その分少し長めです。
ではどうぞ!
舞台装置を渡した次の日。
俺は今学園に来ている。
勿論束に行くという事は伝えてあるし、織斑 千冬にも伝わっている。
まぁアイツがどう伝えてるか少し不安ではあるが。
『さすがにあまり酷い伝え方はしていないと思いますよ?』
「いや……あいつのことだから『私と同類だよ!』とか伝えてそうだ」
『否定できない!』
いや、まぁ覚悟はしておくか。
とりあえず今は織斑 千冬に会わねばな。
あ、一応言っておくがにゃる……クロスは今デバイスに戻っている。
2人はさすがにすぐに受け入れできないそうなのでな。
◆
「え?今日誰か来るんですか?」
「ああ。どうやら織斑と周防に会いにきたらしい……内容が内容なためあまり詳しくは話せないのだが」
束のやつ……急に連絡をしたと思えば。
だが「しーちゃんのことをなんとかできる現状唯一の存在だよ!」だと?
今まで一切の手段が無駄に終わった現状で何とかできると言われて招かない訳にはいかなくなったではないか。
アイツは今度一発殴るか。
だがその前に確かめなければな。
本当に静を救う事が出来るかどうかを。
そのためにも会わなければな。
「では任せた」
「はい!仕事は任せてください!」
本当に感謝しかないな、後で何か持っていこうか。
◆
「俺と静に客?」
「うん。どうやら来るみたい」
なんでだろうか。
別に変なことはしてないはずだし、所属する企業も今は仮で決まってるはずだから問題ないはずだし。
「誰が来るかは?」
「なんにも。でも悪いようにはならないって千冬姉さんが言ってたから大丈夫だと思う」
でも不安に思うのは仕方ないよね。
「でも二人共知っている人物だって言ってたし……なんとかなるんじゃないかな?」
「束さんとか?」
「それだったら隠す必要はないでしょ?少なくとも僕達には」
「それもそうか」
でも束姉さん関係だとは思うけれど。
じゃないと秘匿する意味がほぼないからね。
「で、いつ会うんだ?」
「もうそろそろだと思う」
「そうかーもっと早く言ってほしいとは思ったけど仕方ねぇや。よし!準備しに行こうぜ!」
「うん。じゃあこれでラストね」
そう言いながら最後のミサイルを放つ。
はい、ここでミサイルが出た理由が咄嗟に出てこないそこの君。
まだ修行が足りないね。
まぁ単純にいつもより少しだけ温い修行しているだけだけどね。
「一夏が完全に人外になっちゃったわね」
「そうですわね……斬り払いでミサイルを対処だなんて非常識ですわ」
いやぁ停止結界使わなければミサイルをある程度斬り払いできるようになったからね。
これくらいなら簡単にこなせるか。
「よし!シャワー浴びて行こうぜ~」
「ん。じゃあ先に浴びてきたら?僕は特に汗かいてないし」
「同じ運動量で一夏は汗かいてるのに静はまったくかいてないのよね」
「類は友を呼ぶ……ですわね」
セシリアさんには後でお話だね。
あ、ミサイルはきちんとイチイバルで出してるよ?
使わないと情報集まらないし。
もうそろそろ最終段階にはいってもいいと思うけれど……まぁそこは調整かなぁ。
「……今一瞬悪寒が」
「気のせいじゃない?さ、さっさと準備するよ。後30分程で多分くるから」
「おぉ。だったら急がないとな……まぁ気のせいか」
勘が無駄にいいよね。
危機管理は高めなのにフラグ管理はガバガバってどうなのさ。
まぁもうセシリアさんがいるからいいのかな。
◆
ふむ。
どうやら特に問題はなさそうだ。
『どうやら無駄に壮大に語られたようですが?』
いやまぁ……間違いではないからいいんじゃないか?
一応来るのは織斑 一夏と周防 静と織斑 千冬だけだろう?
なら問題はない。
『ですかねぇ』
さて、クロスには悪いが少しだけ静かにしてもらうぞ?
