訓練を始める」

 

 ジュリウスの言葉に北斗はやはりと言った表情を浮かべたが、隣にいるナナは聞いてないとばかりに驚きを隠せない。どこかで必ず戦場に出るのであれば、それが単に早いか遅いかの違いでしかないが、突然の実戦はやはり緊張感が漂う。

 まるでこれが当然だとばかりにジュリウスは言ってるが、事前に何も聞かされていなかったからなのか、想定外の内容にナナはジュリウスの言葉が耳に入らない。

 いくら人数が居ても戦場での油断は命取りだった。

 

 ジュリウスの話がまだ続く頃、突如としてオウガテイルが頭上から待ち構えたかの様に襲い掛かった。今まではシミュレーションだった事もあり、どこか他人事の様にも思えていたが、これはシミュレーションではなく実戦。何かしらかの対処をしなければ、この世界から永久に退場する事になる。だからこそ、この瞬間の対処が最優先だった。

 

 

「ナナ危ない!」

 

 隣のナナを突き飛ばすと同時に、北斗は無意識と取れる行動で素早く神機の刃をオウガテイルへと振るう。

 頭上から落下するかの様に襲い掛かるオウガテイルに対し、北斗は下から上へと掬い上げるかの様に振り上げていた。

 オウガテイルの牙と神機の刃が激しく交差する。オウガテイルはまるで何の抵抗も無かったかの様に頭蓋から胴体に向けて一直線に分断されていた。斬撃が鋭かったのか、左右に分かれたオウガテイルの身体は一気に離れ、周囲に血を撒き散らす。左右が時間差で地面へと落ちる頃、突然の事態はまるで何も無かったかの様に終了していた。

 

 

《ジュリウス隊長!先ほどのアラガミはどうなりましたか!》

 

 恐らくはモニターしていたのであろうフランが、驚いたかの様にジュリウスへと通信をつなげる。襲い掛かってきた事は理解したが、あまりにも鮮やかな手並みにその場に居た2人は内心驚きを隠す事は出来なかった。

 

 

「い、いや大丈夫だ。北斗が対象となったオウガテイルを討伐しただけだ。これから少しだけ時間を空けた後に改めて任務を開始する」

 

《…そうですか。取り乱し、申し訳ありません。ではお願いします》

 

 突発的な任務は波乱のうちに開始され、当初の予定通りに任務は遂行されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきは突き飛ばしてごめん」

 

「私が気が付かなかったのが一番悪いんだし、北斗のやったことは当然だよ。私は頑丈だからだ大丈夫。気にしなくてもいいよ」

 

 任務が終わり帰投準備に入る頃、先程の事を思い出したのか、突如として北斗がナナに謝罪していた。いくら緊急時とは言え、女性を突き飛ばす様な真似は決して良いものではない。

 今後の事も考えれば、ここでしこりを残すのであれば、サッサと謝罪したほうが今後の為だと判断した結果だった。

 

 

「突き飛ばした事は緊急時だから仕方あるまい。しかし、咄嗟の判断力は見事だった。訓練の際にも思ったんだが、どこかで何かを習っていたのか?」

 

 新兵と言うならば本来はあまり実戦経験が無いはずだが、あの行動は咄嗟とは言え冷静に判断した様に見えていた。オウガテイルとは言え一刀の下に斬り捨てるにはかなりの速度と正確さが要求される。瞬時に起こした行動は当然だと言わんばかりの様にも見えていた。

 ここに来る前までの情報はある程度把握しているとは言え、詳細までは知らされていない。今後の事もあるからと、最低限の出自位は確認した方が良いだろうとジュリウスは判断していた。

 

 

「特に何かを習ったわけでは無いです。少しだけかじった事がある位ですよ」

 

「でもあの動きには驚いたよ。アラガミってあんなに簡単に切れる物なんだね。私もやってみようかな?」

 

「いや、ナナの神機はハンマーだから無理だ。精々叩き潰すのがオチだよ」

 

「…それもそうだね。やっぱりハンマーで斬るのは無理か~いや、…でも…」

 

 先程の状況に怯んだ雰囲気を感じる事は無かったからなのか、ジュリウスは内心安堵していた。ブラッドは他のゴッドイーター達とは決定的に違う物を持った人間のみが配属されている。

