いや、今まであってもなくてもどうでもいいような伏線がいくつかあったのでこの機会に消化しちゃおうかな、と思いまして
なので今回長めです。あと書いててソーマの比率が高い回だなぁと自分でも感じました。
タグに独自設定を付けたしました。今までつけるの忘れてた…
「待ってたよ龍二っ!」
「…っと。おう、久しぶりだな京」
俺は部屋の一角でスピーカーのように話し続けてる二人は無視することにし、いきなり飛びついてきた京を優しく受け止めながら返事をした。相も変わらずスキンシップが激しくて、今も
「ふ、ふふふ。龍二の胸板が…あっ…」
身の危険を感じた俺は京を引き離した。離れる時に京がさみしそうな声を上げていても俺は流す。いつものことだから。
「お兄様!久しぶり!」
「おっ、元気そうだなワン子。楽しくやってるか?」
「うん!毎日ちゃんと修行して遊んで楽しいわ!」
「そっかそっか。ガクトも久しぶりだな。調子よさそうだ」
「おう!俺様はいつでも絶好調だ。見てくれよこの筋肉!」
「みんな変わってねえなぁ」
ファミリーのみんなは変わらず元気そうで何よりだ。んで、なんかそこでもじもじしてる…
「モモも元気そうだな」
「あ、ああ…。その、今朝は…すまなかった…」
「何が?」
「そ、それは…、いきなり、襲い掛かってしまって…」
「…はぁ。まぁいいよ別に。最近戦えてなくて欲求不満だってルー先生から聞いた。今回は許す。でも次はないぞ」
「…っ!ああ!」
モモがうじうじしてるのなんか似合わないからな。とっとと立ち直らせて話を進めよう。
「にしても本当に久しぶりだなぁ、ここにくるのも」
「お兄様が最後に来たのっていつだったかしら?」
「去年の終わりぐらいだな。毎回ちゃんと来いよな」
「おいおい、去年は寮生活だったんだ。勘弁してくれよ」
「寮生活か…、今の私たちと同じだね」
「ああ、そういや島津寮に住んでるんだったな」
傍から見れば大したことのない会話かもしれないが、俺にとっては素晴らしい。こないだまでいろいろと忙しかったからなぁ…
「遠月に一年もいたってことは仲のいい女の子もいるよな?」
「は?まぁいるけど…」
「美少女はいたか!?」
「年上美人お姉さまは!?」
モモとガクトがすごい顔でせまってくる。ちょ、近い近い!
「落ち着けって。ったく、まぁどっちもいたぞ。つか遠月は結構レベル高い子多いぞ」
「「マジで!?」」
「お、おう。遠月の学生はいいとこの坊ちゃんや嬢ちゃんが多いから皆いいもの食べて育ったんだろうな」
「是非紹介してくれ!」
「私にも!」
…正直全く気が進まない。いや、モモのはまだいいんだけどガクトのはなぁ…。正直俺は上級生に嫌われてたし…
どうやって断ろうかと考えている時、丁度原付の音が聞こえてきた。
「ほれ、最後の1人がきたぞ。そろそろそこの2人元に戻そうぜ」
「それもそうだな。おいこら舎弟、いつまで喋ってるんだ」
「イテッ!…あれ?兄さんいつの間に」
「お前が喋りまくってる間にな」
大和が首をかしげてるのを余所に、ドアが勢いよく開いた。
「ウィース!」
キャップが元気よく部屋に入ってくると、ワン子がキャップに駆け寄っていった。
「お、駆け寄ってくるとは俺に懐いてるなワン子」
「待ってたわよ晩御飯!!」
「…あー、そっちね。はいはい」
若干テンションが下がったキャップは手に持った大きな荷物をテーブルの上にのせた。
「バイト先から貰ってきたぜ!今日は寿司だっ!」
キャップはテーブルの上に貰ってきた大量の寿司を並べていく。
「すごい量ね、ざるパックまである」
「こんだけあればしばらく保つな」
「甘いなガクト」
「私たちガッツリいくわよ!」
そういった川上姉妹は今すぐにでもテーブルに飛び込みそうな勢いで寿司を見つめるが
