神を喰らいし者と影   作:無為の極

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第109話 正体不明

 泊めてくれたお礼とばかりに買い出しへと出かけると、一つの事実が浮かんでいた。恐らくは地域の顔役なのか、皆が気軽に八雲へと声をかける。当初は何故と言った疑問しか湧かなかったが、八雲とのふれあいを見ていると、全員が忌避的な考えじゃないならば、今後の対応次第ではお互いが認め合う事が出来る様な関係になるのではないだろうか?そんな考えが出始めていた。

 

 

「八雲さんはここでは大人気なんですね」

 

「俺は何もしていない。ただ、ここの皆と楽しく過ごしたいだけだ。何時までも嫌な気持ちを引きずった所で何の意味も無いんだ。だったらギスギスするよりは楽しい方がマシだろ?」

 

 アリサの考えが変わるのは当然だった。市場を歩けば誰もが八雲に笑顔で話しかけ、その都度買い物の足が止まる。時には一緒に歩いているアリサにも目を向ける事はあったが、それも僅かな事でもあり、大半の人間は八雲を慕っている様に思えていた。

 

 

「お前さん珍しい物もってるけど、これからデートか?」

 

 八雲が話しかけたのは仲が良さそうな兄弟だった。確かにこの時代には珍しい生花を手に二人が並んで歩いている。これからどこかへ向かう際に八雲に出くわした様だった。

 

 

「実は、先日オヤジが流行り病で亡くなったんで、今日はそのお供えで…」

 

「そうか…随分と苦しんでたからな。これで漸く解放されたのか」

 

「そう考えると、少しは気持ちも楽になれます。今のままだと、どうなるのか分からない状況が続けば周りにも影響が出ますから」

 

 残念そうな表情はあったが、いつまでも苦しみから逃れられないのであれば、いっその事死ぬことで楽になれる。そんな考えがここには蔓延していた。

 流行り病が何を意味しているのかは分からないが、通常の病気で無い事だけは理解出来る。この原因は何なのかは事前にアリサ達も聞いていたが、やはり会話の中でそんなことが平然と出れば何とか出来ないのだろうかとの考えがそこにはあった。

 

 

「でもさ、那智さんは何でフェンリルの神機使いをここに残したんだろう?あいつらが流行り病の病原菌を持ってきてるかもしれないのに」

 

「憶測でそんな事言うな。原因はまだ完全に解明された訳じゃないんだ。今はそれ以上の事を言っても那智さんの考えが分かる訳では無いんだ。そろそろ行かないと、皆が待ってる。じゃあ八雲さん。また今度」

 

 弟が何気なく話した会話にアリサは驚いていた。記憶違いでなければ、この病気に関しては極東支部から因果関係については発表されているはず。にも関わらず、今の兄弟はそんな事実は何も知らない様に思えていた。

 アナグラの内部だけで情報を共有する様な考えは今の極東の上層部には無い。事前にエイジや榊から聞いていた事実と違う事に驚きを隠せなかった。

 

 

「あの、八雲さん。先ほどの話なんですが、原因については極東支部から公表されているはずでは?」

 

「例の赤い雨と病気の因果関係については、確かに通知は受けている。だが、ここはあくまでも独立した居住区だから、フェンリルからの施しは乗っ取りの為の準備の為の準備でしかないと考えている連中が多いんだ。当然の事だがそんな考えが蔓延している以上、事実は公表されていない。

 そんな物は不要だから要らないとばかりに、議会で情報は止まっている。ただ、赤い雨には気をつけろとの通達だけが出ているがな」

 

「そんなの馬鹿げています。いくらなんでもそれは話を曲解しすぎです。我々はそんなつもりは毛頭ありません」

 

 何気に放った一言がアリサの中での矛盾点を作り上げた。当初、ここに来た際にサツキは警戒していた。議会でも独立したコミュニティだから誰からの施しも受けない。とまで言われたにも関わらず、研究施設にはフェンリルでなければ有るはずの無い神機の整備が出来る装置があり、今回の赤い雨との関連性についても議会は知っていた。となれば、誰かがここと連絡を取らない限り、知る術は何も無いはずだった。

