俺は料理人志望なんだけど…   作:イタクァ

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テンポよく進めていきましょう。ええ、早くSに入りたいんです

では、どうぞー


進路と信用

直江大和side

 

「進路希望調査かぁ、なんて書こう」

「俺様、梅先生の旦那って書くぜ」

「勇者がいるぞぉー!」

 

 

島津寮での食事会の翌日、いつも通りの月曜日にちょっとした話題が届いた。そろそろ一回めの進路希望調査をするらしい。俺たちもそんなことを考えなきゃいけない時期か。

クラス中でこの話題が話されていた。就職か進学か、まあ大体はこの二つかな。ガクトみたいな馬鹿なのは除くと

 

 

「アタシは短大出て遊んで、25くらいでオトコ見つけてお嫁さんで幸せな家庭かな」

「女の子らしい素敵な夢じゃないですか。結婚相手にのぞむものは何ですか?」

「んーと、まずイケメン、そしてお金。まとめるとイケメンでモデル体型で筋肉も割とあって、身長は170は欲しいかな。あたしを愛してくれて、年収はもちろん1000万円!料理も家事も全部得意で育児もお任せ!」

「そんな男ぉ、いるわきゃ、ねーだろお!」

 

 

クラスメイトのそんな願望に俺はみんなと少し違う感想を思っていた。

 

 

「ねえ大和。今の条件てさ…」

「ああ、九鬼の従者それも高位のものとなると年収もそれくらいいくだろうし…」

「というか中学の時にいろいろやったらしくて既に貯金が高級外車を買える程度って言ってた…」

「「……兄さん(龍二)、当てはまってる…」」

 

 

自分の兄貴分の規格外さに改めて戦慄した

 

 

「俺は冒険家だな。出世に生きるは辛すぎるってな」

「私は強くなって川神院の師範代!」

「私はドイツに戻って父様の補佐だな」

「龍二の妻一択」

 

 

…あれ?決まってないの俺たちだけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石川龍二side

 

クラス中の、いや学年中の話題は進路希望調査でいっぱいだろう。俺も前世で通った道だ。まあ希望は前と変わらないけど。

 

 

「進路希望調査って言ってもS組にはそんなに関係ないな」

「ええ。ここにいる人たちは大体が大企業や政治家の御曹司であったりしますからね。進学して親のあとを継ぐ人ばかりでしょう。」

「若は葵紋病院を継ぎ、俺はその補佐をするからな」

「私はみんなといる〜」

「よしよし」

「わーい!撫でられた〜」

 

 

冬馬がユキの頭を撫でる。ワン子へのマスコット的な扱いではなく、親と子の関係みたいで何というかほっこりするな

 

 

「龍二君はどうするんですか?」

「俺は料理人さ。昔からの夢だからな」

「というか腕前自体は既に一流だろうに」

「まだまだ先があるからな、研鑽あるのみ。自分がどこまでいけるのか試してみたいんだ」

「いいですね、エネルギーに溢れていて。ということは自分でお店を出したりするということですか?」

「う、うーん。実はそれいろいろ考えてるんだよなぁ…。父さんは今の店は継がずに好きにやれって言ってくれてるから良いんだけど、俺九鬼の従者部隊に一応内定があるからさ…」

 

 

九鬼には大きな借りがあるからそれを無下にすることはできない。でも従者部隊にいてはやりたいことはできないし…

 

 

「取り敢えず九鬼の従者部隊に行くさ。後のことはまたその時に考えるわ」

「だ、そうですよ英雄」

「え」

「フハハハハ!九鬼英雄、降臨である!」

 

 

考え事してたから全然気付かなかった…。鈍ってんなぁ、感覚。これヒュームにバレたらまた稽古とか言われちまう…

 

 

「我が友龍二がそこまで悩んでいるとは知らなかったぞ」

「あ、いや、別にそんな悩んでいるってわけじゃ…」

「全く、水臭いではないか!何故我らに相談せぬ!そんなに我らが信用できぬか⁉︎」

「別にそんなことはない。…ただ、今までよくしてもらったから我儘を言いたくないだけだ」

「…我が友のその義理堅さは美徳であると思うが、もう少し自分の要望を言ってほしいと姉上も言っていたぞ」

「揚羽様が?」

「うむ。我らは共にまだまだ青い子供よ。ならば子供らしく我儘を言っても良いだろう」

「…仕事をもらって、料理の修業をさせてもらって、いろんな人とのパイプを作らせてもらった。これ以上は望めないさ」

「…わかった、まだ言うつもりはなかったが仕方ない。龍二、お前にはいつか九鬼を出てもらおうと考えている」

「…は?」

 

 

え?俺何かやらかしたか?

