宇宙戦艦YAM@TO改変ヤマトよ永遠に   作:Brahma

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ようやく敵本星デザリアム破壊に成功したヤマトと『しゅんらん』。しかしその眼前には信じられないものが姿を現した。


第12話 最後の戦い

その要塞はゴルバによくにていたがその10倍はあり、白色彗星の超巨大戦艦の艦首に似た巨大な突起物が5つの方向に向かってついており、見るものを圧倒する重量感と威圧感を誇っていた。そしてそれぞれ直径にして10mはありそうな10門の巨砲がついている。

グレートエンペラーの姿がスクリーンに映し出された。

それは黒々とした牛か竜のような細長い顔で細長く、一回転する二つの角がついていた。

そして赤い眼光が不気味に光る。

「地球の戦艦よ。よく戦った。お前たちが見込んだように先ほど破壊したのは確かにわが帝国の本星デザリアムだ。しかし、同時にここがお前たちの墓場だ。ガンマ砲発射。」

 

10門の巨砲から発射された光と熱の奔流のうち一条が空間磁力メッキをつきやぶりヤマトを貫く。

爆発音がおこった。ズゴーンン...地響きのような音と振動がヤマトを襲い、その振動で船体はゆらぐ。第一艦橋も例外ではなく、激しい振動で乗組員は自席からはじきとばされる。

「うう...。」

「被害報告!」

「機関室!機関室!応答せよ。」

いつもなら元気な双子の応答があるはずだがモニターは雨の降ったような黒い画面に白い点線...ガーっという音がするばかりだった。

「エンジン出力低下...しかし、航行に支障なし。」

真がコンソールにつっぷしてしまう。その額からは出血している。

「真!真!」

「気絶してるようね。」

 

「医務室にも被害が...あずささんが...アナライザーも...。」

雪歩が泣きそうな顔で報告する。

 

ふたたびグレートエンペラーの不気味な姿が映し出される。

「ふはははは。そんなうすっぺらなメッキとやらがこのガンマ砲に通用すると思っているのか。さあヤマトよ。次がお前たちの最後だ。」

 

「律子さん...。」

「春香。奇跡的に波動エンジンは無事だけど波動砲の発射機構が完全に破壊されている。航行するのがやっとの状態ね。」

ヤマトに爆発音が続いている。巧みなダメコンで敵弾をくらってもまた幸いにも貫通したおかげで誘爆が少なくてすんでいる。しかし次に食らったらもう終わりだろう。

 

「もはやエンジン噴射口を狙う手段も、そしてこの要塞のガンマ砲をそのまま砲門へ向かって反射する手段もこの要塞には通用しない。たよりの戦闘機隊ももうろくに残っていまい。どうする、ヤマトよ。ふはははは...。」

 

「あのガンマ砲は、空間磁力メッキに垂直にあたった場合のみ有効な武器。だから垂直にあたった部分だけヤマトの船体に穴があいている。しかも偏光バリアや四次元フィールドの技術を逆用して相手にあたった瞬間に逆反射させて高熱で相手を貫通させる兵器のようだから、誘爆が少ない。まともに食らわなければ空間磁力メッキは有効だわ。あの砲口と敵のエンジン噴射口が弱点なのには変わりない。あの砲門のひとつだけでも破壊できればぜんぜん状況は変わってくるんだけど...。」

「敵砲門の射線を精密分析。」

正面に10門あるガンマ砲が輝き始める。

「敵ガンマ砲の斜線計算でました。これは...。」

船体と艦長室を貫いて破壊する方向であった。

「船体を貫かれないようにするには、もうすこし天底方向に移動したほうがいいわね。」

避けるためにはやや天底方向に移動するしかない。

その場合も第一主砲、第二主砲、第一副砲と第二艦橋付近が貫かれるのはほぼ確実だった。

「....。」

もはや船体は小ワープしたらもたないだろう。春香と律子はくちびるをかみしめる。

「面舵90°上下角-20°」

千早が敵から真横になった船体を縦方向へ動かすがガンマ砲の二発目が撃たれる。

激しい振動の後ぐらりと穴の開いた艦橋がかたむく。

「うわああああつ。」「きゃあああああ。」

乗組員は床に投げ出され、床面が30°近く傾く。

「第二主砲塔、第一副砲塔、第二福砲塔大破、第二艦橋下部に貫通。被害甚大。」

王手飛車取りの状態で、もし配置を誤っていたら艦橋と船体にガンマ砲を二箇所食らって詰んでいたところだった。これでも技術班の迅速な精密計算と千早の操艦で最低限の被害に抑えたのだ。

そのときだった。航空隊の二名が申し出る。

「技師長。われわれが行きます。あの砲門が発射されるタイミングでミサイルなり魚雷なり撃ち込みます。」

「危険だわ。かえってこれなくなるわよ。」

「ここであの要塞を破壊できなければ、あの要塞で地球が攻撃されます。波動砲が効かないし、空間磁力メッキも破られるようであれば地球は終わりです。ここで食い止めなければ...。」

