あと小学生編終了です
「…ここは」
気がついたら知らない部屋のベッドに寝かされていた。全身から凄まじい倦怠感を感じながらも寝起きで働かない頭でこうなった経緯を思い出そうとした
「確か、英雄のお見舞いに来て…っ!そういや英雄に蘇生切りしたんだっけか…。ってことはここは…」
窓の外を見ると空がすっかり暗くなってるから、かなりの時間意識を失っていたんだな。食没で貯めたエネルギーも一気に空っぽになっちまったからすごい腹減ったし。
とりあえず状態を起こすために倦怠感を我慢して腕に意識を向けると両腕に誰かが抱き付く感触がした。左手にはユキ、かわいらしく俺の腕にしがみついていた。右手には冬馬、…なんでさ、お前男だよね?なんでそんなに幸せそうな顔して抱き付いてんだ…。ちなみに準は近くの椅子で眠っていた。
「ったく、おーい起きろー」
「…えへへ~、マシュマロ…もう食べられない…」
「ふふふ、龍二君いけませんよこんなところで…」
小雪はまたまぁありきたりな寝言を、つか冬馬お前…
身の危険を感じた俺は真っ先に準を起こして、準に二人を起こしてもらった。その際に小雪に抱き付かれながら大泣きさせてしまった。心配をかけた自覚があるから俺はされるがままにした。
その後、俺が目を覚ましたと聞いて英雄と揚羽さんが直接お礼を言いに来た。検査の結果、英雄の右肩は問題なく完治していたみたいだ。英雄に、また野球やろうな、と言ったら泣かれてしまった。これで英雄も夢を失わずに済んだのだ。そう考えると俺の中で歓喜と達成感が湧き上がってきた。
ちなみにお礼とか言われたけど、そんなものを期待していたわけではないので断ったが、九鬼家の恥だとかなんとかいうので、夕食をごちそうになった。エネルギー切れの俺はかなりの量食べたので、みんな呆然としていた。いや~おいしかった!
「…とまあ、こんなことがあった」
「…えらく波乱万丈な生活してるんだね、龍二って」
「龍二は怪我の治療までできるのか!義経は尊敬するぞ!」
「なんだかんだで楽しそうだけどね」
「…」
学年が変わったり、ドタバタしていたがそれらもひと段落し、久しぶりにクローン組の島へと来た俺は、最近あったことをまとめて話してあげた。確かに俺って結構波乱万丈な人生送ってるなぁ、今世は…
そういえば途中から清楚が声を発しなくなったんだけどどうしたんだ?
「清楚?どうした?」
「……いう…こと…」
「はい?」
「結婚て、どういうこと…っ!?」
そう言いながら、清楚が目のハイライトを失くしながらこちらに迫ってきた。
えっ、ちょっ、怖っ!ちょっと清楚さん!?みんなに見せられない顔になってるよ!?
よ、義経たち!ヘールプ!!ってもういねえし!?
「ねえ、どういうこと?ねえ龍二君…結婚するの?私を捨てるの?一緒にいるって約束したじゃない…ねえ、どうなのよ!!」
「お、落ち着け清楚!言ったとおりプロポーズされたけど、それはある意味状況の勢いがあったからで、実際はただ単に告白されただけだって!」
「告白…?龍二君にほかの女が…?そんなの許さない…認めない、君のそばには私だけがいればいい…!」
「た、頼むから落ち着いてくれ!!べ、別に俺はそれを受ける気はないって!言っただろ、俺は今はやりたいことがあるって!!」
「………そう」
そういって清楚は俺から離れていった。あ~、マジで怖かった。なんかこう、覇気みたいのが出ていた気がするぞ。いくらなんでも怖すぎだろ…
会話の内容、浮気の言い訳をする夫とそれを問い詰める妻みたいになってるけど、別に俺と清楚は何もないからな?
