破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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プリズムリバーとの対戦があっさり終わり、それを見守っていた観衆の間にはその展開の始終に驚き、どよめきが広がっていた。
そんな感じで次の対戦まで暫し小休止かと思われたとき、観衆の中から一人手を射命丸に向けて手を挙げる者がいた。


第6話 嫌な介入

「次は私がお相手させてもらってもいいかしら?」

 

そう言って現れたのは幻想郷で主に悪い意味で有名な事が多い風見幽香だった。

 

「あ、あなたは……」

 

射命丸はたじろいだ。

ただでさえ先ほどのビルスの闘いで、自分でも真似できるか自信がない速さの動きに驚いていたというのに、今度は鬼と同じくらい怖い妖怪が出てきたのだ。

 

「さっきの対戦、一瞬で終わって儚かったけど、中々興味深くもあったわ。そちらの方、ビルスさんって言ったかしら?」

 

「うん?」

 

「あなた強いのね。どうかしら? 今度は私と……」

 

「ちょ、ちょっと」

 

と、射命丸は進行を無視して乱入してきた幽香をあくまで礼儀的な意味で注意しようとした。

 

「……」

 

その瞬間、ギンッっと心臓も凍りそうな恐ろしい視線で射命丸は幽香に睨まれ、続く言葉を突きつけられた悪寒という名の刃で断たれた。

 

「……っ」

 

「黙っていてね」

 

そう笑顔で微笑む幽香の顔を見て、彼女の顔を美しいと思うものは果たしてこの場にどれだけいただろうか。

その様子を見ていた者たちの反応は様々であった。

 

 

「はぁ……あいつ……」

 

霊夢は相も変わらず性格が悪い幽香の行動に呆れていた。

せっかくビルスの相手の弾幕を自分の弾幕で弾き返すという、意外な対応に感心して彼の力量を再評価していたというのに、観衆のビルスに対するどよめきを意に介さず我が物顔で現れるとは。

 

「なぁ霊夢、あいつって……」

 

「そうよ。解ってると思うけど魔理沙、手を出しちゃダメだからね」

 

「お、おう」

 

 

「幽々子様、あの方は?」

 

「私は知らないわ。いえ、知ってたかも?」

 

「貴方は知ってるでしょ。幽香じゃない」

 

幽々子の天然な性格に呆れながらも紫はその瞳に警戒を色を湛えていた。

風見幽香、幻想郷でも一二を争うほど質が悪い女。

自分が言うのもアレだが、彼女は本当に性格が悪い。

ただ最強なだけで人並み程度の良識があればどれほど良かった事か。

正に天は二物を与えず、である。

弱い人間なら相手にもされないだろうが、力量が自分と近かったり興味を持たれたりすると、ほぼ必ずと言っていいほど面倒な事に巻き込んでくるのだ。

 

 

「ふん……気に入らないわね」

 

「ダメよレミィ。ここは高貴な者としての余裕をみせるべき」

 

「妹様こちらへ」

 

「えー? なに咲夜ー」

 

スカーレット一家も初見ながら幽香の質の悪さを見抜いたようだ。

パチュリーと昨夜がそれぞれ満点の気の効かせようを見せて、事態の更なる悪化を未然に防いでいた。

 

 

「へぇ、君が次の対戦相手かい?」

 

「ええ、そうよ。あなたさえ良ければ、だけど」

 

「び、ビルスさんあの……」

 

幽香に脅されながらも射命丸はビルスに警告をしようとした。

初戦が騒霊だったというのもどうかと思ったが、いくらそんな彼女達に余裕を持って勝てたからと言って、次が幽香ではいくらなんでも飛ばし過ぎだ。

最初の対戦相手とは力の差も良識の差も有りすぎる。

 

「ああ、大丈夫だよ。心配はいらない。それよりも」

 

射命丸の心配を察したビルスは幽香の威圧感に臆する事なく軽く手を振ってそれに応えた。

そして何やら幽香との対戦の前に用がある様子でさっき負かしたばかりのプリズムリバー姉妹の方へと歩いて行った。

 

「……」「……」「……」

 

三人は対戦終わった後もまだ自分たちが負けた時の事を上手く把握できずに言葉少なに呆然と座り込んでいた。

そんな彼女たちの前につい先程自分たちを負かせた相手が軽い足取りで訪ねてきたのだ。

 

「やぁ」

 

「……」

 

ビルスは姉妹のリーダーがルナサだと目星を付けた上で彼女に話し掛けた。

声をかけられたルナサはそこで初めて我に返ったかのようにビルスの声に反応して、彼を見上げる。

 

「せっかく弾幕ごっこをしてくれたのにあっさり終わらせてしまって悪かったね。僕ももっと綺麗なのを見ていたかったんだけど、何となく気になっちゃってさ」

 

「……」

 

