全てを否定せし少年の軌跡(半凍結)   作:龍賀

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はい、遅くなりました。(いつも遅い気がしますが(汗))


今回も結構原作とは違う場面がありますので楽しんでいただけたら幸いです。




第17話 歪んだ少年と無力を嘆く少年

一夏がセシリアさんの料理を食べ、地獄を見た後……一応一夏は無事だったので放課後にまた練習をしてる。

といっても今回は僕が教えるのではなくシャルル君が教えるんだけどね?

理由としては親睦を深めるためという理由が1つ。

もう1つは単純に僕より射撃に関する知識はもってそうだったから説明を任せたくなったから。

まぁそれは正解だったみたいだね。

だって一夏が今までで一番理解できてるような顔してるし。

 

「じゃあ全部撃ってみようか」

「いいのか?」

「うん、気にせずどうぞ」

 

うんうん。仲良くなれてるみたいだ。

まぁ端の方でセシリアさんが納得いかなさそうな顔してるけどね。

当然といえば当然なのかな?

なんせ今までの説明で理解できなかったのか~としか思えないし。

事実、鈴と箒ちゃんも同じようで。

 

「あんなに教えたのにどうして理解できてないのよ」

「まったくだ!私も丁寧に教えたはずだが……」

「そうですわ!私が教えた通りにすれば容易い事ですのに…」

 

とか言ってる。

いや、一応フォローはしてるけど君たち全員分かり難いからね?

感覚とか擬音とか理論固めとか……一夏が理解できる訳ないじゃないか。

 

「いやーシャルルは教えるの上手いな!」

「そんな事ないよ……静の方が上手だと思うよ?」

「いや、あれは上手じゃないとか上手だとかの次元じゃないんだ……なんで練習で河が見えるのか」

 

ん~単純に一夏の実力に合わせてやってるんだけどね……物足りないのかな?

 

「いやいやいや!あれ以上とか確実に死ぬ!勘弁してくれ…」

「だが断る」

「なん……だと?」

「断られると思ってないやつに!NO!と答えるのが僕の趣味だ!」

「最低だな!?」

 

まぁ2割冗談だよ。

 

「8割本気かよ!?」

 

いや……一夏の反応が面白くてつい。

 

「……もう、ゴールしてもいいよな?」

「あかん、まだゴールしたらあかん…始めたばっかりやで?」

「なして関西弁!?」

「特に理由はない」

 

その場のノリって大事だよね。

そう……一夏を弄くる時は特にね。

 

「あ、あはは……ドンマイ」

「その言葉だけで救われるよ」

 

シャルル君と一夏が仲良くなったようで何より。

あ、そういえば。

 

「シャルル君の部屋って決まってるの?」

「えっと確か……あぁ、静と同じみたい」

「そうなの?」

「うん、部屋の片付けもしたいから今日はここまでにする?」

「そうだね…一夏も手伝ってくれる?」

「おう、それくらいお安い御用だ」

 

うん、一夏の美徳でもあるけど基本お人よしだよね……ん?そうでもないのかな?

 

「ねぇ、あれって……」

「ドイツの…」

 

僕と一夏の漫才?が終わって練習も終わろうとしてた時に周りがざわ…ざわ…し始めたから何事かと見てみれば、

 

「あぁ…ボーデヴィッヒさんか」

 

ボーデヴィッヒさんがISを纏いながら現れた。

 

「貴様等も専用機持ちらしいな」

「だったら何?」

「丁度いい…私と戦え」

 

戦闘狂?いや…単純に僕と一夏を認めたくないだけか。

それも一種の生き方だから完全には否定しないけど……一夏達を巻き込むのは許せないなぁ。

 

「俺達に戦う理由がない」

「貴様等にはなくても私にはある」

「どうでもいいからさっさと退いてくれないかな?」

「何?」

「君がどんな理由で僕達を毛嫌いして、襲おうとしてるのか何てどうもいいから…退けって言ったんだよ?」

 

ボーデヴィッヒさんは僕の一言に驚愕しているのか、少し後ろに下がった。

けどやっぱり退いてはくれないみたいで…憤怒の表情でこちらに向かってきた。

 

