堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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溜まったら吐き出せ

 無事に千雨とあやかと合流することが出来たマギ。今は待っているネギと茶々丸の元へ案内をしている。因みにマギウスは省電力モードで千雨の横を歩いている。

 

「そういえば、如何してマギさんはあたしとあやかさんの居場所が分かったんだ?」

「……茶々丸が一緒に居て、近くに反応があったから向かった」

 

 マギのよそよそしい態度に千雨は少し悲しい表情を浮かべる。どこかマギは殺気だっているように見える。千雨しか見つかってまたも危険に晒されないように、ピリピリとした気配が漏れているようだ。

 

「マギさん、あたしは落ち着けとか無茶しないで。なんて事はあまり言うつもりはないぞ。あたしも漸く戦える。だから今はあたしの事よりも、まだ見つかってないのどかさんとかの事を心配してくれ」

『マスターであるちう様の事は私が護ります。ですので、マギ先生はどうか少しでも心を落ち着かせてください』

「……あぁ、分かったよ」

 

 千雨とマギウスに説得され、少しは柔和な雰囲気が戻ってきたが少しだけだ。まだ研ぎ澄まされたナイフのような鋭い気配が漂っている。

 

(やっぱかなり堪えてるなぁ。ここはあたし以外の誰かが一緒だったらなぁ。さっき茶々丸さんが居るって言ったけど、茶々丸さんはあまりこういった場面は大変だろうし……)

 

 等と先行き不安な事を考えている合間にマギ達はネギと茶々丸が待つ湖の湖畔に到着した。

 

「あ、あぁ。ネギ先生!!」

「あやかさん! 千雨さんと一緒だったんですね!」

 

 あやかは真っすぐネギに向かって駆けだし、ネギに抱き着き、ネギも倒れない様に足を踏ん張った。

 

「ごめんなさいネギ先生! 私達が勝手な事をしたばっかりにこんな事になってしまうなんて!!」

「大丈夫です。そんなに自分を責めないでください。僕は、あやかさんと千雨さんが無事で、よかっ、た……」

 

 ネギは最後は横になって倒れてしまった。

 

「ね、ネギ先生!?」

 

 顔が赤く息も荒いネギを見てパニックになってしまう。

 

「ネギ先生は現在体温の状態が不安定で、あまり無理をすることが出来ない状態なのです」

「そ、そんなぁ! ど、どうしたらいいのですか!?」

「とりあえず今はネギ先生を安静にする他ないだろ」

 

 パニックになっているあやかは今は保留にして、茶々丸と千雨がネギを安静にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まじかぁ。1万キロってどれくらいなんだよ」

『日本の東京からマルセイユ位です!』

『因みに普通車の年間平均走行距離も1万キロ位だそうです』

 

 1万キロという途方もない距離に唖然としている千雨に、こんにゃと(茶々丸のおかげでケータイとノーパソのバッテリーが充電出来た)マギウスが親切に教えてくれた。

 

「いくら地球の3分の1とは言ってもトンでも距離なのは変わりない。そんな広大な世界で白き翼のメンバー+αを探すなんて何処の無理ゲーだよ……」

 

 地図を見ながらぼやく千雨。

 

「残りの夏休みにで日本に戻ること自体難しいだろ。茶々丸さんの言う通り、あたしらにはバッジがある。ある程度の距離までは分かってるんだ今はそいつらの生存力に賭けよう。それよりも……バッジがない一般人組の安否がどうかだな」

 

 びくりとあやかの肩が大きく揺れた。

 

「あそこのゲートがあった場所はかなり治安とか管理体制はしっかりしてたが、こんな危険なジャングルみたいな所はいっぱいある。それこそ裏社会が仕切ってるようなダークな場所だってな。そんな場所に迷い込み、最悪……死んじまったらそれこそ、マギさんやネギ先生はもう陽の光世界を歩むことは出来なくなるだろうな」

「え? ち、千雨さん、それはどういうことですか?」

 

 千雨はあやかに包み隠さずマギとネギ、そして雪姫が麻帆良で交わした契約について話した。魔法世界で何かあった時には、マギやネギ、雪姫そして学園長も全責任を取ることになることを

 それを聞いたあやかはまたも大号泣をしてしまう。

 