「わかった。こんなこともあろうかと思って発射される瞬間のエネルギー反応データをとっておいたわ。通信で送るとジャミングされる。だからこのメモリーカードを渡すからセットして発射される瞬間の2秒前に敵の砲門に命中するようお願いね。」

「はい。わかりました。」

二人の勇士は、コスモファルコンで飛び立つ。

「律子、春香。」

「赤羽根提督。」

「あの砲門をねらうんだな。援護しよう。」

「お願いします。」

ヴェスパコルトとヴェスパブランコの攻撃を避けながら要塞に接近する。

ヴェスパブランコとヴェスパコルトはヤマトにも襲いかかる。

「波動防壁展開。」

巨大要塞のガンマ砲で波動防壁が一時的に吹き飛ばされるがまた回復する。

しかし、右舷パルスレーザー砲塔群に命中する。垂直に命中した部分のみ破壊されるが誘爆を繰り返し吹き飛ぶものもあり、船体が振動で揺れ、砲塔は使用不能になる。

「すさまじい威力だね。」

「うん。波動砲以外は破れないはずの波動防壁の衝撃波面を吹き飛ばすだけでなく、空間磁力メッキも無効化するんだから波動砲以上の威力だと考えていいわ。」

千早は無言で操縦桿を握って巧みに操作する。

ガンマ砲は垂直にあたらずに反射される。

千早の額には汗がにじんでいた。巧みな操艦でかろうじて直撃をくらわないですんでいる。

「千早ちゃん...。」

「春香。これまであのぎっしり並んだデスラー機雷を避けたり、異次元空洞や宇宙気流で流されたりしたのに比べたら自分の力で操艦できる分楽なほうだわ。」

千早は微笑んで答える。

『しゅんらん』の援護もあり、ガンマ砲の四発目はなかなかヤマトの船体にはあたらない。おそるべきことにガンマ砲の同時発射があるが、すんでのところで『しゅんらん』は小ワープする。ヴェスパコルト、ヴェスパブランコの弾幕は波動防壁で避けるとともに煙突ミサイル、波動爆雷、側面ミサイル発射口、艦首魚雷で防戦する。二機のコスモファルコンは苦しみながらもガンマ砲口に近づいていく。

 

「愚か者め。上部衝撃砲発射。」

その瞬間だった。コスモファルコンから魚雷が発射されると同時に「ゴルバ」の「こけし」状の頭の一部がスライドして出現した衝撃砲から斜め下へ向かって竜巻のような衝撃波が発せられ、コスモファルコンをつつみ引き裂いていく。

 

「!!」

第一艦橋のクルーは粛然として敬礼する。

魚雷は砲門に命中した。しかし、3兆5千億テスラのバリアが張られる。

「律子、春香。」

「赤羽根提督。」

「あのバリアは3兆5千億テスラだ。その強度なら『しゅんらん』の拡散波動砲三門を至近で撃ち込めば打ち破れる。それしかない。」

『しゅんらん』も波動防壁をヤマトより頻繁に展開できるとはいえ、再展開までのタイムラグがある。『しゅんらん』とヤマトの二艦は両方とも中破の状態であり、満身創痍だった。

「提督は??」

「直前に脱出するさ。救命艇頼む。」

「はい。」

 

『しゅんらん』乗組員に対し赤羽根は脱出の指示を下す。

「みんな。これが最後の戦いだ。幸いにも自動操縦で拡散波動砲を発射できるようセットできた。『しゅんらん』の船体はもたないからそのまま船に残ったら全員死んでしまう。みんなは家族のため、これからの地球のために生き残るんだ。」

「提督は?」

「俺も救命艇に乗り移るから安心してくれ。自分も家族がいる。艦とともに死ぬのもひとつの考え方だが同じような強力な敵が現れた場合一人でも熟練した戦士が必要なのだ。誇りを持って帰還しよう。」

「はい。」

みな『しゅんらん』から脱出していく。

敵の砲撃は、距離があるにもかかわらず救命艇を目ざとく発見し、一機また一機と沈めていく。

撃墜から無事に逃れることのできた乗組員は宇宙服で宇宙空間にただよう。3日分の酸素と流動食がつまれている。

自動操縦で敵の砲門の至近に小ワープした満身創痍の『しゅんらん』は、三門の拡散波動砲を敵砲門の至近で発射した。至近であれば三門とも拡散前の収束状態であり、それぞれが通常の波動砲の2倍の威力をもっている。波動砲の六倍の光と熱の激流が魚雷によって生じた裂け目に向かって撃ち込まれる。しかし、一方では強力なバリアに対し至近で拡散波動砲を放ったしゅんらんの船体も無事にはすまなかった。超巨大要塞に裂け目が生じて、みるみる広がっていったが『しゅんらん』の船体も横に裂けていく。超巨大要塞は外側は堅牢であっても内部からの誘爆には耐えられない。