「貴様……どうでもいいだと?」

「うん、君がどう思おうとどうでもいいんだ…でも一夏達に危害を加えるつもりなら相手になるよ」

「フン、いいだろう…貴様から先に片付けてやる」

「静……」

「大丈夫だよ、確かに彼女は強い……けど今の彼女に負けてやるほど僕は優しくないよ」

 

そう…自分自身をまったくといって持たず、千冬姉さんを妄信してるだけのやつなんかには負けない。

 

「貴様のISがどんなものかは知らんが……私に勝つつもりか?」

「うん、君には決定的に足りないものがある……それを理解できない君に負けるつもりはないね」

 

それ以降ボーデヴィッヒさんは喋らなくなった。

おそらく僕がISを纏うのを待っているんだろう。

自身は圧倒的強者だと信じて疑わない顔だからね……慢心は身を滅ぼすだけだという事を教えてあげよう。

窮鼠らしく噛み付いてやろう。

 

さぁ……彼女のための鎮魂歌を奏でよう。

おいで……鎮魂歌(レクイエム)

 

「それが貴様のISか」

「そうだよ……能力くらいは知ってるよね?」

「名前だけはな…しかしどのような能力であれ私の停止結界を抜ける事はできん!」

「さぁ?やってみなくちゃ分からないよ?窮鼠猫を噛む……日本の諺なんだけど、意味は知ってる?」

「知らん!」

「ま、身を持って知る事になるだろうから……覚悟するといいよ」

 

彼女はその言葉を受けどう思ったのか……確実に怒ってるだろうけど、両手のプラズマ手刀を僕に接近しながら構えてる辺り様子見なしってとこかな?

その動きに合わせて僕は独奏曲を出して構える。

居合いなんてものは練習した事ないから出来ない…ゆえに上段に構え待ち受ける。

 

「甘い!」

「そっちがね」

 

上段に構えた瞬間ボーデヴィッヒさんが両手に構えていたプラズマ手刀を片方だけにし、ワイヤーを射出してきた。

武装はある程度理解していたため、それが来る事を予想できた。

ゆえに僕はビット兵器、終曲を射出。ワイヤーの軌道を逸らし回避する。

 

「なっ!?」

 

ビット兵器はまったく使っていなかった訳だから彼女の驚きは当然と言える。

しかも僕自身がビットを操作しながら攻撃できるんだからさらに驚きだろうね。

でも……その驚いてる瞬間は決定的な隙だ。

それを逃すほど僕は甘くはない。

 

「シッ!」

「くっ!?」

 

やはりというべきか…彼女は少し反応が遅れたが、きちんと防御してきた。

その代わり少し辛そうだ。

 

「嘗めるな!」

「おっと」

 

鍔競り合いは長くは続かなかった。

一応僕の方が力強いからね……あのままだとそのまま斬り捨てて終わりだったんだけどなぁ。

 

「さて……まだやる?」

「貴様……嘗めるなといったはずだ!」

「嘗めてなんかないよ?僕はそれほど強くはないし余裕もないからね」

「その態度が嘗めていると言っている!!」

 

ボーデヴィッヒさんがこちらに手を翳すと動きが鈍くなり……完全に僕が停止した。

 

「これがその君の言う停止結界とやらかい?」

「そうだ、そして貴様はこの結界から逃れられない!これで終わりだ!」

 

彼女はそのままプラズマ手刀を構え向かってくる……僕の腕が彼女自身に向いているのに気付かず。

そう。僕は止められる前に腕を動かしておいた。

普通の人なら意味のない行動……けれど僕にとっては重要な行動。

『気羅』を使うために必要な動作は全て終わっている。

これで、

 

「そこまでだ」

 

僕が気羅を撃とうとした瞬間、千冬姉さんが現れ、ボーデヴィッヒさんの攻撃を受け止めた。

いや、普通ISによる攻撃をいくらIS用の近接ブレードがあるからって受けきれるとは思えないんだけれども。

まぁ千冬姉さんだから仕方ないといわれればそこまでなんだけどね?

