俺は料理人志望なんだけど…   作:イタクァ

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作者は2時間ぐらいで一話を書いているので、できる限り更新はしていきたいと思います



設定変更
龍二が使う技を料理人の技とノッキング技だけに限定



鍛錬と遊戯

 九鬼での試験から数か月、俺は学年が一つ上がっていた。と言っても去年までと学校での過ごし方は変わりがない。人に避けられ、本を読み、モモから逃げる毎日だ。最近はあしらい方を覚えたからだいぶましにはなったけどな。

 ヒュームとの修行面では相変わらず毎回死にかけてるよ。何度逃げたいと思ったことか…。でも逃げて料理修行の約束がなくなるのは嫌だから、まあ真面目にやってはいるな。

 自分で逃げ道を完全に塞いでしまった感が否めないけどさ…。

 

 

 

 

 

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ガッ!バキッ!ズガン!

 

 

「ジェノサイドチェーンソー!」

「もうそれは見切ったぜ!」

「ッ!」バキィ!

 

 

 

 ヒュームとの近接格闘の最中、ヒュームは出してきた必殺の蹴りを放ってきた。

 今まで何回吹き飛ばされたと思ってやがる!

 俺はヒュームの蹴りを躱し、そのままヒュームの腹部に全力で拳を叩き付けた。かなり全力で殴ったにも関わらずヒュームは少し後ろに下がっただけだ。その余裕の表情は崩れないが、少し驚きが混ざっていた。

 

 

 

「ほう?今のを躱し反撃をするか…」

「へっ!いつまでも吹っ飛ばされるだけの俺じゃないぜ!」

「ならば少しギアを上げてもよさそうだな」

「…は?本気じゃなかったのか?」

「当然だ。今まで大体30%程度の力しか出していなかったが、その様子なら50%ほどでも大丈夫だろう」

「…勘弁してください」

「NOだ。ジェノサイドチェーンソー!」

「うぎゃああああああああ!?」

 

 

 

 誰か、助けてください、切実に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も(地獄の)訓練が終了し、俺が倒れ伏している横でヒュームから通知があった。

 

 

 

「来週の訓練だが、川神院に行ってもらう。俺が本業のほうで日本を離れるのでな。大体一か月はいないからそのつもりでいろ。サボったら鉄心から報告が来るからそのつもりではげめ」

「え~、モモから勝負申し込まれるじゃん…。学校でもいつもそうだから嫌なんだけど…」

「確かに川神百代の戦闘狂は面倒かもしれんが、その程度乗り越えられないで何が俺の弟子だ。その程度のこと何とかできねば超一流にはなれんぞ」

「…だから俺は料理人になりたいんだってーの(ボソッ)」

「何か言ったか?」

「いいえ何も!」

 

 

 

 ヒュームのにらみは相変わらずおっかねぇな。てかヒュームの本業って執事なんだよな?いつもこっちにいるけど暇なのか?

 

 

 

 

 

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 あっという間に次の週末、俺は言われた時間よりも少し前に到着するように時間を調整して川神院に向かっていた。日本人なら5分前行動は当たり前だと思うんだ。

 

 

 

「待ってたぞ龍二!早速やろうじゃないか!」

「…ただ稽古しに来ただけだっつーの」

「実戦は最高の稽古だろ」

 

 

 

 川神院についたとたん、門の前に陣取っていたモモが勝負を申し込んできた。予想通りでほんと嫌になるぜ…

 俺がゲンナリしていると、モモの後ろから武神・川神鉄心さんがやってきた。

 

 

 

「今日は稽古だけじゃよ。勝負はまた今度、互いの合意の上でやりなさい」

「え~」

「今日はよろしくお願いします。川神鉄心さん」

「ふぉふぉふぉ、そんなに固くならなくて大丈夫じゃよ。儂のことも好きに呼びなさい」

「はい。それじゃあ…」

「ジジイでいいだろ」

「さすがにそれはな…。じゃあ鉄心爺さんと呼ばせてもらうよ」

「うむ。それでは道着に着替えてきなさい。今日は修行僧たちに混じって鍛錬を行ってもらうぞ」

 

