しかも番外編という体たらく。
キャラがあってるか不安なので登場は少なめですが、お試しみたいなものなのでご了承ください。
次回もなるべく早く更新できるよう頑張ります!
人というものは簡単に裏切る。
そも裏切りという行為は人からしか発生しない。
では信用とはなんだろうか?
信じる事でしか誠意を見せられないのであれば、何故裏切る可能性のある存在にそれを見せなければならないのだろうか?
無駄である。
無意味である。
無価値である。
その行為そのものが無意味で無価値で無駄な行為でしかないのだ。
だがその行為そのものが人が人であるための行為なのだ。
たとえどんなに矛盾を抱えていようともそれは人であるのであれば必要な事なのだ。
さて、ここまで語られた無価値な話に何か思うことはあるだろうか?
あるのであればきっと何か良くないことでもあったのだろう。
無価値な行為を好むのが人であれば嫌うのも人なのだから……まぁこの行為を無価値と決め付けるのもまた人なのだから詮無き事か。
語る事もたくさんあるが、ここでは別の世界に存在する周防 静という存在について語ろう。
何、簡単にしか語れぬのだから楽に聞くといい。
この複数ある世界も可能性の1つに過ぎないのだから。
さてさて、今から語られるのは可能性の話。
周防 静という存在が可能性を魅せ続けるがゆえの別の世界でも存在する可能性の話。
ここまでの語り部は私、森 龍斗がお送りした。
私の言葉は8割偽り、戯言で固められている。
ゆえにほどほどに聞いてくれたまえ。
まずはそうだな……歌が世界を救う薬にも毒にもなる世界について語ろうか。
他の世界もきっと語る機会があるだろうが……それまでのお楽しみだ。
◆
きっと僕は生きていてはいけないのだと思った。
可能性の話をしてもキリがないのだからアレだけれど。
僕がいなければきっと奏さんは生き残れた。
絶唱という切り札を、死をもって成される業を使わせる事がなかったはずだ。
たとえ誰が僕を肯定してくれても……僕自身が僕を否定し続ける。
別に罪滅ぼしがしたい訳じゃない。
誰かに赦しを乞うてる訳でもない。
ただただ僕は消えてしまいたい。
勝手に消えることができればどれだけ楽か。
それも許されない僕は一体何なんだろう?
ノイズという謎の存在でもなければ人でもない。
人であるのであれば心臓を潰せば死ぬはずだ。
なのに何故僕は生きている?
どうして死なせてくれない?
僕という存在を抹消させてくれない。
答えてくれる人もモノもないしいない。
……いや、いるにはいるか。
お人好しとそのお人好しを太陽と表現する子が。
他にも防人を自称し、その力を示し続ける子も。
最初は他者を否定し続けた僕と同じだと思っていた子も。
世界を敵に回した子も。
その子に付き従う子達も。
あぁ……世界はこんなにも優しい。
こんな残酷な事はあるだろうか?
誰かが恨んでくれればよかった。
化物だと僕自身を否定してくれればよかった。
でもここには僕を肯定してくれる人しかいない。
それはすごく幸せな事だろう。
けどそれは僕にとってはただただ苦しみを長引かせる原因にしかなりえない。
僕はただ誰にも看取られる事なく消えたい。
逃げているだけだと言われるだろう。
生きることが戦いだと怒られもした。
けれど失くし続ける人生に何を見出せばいいのだろうか?
僕は家族を、恩人をなくしていく。
どうしてこうなるのかと疑問に思った。
原因は簡単だった。
僕の体に入っている完全聖遺物「ロンギヌス」と「森羅万象」だ。
「ロンギヌス」は名前のとおり槍だけれど、その槍は聖人を貫いた所為か、人から離れた存在を許さない。
たとえそれが所有者であっても。
ゆえに僕の身体は常に蝕まれている。
それだけじゃない。
「森羅万象」は完全聖遺物と関係のない、ただの異能だ。
けれどだからといって生易しいものではない。
僕の身体を人から外したのはこの異能によるものだ。
僕は死にかけた。
ライブを見に行った僕は死にかけたのだ。
その時の事は未だにはっきりと覚えている。
僕の所為で人が死んだ出来事なだけあり、くっきりとはっきりと覚えている。
あの死にかけた感覚。
全てが失われる感覚。
楽になれると安堵した感覚。
抱き抱えられた感覚。
「生きるのを諦めるな!」と言われた時の何とも言えない感覚。
その言葉は確かに僕に届いた。
しかしそれは難しいというもの。
なんせその時にはすでに僕は諦めていたから。
だからそれを伝えた時はまさか叩かれるとは思わなかった。
言っては何だけれども、赤の他人のためにどうしてそこまで怒れるのだと。
理解ができなかった。
人というのは自分本位ではないのかと?
それが間違っている訳がない。
でもその人の顔は打算に塗れた顔ではなかった。
ただただ助けたいという感情が見て取れた。
そんな顔を見て唖然としたのを覚えている。
痛みを忘れ、死にかけている事も忘れ問うた。
「どうしてそこまで赤の他人のために行動出来るの?」
と。
問うた僕に苦笑を浮かべながら彼女は言った。
「なんてことはない。自分のためだよ」
と。
おかしな話だ。
どうして自分のためになる?