 

「ボーデヴィッヒ……貴様は命を粗末にするつもりか?」

「は?」

「命を粗末にするつもりかと聞いたのだが?」

「そ、そんなはずはありません!確かに奴は強敵でしたがそこまででは…」

「では貴様は周防に無傷で勝てたと?」

「もちろんです」

 

凄い自信だねぇ……まぁもう攻撃する気も起きないからどうでもいいんだけどね。

 

「周防……気羅の使用は禁じたはずだが?」

 

彼女には何を言っても無駄だと判断したのか、僕に注意をしてくる。

けどどうやらそれも無駄と理解しながらも言ってる感じだけれども。

 

「使うべきと判断したので」

「気羅?」

「ふむ、どうやら織斑も知らされていないみたいなので伝えておこう……静は気羅という異能のようなものを使える」

 

あれー?なんでネタバラシしてるのかなー?

対価でもないのにね~?

 

「気羅は自身の生命エネルギーを他の物質に送り込み内部から破壊する事ができるというものだ」

 

千冬姉さんの説明を聞いて一夏とシャルル君……それにボーデヴィッヒさんは顔面蒼白になった。

いやまぁボーデヴィッヒさんは仕方ないのかな?実際撃たれかけたんだし。

 

「それじゃあ静は指1つで相手を再起不能にできるって事ですか?」

「そうだな……事実先ほどの身動きが取れなくなった際も指だけは向けていただろう?」

 

まぁイメージのしやすさだからね……指先から出すのは。

頑張れば口からでも目からでもいけるよ?ただし激痛が伴うけど。

 

「そんな人間離れな事はするな」

「イエッサー」

 

というより誰も好き好んでそんな所から出さないよ。

出すのは変人奇人くらいだね。

 

「とりあえずは退いておけボーデヴィッヒ」

「……ハッ」

 

千冬姉さんの言葉じゃないと今は意味ないかな?

でも一応会話は出来るのだから改善の余地あり…か。

 

「何故ボーデヴィッヒと交戦した?普段のお前ならば断っていただろう」

「……ボーデヴィッヒさんが昔の僕と同じように感じて否定したくなった…ただそれだけです」

「そうか……お前がそう言うのならそうなんだろう、しかしお前はお前だ……それくらいは理解しているな?」

「ええ、彼女は理解できていないみたいですけどね」

「だからこそ…あいつを頼む」

「僕に何が出来るか分かりませんが……全力で頑張りましょう」

「すまないな」

「いつも世話になってますから」

 

まぁもし世話になってなくてもきっと頼みは断れないんだろうけどね。

だって千冬姉さんの頼みだし……普段頼み事をしない人からの頼み事って断り辛いよね。

 

 

 

こうして今日は終わった。

まぁボーデヴィッヒさんがまさかあんな行動をするなんて思わなかったからここでトドメを刺せばよかったと少し後悔する。

なぜなら……いや、これはまた次の話かな?

 

 

 

 

 

 

 

「織斑」

「はい」

 

ここは一夏が普段過ごしている1人部屋。

そしてそこにいるのは織斑千冬と一夏。

何故2人がこうして部屋にいるかというと、別に甘い展開があったり家族のふれあいでもない。

周防 静……彼が何かを隠していると一夏は気づいたため自身の姉である千冬に聞こうと思ったのだ。

 

「周防は身に森羅万象という存在と言えばいいのか現象と言えばいいのか理解に苦しむモノが入っている」

「え?森羅万象って静のISの単一能力なんじゃないのか?だって静もそう言ってたぞ」

「表面上はな……しかし森羅万象はISを手に入れる前からすでに持っていた……望んでもいないが」

 

そこから森羅万象について説明を受けた一夏だが、にわかには信じられなかった。

何せ説明通りならば何でも出来るのだ……たとえ死人だろうと復活させる事が出来そうな程恐ろしい能力なのだ。

だが同時に疑問に思う。

何故望んでいないのかと。

確かに普通はそんな過剰な力はいらない。あっても争いの種にしかならないために。

しかし一夏は守りたいモノのために力をつけようとしている……ゆえにそんな力があれば望むだろう。

これで守れると。

 