「わ、私はなんと愚かな事をしたのですか!! 自らの欲に負け! ネギ先生を信じることが出来ずに何がネギ先生を愛してるですか!! その結果ネギ先生やマギ先生に余計な足枷を付けてしまった私は畜生以下の大罪人ですわ!! こんな私に委員長を名乗る資格などありません! 日本に戻ったら委員長の名を返上させていただきますわ!! ごめんなさいネギ先生! あああああああああああああ!!」

「あーと、落ち着けあやかさん。アンタはどっちかというと止めようとしてくれたんだろ。まぁ最後は負けちまったようだけど……あたしとしてはあやかさんよりも明石や佐々木やあの双子が問題だよ。自分の興味や欲望で突っ走りやがって、死ななくてもいいから痛い目見ればいいんだよ」

「千雨さん、それは言い過ぎでは……」

「いいや茶々丸さんこれだけは言わせてくれ。あたしはマギさんの為に少しは自分の生き方を捨てた積りだ。それなのにあいつらは自分の生き方捨てずに事故だとしても、勝手にこっちに来たんだ。自業自得だと思うね」

 

 断言してしまった千雨。さめざめと泣くあやか、何も言えず黙っている茶々丸。居たたまれない空気が漂い始めた。

 

「あやかさん、どうか自分を責めないで、ください……これは全部僕に責任が……」

 

 さっきまで横になっていたネギが幽鬼のような青い顔であやかに謝罪をする。

 

「おいネギ先生起き上がるなよ。あんた今に死にそうじゃないか」

「そうだぞネギ、今回は全部俺のせいだ。俺が敵を止めていればこんな事には……」

「マギさんも少し調子が戻ってきたのに、そのようにご自分を責めないで」

 

 このようにネギが起きたら互いに自分のせいだと自身を責め続けてしまうこの兄弟。とまたもネギが横になってしまう。またも息が荒くなっている。

 茶々丸がネギの額に自身の額を当ててネギの体温を測ると

 

「38.7度。またも体温が上昇を始めています」

「結構な熱じゃねえか。何でそんなに高いんだよ?」

「分かりません。このかさんの回復呪文が失敗するとは考えずらいです。すみませんデータ不足です」

「どどどどどうすればいいのですか!? 早くお医者様に見せないと!!」

「落ち着けあやか、此処はジャングルだぞ。何処に医者が居るんだよ」

 

 しかしこのままだとまたネギの体調が悪化してしまう。

 

「今はネギ先生を安静にすることを最優先としましょう。千雨さんは水を汲んできてください。私はネギ先生の体を拭きますので」

「了解だ!」

 

 千雨が水を汲んでくる間に茶々丸がネギの体を拭こうとするが、茶々丸がネギのズボンのベルトに手をかけようとする。

 

「ちゃっ茶々丸さん!? 何故ネギ先生のズボンを脱がせようとしているのですか!?」

「ネギ先生の体を拭いた後にパジャマを着せるだけです。何かおかしい事をしていますか?」

 

 真っ赤になるあやかに至極当然のように返す茶々丸。

 

(何をふざけた事を考えてるんですか雪広あやか! これは真っ当な看病行為! 何もやましい事をしているわけじゃないじゃないですか!)

 

 自らの欲の考えを恥、戒めとして自らの頬を思い切り平手で叩くあやか。そして真剣な眼差しで茶々丸に向き合う。

 

「茶々丸さん。ネギ先生の看病、私にも手伝わせてください。罪滅ぼし、なんて都合がよろしいかもしれませんが、ネギ先生が辛そうにしているのに何もしないなんて非道な真似できませんから」

「ありがとうございます。ではあやかさんはネギ先生を拭いてください。私はネギ先生のパジャマを用意しておきます」

 

 そう言って茶々丸はスーツケースからネギのパジャマを出す。その間にあやかはネギの体を拭く。

 しかしネギの半裸を見てまたも煩悩が蘇り、固唾を飲んでしまう。

 

(おおおおおお落ち着きなさいあやか! これは決してやましい事はしておりません! これは、そう! 大事な看病なのです! 絶対絶対淫らな事はしておりません!!)