「ほら落ち着け2人とも、まずは手を洗ってこい。それとキャップが寿司持ってくるっていうから俺も味噌汁作ってきたぞ」
「さすが龍二!気が利いてるな!」
俺は持ってきた水筒から味噌汁を紙コップに入れてみんなに手渡した。
「ほらモロロ、お前は箸使う派だろ?」
「ビデオカードアクセラレータつけて合計で十八万…、あれ?龍二もキャップもいつの間に来てたの?」
延々と喋り続けていたモロも元に戻り、みんな席について寿司を食べ始めた。
「はい龍二、お醤油」
「サンキュー」
「はい龍二、タバスコ」
「いや、使わねーよ?」
「美味しいのに…」
京は残念そうに自分の醤油にタバスコを大量に入れていく。うおぉ、醤油が赤い…
「さて、早速龍二にいろいろ聞いてみよう」
「いきなりだな。まぁ答えられるものならちゃんと答えるよ」
キャップは昔から急に動き始めるからな
「急な転校なんて一体どうしたの?」
「遠月学園はどうしたんだ?」
「というか遠月学園に入学した理由も知らないよね」
「龍二結婚して?」
「今朝いきなり気が膨れ上がったがあれは一体なんだ?」
おーおー、質問多いなぁ。まぁとりあえず
「京、お友達で」
「…諦めない」
いつからか京が急に告白をしてくるようになった。小学生のとき我慢するって言ってたのになぁ…。もっと俺やファミリー内以外の人との付き合いを大切にしてほしいんだけど
というか京、近い近い
「とりあえず一つ一つ順番にな」
手に取ったかっぱ巻きを口に放り込み、咀嚼し飲み込む。口の中にきゅうりのカリカリとした歯ごたえを感じた後に、酢飯の酸味が広がる。少し酸味が強かったので味噌汁で口直し。宅配寿司の残り物だからこんなものか、と少しがっかりしつつ俺は皆に顔を向けた。
「遠月に入学した理由は簡単にいえば俺の卒業試験だな」
「卒業試験?」
「ああ。俺は昔から九鬼にいろいろとお世話になっていてな、中学の時もその関係で至る所で料理の修行をさせてもらってたんだ。まぁ料理に限らずいろんな分野も学んだけどな。んで、教わった課題すべてに卒業試験があってさ、実地試験やペーパーテストとかいろんな試験があったよ。一番きつかったのは真剣勝負だけど」
「ほう?そこんとこ詳しく」
「また今度なモモ。それで最後に残ったのが大本命、料理に関する卒業試験だ。これは他の分野と違って幅ががあるから試験内容もだいぶ無茶な内容だった」
「つまりそれが…」
「そう、遠月学園に入学することだ」
口の中を潤すためにクッキーがいれてくれたお茶を飲む。茶葉は普通のものだけど入れ方がすこぶるうまい。流石九鬼のロボだ
「じゃあ何で川神学園に来たんだ?それじゃあ試験にならないじゃないか」
「んぐっ、ふぅ…。ああ、言葉足らずだったな。正確には”遠月学園で頂点をとること”」
「頂点?それって主席になれってこと?」
「少し違うな。遠月学園はその辺わかりやすいんだよ」
俺は遠月学園のシステムを噛み砕いて説明した。
「つまり遠月では十傑という成績トップ集団がいて、そいつらが学園を動かしてるってわけか」
「そのとおり。つまり俺の課題は遠月十傑第一席になれってことだったんだ」
「でもそれって成績順なんでしょ?三年になるまでどうしようもないじゃない」
「そこは裏道がある。遠月にも決闘制度があるんだ。その名も食戟」
「なるほど、つまり現第一席にその食戟で勝てばいいんだな?」
「なんだ簡単じゃねーか」
「実はそんなに簡単でもない。十傑からすれば格下からの食戟なんて受ける理由もない。だから最初は勝負をすることすらできなくてなぁ」
入学当初に門前払いされたことを思い出しながら緩くなった茶を飲む。さっきよりも苦い気がした。
「じゃあどうしようもないじゃない!」
「いや、理由がなければ作ればいい。そうだろ兄さん」