圧勝したにも関わらずビルスはその事を自慢するどころか本来弾幕遊戯を自分の気まぐれで不意に終わらせてしまった事を逆に彼女たちに詫びてきた。

これは日頃我侭で気まぐれな彼としてはとても珍しい事だったが、それだけ彼が弾幕遊戯を楽しみにしていた事をよく表していた。

ビルスは機嫌さえ下手に損なわなければ基本的に話ができる人物なのである。

 

「今度はもっと上手く“弾幕ごっこ”をやるから良かったらまた遊んでくれ」

 

そう悪意のない声で言うビルスにルナサは彼の意図をその時やっと察した。

 

(そうか、この人は別に調子に乗っても無ければ、私達を侮っていたわけでもなかったんだ)

 

ただ見た目がちょっと意地悪そうな姿をしていただけで、そんな人が発した言葉に気分を悪くしていた自分がルナサは急に恥ずかしくなった。

 

「ビルスさん凄かったね。わたしもリリカも弾幕を跳ね返すなんて初めてで驚いたよー。ね、リリカ」

 

姉が反省している間に状況を把握したメルランが明るい声でそう言った。

同意を求められたリリカも負けた悔しさなど欠片も感じさせない笑顔で相槌を打つ。

 

「うん、そうだね。凄く驚いたけどわたしもあんな反撃初めてでびっくりしたよ。跳ね返すかぁ、ね、ビルスさんまた遊んでね。今度はもっと長く遊びたいな」

 

「了解した。またこの祭の後暇になったら遊ぼう」

 

ビルスはそんな自分の健闘を讃えるメルランとリリカの言葉に快く応じた。

そんな妹達姿を見てルナサもそこでようやく、気を取り直す事ができた。

真っ直ぐ彼を見て凛とした声で話す。

 

「ビルスさん、こちらこそありがとう。何か最初はあんまり良くない態度取ってしまってごめんなさい。私も今度はもっと楽しい演奏をしてみせるよ」

 

「それは楽しみだ。宜しくね」

 

 

そう言ってビルスは姉妹に手を振って再び射命丸と幽香がいる場へと戻ってきた。

 

「ビルスさんあのー」

 

「ん?」

 

「大変申し訳ないのですが次の試合ではその、弾幕を跳ね返すのは遠慮して欲しいなと思うのですが……」

 

「え!?」

 

その言葉に誰よりも強く反応したは何故か対戦には関係がない紫だった。

 

「え?」

 

「紫様?」

 

式神の二人も何故主が急に驚いた声を上げたのか不思議そうな顔で見る。

そんな疑問の視線を受けていた紫の思惑は以下の通りである。

 

(そ、そんな……。弾幕を弾き返すだけなら放った相手の弾がそのまま返ってくるだけだから幻想郷は傷つき難いと安心していたのに。何を言うのかしらこの駄天狗は!)

 

結局はビルスの力が幻想郷に及ぼす被害を心配していたのである。

 

 

「あらあら、紫はビルスさんが幻想郷を壊してしまうのを恐れていたみたいよ」

 

紫の思惑を察した幽香がさも面白そうに言った。

本当に嫌な笑顔であった。

 

「幽香……!」

 

紫が敵意のこもった目で幽香を睨む。

 

そんな険悪な雰囲気が広がりそうだったが、ビルスは特に気にした様子もなく射命丸の提案にあっさりと同意してきた。

 

「了解だ。まぁ確かにただ避けたり弾を跳ね返すだけじゃ味気ないよね。僕もそれっぽく弾幕ってのを撃たないと面白くないか」

 

「……」

 

紫は幽香と対峙している最中だったにも拘らず、ビルスの承諾の言葉に目に見えて落ち込みさっきまでの威圧感はどこえやらという様子ですごすごとその場を去って行った。

こうなったらビルスの配慮に期待するしかない。

そう自分を納得させて去っていく紫を見ていた幽香の顔もその時は珍しくひくついていた。

 

(え、あれ本当に紫よね……?)

 

 

 

「さぁ、ちょっと時間がかかってしまいましたが、申し訳ございませんでした! お待たせしました。第二戦の始まりです!」

 

射命丸の掛け声に合わせてビルスと幽香はゆっくりと上空へ上昇を始めた。

幽香は愛用の傘を柄を持ってない方の手でぽんぽんと叩き、視線をビルスへと定める。

対するビルスも、そんな幽香の鋭い視線を最初の対戦の時と変わらない力の入っていない自然体で正面から受け止めた。

 

「ではお二人とも準備はいいですか? それでは第二戦……始め!」




前の話と比べて割と短いですが、何となくきりがよく思ったのでここで切ることにしました。
ですが幽香との弾幕戦は次できっかり終わりでそれもそんなに長い展開にはしない予定です。
時間の都合といよりもいろいろなキャラを出したいというのありますし、何より筆者の力量のもんd

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