「でででで、では! ────」

「何アホなことしてるんだよ」

「あいたぁ!?」

 

 ネギに伸ばす手がなんかいやらしいあやかに水を汲んできた千雨がチョップを当てる。

 

「さっさとやれよ。やらんならあたしがやるぞ」

「ちっ千雨さんは何も思わないのですか!? ネギ先生のお体を拭くんですよ!?」

「それこそ何言ってるんだよ。あたしにとってネギ先生は10歳の子供だぞ? そ、そりゃあ相手がマギさんになれば話は別になるだろうけどさ……」

 

 などというやり取りをしながら千雨が汲んだ水を飲ませあやかネギを拭き、茶々丸がパジャマを着せてあげた。その間マギは黙って魔法生物が来ない様に見張っていた。

 そしてネギを看病している間に日が沈み夕方になる。しかしネギは一向に回復する様子はない。

 

「熱が全然下がりません。原因も不明、このままではネギ先生の体力が減ってしまうばかりです」

「そんな……ネギ先生がネギ先生が、あぁ」

「落ち着けよ。ネギ先生がそう易々とくたばるような人じゃないだろ」

 

 気持ちが不安定になっている茶々丸とあやかを落ち着かせる千雨。もう一度水を汲もうとしたその時

 マギの方から獣の唸り声のような腹の音が聞こえてきた。

 

「大丈夫かよマギさん? 今尋常じゃない腹の音が聞こえたぞ」

「……あぁ。そろそろ限界が来たみたいだ。お前らもずっとネギを看病して腹、減ってるだろ? 何か食えそうな獣を狩ってくるよ」

 

 そう言ってマギは月光の剣を肩に担ぎ森の方へ向かおうとする。

 

「待った、あたしも行くぞマギさん。正直言って今のマギさんを1人にしておくのはなんかヤバそうだからな」

「好きにしろ。けど、これから見せるのは割とショッキングな光景だ。見ちまっても自己責任だからな」

「上等だよ。行くぞマギウス」

『了解致しました』

 

 マギは森に向かって全速前進していった。マギを追いかけるために千雨はキーボードでマギウスに横抱きにするように命じる。

 

「それじゃああたしはマギさんの手伝いをしてくるから、茶々丸さんは留守を頼むわ」

「分かりました。千雨さん、マギさんをお願い致します。今のマギさんはお一人にしておくのは危険ですから」

「心得てるさ。そういえば、茶々丸さんも何時の間にか先生からさん呼びになってるんだな。何か心変わりがあったのか知らないけど、いいんじゃないか?」

 

 ふっと笑いながら、茶々丸を少し茶化して千雨も森へと向かった。茶化された茶々丸は自分が酔っぱらった事を思い出し顔を赤らめながらも直ぐに気持ちを切り替えた。

 

「あやかさん、もう一度ネギ先生の体を拭いて水を飲ませてください。私はもう一度原因を考えますので」

「分かりました!!」

 

 あやかは直ぐにネギの元へ駆けた。

 

「ネギ先生が辛いのに私は何も出来ない。無力です……」

 

 何も出来ない自分にどうしようもない気持ちが渦巻いていると

 

「随分と困ってるみたいやな、茶々丸姉ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 腹が減る────

 喉が渇く────

 体が疼く────

 何かを喰わないとどうにかなってしまいそうだ。

 体に渦巻く獣の本能をどうにか抑えながら獲物になりそうな獣を探す。すると目の前にさっき殺した魔猪が鼻で地面を掘り進めていた。

 さっきよりも小ぶりだが、まぁいいか。

 涎を垂らしながら魔猪に向かって加速していき

 

「おらぁ!!」

「ぷぎぃ!?」

 

 魔猪の首に向かって月光の剣を振り下ろした。致命傷だったのか一撃で仕留め、魔猪は断末魔の悲鳴を上げながら地面へと沈んだ。

 死骸となった魔猪に近づき、魔猪の腹を強引に開き、魔法生物の魔法袋を引き千切るとそのまま咀嚼を始め、ある程度嚙み砕いたら飲み込んだ。

 

「えっと……マギさん、そんなの食って腹壊さないのか?」

 

