破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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ビルス達との出会いから数分の後、ちょっと一人になりたいとその場を抜け出したキュウべぇは人の姿が無いある高所で一人の少女と会っていた。


第4話 どっちが悪い?

杏子「それで? 話ってなんだよ?」

 

珍しく林檎でなく、梨をかじっている杏子がキュウベぇに聞いた。

 

QB「うん。実は最近魔女と同じくらい危険存在を確認したんだ」

 

杏子「魔女より? それって……」

 

QB「魔獣さ」

 

杏子「魔獣? それって魔女の使い魔みたいなモノだろ? なんでそれが魔女と同じくらい危険なんだ?」

 

QB「僕も初めて観測した滅多にないケースなんだけど、自立思考型の魔獣が何故か二匹だけ魔女の支配から抜け出したみたいなんだ」

  

杏子「そいつの魔女は? 魔女が消えたちまったら魔力の供給もなくなるから勝手に消える筈だろ?」

 

QB「それがそうならなかったから今回は危険なんだ」

 

杏子「……どういう事だ?」

 

QB「その魔獣、魔女の支配から抜け出すと同時に自ら魔力の供給も断ち切って完全に一個の存在として独立しているらしい」

 

杏子「はぁ? 独立って、自我に目覚めたとかそんな事あるのかよ? ていうか、独立したところで魔力がなきゃ……」

 

QB「人を襲ってる」

 

杏子「! なるほど……」

 

QB「事態の深刻さを理解してくれたかな? そう。その魔獣は魔女じゃない故に空間ごと人間を取り込むといった術は取る事はできない。という事は……」

 

杏子「直接襲ってるって事か。騒がれてない所を見ると人目に着かない所で襲うくらいのお頭はあるみたいだな」

 

QB「そうだね。実際に襲われた跡は血しか残っていなかったよ」

 

杏子「分った、殺ってやる。それでどんな奴だ?」

 

QB「その前に一つ警告しないといけない事があるんだ」

 

杏子「なんだ?」

 

QB「その魔獣なんだけど、独立して動くようになってから随分経っているみたいなんだ」

 

杏子「ああ、だからその分被害者も多いって事だろ? ならさっさとーー」

 

QB「それもあるんだけど、重要なのはそこじゃないんだ」

 

杏子「ああ?」

 

QB「その魔獣、長い間人間の社会に潜むことによって言語、思考まで人間並みになっているんだ」

 

杏子「なんだって……?」

 

QB「まぁ、見た目はどうにもならないから抵抗はそんなにないかもしれないけど。喋り方や仕草は人間そのものだから、対峙した時は話術で取り込まれないように注意しないと駄目だよ」

 

杏子「そこまで頭が回るヤツなのかよ!?」

 

QB「そう。だから僕は提案する。もし目標を確実に仕留めるつもりなら……」

 

杏子「……勘付く暇も与えず、死角から一撃、って事だな?」

 

QB「そう。それが一番だと思う」

 

杏子「だけど魔獣は二匹いるんだよな?」

 

QB「君の武器は槍。その長さを利用して一気にまとめて仕留めるしかないね」

 

杏子「……ん」

 

QB「今回の敵はそういう意味でも難敵だよ、大丈夫かい?」

 

杏子「ふっ、煽ってるのかい? いいぜやってやる。この佐倉杏子に任せておきな」

 

QB(よし、上手く誘導できた。佐倉杏子の魔法少女としての腕前と経験は現状確認している魔法少女の中でも最高レベル)

 

QB(そして何よりも彼女の武器が近接武器なのが重要だ。上手く隙さえ突けば、ビルスのような存在でも個体である限り葬れる筈)

 

QB「ありがとう。僕も今回は全力でサポ……」

 

 

 

QB『サポートするから、一緒に頑張ろう!』

 

杏子『なんだぁ? 珍しいじゃねぇか。ま、いいけどな』

 

杖の飾りの部分からそんな光景がまどか達の前に映し出されていた。

 

ウイス「おやおや」

 

ビルス「はぁ」

 

ビルスが呆れ、ウイスが苦笑しながら困った様な声を出していたが、他の者の表情は皆強張っている。

 

マミ「キュウべぇ……」

 

まどか「ひどい……」

 

さやか「ヤロウ……」

 

ほむら「……」

 

ウイス「どうやらインキュベーターは完全にビルス様を敵としか認識していないみたいですね」

 

ビルス「全く不快だよ」

 

明らかに不機嫌な声でふくれっ面をするビルス。

 

さやか「でもそれはさ……ビルスさんが宇宙で暴れちゃったから危険って思われてるんだろ?」

 