 通常のゴッドイーター以上に希少性が高く、また、実戦投入の際のトラウマになってしまえば、今後は使い物にならないだけではない可能性があった。

 アラガミに襲撃された事よりも瞬時に討伐した方に意識が向いていた事はジュリウスにとっては僥倖とも言えた。

 

 

「先ほどのイレギュラーはともかく、戦場での油断は死に繋がる。意識を断ち切る様な事はしない事だな」

 

「そうですね。……ジュリウス隊長、何かこの辺りに来てませんか?」

 

 突如として北斗が何かを察知したのか周囲を警戒しだす。それと同時とも言えるタイミングでフランからも通信が入っていた。

 

 

《ジュリウス隊長、小型種3体がそちらへ向かっています。ご注意ください》

 

「ジュリウス隊長、何かあったんですか?」

 

 ナナの質問にジュリウスは答えるまでもなかった。近くの高台からオウガテイルが再び顔を出している。先程の様な油断した雰囲気は既になく、ジュリウスに質問したナナもその雰囲気を察知したのか、見えるオウガテイル以外にも何か居ないか周囲を警戒しだしていた。

 

 

「先程は北斗に良い場面をとられたが、折角だ。お前たちに血の力の片鱗を見せよう」

 

 現れたオウガテイルを見て丁度タイミングが良いと判断したのか、突如としてジュリウスが一つの型を見せる。何時もと違う独特の型がこれまでの雰囲気とは異なっていた。

 北斗とナナはこれからジュリウスが何かを見せる事だけは理解したものの、それが何なのかが分からない。既にジュリウスは集中しているのか、周囲の状況を気にするそぶりすら見せない。徐々に高まる緊張感と共に、その集中が北斗とナナにも伝わっていく。言葉一つかける事無く今はただジッと見る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

「ロミオ先輩が言ってた通りだったね」

 

「あれが血の力とはね。ただ驚いた」

 

 北斗だけでなく、ナナも驚いたのは無理も無かった。ゼロスタンスと呼ばれた構えと同時にヴォリーショナルの刃が赤黒い光を帯びていく。こちらを補足したのか、オウガテイルはこちらへと向かうも、動く気配は無かった。

 ジュリスが行動に移ったのは手前5メートルまで近づいた頃だった。刹那とも思える瞬間、ジュリウスは一気にオウガテイルに向かって突進を開始していた。鋭い斬撃は大気をも斬り裂くかと思わせる一撃。その一撃だけでも刮目すべき内容だが、問題なのはその後だった。

 その場に残るかの様に幾重にも連なる斬撃がその場で滞留している。それに触れたオウガテイルは無残に斬り刻まれていた。

 ジュリウスから発せられた見えない何かに影響を受けたのか、血の力の片鱗を見せられると同時に、瞬殺とも言える速さでの討伐は異様とも言えた。

 

 

「ロミオ先輩の言った通りだったよ」

 

「ああ」

 

 先程の光景に二人は興奮を隠す事が出来なかった。あれが血の力だとすれば、自分たちも本当に目覚める事があるのだろうか?そんな事を考えながら帰投のヘリへと搭乗する。それ程までに先ほどの光景は二人には衝撃的すぎていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロミオ先輩の言った通りでした!始めて見たんですけど、あれは凄かったです」

 

 その後はこれまでの訓練と実戦経験をした際の成績から正式にミッションが受注できる様になった。事実上の実戦訓練に合格した結果だったからなのか、今まで以上にエントランスには大きな声が聞こえて来るようになっていた。

 

 

「だろ!あれがジュリウスの血の力なんだよ!」

 

「ねぇ、ロミオ先輩の血の力って何なんですか?」

 

「それは……」

 

 ナナの何気ない一言はロミオの何かを刺激したのか、先程までとは雰囲気が突如として変化している。以前にも似たような質問をした際にはぐらかされた記憶があった。

 ナナは気が付いていないのかもしれないが、ロミオの性格を考えれば、自分も会得していれば確実に説明をするはず。だからこそ答えが無い事がその答えである事に気が付いていない。

 本来であれば何となく空気を察知して質問を変えるが、今のナナではそんな言い回しは考える事は無いのかもしれない。それ以上の事はロミオが気の毒だと思い、改めて話題転換をする事にした。

 

 

「ナナ、人それぞれだからそれ以上はダメだ。可能性を考えるなら俺達だって同じ事が言える。完全に理解された力でも無さそうだから」

 