 口やシャツの前が血みどろになっているマギにおっかなびっくりな形で尋ねる千雨。1日2日離れていただけで慕っている人が随分野性的になってしまってなんて声をかけていいのか分からなくなっていた。

 

「無理して魔法を使った代償で本能と理性のバランスが大きく乱れてしまってな。こいつらのこういった物を喰わないと正気を保つのがやっとやっとにな現状だ。笑っちまうよな、あんなにお前らを護るって言ってたのにこの始末だ」

「……なぁマギさん、そうやって自分を責めるのは止めないか? 今回の事はマギさんやネギ先生の全責任じゃない。あたし達の危機管理が甘かったっていうのもあるし、あのフェイトって輩と偶然遭遇したのもあるんだし、何よりマギさんがそうやって自分を傷つける事を言うのを見てられないよ」

 

 千雨が何とかマギが自身を責め続けないように説得するが、マギは首を横に振りながら

 

「そんな事ない。俺が弱いせいでこんな結果になったんだ。ごめんな千雨、あんだけ護るって約束したのにこんな結果になっちまって」

 

 まだ自分を責めるような言い回しに流石の千雨も我慢出来なかった。自分だって死に掛けたのにマギの自身を卑下する事を聞いてれば我慢は出来なかった。

 マギにガツンと言おうとしたが

 

「やれやれ、そうやって自分を責めるのは兄弟一緒だな」

 

 何処からか呆れた声が聞こえたと思えば、マギに向かって氷の柱が飛んで来てそのままマギを貫いた。

 

「ぐふぉ!!」

 

 そのままの勢いで後ろに吹っ飛び巨木の幹にそのまま氷柱が突き刺さると、氷が広がりそのままマギを拘束した。

 

「少し目を離した隙に随分と悲劇のヒーローが板についてきたじゃないか」

 

 所々汚れているが美しさは色あせていない雪姫がそこにはいた。

 

「なっ!? エヴァンジェリン!? 急に現れて何してるんだよ!?」

「雪姫と呼べ、と言いたいが今はマギに用があるから何も言わないでおいてやろう。さて……随分と辛そうだなマギ。今、楽にしてやろう」

 

 雪姫は拘束されているマギの氷を上半身の前だけ砕く。服ごとだ。そして何故か雪姫もシャツのボタンを取り、上半身を下着だけにした。

 

「ちょお!? なんであんたも服をはだけさせてるんだよ!?」

「黙っていろ。これはマギに対しての治療行為だ。それよりもなんだ? 私がこんな格好になっているからいやらしい展開を想像したか? ふん、青いな」

「なんだとこのやろ!」

 

 と反論しようとしたが、マギウスが勝手に動き千雨の目を覆った。

 

『いけませんちう様。ちう様が目の前の光景を見るのにはあと数年は待ってください』

「勝手な事するんじゃねえよ! というか別に見たくもないし!!」

 

 勝手に喚いている千雨を見てやれやれと肩をすくめながら、雪姫はマギの体に自身の体を密着させながら

 

「じっとしていろ。直ぐに終わるからな」

 

 マギの首に牙を突き立て、そのままかぶりつきマギから血と魔力を吸い始めた。

 最初は雪姫に吸われることに驚いていたが、暫く経つと少し落ち着きを取り戻し始めてきた。

 吸い始めから5分は経っただろうか

 

「よし、もういいだろう。少しは気持ちが晴れやかになったか?」

 

 マギの首筋から離れ、氷を解除させた雪姫。見れば血や魔力を吸われているにも関わらずマギの顔色は先程よりも晴れやかであった。

 

「あぁ、さっきよりも頭がスッキリしている。なんでだ?」

「あの魔法は闇の魔法の応用だからな。闇の魔法は文字通り闇だ。つまり負の感情が溜まりやすい状態になりやすい。だからこそ、私がお前の闇の魔力を吸いだしてあげたのさ。それと肌を密着させてたのは肌からもお前の良くない魔力を吸いだすようにした」

「そうだったのか……すまない雪姫。俺が不甲斐ないばかりにお前にこんな役目を任せてしまって」

 

 またも自分を下にして雪姫に謝罪をするマギ。折角吸いだしたのにまたも自身を責めようとするマギを見るに見かねた雪姫は

 

「ん」

「!?」

 