 こんな考えを八雲に聞いた所で恐らくは話してはくれないだろう。今ここで聞いた所で何かが改善される訳では無い以上、アリサが口を挟む事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリサ達、あれから連絡無いけど大丈夫なんですかね?」

 

「声を聞いている限りは大丈夫だったんなら、気にしても仕方ないだろうね。今は連絡を待つ以外に、こちらからはどうする事も出来ないからね」

 

 ヘリが撃墜されてから、たった一度だけ生存確認とばかりに連絡があったが、それ以降は音沙汰が何も無かった。

 ソーマにしてもアリサにしても、簡単にやられる様なレベルでは無い事は、ここにる人間ならば誰もが知っている。トップの榊がそれ以上の事は心配無用だと言えば、コウタにはそれ以上の事は何も出来なかった。

 

 

「そう言えば博士、新しい部隊名なんですけど、何時決まるんですか?」

 

「…それについては現在思案中でね。いくつか候補はあるんだが、対外的な事も考えると慎重にならざるをえないんだよ。その件については決まったら改めて連絡するよ」

 

 榊の相変わらず食えない様な表情からは、現状がどんな状態なのか予測する事は出来なかった。しかし、今までの付き合い事を考えると完全に忘れていたか、それとも本当に思案中なのか判断する事は出来ない。

 万が一忘れていたとしても、今は秘書である弥生が居る以上、それは有り得ないだろうと考え発表を待つ事にしていた。

 

 

「決まったらすぐに教えてくださいね」

 

「ああ、決まったらすぐに伝えよう」

 

 コウタが支部長室を出ようとしていた時に、ヒバリからの通信が入る。事態はまたしても大きく動こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エイジ、この辺り一帯には多分出ないと思うぞ」

 

「やっぱり、リンドウさんもそう思いますか?」

 

 アリサ達が苦戦しながらも奮闘している頃、エイジとリンドウ、ツバキは本部付近一帯の巡回をしていた。本来であればここに来る必要性は全くない。しかし、話の内容を考えれば、ここは本部に恩を売った方が今後の事で何かと横槍を入れられる事は無いだろうとの榊の判断によって短期で派兵されていた。

 

 

「そう言えば、前回の派兵の時もここに来てたんだよな?」

 

「そうですね。何人か顔見知りも居ましたから、特に気になる様な事は無かったんですけどね」

 

 幹部同士の話は極秘裏に進められ、エイジ達が本部に来る直前に配下に対してのアナウンスが出されていた。極東では何の問題も無いような事であっても、本部からすれば大事件となる。本来であれば所属の神機使いをそのまま運用すれば事は足りたはずだったが、今回出没したのは明らかに接触禁忌種レベルの痕跡が残されている。結果的には指定を受けたアラガミだった為に、急きょ派兵される形となっていた。

 

 

「しっかしよ、たかだかディアウス・ピター位で俺たちを呼ぶってどんな了見なんだ?この程度だったらここの連中に任せた方が良いんじゃねぇのか?」

 

 リンドウの言いたい事はエイジにも理解出来た。以前に派兵された時も感じたが、ここは極東ほどアラガミのレベルが高い訳ではなく、本来であればそれなりに現場を経験した曹長クラスで事が足りる内容だった。

 

 普段からそんな状況の中でデータベースにも出ている接触禁忌種の出没となれば、当然の事ながら対策を立てるのは当然のロジックでしかない。しかし、出動以前に対策を取れる指揮官がそこには居なかった。

 

「リンドウさんの言いたい事は分かりますけど、ここは極東じゃないですからね。ヴァジュラで一個小隊が出るレベルなので、仕方ないですよ」

 

「それがおかしいんだよ。ここの少尉だったら、極東だと恐らくは入隊して半年位の連中と何も変わらないんだぞ。見栄えだけ整えて、中身はカラッポじゃぁな。こんな詰まらない任務はサッサと終わらせて帰るのが一番だ」

