俺は料理人志望なんだけど…   作:イタクァ

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少しづつ一話ごとをを長くしようと努力してみたり

あと数話で小学生編は終わり、中学生編はほとんど書くことがないのですぐに高校生へ突入すると思います。


告白と暗技

 一週間ぶりに学校に行った俺を待っていたのは、あまりにも斬新な挨拶だった

 

 

 

「兄さんと呼ばせてください!」

 

「結婚してください!」

 

 

 

 …はい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝からそんなことを言われた俺は混乱しながら午前中の授業を終えた。周りの奴らは前と同様、いやそれ以上に俺に近づいてこないので、特に問題なく昼休みに突入した

 

 

 

「おー!久しぶりだな龍二!」

 

「久しぶりって、一週間じゃないかキャップ」

 

「バカ野郎!ファミリーの仲間に一週間でも会えないのはさみしいだろう、モロ!」

 

 

 

 目の前でキャップたちがいつも通り楽しそうに会話している。なんというか、たった一週間でも帰ってきたっていう感触があるなぁ

 

 

 

「その、朝の返事を聞きたいんだけど…」

 

「ん?ああ、アレな。大和が俺と結婚したいっていう…」

 

「違うよ!?それは俺じゃなくて京だからね!?」

 

「「大和…少しお話ししようか…!」」

 

「ちょっ、姉さんも京も違うから!早く誤解を解いてくれーー!!」

 

 

 

 自分でまいた種とはいえ、話が進まないのでとっとと切り上げさせ本題に入ることにした。

 

 

 

「で、なんだっけ?」

 

「だから、兄さんと呼ばせてください」

 

「なんでさ?大和はモモの舎弟だろ?」

 

「確かに俺は姉さんの舎弟だ。でもこの前の戦いを見て、言葉を聞いて、背中を見て、こんな人になりたい、俺もこんな風になりたいって思ったんだ。だから俺はあなたを兄さんと呼びたい。いや、呼ばせてください!」

 

 

 

 そういって頭を下げてくる大和。別に俺はいいんだけど、モモはどうなんだ?

 

 

 

「私の舎弟は龍二の舎弟も同然だから問題ない」

 

 

 

 さいですか

 

 

 

「わかった。俺のことをこれからは兄さんと呼べ。これからもよろしくな大和」

 

「うん!よろしく兄さん!」

 

 

 

 …さて、正直目を逸らしてた感があるんだが

 

 

 

「で、京は?」

 

「私を守ってくれた龍二の姿に惚れちゃったので結婚してください」

 

「いや、急すぎるからね?普通そういうのってある程度時間をかけるものじゃないの?」

 

「じゃあ急じゃなければいいんだね!?これから私と一緒に愛を育んで最後にはゴールインしようってことだね!」

 

 

 

 なんかキャラ変わってない?風間ファミリーに入って仲間ができたからってこんなに急に変わるものか?

 

 言い忘れていたけど、京は新たに風間ファミリーに加入した。その際に大和と岳人からはしっかりと謝られたそうで、もう気にしていないとか。

 

 

 

「あ~京、とりあえず俺はそんな気はない」

 

「そんなっ!?」

 

「いや、同い年だけど小4に何を求めてるんだよ…」

 

「それは…(ポッ)」

 

「何を想像してんだよ…!?」

 

 

 

 やばい、京のキャラが全く掴めない…

 

 

 

「いいか京、この国の法律では男子は十八歳、女子は十六歳になるまで結婚ができないんだ。だから俺たちが十八歳になった時、今と同じ気持ちだったらもう一度告白してくれ。その時はちゃんと答えるから」

 

「…うん、わかった。努力する」

 

「…そこは我慢するとか言ってほしかった」

 

 

 

 とりあえずこれで大丈夫だろう。完全に問題の先送りだけど…

 

 

 

「それにしてもあの時の龍二かっこよかったよな!」

 

「ああ!『俺の仲間に、手を出すな!!』って、超かっこよかったぜ!」

 

「なんだ?龍二はそんなことを言っていたのか?」

 

 

 

 …今更ながら俺結構恥ずかしいこと言ってんな…

 

 モモにキャップに岳人、そんな笑顔でこっちを見るな。大和に京、そんなキラキラした目で見ないでくれ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「英雄が!?大丈夫なのかよ!?」

 

「はい。命に別状はないそうですが、その時に肩をやってしまってもう野球はできないだろうと…」

 

「マジかよ…。そりゃああいつ落ち込んでるだろうな」

 

「英雄、大丈夫かな…」

 

 

 

 驚きの告白を受けた日の放課後、俺と冬馬たちは英雄の家に向かいながらこんな話をしていた。どうやら出ていたパーティでテロに巻き込まれたらしく、その時の怪我で右肩を怪我したようで、もう野球ができるような状態ではないそうだ。

 