 

 

 そう言って子供用の道着を渡された。ある意味でちゃんとした武道の鍛錬というのはこれが初めてだ。いつもはヒュームとの実戦(サンドバッグ)ばかりだったからな。最初は攻撃が見えなくて避けることすらできなかったからなぁ…。

 …なんだろう、涙がでてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陰鬱な気分を切り替えて修行僧たちの鍛錬に混ざる。正拳突き一万本なんて王道の物から、腕立て伏せ五千回なんて古典的なものまでいろいろな鍛錬があった。

 最初は型がまるでできてなかったけど、周りの修行僧の真似をしながら自分の型を修正していく。鉄心爺さんからまねるのがうまいと褒められてしまった。普通に褒められるってこんなにうれしいんだな…

 ん?鍛錬の回数がおかしい?小2ができるものじゃない?そりゃ修行僧たちは大人だからな、これくらいやらないと修行にならないだろう。俺?これくらい軽くできなきゃもう俺はヒュームに殺されてるよ…

 

 

 

 

 

 

 

「おおーっと!手が滑った!!」

 

 

 

 正拳突きが終わった直後、そんな言葉と共にモモが俺に向かって気弾を飛ばしてきた。そんなに俺と戦いたいのかよ…。上等だ、そっちがその気ならこっちにも考えがある。

 

 

 

「おっと、危ないな。気を付けろよっ!」

 

 

 

 現在、遠距離攻撃の手段がない俺はモモの気弾を迎撃できない。だから向かってくる気弾をつかみ、勢いそのままに投げ返した。さすがに自分に返ってくるとは予想してなかったのか、気弾はモモの額にクリーンヒット。そこまで気をこめてなかったのか、威力はそこまででもなさそうだ。

 額を真っ赤にしたモモがこっちをにらんでくる。

 

 

 

「もっと手が滑った!」

「ははは!モモはおっちょこちょいだな!」

 

 

 

 モモがさらに大量の気弾を放ってくるけど甘いわ!すべてその勢いのまま投げ返していくが、モモも返された気弾に別の気弾をぶつけ相殺している。お互いに意地になってやめようとせず、周りの修行僧たちも避難していた。

 

 

 

「おか、しいなっ!今日は、よく、手が滑る、日だな!」

「そうかよっ、まったく、モモはっ、ダメダメ、だな!」

 

 

 

 だんだんとモモの気弾の威力もあがり、それに伴って周りへの被害も大きくなってきていた。しかし、お互い相手のことしか見えていない俺たちはそんなことに気づかず意地を張り続けていた。

 そんな俺たちに遂に堪忍袋の緒が切れたのだろう、鉄心爺さんが介入してきた。

 

 

 

「オヌシら、ええ加減にせんか!」

 

 

 

 鉄心爺さんの怒りの声が聞こえ、二人してヤバい、と思ったが遅かった

 

 

 

「顕現の参・毘沙門天!」

 

 

 

 鉄心爺さんの声と共に俺は巨大な足を、そしてその足の持ち主である毘沙門天を見た。

 今まで感じたことのない極大の武威。武神と呼ばれる男が放つ神の如き一撃に俺はなす術なく潰された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクンッ ドクンッ ドクンッ…

 

 

 自分の中から何かがせりあがってくる。

 踏みつぶされるまでの刹那の時に、俺の感覚は極限まで鋭敏になっていた。心臓の鼓動が聞こえる。全身の骨が軋み、筋肉が悲鳴をあげている。激痛で気絶してもおかしくないほどの痛みの奔流の中で、頭の中はクリアになっていった。

 心臓の鼓動がより一層激しくなっていき、一瞬が永遠のように感じられた。

 

 

 

 バキンッ!

 

 

 

 そして、何かが割れるような音を最後に俺の意識は沈んでいった。

 

 

 

 

 

 




気づいたらこの小説のUAやらお気に入り件数やらがすごいことに…


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