助けても礼は言われるかもしれないけれど、メリットがない。
理由としては弱すぎる。
「自分が気に食わないからするんだよ。ただそれだけで私が動く理由になるさ……なんて言ったって私の人生だからな!」
ただ目の前で理不尽に死ぬ存在を認めたくないから戦うのだと。
最初は復讐心からの行動だったが行動しているうちにそれだけではなくなったのだそうだ。
……この人は。
この人は人一倍自分本位なのだと理解した。
自分本位だからこそ自分の気に食わぬ事には全力で抗うのだと。
それは何と尊い存在なのだろうか。
僕のような存在では到底真似が出来ぬし、比べるのも烏滸がましい。
「それにこんな私が2人も目の前の人を死なせずに済むんだ……行動に迷いなんてある訳ないだろ?」
この人は死ぬ気だ。
僕の様に諦めからの死ではない。
希望をつなぐ行為によって死ぬのだ。
後悔せず、悔いのない顔をしている彼女はここで死ぬのだろう。
話題には上がってなかったけれど、目の前には瀕死の少女がいる。
おそらく破片が飛んだせいでこうなったのだろう。
そんな少女と僕を見て微笑んでいる。
今から死ぬというのに。
今から消えるというのに。
「生きる価値のない僕の代わりに貴女が死ぬ意味がない」
と言えば
「それを決めるのは私だ。私は価値を見出したんだから黙って救われてな」
と返される。
「それに代わりじゃない。代わりなんてないんだからそんな寂しい事言うなよ……私の死を無駄にしないでくれ」
そう言われてしまえば僕は返答出来る訳がなかった。
伽藍堂な僕は何も答えを用意できなかった。
その後、彼女は消えた。
力尽きたのだ。
あとで聞いた話だけれど、本来の奏者ではないために薬が切れた状態では危険なのだそうだ。
その状態で限界以上の力を引き出す「絶唱」に耐え切れるはずもなく。
目の前で消えた。
彼女の相方であろう少女の叫びを聞きながら僕は……意識を落とした。
その事件から数ヶ月後に僕は目が覚める訳だが……退院したあとは地獄だったのだと思う。
イジメというものを初めて受けた。
どうしてお前が生き残っているのだと。
どうしてアイツじゃないのだと。
理不尽だろうがぶつける対象は必要なのだろうと理解した。
ゆえに甘んじて受けた。
たとえ首を絞められても、崖から突き落とされても、ナイフで刺されても受け入れた。
受け入れたと言えば聞こえはいいが、実際はただの逃避だ。
彼女の想いが重かったのだ。
重すぎたのだ。
彼女の想いを背負うには僕では無理だった。
ゆえに受け入れることで死のうとした。
でもその時からすでに僕は人外だった。
死ねないのだ。
心臓を刺されようとも、確実に死ぬ高さから頭から落下しても。
苦しかった。辛かったがそれ以上に何故死ねないのだと思った。
死ねば楽になるのに。
他者が望んでいることを望んでするつもりはなかったけれど、死んでやろうと何度も行動に起こした。
でも全てが「森羅万象」に邪魔された。
もう僕は壊れていたのだと思う。
別に特別不幸な事があった訳じゃない。
ただただ家族がいないだけの普通の家庭だったはずだから。
なのにこうなったのは単に僕が弱かっただけだ。
同じ現場にいて、同じ状態でも変わらず……とは言えないけれど過ごしている存在もいるというのに。
だからだろうか?尚更死のうと行動したのは。
他者から見れば異常だろうけれど……僕には他にうかばなかった。
調べに調べた。
どうしたら死ねるのだろうかと。
そして死ねない原因を見つけた。
フォニックゲインというエネルギーが無くならないから僕は死なない。
どうやら全ての人間に存在するらしい。
俗に言う気というやつとでも言えばいいのだろうか?
違う気がするけど……どうとも言えない。
でもそれがどんなに消費されても回復が一瞬のため死ねないと理解した。
だからこそどうすれば死ねるかも理解した。
限界値はあるのだから一瞬を超える刹那に使い果たせば死ねる。
答えを得たのだからあとは実行すればいい。
今は邪魔がはいって出来ないけれど……もう少しすれば死ねる。
なら……そのために行動しよう。
「お~い!ご飯だよ~」
「ん。了解」
そのためにも……利用させてもらうよ?響。
◆
さて。
少しクドイながらも読み上げたけれども。
感想はあるかい?
といってもこの物語はそもそも別の周防 静の物語だ。
差異はあるだろうがそこは環境の違いだ。
君たちのよく知る周防 静には後に新しい家族ができたがこの世界の周防 静には救いがなかった。
ゆえに壊れ、死を想うようになった。
だがこれは可能性の話であり実際に起こった話でもある。
少し間違えればこうなっていたのは君達のよく知る周防 静であった場合もあるのだ。
可能性とは良い意味でも悪い意味でも可能性なのだ。
この世界の周防 静は自分という世界を滅ぼすために動くだろう。
無論それをなんとかしようとする存在もいるだろう。
ゆえに物語なのだ。
もし君達が望むのであればこの世界について語るのもいいだろう。
まぁ機会があればだがね。
私はただの観測者。
観測者ゆえに語る事は出来るが鑑賞はできても干渉はできない。
ゆえに力にはなれぬが語り部にはなれる。
さぁ休憩代わりに語ったこの物語では休憩にならなかっただろうが……今の物語を語るのを再開しよう。
もし気になるのであれば次はもう少し趣向をこらした語りをしようと思うが……今は現在を語るとしよう。
だがその前に……もう少し休憩にしようか。
語り部にも疲れというものがあるのだから。
では……また来てくれたまえ。
続きを語れることを楽しみにしておこう。
gdgdですがお楽しみいただければと思います。
次回はきちんと本編ですのでしばしお待ちを。
しっかり書きますので!
では!また次回!