 

 未だ文句とも愚痴とも取れる会話をしながらも、周囲への警戒を怠る事は無い。ここに来た当初はエイジの顔を見て当時の記憶が蘇ってくる者もいれば、値踏みする様な視線を投げつける者も居た。

 態度だけは一流だが、スコアを見れば新人に毛が生えた程度の内容にリンドウはガッカリしていた。

 

 

「でも、帰ったら帰ったで、今度は新人の教導がありますからね。今回はリンドウさんにも期待してますから」

 

「ちょっと待て。そんな話は聞いてないぞ。俺は確かお目付け役で来たはずだが?」

 

 今後の予定も考えればコウタでは無いが、頭が痛くなる思いをするのは当然だった。教導は言うほど楽な業務ではなく、今までここでの教導に慣れた者からすれば、極東仕込みの教導が拷問か何かの様にも思えていた。

 これは教える側だけではなく、教わる側も同じ考えがあった。以前の内容を知っている人間はあの地獄が再び始まるかと今からげんなりしているが、何も知らない新人であれば、これから何を学ぶ事が出来るのかと期待をしている。しかし、その1時間後には他のメンバーと同じような表情をしている者が殆どだった。

 

 

「リンドウさんだって、僕が入った頃は指導してくれた訳ですから、ある意味僕よりも手馴れてるはずです」

 

「もうオッサンなんだから、少しは労わってくれよ……どうやらあれが今回のターゲットみたいだな。姉上、これから任務を開始する」

 

 通信機の向こうでは既に補足していたのか、リンドウからの報告を受けたと同時にそのままミッションが開始されていた。今回の任務はエイジとリンドウの2人のみ。本来であれば四人でのチーム編成だったが、下手に素人レベルが来られると、今度はこちらがハンデを背負う事になる。

 申し出はありがたかったが現場では足手まといなだけに、今回は参加せず望遠での現場確認に留まっていた。

 

 

「姉上と呼ぶな。お前たち、アナグラと同じ様に考える必要はない。それ以上くだらない事を話す暇があるなら、サッサと討伐するんだ」

 

「イエス、マム」

 

 どこまでが真剣でどこからが適当なのか判断しにくい返事と共にミッションが開始された。ツバキの指示通り、今回のディアウス・ピターは極東のそれよりも程度が低く、瞬く間に討伐が完了する事となっていた。

 

 

「やっぱりここは極東とは違うな」

 

「こればっかりは今に始まった事じゃないですから」

 

 当初の予定よりも大幅に早い討伐時間に本部のゴッドイーターは呆然と見ている事しか出来なかった。接触禁忌種はその名の通り、命の危険を孕んだ任務となるのが通例だった。しかし、エイジとリンドウの任務内容を確認すれば、これまでの常識は既に過去の物となっている。行動を完全に読み切る事で被害を最小限度に留めると同時に、僅かでも隙があれば即反撃を開始する。反撃を許す事無く討伐するその結果はまさに異次元の物だった。

 帰還すればこのレベルで訓練が開始されるかと思う人間は既に心の中で十字を切り、やった事の無い人間は期待に胸を膨らませる結果となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、じーさん。あの生意気な女を呼んでくれ」

 

 牢屋から脱出した二人はサツキの手引きよって、八雲の家に滞在する事になっていた。当初は一宿一飯の恩義に報いるべく、家の掃除や料理を買って出る事になり、今では何かと奮闘する事が続いていた。

 

 

「サツキの事か?」

 

「他に誰がいるんだ?改めて連絡しない事には状況が確認出来ない。いくらこの場所を知っていたとしても、肝心の詳細が分からないなら、何も出来んのが道理だろうが」

 

 これが日常であればソーマと言えど、ここまで機嫌が悪くなる事は無かった。その原因とも言える物を作ったアリサは何も言う事が出来ないままだった。

 

 

