ですが、全員の成長?を描写したいがためにこの話を書きました。
成長?を感じとれていれば幸いです。
ではどうぞ!
「周防君の反応……完全にロストしました」
その一言は皆を絶望に叩き落すには十分すぎる言葉だった。
静が死ぬ訳がないと信じる事は出来る。
というより信じてはいる。
けれどそれは不安になるのとは別なんだ。
「福音は未だ健在。しかしその場を何故か離れようとしません……まるで何かに閉じ込められたかのように」
静のやつ……それはしっかり成功させてたんだな。
「周防の行方は教師が探す。お前達は指示があるまで待機だ」
千冬姉の一言で全員がいったん部屋から離れた。
俺は……これからどうするかはもう決めている。
静の仇討ちなんかじゃねぇ……そんな格好のいい理由なんていらねぇ!
静が傷付いたのを許容しちまったおれ自身への怒りを福音にぶつける。
八つ当たりだろうとなんだろうと関係ない。
俺は俺がしたいようにする!
……きっと静もそうする事を望んでるだろうしな。
というより静が死んでる姿は想像できないからな。
さっさと帰ってこいよ静。
◆
静が落とされた。
それを聞いた時、何も出来なかったあたしは一番自分自身に腹が立った。
結局は無力なのかと。
何のために力を得たんだ!と。
けれどもっと悔しく思っている奴をあたしは知ってるし理解している。
箒と一夏だ。
共に戦ってたからこそ悔しさはあたし以上だろう。
まぁだからといって何も思わない訳じゃないけど。
ぶっちゃけ静が死んだとは微塵も思わない。
だって静は守れない約束はしないから。
出撃する直前にきちんと『帰ってくる』って言ってたもの。
絶対帰ってくるわ。
帰ってこなければ迎えに行くわよ……地の果てまで。
でも今は……福音に八つ当たりの相手を頼みましょうか。
ちょっと今は加減できないけど、加減する必要もないし。
ま、福音も運が悪かったって事よね。
いったい誰に手を出したか……身をもって教えてあげなきゃ。
その後にでも……静の帰りを待つとしましょう。
待ってるわよ?静。
◆
あの時私がしっかりしていれば……もっと練習を行っていれば結果は違ったのだろうか?
静が1人で戦う必要もなく、私と静で戦う事ができたのだろうか?
……だがその考えは所詮ifだ。
決して過去には戻れない。
過去は振り返るものだ。決して戻るためにあるものではない。
後悔はある。紅椿を得たのに何も出来なかった自分の不甲斐無さ。
何処か慢心してしまっていた自分の愚かさ。
後悔なんて腐るほどある。
けれど……静も言っていたな。
『後悔なんて後で、死んだ後にでもすればいい。死ぬまでの時間なんて限られてるんだからそれまでの間にどう生きるか考えた方がいいでしょ』
確かにそうだ。
なら今の私に出来るのは何だ?
静の仇討ちか?
それともおとなしく待っている事か?
違う!
私は何のために力を得た!
無力さを感じないため?―――確かにそれもある。
大切な人を護る為?―――ああ、それはある意味正しい。
だがそれだけじゃない!私は『後悔しないため』に力を得たんだ!
責任を背負おうと!力の所為で誰かを傷つけてしまおうとも!
後悔だけはしたくなかったからだ!
静と共に歩むために!
ただ愛しい者と共に歩み続けるために行動してきたはずだ!
なら……ここで立ち止まる訳にはいかない。
たとえ世界が敵に回ろうとも、静を護る為なら……後悔なんぞある訳がない。
さぁいこう紅椿。
私はこんな所で立ち止まる訳にはいかないのだから。
静。待っててくれ。
私も共に歩むから。
◆
ふむ。どうやら心配は無用だったようだ。
確かに嫁ならば生きているだろう。
教官が冷静であろうとする姿を見た瞬間にそれは理解できた。
まぁ気持ちでは納得できていないが。
……あぁ、だからこそ私は軍をも利用して福音と戦おうとしているのだろうか?
納得できないのなら納得のできる回答を用意するだけだと。
子供の理論みたいだが……フッ、私はまだ子供だったな。
なら子供は子供らしくモノに当たるとしよう。
子供は理不尽なものだと相場は決まっているらしいからな。
それに嫁の頑張りを無駄には出来まい。
「ラウラ?」
さらに言えば心配する存在はまだまだ存在するのだから嫁を早く探すためにも頑張らねばな。
「シャルロットはどうする?私はこれから箒と鈴を呼んで福音の元に向かうが」
「それは仇討ち?」
仇討ち……ふむ。本来ならばそうなのだろう。
だがなんとなくそれは違うと思った。
ならこれはただの……、
「八つ当たりだな」
「や、八つ当たり?」
「うむ。ただ福音をイラついたから攻撃する。ふむ……嫁が聞いたら爆笑間違いなしだな!」
「いや、爆笑してる姿は想像できないけど……八つ当たりかぁ。なら僕も参加しようかな」
ならこれで全員だな。
一夏が来るのなら自然とセシリアもくるだろう。
箒と鈴は確定している。
アイツ等は確実に私と同じ理由で来るだろう。
しかも私の元にくるだろう。
私は軍人なのだから頼りやすいだろうからな。
さて、福音よ。
よくも私の嫁に手を出したな?
甘いといわれようと理不尽だといわれようと……福音だけは落とす。
「行くぞシャルロット」
「ん。頑張ろっか」
覚悟はある。
後は……戦うだけだ。
◆
「ラウラ!」
「ラウラはいるか!」
「待っていたぞ2人共」
まるで分かっていたかのようにラウラは言った。
事実分かってたんだろうね。
八つ当たりかぁ……考え付かなかったなぁ。
でもいいかもね。
静が傷付いたのは事実なんだし……それくらい許されるよね?
まぁ許されなくても結局は福音と戦うのは確定事項なんだから気にする必要もないか。
でも静がやられるなんて……想像できなかったなぁ。
だって確実に私達に勝つんだもん。
無敵ではなくても最強に近いんじゃないかって思ってたし。
それに勝った福音に勝てるかどうかと聞かれれば、
さぁ?
と答えるしかないのだけれど。
でも気持ちの問題だよね?
納得いかないから行動する。
たいていの人間の行動原理な気がするよ。
さて、新しい装備もあるし、勝率は低いだろうけど……0じゃない限り希望はあるってね。
福音のパイロットさんには無事でいてもらうのを祈るしかないけど、あ、あと頑張って!みたいな応援もか。
それでも福音を恨んではいない辺り私って本当に甘いんだろうなぁ。
でもその甘さが必要なときがあるんだって私は知ってる。
それに救われた私だからこそ分かる。
だからこそ……静のためにも、私のためにも、今回の戦いは負けられない。
だから頑張るよ静。
静も早く帰ってきてね。
王子の犬様、感想(誤字報告)ありがとうございます!
多分他のところもやらかしてるっぽいのでちょいちょい頑張って訂正していこうと想います。
次の更新は月曜日の予定です!
正月にも更新できればいいのですが……一応頑張ってみます。
では!また月曜日まで!