ビルス「ぐっ……」

 

痛いところを突いてくるさやか、このツッコミにはビルスも苦い顔をしてソッポを向くしかなかった。

 

ウイス「その事に関しては私が謝罪しても仕方がない事ですが、ビルス様の代りに謝罪致します」ペコリ

 

そう言ってウイスは慇懃に皆の前で頭を下げた。

 

マミ「え? なんでウイスさんが謝るんですか?」

 

突然の謝罪に困惑したマミがウイスに聞いた。

 

ウイス「自己紹介の折に申しましたが、私、一応これでも破壊神の付き人をしておりまして。キュウべぇさんが以前仰っていましたビルス様の一件が発生した時、ちょどその時に限って私不在だったんです」

 

ウイスは本当に申し訳なさそうな表情で目を時折瞑りながら語った。

 

ウイス「破壊神の行いを戒めるのも付き人としての私の役目なのに、本当にあの時は自分を不甲斐なく思いました……」

 

ビルス「う……」

 

ビルスは居心地が悪そうに横でさめざめと涙を滲ませんとしているウイスから視線を逸らした。

 

ウイス「まぁ、流石にあの時は事が事だったので願い玉を使って直ぐに修復しましたけどね」ボソ

 

まどか「え?」

 

ウイス「いえ、こっちの話です。まぁミスは犯してしまいましたが、そこは破壊神ではありますが、神たるビルス様のツテ? のようなものでちゃんと元に戻して罪は償わせて頂きました」

 

ほむら「そんな事までできるの……」(話だけでまだ信じられないけど)

 

さやか「ま、ちゃんと解決してるならいいんじゃない?」

 

ウイス「さやかさん、ありがとうござーー」

 

ウイスは自分をフォローしてくれたさやかに暖かい笑みでお礼を言おうとしたが、その言葉は続いて出た彼女の言葉で止まった。

 

さやか「でもさ、なんでその時ウイスさんはビルスさんの近くに居なかったの?」

 

ピシッ

 

場の雰囲気が凍った音が聞こえた気がした。

事実、ビルスはそのさやかの言葉を聞いた時耳をピクリと動かしていた。

 

ビルス「そういえばそうだな。ウイス、お前あの時何処に行っていたんだ? 何も言わずにいなくなるなんて初めてだった気がするぞ」

 

ウイス「え、えーと……そ、それはですね……」

 

今度はウイスが本当に気まずそうな表情で顔をひきつらせながら答えに窮していた。

何気に僅かに後ずさりもしていた。

 

ビルス「?」

 

ウイス「ちょ、ちょっとその……はは」

 

煮え切らない態度で中々答えないウイス、そんな彼をからかうような顔でまたさやかが口を挟んできた。

 

さやか「あー、分ったぁ! さてはウイスさんおやつ食べに行ってたんでしょー? いやぁ、分るよ。なんかその時間帯になると食べたくなるよねぇ」

 

マミ「さやかさん流石にそれは……」

 

まどか「あ、あはは。そうだよ流石に無いよさやかちゃん」

 

ほむら「おやつで破壊? さやか、あなたね……」

 

皆口々に呆れの言葉を吐いていたが、それもウイスの一言で全て遮られた。

 

ウイス「な、なんでそれを!?」

 

マミ・まどか・さやか・ほむら「え?」

 

ウイス「あ」

 

シーン……

 

 

ウイスはしまったと言う顔で口に手を当てたがもう遅かった。

重苦しい沈黙がその場に立ちこめた。

皆どう言ったらいいのか分らないと言った表情で困惑した顔をしていた。

 

さやか「あ、あはは……ま、まさか本当だとは……」

 

場を取り成すために事の発端たるさやかが果敢にも声をあげたが、そんな彼女の声もビルスの機嫌が悪そうな声に遮られ、それ以上聞ける事はなかった。

 

ビルス「ウイスお前、僕には散々食生活に煩かった癖に自分だけ……」

 

ビルスの周りにオーラのようなものが見え始めた。

どうやら結構お怒りの様子だった。

 

ウイス「ほ、ほほほ……み、皆さん暫く失礼しますね」

 

そういうとウイスは一瞬でビルスと共に姿を消した。

 

 

そして数分の後、戻って来た二人は案の定というか、服や顔に汚れが付いていた。

二人が消えた先で何をしていたのか想像に難くなかったが、それでもほむらは再び本当にこの2人で大丈夫だろうかと、不安に思うのであった。




最初からワンサイドゲームになりそうですね。
キュウべぇの今後の活躍に期待します。

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