 

 

「うむ、良い具合に混乱しておる。我が友のこういった姿は珍しい故に少し愉悦を覚えるな」

「英雄、趣味が悪いですよ。まあ気持ちはわかりますが。龍二君はガードが固くてアプローチが難しいんですよね」

「いや、若のそれは普通なら全力でガードするでしょう。つか英雄、詳しい説明してくれよ」

「そうだな。もともと龍二には新たに作る調理部門で我の下に付ける予定であった」

「え?九鬼にはもう食料部門があるじゃん」

「うむ。現食料部門を取り込みさらに大きく事業を発展させようと思ってな。現在は遠月ブランドが頂点を走っているが、それを追い越す。我が友に遠月で実力を示してもらったのはこのための布石だ」

 

 

軽く深呼吸して落ち着いてから英雄の話に耳を傾ける。俺の卒業試験にそんな意味が

 

 

「正直に言おう。我らは我が友を侮っていた。まさか遠月学園を一年で掌握してくるとは思わなかったのだ。故に我らは方針を変えた。我が友龍二ならばいずれ料理の世界にて頂点にたどり着くだろう。そして九鬼の目指すものもまた頂点。共に頂点を目指すのではない、競い合って頂点を目指したいのだ」

「…つまりあれか英雄。俺にいつか九鬼に敵対しろと?」

「敵対というほど強い言い方ではないが、そうだな。九鬼はいつまでも攻めの姿勢でありたい。そのためにはライバルが必要なのだ。龍二、貴様ならそれができると我も姉上もヒュームも確信しておる」

 

 

…余計に迷うんだけど。ここまで信用されていることは嬉しいが、自分の力を試したいというのも俺の願いだし、でもこんなカリスマを魅せられると離れ難いし、ああでも離れることが英雄たちの願いなら離れることもやぶさかでもないし…

 

 

「流石の龍二君も処理が追いつかないようですね」

「珍し〜。百面相だ〜♪」

「むぅ、我は悩みを取り除こうと思ったのだが…」

「いきなりあんなこと言われちゃしょうがないよなぁ」

 

 

 

こうして今日が過ぎ去っていった。俺に悩み事を増やして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。帰り道の途中で金柳街に寄っていく。ああ、そういえばプレゼンは成功したぞ。商店街の全面協力を取り付けられた。屋台の近くで酒屋さんが酒売ったり、和菓子屋さんが菓子売ったりなんてしてくれるらしい。大体ゴールデンウィーク明けくらいから始められるかな。楽しみだ

で、話を戻すと俺は福引を引きに来たんだ。母さんからもらった大量の福引券を使って、ガラガラを回す。結果、三等の松坂牛ステーキセットが当たった。食材に関しての運が凄まじく良いんだよな俺、おかげでこういったのも当たるから嬉しいねぇ

生物なので一旦帰って肉を冷蔵庫にしまい、制服から私服に着替えて秘密基地に向かう。今日は金曜日、キャップがまた寿司を持ってくるらしいので今日も味噌汁を持って行く。そういや今日はクリスと黛を基地に案内するって言ってたな。どうなってるかなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通りにモモの防犯用バリアーを抜け、裏口からビルに入る。気の感じからキャップ以外は揃ってる感じだ。にしても随分と静かだな

いつもよりも静かな基地のドアを開けると

 

 

「お前死ねよ」

 

 

え?

 




梅雨の季節は外に出られなくて嫌になりますねぇ

まあその分部屋の中で料理や小説書いたりできるので良いのかな?

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