律子は高熱光線モードでその隔壁に難なく穴を明けたが、隔壁同士がぶつかると
「ぎゃああ。」騎兵隊員が2名挟まれて串刺しになる。即死だった。
「息がないわね…。」
その次は刃物のついたつり天井がおちてくるがタイミングを測りながら通り抜けていく。
「こっちだわ。」
ジグザクした通路から敵兵が銃撃してくる。騎兵隊員が二人撃たれる。なんとか巧みに倒して行った先には扉があった。
「いやな予感がするわね。」律子がいい、斉藤はうなづくと、春香と律子へ後ろへもどれと合図する。ジグザグな通路の角に戻って、斉藤が扉にコスモ手榴弾を投げる。
するとロボットのスズメバチが襲ってくるが、部屋から3mまでしか飛んでこれないようだった。ふたたび、斉藤がコスモ手榴弾を二発投げ込みでロボット・ホーネットの群れを倒す。
そして20mほど進むといきどまりになりまた扉がある。斉藤は離れて、またコスモ手榴弾を投げ込む。扉が破壊されると、こんどはロボットのさそりが大量に現れる。しかし、これも部屋から3mしか出れないようだった。これもコスモ手榴弾で倒す。そしてさらに20m進むとまた扉がある。斉藤はコスモ手榴弾を投げるが効かない。仕方ないので律子と騎兵隊員がコスモガンの高熱光線モードで穴を開ける。何もない部屋のようなのではいると、隔壁が現れていきなりしまった。空気が抜けていく音がする。その部屋は右側と左側に扉があった。
手持ちの計器を確認すると酸素の量が減っていくのが判る。酸欠にしようという敵の意図を律子は察して、すぐに
「酸素マスクをして」と伝え、春香と斉藤たちは酸素マスクをし、コスモガンを高熱光線モードで左側の穴を開ける。
そしてその扉に穴が開くと今度は敵兵が銃撃してくる。それを倒すと今度も扉がある。
斉藤がコスモ手榴弾を投げるがこれも開かないので春香が今度は高熱光線モードで穴を開ける。
「今度は何かしらね。」
律子が使用済みエネルギーパックを投げ込むが反応がない。
「どうやら床から火が出てくるわけじゃないようね。」
そして部屋に入るとまた隔壁が現れてしまり、シューシューと音がする。
「ごほん、ごほん。」
「硫化水素と排気ガスだわ。マスクをして。」
春香と斉藤たちはあわててマスクをする。
ふたたび扉を高熱光線モードで穴を開ける。
そしてジグザクの通路の角から敵兵が銃撃してくる。
また突き当たって扉がある。
斉藤がコスモ手榴弾を投げると扉が壊れるが、ガッシャーンという音がする。扉の内側がガラス張りのせいだった。そしてその部屋の壁もガラス張りである。天井にガラス製の銃があり、近づくと反応して液体が放出される。部屋の手前の通路の床面が溶ける。
「強酸性の液体ね。おそらく硫酸か塩酸のたぐいね。」
床面はその強酸性の液体がプールになっている。
「とても進めないね。」
「よし。」
斉藤がその部屋の天井へコスモ手榴弾を投げつけて爆音とガシャーンとガラスの割れる音がして液体がどどっと流れる。しかし、幸いにも通路には流れてこない。
強酸性のプールの左側には通路があるようで敵兵が銃撃してくる。
春香と律子と空間騎兵隊員の一部はコスモガンの高熱光線モードで金属とガラスの合板である扉をガラスと金属に分解する。斉藤と一部の騎兵隊員たちは敵兵を倒す。
ようやく敵兵を倒し、ガラスと金属を分けるとガラスのいかだで通路までなんとかたどりつく。その通路は行き止まりになっており、奥で左右に分かれている。
律子が通路の奥に使用済みのエネルギーパックを投げると刃物がぎっしり生えたつり天井
が落ちてくる。ヴィーッツ、ヴィーッツと警報が鳴り、春香、律子、斉藤、騎兵隊員は一気に釣り天井の落ちた場所までいくと敵兵が左右の通路の奥から銃撃してくる。
ここまでくるのに騎兵隊員たちは10数名が死亡していた。
右側の通路の敵兵をたおしてすすんでいく。先頭にいる騎兵隊員が進むと、刃物のついたつり天井がまた落ちてくる。すんでのところで隊員はのがれるものの、左足がつり天井の下敷きになる。
「ぎゃあああ。」
「田中!」
つり天井を持ち上げようとする騎兵隊員と春香たちに敵兵の銃撃がおそう。
「てえっ。」
斉藤がコスモ手榴弾を奥の敵兵のいる場所に投げ込むと爆発が起こって敵兵が吹き飛ぶ。幸運な?ことに通路の行く先のつり天井がバターン、バターンと落ちていく。
「恐ろしいわね。やっぱりそんな仕掛けがあったんだ。」
つり天井のうえを進んでいくとシューシューという音がして、サイボーグのガラガラヘビが次々と上から落ちてくる。
必死にコスモガンで打ち倒していると今度は前後の隔壁がいきなりしまって催涙ガスと硫化水素と排気ガスが出てくる。
「ごほつ、ごほつ、マスク」
春香たちと騎兵隊員たちは高熱光線モードで隔壁に穴をあけて脱出する。
通路は50mほどで行き止まりになっており、25mほどで左へ行く通路がある。
通路の奥と左側の通路から敵兵が銃撃してくる。
斉藤と騎兵隊員たちは、催涙ガスを途中の通路の敵兵のまえに投げて、
敵兵がひるんでるすきに、奥の敵兵へ向かってコスモ手榴弾を投げ込む。
