では!本編をどうぞ!
「君が周防 静君ですね」
「えっと」
目の前の男の人は異常だった。
確実に性別を間違えられる容姿に落ち着きすぎた態度。
目の前で人参型のロケットモドキが着地してもまったく動じない。
いったい誰なんだろうか。
僕の名前も知ってるみたいだし。
「やぁやぁりゅーちゃん!ごめんね~ちょっと連れて来るのに手間取っちゃった☆」
「はぁ……まさか無理やり連れて来たんですか?駄目ですよ。無理矢理は」
しっかり許可、同意をもらってからにしてもらわないと、と言いつつ苦笑で済ませてる男の人。
いや、名前教えて欲しいんだけど。
「あぁ、名前ですか……一応森 龍斗と名乗ってます。本来こんな口調じゃあないんですけどねぇ……訳あってこんな口調ですが、気楽に話してもらえると嬉しいです」
「はぁ……」
「一応君の事はある程度聞いてますので、話しやすくしようと思いましてこのような口調にしました」
どう考えてもハ○マにしか聞こえない……口調が。
「おや?気に食わないって顔してますねぇ……はぁ、こうでいいか?」
丁寧な口調を急にやめた龍斗さんは本当の口調で話し始めた。
うん。こっちの方が話しやすいね。
「まぁどうでもいいけど……束、説明は?」
「あ……てへぺろ☆」
「ギルティ」
「みぎゃああああああああああああああああ!!?」
気がついたら束姉さんが沈んでいた。
まぁすぐに復活したけれど。
「ちーちゃんといいりゅーちゃんといい……少しは加減してくれないとさすがの束さんの頭脳でもやられちゃうよ?」
「大丈夫だ、案外何とかなる」
「えっと漫才はそこまでにして、内容を言ってもらえますか?」
「そういえばそうだったな……じゃあさっそく」
そういった龍斗さんの雰囲気が変わった。
いや、これは代わったというべきか。
「お前は後数ヶ月も持つことなく死ぬ……今のままだとな」
「……知ってますよ」
自分の体のことくらい。
「でもまぁ……今の薬がなければとっくの前に死んでるから間違いなく運がいいほうだな」
「そうだね」
確かにそうだ。
僕は本来
「ここから先もずっと地獄のような痛みと苦しみを耐えて生きなければならない。君は生き続けなければならない」
「まぁそうですよね」
「それに君には君自身を恨むという見当違いなものをしないで欲しいな」
「見当違い?」
見当違いなはずがない。
僕は絶対に僕を恨み続ける。
だってそうでもしないとこの身が持たない。
「恨むという行動はそもそも君には合わない。絶望的なまでに」
「なぜ?」
「なんせこう言うのは失礼かもしれないけどな?君は少し俺に似ている……その自分を省みない所が特に」
自身を省みない……まぁ確かにそうと言われれば否定はできないね。
「自身を省みない事はどういう結末を呼ぶか知ってるか?」
「……」
「悲しみしか残さないのさ……特に君は周りに恵まれているからな」
……うん。まぁ恵まれてるね。
「だからこそ君は死ぬ、消える覚悟ではなく。生きる覚悟をするべきだ」
「生きる……覚悟」
「そうだ。全員を幸せにしろなんて無茶は言わない。けれどせめて悲しませるな……あの子達は間違いなく君を亡くせば壊れる」
壊れる……か。
うん、
「龍斗さん」
「何だ?」
「その壊れるって所だけは否定させてもらうよ」
「ほう?」
だって。
「彼女達はそんなに弱くない。僕と一緒に歩むと覚悟してくれた彼女達は僕以上に強いから……壊れたりしない」
僕にはもったいない程強くて、頼もしい子達だから。
皆の気持ちに応えられてない僕が言うのもアレだけど。
「ククク……そうだな、確かに彼女達は強い。人の可能性というものを感じたよ」
「ん~束さんもしっかりがんばってるんだよ~?だからこそ壊れたりしないもんね!」
「いや、束姉さんはすでに頭が春なので……」
「まさかの裏切り!?」
「裏切りですらないな」
うん、これがひとつのコミュニケーションだよ。
パーフェクトコミュニケーション。
「束さんはアイドルではないので普通のコミュニケーションを要求するよ!」
「「だが断る」」
「わーいりゅーちゃんとしーちゃんが仲良くなって嬉しいなー!」
やけくそ気味に言う束姉さんの姿を見て、少しほっこりする僕はSなのかもしれない。
という無駄な考えもおいておき、今ふと疑問に思ったことを聞こう。
「龍斗さん」
「ん?」
「どうして僕に会おうと思ったんですか?」
ただの他人でしかない存在に会う必要を感じない。
だって人っていうのは興味がないと動けない存在だからね。
「あえて言うなら束に頼まれた。アレでも友人だからな……頼みくらい聞いてもいいだろうさ」
「りゅーちゃんがデレた!?今日は槍が降ってくるかもね!」
「……踏みてぇ……全力で踏み抜きてぇ……」
まるでユウキ=テ○ミの技を使おうとしているかのように足を動かし耐えている龍斗さん。
そんな事したら束姉さんでもさすがにアウトじゃないかな?