 何も言わず、強引にマギの唇を奪った。そして長めのキスをしてそのままマギの唇から自身の唇を離す。

 

「どうだ? まだ自分のせいだっていう考えは残ってるか?」

「いや、その……いいえ」

 

 呆けた声を出しながら座り込んでしまうマギに雪姫は優しく笑いかけながら、抱きしめた。

 

「マギ、今回の事はお前には非はない。お前は頑張った。ただ偶然に一般人組が紛れてしまったのとフェイト達と遭遇してしまった。誰もこんなアクシデントは想定していなかった。だから全ての責任をお前や坊やで負おうとするのは違う。この困難は皆で乗り越えるものだ。だからこそ、余計な重荷は私や其処にいる長谷川に寄越せ。それと、今居ないのどかの力やあの双子の運を信じろ。いいな?」

「……あぁ、分かった」

 

 雪姫の慰めにより落ち着きを取り戻したマギ。それとと雪姫は親指を噛みきり、血をマギの舌に落とした。

 その瞬間、マギの体に活力が戻ってきた。

 

「こんな獣の内臓を食うよりも私の血を飲んだ方がお前の精神にいいだろう。精神に不調を感じたら私に言え、そうしたら飲ましてやる」

「大丈夫なのか? 俺が雪姫の、その、血を吸って」

「何を言ってるんだ? お前に血を吸われたからって私がどうとでもなるものか。お前は黙って血を飲んでろ」

 

 雪姫の有無も言わさない態度にマギは丸めこまれてしまった。

 

「ていうかいい加減マギさんから離れろよ! そんな格好のせいでなんかそういう行為をしてると思っちまうだろうが!!」

 

 蚊帳の外であった千雨が顔を赤くしながらツッコミを入れた。そんな初心な反応を見せる千雨を面白がり

 

「なんだまだいたのか。もしかして、混ざりたいのか? 初めてがこんな森とは長谷川もマニアックな奴だな」

 

 とからかうが、そのあからさまなからかいにぶちりと何かが切れた千雨は

 

「は? お前だってまだ未経験だろうが。歳が上だからって調子に乗るなよ耳年増が」

「ぶぅ!?」

 

 思わず吹き出してしまうマギ。雪姫も雰囲気をがらりと変えてゆっくりと立ち上がる。

 

「ほぉ……この私をよりによって耳年増とな。大きく出たな貴様」

「そう言えばアンタとはこうやって人形がある時に戦った事はなかったな。あたしの本当の実力がどれくらいか見せてやるよ」

「お、おい2人とも」

 

 マギが止めようとするが止めることが出来ず。

 

「行くぞ。大きく出たことを後悔させてやろう」

「行けマギウス! 格下でもやれるってことを見せてやれ!」

『了解です』

 

 雪姫と千雨のマギウスの喧嘩は暫く続くのであった。

 

「────で、何か弁明があるか?」

「すまん。私もムキになっていた」

「あたしも怒りで我を忘れてた。ごめんなさい」

 

 マギ達の周りは更地となっており、そのど真ん中で雪姫と千雨、ついでにマギウスが正座をしている。

 あの後雪姫と千雨が喧嘩して、木はなぎ倒すは地面は抉るはの大惨事。このままいけばここら辺の環境が酷いことになってしまうかもしれなかった。

 

「こんな馬鹿な事、二度としない様に。いいな?」

「分かったよ。今回は私も大人げなかった」

「私も流せばよかったよ」

 

 2人も反省しているようなので、先に狩っていた魔猪を担ぎネギたちが待っている場所に戻っていく。

 

「さて、そろそろあっちでもけりが着いているだろう」

「けり? 何のことだ?」

「道中で小太郎に会ってな、坊やの匂いを嗅ぎ取ったらしくて『アイツの事だから全部自分のせいって塞ぎこんでるだろうから渇を入れてくる』といって坊やの所に向かっていった。だからそろそろ坊やも少しはスッキリしてる頃じゃないかと思ってな」

「だからさっきから湖の方でどっかんどっかん音がするのか」

 

 まぁネギと小太郎なら問題ないだろうと、思いそのまま湖に到着すると、思いの外かなり本気の戦いを繰り広げていた。

 