「ちょっとした手違いじゃないですか。現に、このだし巻玉子と味噌汁はちゃんと出来てます」

 

「これだけで何を食えって言うんだ?エイジから何も教わってないのか?」

 

 目の前の食卓にはご飯と味噌汁、黒焦げになった野菜炒めらしき物と綺麗に出来ただし巻玉子が出ていた。今までのソーマならここまで気にする事は無かったが、ここでもエイジの料理を食べ続けた弊害が今の惨状を拡大させていた。以前のソーマであれば食は栄養を補給するだけの行為でしかなく、味については二の次だった。しかし、今のソーマにそれは許されない。だからこそ、アリサの料理に物申す姿があるのは、ある意味仕方のない事でもあった。

 

 

「ちゃんと教わってます。ちょっとここのグリルに慣れてないだけです。文句を言うなら自分で作れば良いじゃないですか!」

 

「お前さん方、こんな事で痴話喧嘩しても仕方ないだろ。少し位焦げていても食べる事位は…」

 

「大丈夫です痴話喧嘩ではありません。そんな事言うなら私が全部…」

 

 一人で食べていた食卓に2人が加わる事で賑やかさが八雲の心に染みわたる。いつから息子はああなってしまったのだろうか?そんな愚にも付かない様な事を考えていると、来客があったのか、玄関の呼び出し音が鳴り響いていた。食事時に来るなんて事は普段は中々有り得ない。そんな事を考えながら八雲は玄関へと足を運んでいた。

 

 

「ソーマ。何かあったんでしょうか?」

 

 思った以上に時間がかかっている事から、様子を確認すべくアリサ達が玄関先に足を運んでいた。来客に違いないが、明らかに通常ではない。そこには総統と部下がその場で待機していたのか、八雲の顔を見るなり今後の事で一旦塔まで来る様に話が進められていた時だった。突如としてソーマの体内に慣れしたんだ感覚が今の状況を理解させていた。

 

 

「アリサ!神機を用意しろ!アラガミが来るぞ。お前らもこんな所で油を売る暇があるなら直ぐに現場に行け!」

 

 ソーマの怒声とも取れる声と同時に、素早くケースから神機を取り出し現場へと走り出す。この僅かな時間に何が起こったのか、理解するまえに、部下の通信機から今の現状が報告されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは一体どう言う事だ!」

 

「分かりません。今は一刻も早く討伐しないと被害が拡大します」

 

 ソーマとアリサが現場に駆け付けると、どこから侵入したのか、ヴァジュラやサイゴード、オウガテイルが周囲を蹂躙するかの様に暴れまわっていた。既に被害は拡大しつつある。ここの警備と思われる人間が反撃とばかりに攻撃をしているが、アラガミには通用していないのか、焼石に水の様な状況だった。

 ゴッドイーターであればこんな惨状は今に始まった事では無いが、ここの住人達は脅威以外の何物でもない。数はそう多く無いにしても、目の前で餌の様に捕喰される光景は地獄絵図その物だった。

 

 

「ソーマはヴァジュラを!私は小型種を一掃します!」

 

 気遅れする事無く、片っ端から浮遊しているサイゴードを撃ち落し、地上を徘徊するオウガテイルを次々と仕留めて行く。このまま行けば、あと数分で鎮圧出来る様な状況が見え始めていた。

 

 

「勝手な事はするな。ここは私がやる」

 

「あなた一人では無理です。既にここは戦場なんです。一人で全部やろうなんて無理です」

 

 アリサの行動を遮る様に牢屋にいた少女が神機を持って飛び出してきていた。この時点で小型種は壊滅し、残すはソーマが交戦中のヴァジュラだけとなっていた頃だった。 遠くの高い場所から高見の見物とばかりに一体のシユウがこちらを見ている。今回の襲撃の原因は分からないが、恐らくはあれが今回の一連の襲撃に何らかの影響を及ぼしていると判断し、その場所を確認していた。

 

 

「寝言は寝てから言え。こっちもこれが仕事だ。ここはアリサに任せる。俺はあのシユウを仕留めに行ってくる」

 