一応説明する時にお前のことも説明するからそこまでではあるが。
『了解です』
助かる。
「待たせたな……お前が周防を救える存在か」
ようやく来たか……だが、本当にややこしい事をしてくれたな束のやつ。
よし、デコピン一発(平和島 静雄レベル)で済ませてやるか。
◆
「俺が救うんじゃない。その手段を出して勝手に助かってもらうだけだ」
いきなりこんな反応だとは思わなかった私は思わず面を食らった。
てっきり「そうだ」の一言で済ますと思っていたが……束とはまた違った面倒さだな。
だが本当に救えるのか?
「本当に救えるのか?という顔をしているから言っておくが……少なくともアイツが助かる気なら助かるさ。なぁ?周防 静」
「いきなり話振られても」
……だがヤツのいうことにも一理あるか。
静が助かる気がなければ意味はなさない。
だからこそ呼んだのだろう。
私も知る必要があるな。
「でも好んで死のうとは思わないですよ?生きる事が可能なら生きると思います」
……やはりそう答えるか。
「静、可能ならじゃなくて可能にするんだろ!」
「まぁそりゃね……でもその可能性があるから来たんですよね?龍斗さん」
「……あぁ。まぁ俺が用意するのは手段だ。その結果はお前次第だよ」
……微妙に引っかかりを覚える言い方だな。
だがその手段があるだけでも全然違うからな。
「で、その方法は?」
「その前に聞かせろ周防 静」
「……なんです?」
「お前は今幸せか?」
何故このタイミングでその質問を?
「……何故それを聞くんです?」
確かにそうだ。
だが意味のない問いをするとは思えない。
「簡単だ。俺は助かる気のないやつを助ける程ヒマじゃないのでな」
ある意味で傲慢ともとれる言い方だな。
だが確かにそうだろう。
助かる気のない存在ほど無駄になるものはない。
「……僕は幸せですよ」
「それは本当か?今のこの時間に幸福を感じているのか?いつ死ぬか分からない自身の体を恨まずに幸せを感じられているのか?」
「確かに自分のこの体は恨まずにはいられませんね」
静……。
「けれど……その程度の事で僕が幸せでなくなるはずがないですよ」
「ほう」
「僕は今のこの現状にこそ幸せを感じている。どうしようもないほどボロボロなこんな僕でも愛して受け入れてくれる素晴らしい人がいる……これで幸せを感じない訳がない」
……ッ。
「僕は諦めない。僕はこの先皆と一緒に生きると決めた。僕は先に進むと決めたんだ……なら諦めるわけがないでしょ?幸せなんだし好んで不幸になりたくはないよ」
「静……」
そこまで想ってくれていたのか。
「その言葉に偽りはないな?」
「勿論……この気持ちに嘘偽りはないし否定もさせないよ……この気持ちは僕だけのものだ。僕が幸せを感じているのだから幸せなんだ」
「……全く。これだから人は素晴らしい」
……何か言ったか?
気のせいだろうか?
「さて、では手段だが……周防 静にはこれを渡そう。これがどう作用するかは本当にお前次第だ」
そういいながら渡したのは真っ黒な箱だった。
「これは?」
「束の発明したISの自己進化を利用したものでな……ISと使用者が真に望めば問題を解決できるようになっている」
進化を利用したプログラムか。
だがそんなものが開発できるとは……本当にこいつは何者だ?
束以上の天災でなければできないものだぞ?
「これがあれば静は助かるんだな!」
「正しくはきっかけを作るものだ……そして結果を生むためのもう1つのきっかけが織斑 一夏……お前に渡すコレだ」
一夏には白い箱が渡された。
「これは……」
「これは可能性だ」
「可能性?」
「そうだ……これは助ける薬にもなるし殺す毒にもなる」
毒だと!?
「そんなものを一夏に渡すのか!」
「ち、千冬姉?」
「お前は一夏に静を殺せと言っているのか!」
そんなことはさせはしない!
たとえそれが可能性だとしてもだ!