「そっか。そうだよね」

 

 北斗の何気ない一言を偶々近くにいたジュリウスが聞いた途端、背筋に寒い物を覚えた。この血の力は未だ完全に解明された物ではなく、またこれが発見出来たのはラケルではあるが、各自がどの様な結果をもたらすのかは分かっていない。あくまでも可能性が高いだけであって、完全に習得出来るのかすら分かっていない代物だった。

 ラケルの事は信用しているが、果たして可能なのかと言われれは素直に肯定出来ない部分もあった。

 最近来たばかりの人間だからなのか、あまりにも核心を突いた一言の意味合いを幸いにも理解した者は傍には居なかったのか、それ以上の話に発展する事は無かった。

 

 

「そうだな。北斗の言う通りだ。今は血の力も大事だが、その前に自分達がいかに生き残る事が出来るのかを考えるのが優先だ。いくら可能性が高くても死んでしまえばそれまでだからな」

 

 何も知らない様に見せかけて案外と細かな部分までもよく見ている。3人の所へと来たのは今後の予定に関しての確認の為だったのか、ジュリウスは簡単に言いながらも確認すべき事を早急にする様に要件だけを伝えた後、エントランスから立ち去っていた。

 

 

「なるほど~。やっぱり日々の精進が結構ポイントなのかな。そう言えばさっきのミッションなんですけど、ロミオ先輩ってひょっとしたら少しビビッてたりしませんでした?」

 

 ジュリウスの一言で血の力に対しての内容は回避されたが、それでもミッションの内容に関しては回避できなかったのか、ナナはロミオとの距離を突如として詰め寄りながら質問している。

 

 恐らくナナは何も考えていないのか、それともパーソナルスペースが狭いのかもしれない。ナナの格好で近寄られると、男としては中々厳しいものがあった。露出度が高い服装に留まらず、スタイルが良い事までもが強調されたその格好で近寄られると、目のやり場に困る。事実、北斗はそれがあるからなのかナナを苦手としていた。

 

 恐らくはロミオもそうなのか目があからさまに泳ぎ、顔が若干赤くなりながら詰め寄られた行動は無意識のうちに後ずさりしている。その結果、他の事を考えていた北斗にぶつかる事となっていた。

 

 

「キャッ」

 

 短い悲鳴は明らかに女性の声だった。この場に居るのはナナしかいないはずだが、ナナが悲鳴を上げる必要性はなく、北斗がぶつかった際に後ろを見ればよろけていたのはここでは見た事も無い女性だった。

 

 

「すみません。大丈夫でしたか?」

 

「い、いえ。私は大丈夫ですから、気にしないでください」

 

 栗色の長い髪に合せた様な白を基調としたドレスの様な服装は、色んな意味でここには似つかわしくない。しかし、この人は一体誰なんだろうか?手を差し伸べながらにそんな事を考えていると、その背後からこの場面には似つかわしくない様な野太い声が聞こえていた。

 

 

「すみませんねユノさん。こいつらはアラガミを倒す事しか考えていない様な連中でしてね。お体の方は大丈夫でしたか?……お前らはアラガミの討伐しか能が無いなら、せめて周り位は確認しておけ」

 

 野太い声とはまるで別物の様な話し方に、どことなく嫌悪感が身体を駆け巡る。男性の服にはいくつもの勲章らしいものがこれみよがしに着いている事から、恐らくはここの幹部の可能性が高く、話から察すれば下出に出る事で何かをお願いしている様にも思えていた。

 

 

「そうね。あなた方も、もう少し周囲を見て行動した方が良いわ」

 

 男性の背後にもう一人居たのか、今度は白衣をアレンジした様な服装の妖艶な女性が立っていた。この時点では先程の男性同様、何かしらの幹部なのではとも考えていたが、生憎とここに来てからは特定の人物としか会っておらず、それはナナも同様だったのか、若干目が点になっている様にも見えていた。

 

 

「申し訳ありませんでした。以後気を付けますので」

 

 これ以上、ここでトラブルが発生する様な事があれば、今後の事も考えると得策ではない。だからこそここは一旦謝罪をする事でこの場を収める事を北斗は優先した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あのロミオ先輩?そろそろ離してくれませんか?」

 

 北斗が困惑するのも無理は無かった。ユノ達がエレベーターに入り、この場から居なくなると、突如としてロミオは北斗の手を握っていた。突然の出来事に一体何が起きたのか北斗だけではなく、ナナも困惑していた。