左側の通路の催涙ガスで苦しむ敵兵をコスモガンで倒すと、ドーム球場程もあろうかと思われる広い空間が15m先に見える。中央には、インジケーターランプが平行に無数に点滅する縦30m横20mはあろうか卵形の物体があった。配管が四方八方に無数にのびている。
「ここだわ。」
「やっとついたね。」
「苦しい戦いだった。」
入り口へ入ろうとすると、上のほうの壁にベランダのようなものが設けられ見張りの兵士が銃撃してくる。
「これじゃあ、とても近づけないね。」
出口通路にも犬走りないし、ベランダのような通路があってそこからダースべーダーのような「兜」をかぶり、目を発光させ、黒光りして武装した兵士が銃剣をもっておしよせてくる。
「艦長、技師長はなれて。」斉藤が叫ぶ。
空間騎兵隊員がコスモ手榴弾を兵士たちの背後に投げ込んで倒す。
しかし、次から次へと兵士が「湧いて」くる。
「きりがないな。」斉藤がつぶやき、二度目の手榴弾を投げ込んで、メカが体の随所からのぞく黒い兵士たちの「遺体」を乗り越えて、ようやくのことで入り口から右脇、左脇に続く通路にひしめいている黒光りする兵士たちの後ろにコスモ手榴弾をなげこむ。
爆発が起こって、黒光りする兵士たちの後続部隊は、通路が破壊されたために動力源の空間の数十メートル下のほうへ次々と崩れ落ちるように、しかし叫び声もあげずに落ちていく。しかし斉藤と騎兵隊員たちもただですまなかった。
「ぐわつ。」
押し寄せる黒光りする兵士に串刺しにされる隊員も現れる。
通常の銃撃が効かないため、コスモガンを高温熱線モードにして至近で打ち込んでようやく倒せることに気がつく。
律子は騎兵隊員が戦っている間に、動力源の写真を撮って爆弾に座標データを入力して5~6個の時限爆弾を飛ばした。
爆弾は、ドーム内を飛びながら指定された座標へとんでいく。
春香と斉藤は思わずおどろく。
「あれだけの高エネルギー反応があるものだからなんとかできるはずと思ってね。」
「なるほど。これなら近づかなくてもいいんだね。」
「じゃあ、引き返しましょう。」
「山本さん、永倉さん、時限爆弾はセットした。7分後に爆発するから引き換えして。
もし、速く脱出できたらその時点で爆破させる。」
「了解。」
つり天井のわなを壊しながら、春香と律子はもと来た道を引き返す。
「うえあっつ。」
刃物がついたつり天井の落下をたくみにさけるものの、ついに落ちてくる天井にとじこめられる。
見ると斉藤が血まみれになっておさえている。
「艦長、技師長。はやくにげてくれ。」
「斉藤さん。」
「こういった白兵戦のために俺たちはいるんだ。お嬢さん方は、早く安全なところへ逃げて鉄の壁に隠れてろ!」
「でも...。」
「かんちがいするな!頭を使って敵を倒すのがお嬢さん方の仕事だって言ってんだ。ここで死んだら艦隊戦の指揮はだれがとるんだ。」
「わかりました。」
「リボン、じゃねえ。天海艦長、中学校時代にお前みたいなまじめでやさしい学級委員が
おれのクラスにもいたよ。別の学校から不良どもがきたときに俺は言ってやったんだ。ふだんの学校をうまくいくようにするのがお前たちの仕事、学校を守るのが俺たちの仕事だって。騎兵隊になる学校へ進学できたのも勉強を教えてくれたその学級委員のおかげだ。立派な艦長になってくれ。めがね、じゃなくて技師長、そのきれる頭で艦長を助けてやってくれ。」
「最後まで名前呼んでくれなかったわね。」
律子の目に涙がにじむ。
斉藤は苦笑する。
「秋月技師長、ヤマトを地球を頼んだぜ。お前たち、お嬢さんたちに傷ひとつつけさせるんじゃねえぞ。」
「おおつ。」
騎兵隊員にまもられながら銃撃戦が行われるところを滑走路のあるとところまでたどりつく。たどりついた騎兵隊員は3割ほどになっていた。
「発進します。」
春香のコスモゼロに続いて次々とコスモファルコンが飛び立っていく。北極からの通路の内部では山本隊が敵戦闘機隊と交戦中だった。北極の通路を半分ほど進んだところで後方で明るい光が闇を切り裂くように輝く。見ると水晶都市に亀裂が走り、引き裂かれるようにまぶしいほどの光がもれている。
「全機、北極ハッチから脱出!」
水晶都市から北極ハッチまであと2割のところで激しい閃光が水晶都市の位置で輝き、爆発が起こり、すさまじい勢いで爆発の煙と衝撃波がおそってくる。春香と山本のコスモファルコン隊はそれぞれ8割が失われた。
「みんな...。」
春香は後ろを一瞬振りむいた
デザリアム星は大爆発を起こしすさまじい爆発煙を噴出していた。
「坂本君、コスモファルコン隊...空間騎兵隊の皆さん...大きな、本当に大きな犠牲だった...。」
(これほど大きな犠牲をはらったのだ。今度こそ地球の勝利なんだ...)
と春香は辛く悲しい思いを振り切るためにことさらに勝利を半ば意識してつぶやく。
しかし、引きちぎられたデザリアムの爆発の煙がじょじょにはれていくと信じられないものが姿を現した。それは黒光りする巨大な要塞であった。
ついに人工惑星デザリアムを葬ったヤマト。しかしその内部から信じられないものが姿を現した。