「お前は織斑 一夏を信じていないのか?」
「何?」
どういうことだ。
「少し考えれば理解できるだろうに……直情型はこれだから困る」
……。
「可能性だと言っただろう?その結果はヤツの努力次第だ。中途半端なら毒になり、十全ならしっかりと薬になるさ」
「つまり貴様は一夏を試しているな?」
殺す可能性のあるモノを手に取る事ができる覚悟があるかどうかを。
「さぁどうする織斑 一夏。これは諸刃の剣だ……傷付ける可能性のあるコレを手に取る事が出来るか?」
その言葉を聞いた一夏は迷わず手にとった。
「愚問だ!俺は静を殺したりはしねぇ!俺は静を助けるって決めてるからな!力がないから助けられない?なら強くなりゃいい!そのために今強くなれるように修行してんだからな!」
「救うのに必要なのは強さだけではないぞ?」
「わかってるさ……でも弱い奴は死に方も選べないんだろ?なら助け方も弱けりゃ選べないだろうしな」
強さが一つの救う手立てになりえる……か。
そうであるならこの称号に意味はあるのだろうか。
「なら見せてもらおうか君の魅せる可能性を」
「おう!絶対に静を助ける!そして皆で笑える日常にもどるさ」
そのための努力を欠かさず出来るだろうな……一夏ならば。
だが弟に全てを任せるなんて格好悪い以前の問題だ。
「私にできることはないのか?弟に任せっぱなしの姉というのもアレなのだがな」
「用意してある……が、今のお前では無理だ。これはISがあって初めて使用できるものだからな」
……なら私もISを用意するしかないな。
とはいえ……束に頼らねばならんのは不安要素ではあるが。
「では束に渡して導入してもらっておこう……だが使いどころを間違うなよ?」
「当然だ。私は静の姉だぞ?姉は弟を護るものだ……殺すのは以ての外だ。弟に殺される事はあっても姉が殺すことはありえん」
「お前は……俺の兄のような事を言うなぁ……まぁいい、ではそうしておこう」
これで私も行動できる訳だが……まぁISを所持するキッカケに束を利用するんだ。
大抵の事は自分で対処しようか。
「さて、では俺は帰る……もうする事もないんでな」
「もう帰るんですね」
「あぁ……まぁもし次に会うとしたらそれは気まぐれか偶然だろうな」
「えぇ……」
まぁそれだけ忙しいという事だろう。
ここまでの技術を持っているのだからな。
「ではな……お前達の行く末に幸多からん事をってな」
「あはは……頑張ります」
こうして私達は可能性を託された。
今までが絶望的だった事もあり、希望を得た私達は頑張ろうと思えた。
まさかこの可能性がああなるとは今の私達は気付けなかったのだ。
◆
「やれやれ……なんで俺がこんな所にいるんだ?確かに死んでるはずなんだけどなぁ」
「お前にはやってもらうことがある」
「ん?アンタが俺を蘇生……いや、記憶を転写したクローン体か。再現したのはお前か」
「そうだ。お前にはコイツを殺してもらう」
「……ッ。あぁなるほどそういう事な。クズが」
「どうとでもいえ……貴様に拒否権はない」
「だろうなぁ今アンタに殺意抱いてんのに殺そうとしても体が動かねぇからな。どうせ逆らえないようにプログラミングしてんだろうけどな」
「お前は命令された事だけしていればいい」
「逆らえないならするしかないな……だがこれだけは覚えておけ。お前は必ず俺が殺す」
「出来もしない事を言うな。不可能な事をしようとするのは無駄な事だ」
「油断はするなよ?油断してたら首元噛みちぎって殺してやるからよ」
「ふん……出来るものならな」
「全く……なんの因果なんだか。まぁ仕方ねぇわな、悪いな静……俺はどうやら迷惑かけるみたいだわ。タダじゃ死なねぇから覚悟しとけよクソ野郎が」
そこには少年の殺意の篭った声が虚しく響くだけであった。
畏夢様、佐天様感想感謝です
次回はコラボ投稿するやもです。
では!また次回!