 英雄の家に着いた俺たちは従者の人に案内されて、英雄の部屋に向かった。俺たちは英雄の友達として顔を覚えられているため何の問題なく入ることができた。

 

 

 

「英雄、お見舞いに来たぞ」

 

「おお、わが友龍二に冬馬、小雪に…誰だそのハゲは?」

 

「準だよ!井上準!若のお供の!」

 

「…ああ、そういえばいたな」

 

「…俺そんなに存在感ないかなぁ」

 

 

 

 初めて準の禿げ頭を見たからしょうがない。

 

 英雄、表面上は元気そうにしてるけど、付き合い長い俺達からすればバレバレだ。

 

 

 

「…英雄。無理しなくていいぞ」

 

「…何のことだ、龍二よ」

 

「見てらんねえんだよ、お前が泣きそうな顔なんて。俺が知ってる九鬼英雄はいつも不敵に笑ってる男だぜ?」

 

「…すまん、我慢していたつもりなのだが…!」

 

 

 

 英雄は我慢できなくなったのか、大粒の涙を流し始めた。

 

 

 

「わ、我はもう、野球ができないのだ…!夢だった…メジャーリーガーにもなれない!我は、我は…!」

 

「…英雄、野球がしたいか?」

 

「したいに決まっておろう!我の夢だ!我のすべてだ!この九鬼英雄の存在そのものだ!!」

 

 

 

 英雄の気持ちが痛いほどわかる。俺も英雄と同じく夢に生きる人間だ。料理人という夢が潰えたら俺はもっと泣き叫ぶかもしれない。だから俺は…

 

 

 

「英雄、少し肩を見せてもらうぞ」

 

 

 

 英雄の右肩を触りながら気を流し込み内部の様子を探ってみる。

 

 すでに傷はふさがっている。内部はパッと見問題ないが、自分の肩と比べてみるとおかしい個所が数か所、かなり深部だが見つかった。

 

 これならまだいけるかな…

 

 

 

「もしかしたら治るかもしれないといったらどうする?」

 

「…何?できるというのか?医者にもう無理だと言われたこの肩を治せるのか!?」

 

「可能性はある。ただ、俺のやり方はほかの奴らと全く違うし、失敗すればどうなるかわからない。どうする?」

 

「…頼む!少しでも可能性があるなら、我はその可能性を掴みとって見せる!王たる我がその程度のリスクで引くわけにはいかんのだ!」

 

「…やっといつもの英雄に戻ったな。よし、任せてくれ」

 

 

 

 俺は従者の人に頼んでできるだけ鋭い包丁を持ってきてもらった。

 

 

 

「おいおい、包丁で治せるわけねーだろ」

 

「黙ってろ準。正直この技はかなりきついんだ」

 

 

 

 川神院の技術と食義、そして俺の包丁さばきが融合した新技。一回使っただけで食没して貯めたエネルギーが一瞬で消費される大技、いざ!

 

 

 

「英雄、怖かったら目をつぶってろ。結構ショッキングな光景だと思うから」

 

「誰に言っておる!我は九鬼英雄!この程度のことで怖がるわけなかろう!」

 

「…わかった。……………ふぅー」

 

 

 

 自分の集中力を極限まで高める。余分な力を抜き、英雄の肩をしっかりと見る。今の俺なら細胞のつなぎ目すら見ることが出来る。そして思い出すんだ、あの時の感覚を、何も考えず手が完璧に動いたあの感覚を。

 

包丁に俺の気を纏わせ、包丁を構える。見つけ出すんだ、完璧なルートを、

 

 

 

「暗技…」

 

 

 

 そして、俺の目に光の線が見えた!

 

 

 

「…蘇生切り!」

 

 

 

  ブシャアアア!!

 

 

高速で振るった包丁によって英雄の肩の一部が切り取られた。

 

 英雄の右肩から勢いよく血が噴き出す。異変を感じた従者部隊が部屋に突入、俺を取り押さえようとするが…

 

 

 

「やめよ!」

 

「英雄様!大丈夫なのですか!?」

 

「うむ、全く痛みがない。それに肩の調子も前よりはるかに良い。龍二、説明してくれるか?」

 

 

 

 俺はエネルギー切れでフラフラになりながらも答えた。

 

 

 

「ハァ、ハァ…さっきのは、蘇生切り。ハァ…、包丁に、回復の気を纏わせて、ハァ、細胞を傷つけないように、患部だけを切り取った、ハァ。切りとられた部分は、活性化した細胞によって、ハァ、すぐさま回復する、元通り、怪我する前までな…ハァ…」

 

「…では我は…また野球ができるのか?」

 

「一応、検査は、受けてくれ。多分、ハァ、大丈夫、だけどな…」

 

「…そうか…我は…」

 

 

 

 そうして英雄の目もとが光ったのを見た瞬間、俺の意識は消えた。

 

 

 




英雄には野球を続けてほしかったので…

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