 ヴァジュラの視線を外すべく、強烈な一撃を顔面へ打ち込む。直撃をくらったヴァジュラが大きくのけぞった事を確認した途端に、ソーマが補足していたのか一体のシユウの元へと走り出していた。

 高い場所から見落ろす様にのぞき込んでいたかと思われる地点まで一気に走りきり、そのフロアまで躍り出ていた。

 

 

「待て!そのアラガミは普通のシユウとは違う!」

 

 激情に駆られた行動にソーマは佇んでいたシユウへと一直線に駆け寄ったかと同時にその勢いを利用し、神機を叩きつける様に斬りかかった。すんでの所で回避はされたが、それでも完全に回避に成功した訳では無く、攻撃を食らったシユウはその場で崩れ落ちていた。

 

 

「このまま一気に仕留める」

 

 ソーマのイーブルワンに闇の様なオーラが纏わり、チャージクラッシュを叩きつけるべく構えを取った瞬間だった。突如としてシユウの声なき咆哮が辺り一面に響いた瞬間、3人の神機に異変が起きた。チャージクラッシュを叩きつける為に構えていたイーブルワンは突如としてオーラが消え、その瞬間にまるで何か別の物にでもなったかの様に今まで感じた事が無いような重量感が肩にのしかかる。

 異変が起きたのはそれだけでは無く、今までアサルトで対応していたアリサの神機は弾丸を発射する事も出来ず、また銃形態から変形する事すら出来ない。途中で乱入した少女はこの事実を知っていたのか、その場から撤退の準備を始めていた。

 

 

「くそっ!どうなってるんだ!」

 

「こっちも動きません」

 

 突如として動かくなった神機は最早アラガミへの攻撃手段ではなく、単なるバラストにしか過ぎない。残りはヴァジュラと、交戦中のシユウだけではあったが、今の状況下では如何にゴッドイーターと言えど、丸腰ではどうしようもなかった。

 

 

「退け!このままだと神機は動かない。直ぐに距離を取れ!」

 

 恐らくは今までに何度か対峙した事があったのか、少女の反応は手馴れた物だった。

 既に距離を離す事で、余程の攻撃が来ない限り、十分に回避可能な距離まで離れている。アリサも距離は離れているが、少女程に距離は取れていない。現状ではほぼ目の前のソーマだけが一番死地に近かった。

 攻撃が無いと分かった途端に、ヴァジュラはアリサに襲い掛かる。このままでは回避行動そのものが困難になると思われた頃だった。

 

 

「何勝手に動かなくなってるんだ!」

 

 反応が怪しい事を無視し、ソーマは神機を無理やり動かすと同時に、シユウの肩口から一気に振り下ろす。肩口から袈裟懸けに斬られはしたが完全に斬撃が入った訳では無く、深手は負ったと同時に、そのまま衝撃で落下していた。

 シユウの意識が途切れたからなのか、原因は不明だが今まで沈黙していた神機が再び稼働しだす。襲い掛かったヴァジュラに対し、アリサは素早く剣形態へと変更し、飛びかかって来たヴァジュラの腹部を縦に一気に斬り裂いていた。

 

 

「アリサそこからどけ!」

 

 頭上から響く叫びと同時に退避した瞬間、重い一撃がヴァジュラに止めを刺し、その勢いのまま倒れこんだシユウをも斬り裂いた。

 

 

「ひとまずコアの回収と、その解析をしないとこのままだと拙いですね」

 

 本来であれば、完全に息絶えるまでは確認していたが、今回の様な有り得ないアクシデントに意識を奪われ、ほんの僅かな瞬間に、シユウへの意識が切れた瞬間だった。

 

 

「まだ完全に死んでない。後ろだ!」

 

 アリサが振り返ると、今さっ斬り裂いたはずのシユウが再び立ち上がる。アリサに襲いかかろうとした瞬間、大型のバレットが襲い掛かろうとしたシユウを直撃していた。

 

 

 


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