「じょ、冗談だよ?だよ?だから許してくだしあ!」
「で、デコピン?」
謝ろうとしていた束姉さんに向かってデコピンをした龍斗さん。
音がドゴォ!だったので確実に威力がやばい。
まぁ束姉さんだから仕方ない。
「さて、静君も時間がないだろう?早く戻るといい。束はこっちで引き取るから」
「そうですね。餌は与えないでくださいね?」
「ああ、餌付けはしないでおこう」
「束さん野良の動物扱い!?さすがにそれはヤダよ!?」
「愛情表現ですよ?」
「なぁ?」
「疑問系なのが気になるけど……愛情なら仕方ないね!」
「「(ちょれぇ)」」
束姉さんの将来が少し不安になりつつ、僕は旅館に歩き始めた。
◆
静が旅館に戻り始めて数分。
その場にはそのまま龍斗と束がいた。
「これでいいのか?」
「うん。本当はもっときっかけが欲しいんだけどね」
「俺ではムリだ。もう少し待てばきっと何とかなる」
「それは勘?それとも『観測者』としての言葉?」
「両方だと言っておこう」
観測者。
それが何を指すのかは龍斗と束しか理解できない。
「そういえばにゃーちゃんはどうしたの?」
「寝込みを襲ってきやがったから簀巻きにして放置してる……もうそろそろ来るんじゃねぇか?」
「変わらないねぇ」
「アイツが急に変わったら世界の滅亡疑うレベルだな」
「……話は変わるけど」
「なんだ?」
束は不安げな表情を見せる。
決して普段一緒にいる周り、静へさえ見せた事のない表情を浮かべる。
「りゅーちゃんはしーちゃんを助けられるの?」
その不安に対し龍斗は、
「アイツが勝手に助かるのなら可能だろうな。俺はその手助けが少しだけ出来るだけだ」
「そう……なら安心だね!りゅーちゃんは自分が不可能だと思ったことは不可能って言い切るもんね!」
「自分の力を過信して死んでいった奴を腐るほど見てるからな……まぁムリはせず、自分に見合った行動をするだけだ」
「それがどれだけ難しいのやら」
「龍斗さぁ~ん!」
「げ」
龍斗と束が話し込んでいた場所に1人の少女が現れた。
「酷いですよぉ~ただ挨拶しただけじゃないですか~何で縛るんですか!」
「お前の挨拶は俺の挨拶と違ったからな」
「うぅ……いつになったら龍斗さんはデレてくれるんですか……」
「さてな」
しょぼ~んという擬音が聞こえそうな程落ち込む少女。
「で?ここに来たって事はアイツを助ける手段を用意できたって事か?」
「ええ!まぁ……ちょっと見た目は悪いですけど、ちゃんと人体に悪影響がない素材を入手してきました!」
少女の懐から出てきた素材とやらは見るだけでSAN値が減りそうな見た目をしたものしか存在しなかった。
「え、えっと……大丈夫なの?コレ」
「む。龍斗さんならともかく!アンタに言われる筋合いはねぇですよ!コレはしっかりかっちり即殺して入手した素材なんですからね!」
「いや、理由になってねぇよ」
少女は見た目こそ悪いものの、効果は保障するといった。
少女は龍斗に不利になるような嘘は絶対につかないため、龍斗はとりあえず信用する事にした。
「で?これはどれだけ時間がかかる」
「一応頑張って1週間でしょうね……でも龍斗さんから愛の告白とかあればさらに頑張って3日で完成させちゃいますよ~」
「じゃあ3日で完成させろ」
「じゃ、じゃあ愛の告白を……」
「……3日で完成させられたら何か1つ願いを叶えてやるよ。まぁ俺に出来る事限定だがな」
「しゃぁあああああああああああああああ!!今から超特急で完成させます!初めからクライマックスですよぉおおおおおおお!」
少女はその一言だけで天元を突破したかのようなテンションで何処かに向かっていった。
「だ、大丈夫なのかな?」
「一応な。アイツ……ニャルは完成させるといったら完成させるやつだ」
それくらいには信用しているらしく、何も不安には思ってない表情だった。
「じゃあ帰るか」
「ん?もう帰るの?」
「おう。じゃないとアイツ等がうるさいからな」
「ん~じゃあはいコレ!」
「なんだ?コレ」
「束さん特製携帯電話!防水所か宇宙でも通話できる優れもの!」
無駄な技術である。
「……また電話しろと」
「うん!りゅーちゃんと話してると楽しいからね!」
「諒解」
そういいつつ龍斗は
「じゃあな、また会おう」
「うん!またね~」
そういいながら龍斗は帰っていった。
この先この観測者という存在が原因でこの物語に変化が訪れる。
それがプラスに働くかどうかは……物語が終わるまで誰にも分かりはしない。
佐天様、感想感謝です!
ニャルはどこぞやの這い寄る混沌です。(元であるキャラは)
龍斗は最初に書いた二次の主人公です。
まぁ思い入れから出そうとは思いましたが、きちんと役割はあるので安心してください。
これからも今まで以上に精進していこうと思いますので、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
次回の更新は月曜日の予定ですのでその時まで!
ではまた次回!