「では聞くが……自身の家族全員を殺してしまう能力を望むと思うか?奴が」

「……え?」

 

家族を殺す……それは一夏にとって想像できない出来事だ。

何故なら一夏は家族を殺さないからだ。

織斑千冬という存在、周防 静という存在を殺す訳がないと考えているからだ。

 

「奴は森羅万象に目覚めた瞬間に家族をその能力で消し去っている……公式記録で奴の家族が存在しないのはそれが理由だ」

「嘘…だよな?」

「こんな嘘を言ってどうなる、事実は事実だ」

 

静が家族全員を消してしまっていた。

それを知った時一夏は何故俺はこんな事を知ってしまったのだろうと思った。

しかしそれを悪いと誰が言えよう。

誰でも他人の暗い過去の話を楽しく聞けるはずがない。

聞かなければよかったと思う方が多いだろう。

今回もその例にもれなかっただけである。

 

「それからというもの周防は自身を否定し続けた……「家族の幸せ()を消した僕は存在する理由がない」これが私が周防と出会った時の一言だ」

「ッ!」

 

その時の静の顔はまさしく死人だったそうだ。

それを千冬が拾い、周りが必死に助け、今に至る。

 

「奴はお前を含む周りを守るためならば命すら投げ出すだろう……奴は自覚なく歪んでいる」

 

自身ではなく他者のみを優先する……これが歪んでなければどうだと言うのだろう。

一夏ですら自分自身を大切にしている。

確かに周りに存在を救うために無茶はするが、それは自分が生き残るという意思があるためである。

しかし静にはそれがない……他者が救われれば自身はどうでもいいと考えている。

そうしたのは能力が原因でもあるだろうが同時に周りの環境もあるのだろう。

 

「奴が……静が歪む様を見ている事しか出来なかった、奴が苦しんでいる時私は近くにいる事が出来なかった」

 

千冬の顔が悔しさで歪む。

悔しいのは当然だろう……歪んでいくのを見ているしかできないもどかしさ。

忙しさなんぞ言い訳に出来ないほどに千冬は静を見ていなかった。

 

「千冬姉は悪くねぇよ……寧ろ今更違和感に気付いた俺が悪い、もっと早く気付いて行動してれば……」

 

一夏は甘えていたのだ。

静のやさしさに。

静の面倒見の良さに。

静は基本表情を変えない。ゆえに誤魔化されてしまう。

今でも油断すれば笑っているかどうかすら分からなくなってしまう程に希薄。

ゆえに誰も気付けない……気付いた時にはもう手遅れ。

しかし誰が悪いのかと聞かれれば静自身だと静が答えるだろう。

ゆえに罪を背負おうとするこの会話は無駄なのだ。

 

「一夏……お前にコレを渡しておく、もし静に異変を感じたら使え」

「……あぁ、静には今まで世話になりっぱなしなんだ、これくらいしてやらねぇと」

「そうだな」

 

一夏が千冬から受け取ったものとは……それはこの先の物語で明らかになる。




佐天様、感想感謝です。

評価にて一言があったので今回返答させていただきます。

会長にフラグ建てて!についてですが、現在悩み中です。
これ以上下手に増やすのもなぁ・・・と思ってますし、読者の皆さんも「また増えるのかよ・・・」という風になりかねませんので。
しかしなるべく意見は考慮したいとはおもっていますので、活動報告で近々アンケを取ろうと思います。

ですので意見をいただけると幸いです。

ハッピーエンドにならないのか?についてですが、一応2パターン考えております。
主人公にとってのハッピーエンド。
全員にとってのハッピーエンド。

しかし最初のプロローグである程度推測できるので考えてみるのもいいかもしれないですね。
これ以上はネタバレになってしまうので言えませんが、予想を裏切るのって楽しいですよね?の一言だけ。

まぁ悪いようにはしないつもりです。
バッドエンドは・・・希望があれば番外編で書いてみようかなと思ってます。
完結まで行ったらifとして別の展開を書いてもいいですしね。

そこまでいけるようこれからも精進したいと思います。
では!また次回とか!

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