「あ~清楚?」
「ふぇ?あれ?私一体…」
「(お、覚えてないのかよ)」
「ねえ龍二君、私なんかした?」
「い、いえ別に!!」
「そう?」
覚えてないならそれがいい。主に俺のために…
実は俺はそろそろこの島にこれなくなる。俺が忙しくなるのもあるが、清楚が中学生になったら特別な教育をするらしく、それを一応部外者の俺が見るわけにはいかないので正式にこの島に立ち入り禁止になるのだ。
なので、これからはあと数回しか来れないので、一回一回を大切しようと考えているのだが、義経たちはそのことを聞いて落ち込んでしまっていた。
俺は何とか元気を出せないかと、いろいろとやってみた。義経たちと模擬戦をしたり、自分でできる限り豪華な料理を作ってみたり。清楚以外はこれで元気になったのだが、清楚だけはいまだに暗いままだった。
「なあ清楚、元気出してくれって。別にこれが一生のわかれって訳じゃねえんだからさ」
「でも…これから龍二君と会えなくなっちゃうんだよ?次に会えるのはいつなのかわからないんだよ?私は、悲しいよ。龍二君は悲しくないの?」
「そりゃあさみしいし、悲しいさ。でもよ、さっきも言ったけど一生の別れじゃないんだ。俺は清楚たちと会えない間に成長してるだろうから、次に会ったときに絶対驚かせてやる。だからさ、清楚も成長したとこを見せてくれよ、俺がびっくりするぐらい」
「成、長…?」
「そうそう、次に会うのはいつかわかんないけど、俺は夢をかなえて見せるぜ?清楚は?何か目標とかないのか?」
「…私の…目標は…っ!」
「…え?」
そういって清楚はいきなり俺の唇に自分のを…って!?
「………え?」
「私の目標、それは龍二君の隣に立って一緒にいること。これが私の気持ちだよ。だから次に会う時まで待っててね、絶対に龍二君の隣に立てる女になって見せるから!」
若干十二歳にもかかわらず、誰もが見惚れるような美しい笑みを浮かべながら清楚はそう宣言した。
変なことをカミングアウトするが、この俺石川龍二は前世を含めて彼女がいたことがない。人並みに彼女欲しいとは思っていてもそこまでがっつく気にはなれず、男子だけでふざけているほうが楽しいとか思っていた。
なので、前の京の時も正直外面を取り繕っても内心ではいっぱいいっぱいだったのに、今回はキスまでされてしまった。ということは…
「…キュー…」
「あっ!龍二君!?」
緊張のあまり意識が飛んでしまった。ああ、俺はロリコンじゃないのに…
最近気を失ってばかりだなーなんて思いながら目を覚ますと、目の前には一面の星空が。後頭部にはやわらかい感触。これは…
「膝枕か…」
「あ、起きたんだ」
「…」
起きると同時にキスされた時のことを思い出し、恥ずかしさから顔を背けてしまった。
「ふふふ、真っ赤になって可愛い」
「…可愛いとか言われてもうれしかねーよ」
「ふふ、もう大丈夫?いきなり気絶するから驚いちゃったよ」
「…うるへえ、こういうの初めてだったんだよ」
「私も。さっきのがファーストキス」
「その、よかったのか?俺なんかで」
「いいの。言ったでしょ?私は龍二君の隣に立ちたいの、だからさっきのはおまじない。また会えるようにってね」
「…わかった。でも今は返事ができない、俺はその、ほかにも俺のことを好きって言ってくれる奴がいるから…だから…」
「大丈夫。次に会ったとき、それがいつになるか分からないけどその時に龍二君が十八歳になってたら返事を頂戴」
「…了解」
俺は清楚の言葉に完全に呑まれていた。清楚の持つ覇気というか、カリスマというか、何か人を惹きつけるような強い力に俺は抗えなかった。
ヘタレとは言ってくれるな。俺だっていっぱいいっぱいなんだ…!
そうして俺は清楚たちとしばしの別れとなった。いつかはわからないけどまた会える、必ず会う。そんな約束をした俺らは笑顔で別れることができた。
そうして時間が過ぎ去っていき…
あれ?なんでだろう、書いてるうちにヤンデレに…