 

 

「ああ、ごめん。さっきまでこの手がユノに触れてたかと思ったら興奮したみたいでさ」

 

「あの、ユノって誰なんです?」

 

 この一言がロミオの何かに火が付いたのか、突如としてテンションが高いままの状態で説明しだしていた。

 

 

「馬っ鹿!ユノを知らないのか?葦原ユノ!ユノアシハラだよ。最近は公営放送にも出てるし、歌が上手くてチョー有名人なんだよ。最近はビジュアル面でも一押しで、写真集まで出してるんだぜ。限定品だから手に入れるのにどれ程苦労した事か…俺も思わず買っちゃったよ。…ったく価値も分からない人間が触れる事が出来るなんてうらやましすぎする!」

 

 勢いよく言った言葉は一体何語を話しているのかすら理解しにくい内容だった。細かい部分はともかく、今分かった事は先ほどの女性は歌が上手い有名人であり、目の前に居るロミオ先輩は熱烈なファンなんだろう。

 あまりにも興奮しすぎた人間を見ているからなのか、ナナはどことなく引き気味に距離を離れているが、北斗は先ほどの件もあってか撤退する事が出来ないでいた。

 

 

「そうだ!今なら行けば会えるかもしれない。さっき乗ったエレベーターは高層階で止まったから、多分グレム局長の所だよ」

 

「グレム局長?って誰ですか?」

 

 ここに来た際に、幹部の名前等を教わった記憶が少しだけあるが、基本的には自分にあまり関係無い事は覚えるつもりがないのか、記憶の片隅にすら残っていない。その事実に驚いていたのか、ナナは残念な子を見る様な目で北斗を見ていた。

 

 

「普通、それ位の事は覚えると思うんだけど…」

 

「面目ない…」

 

「それはともかく、これから行けば間に合うだろうから、すぐに行こうぜ。これは連携を高める為の重要なミッションなんだ!」

 

「私は行かないよ。二人でいってらっしゃ~い」

 

 暴走気味のロミオを止める手段は見つからず、ナナはこの場から離脱する。これ以上はなす術もない事から、仕方なく北斗はついて行く事となった。

 

 

 

 

 

 結果的には会う事は出来ず、針の筵の様な場面は北斗が機転を利かす事で逃れる事が出来た。隣を歩くロミオは残念そうな表情を隠す事無く歩いていたが、北斗自身はそこまで関心がある訳では無い。あの場で漸く幹部の顔と名前が一致していた。

 

 

「やっぱり会えなかったんじゃないの?」

 

 予想通りだと言わんばかりの表情をしたナナが北斗達を出迎えていた。生理的に嫌なのかナナもあまり話す事は無く、精々が面識がある程度でしかない。もちろん様々な理由があるからこそ、態々会いたいなどと思う気持ちはサラサラ無かった。

 

 

「まぁね。ナナの予想通りだったよ。ロミオ先輩は気落ちしてたけど、取りあえず幹部の顔と名前は覚えたから大丈夫だ」

 

「北斗らしいと言えばそうなんだけど、せめて顔と名前位は覚えようよ」

 

 ナナに言い分は尤もだった。今回は偶々顔合わせが出来たから何とかなったが、今後のこの調子だと万が一の事が考えられる。当人では無いので問題ないと言えばそれまでだが、それでも知らないよりは知っていた方がマシとも言えた。

 

 

「覚える気が無いんだろうな。仮に幹部の顔を知ってたからって良い事なんて無いぞ」

 

「それはそうだけどさ…でも、他の人たちの事はすぐに覚えたんだよね?」

 

「ミッションに関係ある事なら覚えるよ。でもフランさんの名前は無理っぽい」

 

「あ~分かる気がする」

 

 一番最初に略した名前で教えてもらえなければ、恐らくはオペレーターの人程度にしか覚えるつもりはなかったのだろう。そんな空気が伝わったのか、ナナは笑顔がこぼれていた。

 

 

「お前らそこで空気を作らない。サッサとミッションに行くぞ!」

 

 先程のダメージをまだ引きずっているのか、ロミオが呼んでいる。

 今後の事も考えれば、出来るだけミッションの数はこなした方が今後の為にも良いだろうと、人知れず北斗は考えながらエントランスからカウンターへと移動していた。

 

 

 


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