「流石だな大和、その通りだ。食戟は川神学園の決闘と違って何かを賭けるんだ。地位、名誉、金銭、設備、土地、人材。それこそ何でもな。だから俺はいろんなとこに喧嘩を売って勝ったところの権利を奪い取って、それを賭けのチップにしてのし上がって行った」
「なんだ、随分らしくないことをするじゃないか。お前ならもっと穏便な手段を使うと思ったんだが」
「とっとと試験を終わらせて川神に戻ってきたかったからな。過激な手段だけどそれが一番手っ取り早いし」
本当はお前らと一緒にいたかったから、なんて恥ずかしくて言えるわけもない。ただ京には気づかれているのか、こっちを微笑みを向け腕に抱き付く力が少しだけ強くなった。てゆーかいつの間に…
「そんで去年の終わりにやっと第一席を勝負の場に引きづり出して倒したんだ。その過程で学園内の自治勢力はほとんど俺の勢力下になってたよ」
「な、なんか戦国時代みたいになってる…」
「いや、むしろ今の遠月のほうがヤバイらしい。俺学園を辞める気でいたから手に入れた権力を全部捨てることになるじゃん?いろんなサークルやらの権利はちゃんと等分したんだけど、そしたら今度はサークル毎の権利の奪い合いが始まったってさ。こないだメールで聞いた。」
「戦国時代から世紀末になってる!」
「おかげで俺の二つ名が覇王だってさ。最初は登り龍とか天龍だったのに…」
いや、どっちにしろ恥ずかしいんだけどな
「っとまぁ、こんなもんか?」
「相変わらず凄まじい人生送ってるよね、兄さん」
「いや、まだ私の質問に答えてもらってない。朝のアレは何だ?」
「んー、あれはまぁリミッターかね。気やら身体能力やらを段階的にリミッターかけて制限してんだよ」
「何でそんな面倒くさいことをするんだ?別に普段から全開でいいじゃないか」
「普段から全開だと余計な面倒が近寄ってくるからな。俺は武道家じゃないからそう言うのはごめんなんでな」
モモが今朝のことを思い出したのか苦い顔をしていた。これでもう突っ込んでこないだろ。実際は揚羽様からの命令で抑えてるんだけどな
「とりあえず龍二は九鬼の試験を全部終わらせたから川神学園に編入してきたんだな」
「ああ」
「じゃあ兄さんって今九鬼ではどういった扱いなんだ?重役待遇の確約とか?」
「いや、今の俺は…というかある意味お前らにも声かかるかもな」
『え?』
一息入れて残りのお茶を一気に流し込む。しゃべり過ぎて乾いた喉をお茶が通る感覚が心地いい。
「今九鬼では若者の教育に関するプランがいくつか進められている。才能ある若者をしっかりと教育して世の為九鬼の為に役立てようって訳だ。」
わかりやすいのだと義経たちの武士道プランとかだな。機密だからここでは言えないけど。
「その中の一つに若年従者教育プランというものがある。これは世界中から見込みのある若者を集めて九鬼家の従者、すなわち九鬼の近衛として育てるプランだ。発足したのは10年前。俺が第一号として進められてきて今では全部で30人ほどがプランの対象になってる。そいつらにも従者部隊としての席次が与えられるんだ。大人と区別するためにー(マイナス)番だけどな」
「ある程度席次が上になると下の子の面倒を見たりとかもあるな。俺も二人ほど面倒見てるやつらがいたりするんだが…、まぁそれはいいや。お前らも九鬼の目に留まればそのプランの対象になれるかもしれないからな。一応そう言ったのもあるって紹介はしたぞ」
「じゃ、じゃあ今の兄さんは…」
「ああ」
俺は立ち上がり、ヒュームに叩き込まれた優雅な礼をしながら自己紹介をした。
「川神学園2-S所属、九鬼家従者部隊序列マイナス一番、石川龍二だ。改めてよろしくな」
伏線を消化するはずが新たな伏線を仕掛けてしまったというね…
まあ使う気ほとんどないですが(笑)