「おーおー、ガチバトルじゃねーか。茶々丸さん、どういう経緯であんなバトルになったんだ?」

 

 ネギ先生ネギ先生と泣きながら喚いているあやかをスルーして、茶々丸にネギと小太郎のバトルを聞いてみると

 

「はい、ネギ先生は思い悩んでおりまして、あやかさんがネギ先生を慰めていましたがネギ先生は間違った力を渇望しそうになり、そのまま小太郎さんがネギ先生を殴り飛ばして挑発をし、そのまま喧嘩へと繋がりました」

「そっか。でも、なんかネギ先生さっきよりも落ち着いてないか?」

「そうだな。どうやらいい方向に進んでいるみたいだ」

「え? マギ先生、千雨さんどういうことですか!?」

 

 あやかは今一状況を読み取れていない。その間に

 

「狗音爆砕拳!!」

「桜華崩拳!!」

 

 ネギと小太郎の必殺技がぶつかり合い巨大な水柱を作り出した。

 

「おーおー随分と派手な事をやるな。軍事演習の艦砲射撃かよ」

 

 必殺技を出しながらもまだも戦い続けるネギと小太郎を見て溜息を吐く千雨であった。

 

 

 

 

 

 

 

 ネギと小太郎が喧嘩を続けて15分が経った。最初は互いに本気で殴り合っていたであろうが、今は何時ものように和気藹々とした友人同士の会話に戻っている。

 

「どや、もう熱は引いたやろ?」

「え? ……あ、本当だ。もう熱くもだるくもない!」

「コノカ姉ちゃんの完全治癒呪文が効きすぎたんやろ。さっきまでのネギの体の中で魔力が渦巻いておったで。溜まってる悪いもんはおもいきり出す。それが大事なことや」

「コタロ―君、ありがとう」

「へっ、お前の礼なんかきいとったら背中が痒くてしょうがな────」

「このおバカさん!!」

「ぐへぇ!?」

 

 小太郎がかっこつけようとしたらあやかの飛び蹴りが小太郎の顔面へと突き刺さる。

 

「ネギ先生は病人だったんですのよ! それなのにいきなり殴るなんて野蛮な事をして! これだから精神の幼い男の子は!!」

「うっさい! ネギは病人ちゃうわ! ただ不純物が体に溜まってただけや! それにネギだったらあれぐらいの荒療治の方がよっぽど効果的や!!」

 

 と今度はネギそっちのけで小太郎とあやかが取っ組み合いの喧嘩を始めた。と言っても小太郎の方が強いから適当にあしらわれているが

 とネギはあることを思い出し、小太郎に尋ねる。

 

「ねぇコタロ―君、さっき僕に足りないものがあるって言ったよね? それってなんなの?」

「あ? それは俺に勝ったら教えるって話や。勝ってないのに教えるわけないやろ」

「えー。引き分けは勝ちじゃないけど、負けでもないでしょ?」

 

 ネギの減らず口に呆れた溜息を吐いた小太郎はサービスやと教えてあげることにした。

 

「お前に無くてアスナの姉ちゃんにあるものそれは」

「それは?」

「”アホっぽさ”、かな?」

「アホッぽさ……」

 

 ぽかんと呆けたネギを見て小太郎は思わず吹き出してしまう。

 

「そんなアホ面を出せるなら何時かは身につく事が出来るやろ」

「なんだよそれ!」

 

 仲睦まじくしているのであった。

 

「ネギ、もう大丈夫そうだな」

「お兄ちゃん」

「おうマギ兄ちゃん!っていうか随分とデカいイノシシやな!マギ兄ちゃんが狩ったんか!?」

「ああ。ネギの回復祝いだ。肉は沢山あるんだ。たらふく食って力をつけていこう」

「え!?貴女エヴァンジェリンさんだったんですか!?でも別人……」

「魔法でそう見せてるだけさ。それとこの姿の時は雪姫と呼べ。まぁこれからよろしく頼むな委員長」

 

その夜はマギが狩った魔猪と茶々丸やあやかや千雨が近くで取ってきた野草や木の実で盛大なバーベキューをした。

こうしてネギとマギの元に茶々丸や千雨、小太郎と雪姫。かなり強力なパーティーに出来上がったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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