超巨大要塞としゅんらんは双方とも裂け目が輝きながら広がり、やがて火を吹いて、大爆発を起こし、火山の噴煙のような煙と巨大な火球に変わっていった。

 

『しゅんらん』の10機あった救命艇は撃墜されていた。5機のみがヤマトに着艦する。

「『しゅんらん』救命艇2号、3号、6号、7号、9号ただいま着艦しました。」

「『しゅんらん』乗組員250名無事に収容。」

「赤羽根提督は?」

「まだ発見されていません。救命艇が撃墜されたようなので...」

第一艦橋は重苦しい空気に包まれる。

『しゅんらん』の乗組員がそのとき発言した。

「救命艇が撃墜されたときにうまく脱出した人もいるはずです。3日分の食料と酸素をつんでいるので早めに発見すれば十分にたすかるはずです。」

春香、律子、千早、雪歩は顔を見合わせてうなづく。

ヤマト救命艇が発進される。5秒ごとにその位置を宇宙空間に送信する。それを傍受した宇宙空間に浮かぶ『しゅんらん』乗組員は、宇宙服に取り付けられた装置から自分の位置を送信する。救命艇は、宇宙空間にうかぶ赤羽根や乗組員45名を発見する。

「赤羽根提督以下45名の救出に成功しました。」

第一艦橋の空気は明るくなる。

 

「提督。」

「律子、春香。」

「無事でよかったです。」

「あずかった艦隊を全滅させてしまったな...。」

「いえ。提督と乗組員の皆さんは...無事にかえって来たじゃないですか。」

「そうだな....。」

 

回収ができた『しゅんらん』乗組員の遺体が宇宙葬にされ、数百にのぼるカプセルが宇宙空間に流される。

「宇宙戦士の霊に敬礼!」

弔砲が撃たれる。

その後律子は技術班と機関室に指示し、ワープ可能な修理を10日ほどで終える。

「春香、連続ワープできるだけの修理は終わったわ。」

「ありがとうございます。皆さん、お疲れ様でした。それでは地球に帰還します。」

「千早ちゃん。」

千早は微笑んでだまってうなずくと

「ワープ準備。」

と宣した。けがが回復した真も機関長席で微笑みながらうなづく。

いよいよ地球に帰れるのだ。

千早は、スクリーンで上下する光点が5本の空間曲線の交点と一致する瞬間に「ワープ」と宣してレバーを大きく倒すと、ヤマトの船体は、40万光年先の白色銀河からその姿を消した。

 

「ヤマトが本星を破壊したようです。」

「そうか...。」

「司令。仇をとらないのですか。」

「いや。ここで満身創痍のヤマトを沈めたところで地球艦隊とまた戦わねばなるまい。

グレートエンペラーが倒れられ、数百万光年に及ぶ我が帝国の版図に派遣された将軍たちと戦わねばなるまい。今までは圧倒的な戦力をもったグレートエンペラーにつきしたがってきたが、ガミラシウムとイスカンダリウムの収奪に頼りきって無制限な版図の膨張に狂奔してきたことに反対してきた将軍たちも数多い。こうなっては我が帝国も一枚岩ではないだろう。やつらと戦ってきたことで宇宙空間からエネルギーを調達する波動エネルギー技術を得ることができた。われわれはその意味で他の勢力に対して優位に立てるのだ。」

「はい。」

ムーゼル艦隊はいずこへとひきかえしていった。




こうしてヤマトは辛くも勝利し地球へ帰還した。
しかし防衛軍第七艦隊は全滅した。空間騎兵隊も壊滅的な犠牲者を出した。ヤマトも一時は戦闘能力を失うような満身創痍の大ピンチにまで追い込まれた。しかし、結果的には敵を倒して地球へ帰還することができたのだ。

さてその後、グレートエンペラーを失った暗黒星団帝国は、その統一の旗印とするために、復仇を名目に地球に攻め込む艦隊の攻撃を幾度となく行なってきた。しかしいずれも、重核子爆弾侵入の教訓を生かした地球連邦の防御網に確実に防がれた。また数百万光年というあまりにも広大すぎる版図のために、本星壊滅の戦訓は生かされず、艦隊戦は波動砲の一斉斉射と空間磁力メッキで甚大な被害を受け撤退し、そして地球ではボラーの起動要塞などのワープによる太陽系侵攻のようなこともあったことから、反物質カートリッジ弾の大量生産ラインが作られたため、地球眼前へのゴルバ型要塞のワープ突撃も阻まれた。また、ガンマ砲の技術はグレートエンペラーの旗艦でもある要塞にのみ装備された独占技術であったため、どの「後継」勢力ももっておらず、暗黒星団帝国は地球侵略をあきらめ、果てしない内部抗争に突入していく。

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