「なあ、おかしくねーか、この草大きくなりすぎ」
初夏となり、日が暮れても暑さが残る金曜日の放課後。俺は風間ファミリーのみんなといつもの原っぱで遊んでいた。そんなときに急にキャップがこんなことを言いだした。
「あーそう言われれば」
「今まで2mぐらいだったのに」
キャップが指差していたのは以前見つけた他の雑草よりも背が高い草だった。確かに先月見た時よりも1mほど成長しているようだ。見たことない植物だけどなんなんだこれ?
「成長期なんだろ、この雑草は」
「俺様もこれくらい大きくなりたいぜ」
くだらない話をしている俺らを謎の草が見下ろしていた。
「ねえちょっと、この草5m超えてるよ!」
しばらくたったある日、今度はモロが草を指して叫んだ。確かに前見た時よりも3mくらい成長してるな。でも成長の速度が速すぎないか?前見た時から二週間も経ってないぞ?
俺たちはその場でこの草についての談義を始めた。
「実は生き物なんじゃね?」
「植物は生き物だろ?」
「いや、そういう意味じゃなくて意識があるみたいなって事だろ?」
「ある日ワン子の姿が消えた…するとその草はワン子の身長分伸びていた…」
「怖いでしょうが!」
岳人の冗談にワン子が強めの突っ込みを入れる。あれ?マジで怖がってる?なんか涙目だし
よく見ると隣にも俺の服の端を掴んで震えている奴がいた
「…大丈夫かモモ」
「わ、私が怖い話嫌いなの知ってるだろ…!」
「え?姉さん怖い話苦手なの?」
驚いた大和が聞いてくる。
「こいつ幽霊とかそういうのが苦手なんだよ。理由は殴れないから」
「あ、あはは、姉さんらしいね」
「ちなみにこいつの尊敬する人は安倍清明。そういったのを退治できるからだってさ」
「うう~…」
涙目で俺の服を掴むモモ。いつもの強気な感じがなくて可愛い。いつもこうならいいんだけどな
「ある日ガクトが消えた…次の日探してみると、その茎にはガクトの顔が…」
「キャー!気持ち悪いわ!」
岳人とキャップの話が怖かったのだろう。ワン子が俺の後ろに隠れてしまった。頭だけを隠して震えている姿が何とも犬っぽい
「コラッ!岳人!あんたこんなとこにいたのかい!」
「ゲッ!?母ちゃん…!」
すると岳人の母親、麗子さんが岳人を探しに来た。またなんかしでかしたのか…
「あ、丁度良かった。すいません麗子さん、この草のこと何か知ってますか?」
大和が麗子さんにこの草のことを尋ねる。岳人が後ろで助かったって顔してるけどあとで間違いなくなんか言われるぞ
「んん?これは…確か『竜舌蘭』だね」
竜舌蘭、数十年に一回しか花を咲かせない植物だそうだ。
どうやら麗子さんもあまり詳しい話ことを知らないようで、誰かほかの人に聞いてくれとのことだ。お叱りは後で、としっかりと釘を刺された岳人が泣きそうな顔になってるが、誰も何も言わない。自業自得だ。
「なるほど、これがセンチュリー・プラントというやつか…」
「…あんた本当に小学生かい?大和ちゃん」
「麗子さんがもっと若かったら俺が口説いてたぜ!」
…実は、しばらく大和と話しててわかったことがある。こいつ重度の中二病だ。
いつもニヒルな笑みを浮かべ、アニメのような言い回しを多用する。なんというか、見てて恥ずかしい。
「だとしたら大和が岳人のお父さんになるんだね!」
「うえっ!?勘弁してくれよ、大和が親父なんて考えたくねえぜ…」
そりゃ同い年で中二病の親父なんか嫌だろう…
「鉄心爺さんとか詳しいんじゃないのか?前に咲いたころからこの街にはいただろうし」
「よし、呼んでみるか。スーーーーー…」
「っ!全員急いで耳を塞げ!」
俺が全員に警告を出したがワン子だけ塞ぎそこねていた。
「ボケはじめのブルセラジジイ!!!!!!!」
「モモ!オヌシいい度胸しとるのう!!」
「一瞬で来たよ…この一族は全く…」
川神院からここまで一瞬で来たよ…すげえなこの人…
耳を塞ぎそこねていたワン子が目を回していた。おいおい、大丈夫か?
大和が鉄心爺さんに事情を説明すると、
「お~、確かに咲いておったわ。大体50年くらい前かの。おそらくこれはその時の花の子株じゃろ」
「これがどんな花を咲かすかわかりますか?」
「すまんがわからんのう。竜舌蘭は個体差が大きく、種類も多いので見ただけでは判別ができん。ただ見たところこの花は明後日くらいには咲くと思うぞ」
それを聞いてキャップがはしゃぎだした
「よっしゃあ!みんなで写真を撮ろうぜ!」
「おお!いいわね!」
「なあ龍二、俺様決まってるか?せっかく映るんならかっこよく映りたいじゃん」
「何もしなくてもいいと思う」
「何もしなくてもかっこいいのか!サンキュー龍二!」
俺は何をしても意味がないという意味で言ったんだけど…
にしても記念写真を撮るのはいいけど、天気が心配だ。今朝のニュースで台風が近づいてきてるっていうし…
俺はふと視線を感じてそちらのほうを見てみた。するとそこにはこちらを見詰める京の姿があった。
キャップも京を見つけたのだろう、すぐさまそちらへ駆けて行った。俺も挨拶するためにすぐさま向かったが、俺が着く前に京は走り去ってしまった。
「京はなんだって?」
「わかんねー、なんか俺に話があるみてー」
「うわ、まさか椎名に好かれてるんじゃね?」
「椎名菌に気を付けろよ」
…ふざけた話だな
「おい、大和に岳人。二度と椎名菌とか言うな」
「おいおい、なんだよ急に」
「ふっ、まさか毒されてしまったのか?」
「黙れ。俺の友達を侮辱するなって言ってんだ」
子供は残酷とはよく言ったもんだよな。何かイジメるネタがあればすぐに実行するんだから。それがどれだけ相手を傷つけるかを考えずに
「椎名と友達!?やめとけよ、あいつといると一緒だと思われんぞ」
「もう少し友達は選ぶべきじゃないか?奴はまずいぞ」
「…」
ドンッ!!!
あまりにイラついた俺はその場で地面に震脚を放った。地面が揺れ、足元には大きなクレーターができていた。急な揺れでみんな尻餅をついている。立っているのは俺とモモだけだ。
「…俺が誰の友達になろうが俺の勝手だろうが」
俺はイラついたままその場を立ち去った。あのままだったらあの二人を殴ってしまいそうになるからだ。
…ああ、イライラする…
前書きの答え
作者も決めてない(笑)