皆さんどんだけ過激なもの読みたいんですか…
2015/9/4 改稿
俺達が風間ファミリーに入った翌日、俺は多摩川のほとりであの娘を探していた。
あいつから聞き出した場所に向かっているけど、歩きながらあの娘に呼びかけを続けている。正直俺はあの娘が死んだなんて信じたくないし、信じられない。違う猫であることを願って俺は歩き続けた。
それでも現実は残酷だった。聞き出した場所付近の草むらに見知った毛皮の残った猫の死体かあった。死体はほぼ白骨化しており、一部残った毛皮が俺の知っているあの子だということを示していた。
俺は涙を流しながらあの子のためにお墓を作ってあげた。今までの感謝と守れなかった罪悪感がごちゃまぜになりながらも穴を掘り、死体を埋めた。適当な大きさの石を削って形を整え、墓石の代わりに小さな山のようなお墓の上に置いた。
「…ごめんな、何も出来なくて」
持ってきた鰹節を完成したお墓に供えて黙祷を捧げる。もう涙は止まっていた。あのこの魂が成仏するように、そして俺のように転生するのなら幸せになるように俺は祈り続けた。
『ニャー』
「…え?」
どれくらい祈り続けたのだろう。突然どこからか複数の猫の声が聞こえてきた。鰹節のにおいに誘われたのかとその声のほうを見てみると、そこにはあの子と同じ毛並みの子猫が2匹いた。
「もし、かして、お前ら…」
『ニャーニャー』
あの娘は子供を産んでいた!
俺は止まった涙が再びあふれ出てきたのを感じた。
俺はこの子たちをあの娘と同じような目に合わせないと決意し、子猫たちの里親を探し回った。本来なら俺が飼えれば一番なのだが、あいにく実家は定食屋、動物は飼えない。だから自分の足で走り回り子猫たちの里親を町中探し回った。
最終的にあの双子は金柳街のとあるお婆ちゃんの家で面倒を見てもらうことになった。とても優しそうなお婆ちゃんで、時々様子を見に来るといいとまで言ってくれた。俺は名残惜しさを感じながらも双子をお婆ちゃんに預けた。
それから時々様子を見に行ってるが、2匹とも元気そうで俺はうれしい。
「…なんてことがあってな」
「子猫か~、私も見てみたいな」
「義経は許せない!猫を殺すなんて!」
「落ち着きなよ義経。義経が優しいのは私はわかってるからさ」
「もう龍二がお仕置きしたんでしょ?」
俺は今日もクローン組の島へと来ていた。お土産話っていうには変かもしれないが、一連のことに関する話をしてあげた。
「ああ。今になって考えてみると少し温かったかな、あいつへの仕置き」
「一体何をやったのかすごい気になるんだけど…」
「え?それは体中の関節を…」
「あー!言わなくていいから!」
そこまで怯えられると悲しいんだけど…
「そうだ、今度あの子達の写真持ってくるよ。清楚が見たそうにしてるから丁度いいだろ」
「本当!?楽しみにしてるよ龍二君」
「おう本当にかわいいんだぞ。それと義経、ありがとうな。あの子のために怒ってくれて」
そういって俺は義経の頭をなでた
「ふわ~」
「…(ぱっ)」
「あ…」
「…(なでなで)」
「ふわ~」
…何このかわいい生き物?
「むー…」
「大丈夫だよ清楚先輩。あれは飼い犬に対するスキンシップみたいなものだから」
なんか向こうで清楚がこっちをかわいらしくにらんでくるんだけど。
「さて、丁度いいからそろそろお昼にしようか」
「あっ、私手伝うよ」
「よし、一緒に作るか清楚」
「うん!」
名残惜しいが義経の頭から手を離し、俺と清楚は昼食の準備を進めるためにキッチンへ向かった。
「べ、弁慶?なんで止めるんだ?」
「いいからいいから。二人っきりにしてあげなよ」
「え~、僕龍二たちの料理見たいのに~」
後ろでなんかしゃべってるが俺には聞き取れないな。なんか清楚が顔を真っ赤にしてるけど大丈夫か?
清楚に料理と食義を教え始めてからしばらくたつ。清楚は俺が教えたことを素直に聞いてくれるので教えやすいし、俺が来ない間に自分で研鑽する真面目さがある。
最初は包丁の持ち方からだったのに、今では俺と一緒に作れる程度の技術がある。すさまじい才能だな。まだまだ負けないけどな!
「清楚、そっちはどうだ?」
「もうすぐできるよ」
「うし、じゃあ俺もやるか」
俺は自分の作業スピードを上げた。一応は清楚に合わせたスピードでやっているから普段よりは遅いけど、一般家庭と比べるとかなりの差がある。
ところで、今日採ってきたのはウツボだ。食べられるのは知ってるんだけど、こいつの捌き方を知らないんだよなぁ。小骨が多いしオマケに硬い。鱧みたいに骨切りできれば楽なんだけど…
とりあえず塩を表面に塗りこんで全身のぬめりをとり、頭を落として内蔵を取り去った。ここまでは定石なんだけどここから…
ふ、と俺の頭にはしるものがあった。俺は包丁を動かす。まるでこいつの捌き方がわかってるかのように
直感的というよりも、むしろ無為と言った感じだ。俺はこいつの捌き方を知らないのに手がほぼ勝手に包丁を入れていく。
あっという間に俺はウツボを捌き終わった。包丁を置いて俺は自分の両手を見る。今のは一体…?
「竜二君、どうしたの?」
「…あ、ああ。なんでもないよ、大丈夫。さあ、仕上げようか」
さっきのは気になるけど今は目の前の調理に集中しよう。そうして昼食が完成した。俺達で配膳までやってから義経たちを呼び、席に着いた。
「今日は途中でウツボを獲ってきたからウツボのから揚げなんてものを作ってみた。俺と清楚の合作だ。味わって食べてくれ」
「「「いただきまーす!」」」
何気に自信作。評判はどうかな?
「おいしい!このから揚げおいしいぞ!」
「こりゃうまいね」
「モグモグ、モグモグ」
「ほら与一君、落ち着いて食べなさい」
評判は上々のようで安心した。清楚が作った味噌汁やらもすごくおいしい。こりゃ油断してると抜かされるかもな
にしても弁慶の食べ方がなんとなく酒飲みっぽいんだが、将来のん兵衛にでもなるんじゃないかと心配だ。
食後にウツボって何という質問をされたため、使わなかった頭の部分を見せたら義経と与一が悲鳴を上げてしまった。そんなに怖いか?
「やっ!はっ!えいっ!」
「そおい!」
「…ふっ!」
少し前から義経たちも武道を本格的に始めたようだ。義経は刀、弁慶は錫杖、与一は弓と何とも伝承通りの武器だが本人たちはとても気に入っているようだ。
武器の扱いが素人の俺から見ても彼らには才能があるとわかる。まだまだ動きが荒いが少しずつそれが洗練されてきてる。将来的には川神院の師範代クラスには確実になるだろうな
俺は何してるのかだって?基本的には清楚と一緒にみんなの様子を見てるな。清楚は非戦闘要員だから特に訓練なんかはしていない。俺も一応は客人という立場だからそういうのには参加しなくていいんだ。それに俺は料理人志望だしね!…最近信じてもらえないけど
こういう時間で食義の修行をしたり、一緒に本の話をしたりしている。俺の周りで本の話ができる奴ってそんなにいないから話していて楽しいからな
時々清楚が顔を赤くしたり、弁慶がニヤつきながらこっちを見てくる。いったいなんなんだ?
ウツボ料理のこと調べてたらおなか減ってきた