待ってくださっている方がどれだけいるか分かりませんが、戻ってまいりました。
どんなに遅くなろうとも完結までは絶対に書くのでどうかこれからも宜しくお願いします。
「さて諸君……少しばかり私の話に付き合ってくれたまえ」
「どうしたんですか?急に……何処かの水銀にでもなったかのような口調で」
此処は一面“白”で埋め尽くされた空間。
ひとえに白といわれても様々に思い浮かべるだろう。
黒が混ざった状態でも白の比率が高ければある意味白といえるのだから。
だがこの空間は混濁していないまっさらな白だ。
この空間に存在しているのは2人だけ。
いや、この2人も人とはいえぬ化け物なのだが。
「周防 静についてだ」
「え?あぁ~あの森羅万象に選ばれちゃった子の事ですか……あの子がどうしたんですか?」
変な事があっただろうか?と疑問に思いながらも質問するこの存在は見た目は可愛らしい少女ではあるが、中身は正真正銘の化け物。
クトゥルフ神話では有名なニャルラトホテプそのものだ。
そんな
「あの少年はいわゆる特異点だ……本来物語とは主人公を2人も用意はしない」
「物語は悪く言えば1人の存在を際立たせるための手段になる。その際立つ存在こそ主人公だ」
物語は今も昔も主人公という存在が必ず存在する。
何故ならそれは必要だからだ。
物語は主人公なく語る事は出来ぬ。
いや、そもそも前提が違うのである。
物語とは……モノを語るのだ。
モノとは者でもあるし物でもあるのだ。
1つの存在を語るからこその物語。
そこに例外はない。
だが、だからこそこの化け物も恐れる存在である少年は疑問に思うのだ。
何故主人公が2人もいるのだろうか?と。
「主人公としての素質であれば圧倒的に織斑 一夏が上だろう……あれはそういう存在だ」
「ではなんで周防 静は存在しているんです?主人公を2人も用意するのは世界そのものが許さないはずでは?」
物語の例外としてはアリかもしれない。
しかし例外とはそれだけで不確定要素だ。
物語は確かに不確定要素がなければならないように感じられるだろう。
しかし実際は物語とは開始から終了まで全てが決まってしまっている道を歩む行動に他ならない。
読む側からすれば後の展開など知らぬがゆえに未知に心震わせ楽しみに待つだろう。
物語の中の登場人物なんてもってのほかだ。
そもそも自身の歩む道を物語と認識できるはずがない。
出来てしまえばそれだけでその者は壊れているだろう。
「歩む道に本当の意味での不確定要素を入れてしまえばどうなるか……分かるだろう?」
「それに耐え切れず世界が消えるか、その不確定要素が消えるか……ですよね?」
とある作品では修正力と言ったか。
もしくは世界の意思。
それがあるからこそ世界はあるべき姿を維持できるのだ。
「本来森羅万象なんて存在はこの世界に存在せずISという存在が核となるはずだった」
「森羅万象があってもISが中心のままじゃないですか。何がいけないんです?」
「森羅万象を認知してしまえばそれだけで争いの種となる……人は愚かだ。目の前に果実があれば齧りついてしまう程にな」
そもそも気羅というものもなかったはずなのだ。
だが実際は両方存在し、それを扱える存在が生まれてしまった。
それが周防 静。
「彼が幼い頃に消してしまおうと世界が動いた。当然とも言えよう……不穏分子は早めに消しておくに限るからな」
「では何故彼は消えてないんですか?世界の意思でしたっけ?アレに逆らえるほど強いとは思えないんですけど」
周防 静は確かに幼い頃死にかけた。
世界が消そうとしたがゆえに。
しかし実際は消えず今も生きている……瀕死ではあるが。
「彼の家族だ」
「え?」
「彼の家族が奇跡を起こしたんだ……彼を受け入れる事でな」
「そ、そんな馬鹿な話があるんですか!?世界相手になんで受け入れるだけで勝てるんですか!」
そう。世界はそんなに脆弱ではない。
それほど脆弱であればそれだけで世界は滅ぶ。
実際彼らは世界に勝った訳ではない。
世界は彼らを消し去ったのだから。
「まさか……」
「そう。自分達を犠牲にする事で彼を生き残らせたんだ」
「本来無い居場所を自分達の居場所を空けることによって彼の居場所を作ったって事ですか!?」
そう。世界にとって邪魔なのは居場所もないのに存在する存在だ。
ゆえに彼らは自分達の居場所を彼に譲ったのだ。
だがその時に周防 静は森羅万象に目覚めてしまった。
その所為で彼は家族を自分が消してしまったと錯覚してしまったのだ。
「それって……彼は何も悪く無いって事じゃないですか!」
「……いや、ある意味“間”が悪かったのさ」
まさしく彼は運と間が悪かったのだろう。
だが間の悪さと運の悪さを誰が責められるだろうか。
「そんな……なんでそんなに」
「まさか同情なんてしてないだろうな?」
「龍斗さんは可哀想って思わないんですか!?」
確かに普通の感性ならば可哀想だと思うかもしれないだろう。
何もそれは間違ってはいないだろう。
しかし彼は違う。
「思わない。可哀想だとか同情の気持ちは格下にする事だ……自分より下と思ってないのに何故同情なんぞせにゃならん」
「え?」
「だってそうだろう?自分より上の存在にそんな気持ちなんぞ抱きはしない」
そう。同情するという事は一見善い事のように見えるだろう。
しかし実際は自分より下に見ているからこそできる事なのだ。
会社の上司に可哀想等と、同情したりするだろうか?
不幸があれば思うかもしれないが……それはあくまで客観的に見て不幸なだけであって主観では答えも違ってくるのだ。
「彼は一度でも自身の境遇に嘆いた事はあったか?自分が不幸だと、自分が恵まれていないと言った事はあったか?」
「……ないです」
「つまり彼は自分の人生に対してきちんと向き合っている。そんな存在を何故哀れに思わねばならんのだ?少なくとも俺は哀れに思いはしない」
彼、龍斗が何故静を助けるのかといえば、単純な答えが返ってくる。
そう。
「俺は彼が歩む物語を最後まで見ていたい」
観測者がゆえに。
それは傲慢だと咎められようとも。
それが悪だと罵られようとも。
彼はその行動をやめない。
「他人の言葉で止める程度の決意なら初めから無意味なんだ……最後まで貫き通すからこその決意であり信念だ」
龍斗は気に食わぬ事は全力で抗う。
何もしない事はいつだって出来る。
諦める事も、逃げることも。
しかし立ち向かう事だけはいつでも出来る訳じゃない。
ゆえに足掻く。
たとえ見るに耐えないと言われようとも。
彼は歩みを止める訳にはいかぬのだから。
「まぁ俺は彼が気に入ったんだ……やはり人とは愚かだが、素晴らしい」
「まったく……何処の吸血鬼の旦那ですか」
「ある意味俺も吸血鬼だがなぁ……まぁ、彼が歩む道を遮るモノは俺が潰しておくさ。彼が対処できないものだけだがな」
「貴方程過保護な方はいないでしょうねぇ。まぁそういう人だからこそなんでしょうけど」
龍斗という少年はある意味で一番歪んでいる。
彼は静以上に自分を省みない。
ゆえに彼は静に対して自分を省みろとはっきりとは言わない。
自分に出来ぬ事をしろとは言いたくは無いために。
自分を大事にしろとは言うが。
「さて。もうそろそろ出来るはずなのだからとっとと取りに行くぞ」
「あいあいさー。まぁアレが効くかどうかは分かりませんけどね~」
「お前の事は信頼しているさ……彼はあれ程周りに祝福されているんだ。ゆえに死なせは……せんよ」
周防 静という特異点がこの後の物語に与えうる影響を考えれば存在を消してしまった方が楽だろう。
だが周りにあれ程祝福され受け入れられている存在をどうして否定できようか。
龍斗は約束を絶対遵守する。
ゆえに静を護る。
たとえ何があろうとも……。
「なぁ……これでいいんだよな?■ ■ ■」
「彼女もきっと喜んでますよ。だから」
「あぁ……行こう、ニャル……いや、
「イエス・マスター……何処までも着いて行きますよ」
彼ら観測者も歩む。
全ては
この物語の結末は……まだ誰も知らない。
佐天様、感想感謝です!
本当に遅くなって申し訳ないです。
別に他の作品を書いてた訳ではないデスヨ?
……ディエス・イレっていいですよね。
いやまぁ就職活動とかで忙しいのが殆んどですけどね。
それでも最後までは必ず書くのでどうかお付き合い頂けますよう願います。
勿論強制ではございません。
ですがお付き合い頂けるのであれば……感謝を。
では!また次回。
次はきちんと静が出ますので!
……微妙に今回の話の伏線とかさがしてみるのも面白いかもです。
まぁバレバレでしょうが(苦笑)