小雪を助けてから早数か月。小雪は身体も心も元気になり、ついに退院した。入院してる間に小雪のことを引き取ってくれる里親が見つかり、今では榊原小雪と名乗っていた。家も今までより近くなり、冬馬たちと同じ小学校に転校したそうだ。今では出会った当初の暗い印象はなりを潜め、小雪本来の明るい様子で毎日みんなと一緒に走り回っている。その様子を見るたびに俺たちは自分たちのしたことに対する喜びと達成感が湧き上がってきた。
ところで俺が小雪のお見舞いとして作ったマシュマロのムースを小雪がかなり気に入ってしまって、よく作ってとねだられる。作り方を教えると言っても、
「リュージが作ってくれたのがいい!」
などとうれしいことを言ってくれる。俺も小雪には甘いんだろう、結構な頻度でつくってしまう。小雪が嬉しそうに食べる姿は俺の中で一種の清涼剤だ。普段のストレス(主にヒューム関係)が吹っ飛んでいくよ
そういえば最近俺が餌をあげていた猫を見なくなった。子猫のころから俺が捌く練習にしてた川魚を餌としてあげてたから、かなり可愛がっていたんだけど…。うちが飲食店じゃなかったら絶対に飼ってたな
そんなこんなで週末、俺は川神院にお邪魔していた。いつもならお手伝いに来てるんだけど今日は別件だ。いつもの訓練で普段から生傷が絶えないから気による治療術を教えてもらおうと来たんだ。本来なら川神院の技は門外不出だが、抜け道なんざいくらでもあるさ
具体的には釈迦堂さんに酒のつまみを作ってあげたら一発OKだった。ちょろいな
まあ過程はともかく教えてもらえることになった治療術。これは気によって患部の細胞を活性化させ治癒力を高めるというものだ。食没を修得したことで全身の細胞のイメージがしやすかった俺は数時間で治療術を会得することができた。教えてくれた修行僧が涙目だったのは余談だ。
ところで、なぜいつもなら引っ付いてくるモモがいないのかというと、どうやらモモに客人が来ているらしい。最初はいたんだけど、客人がきたからその対応をしているとか。学校で怖がられているモモに客人なんて珍しいなー、と思いながら俺は帰宅するために荷物をまとめていた。すると
「龍二!悪者退治に行くぞ!」
「は?」
突然モモが部屋に飛び込んできてこんなことをのたまい始めた。何言ってんだこいつ?
詳しい話はあいつらに、ということで俺はモモに連れられ正門に連れて行かれた。正門の前には俺と同じくらいの少年少女が数人いた。
こいつら確かうちの学校の奴だ、なんか見たことある。多分同い年かな
とりあえず話を聞いてみると、どうやら自分たちの遊び場を上級生に乱暴なやり方で取られてしまったらしい。仲間の一人は耳にコンパスで穴をあけられたとか。それで学校である意味有名なモモにそいつらを退治してほしいんだとか。対価としてモモが好きなカードと、直江大和とかいうやつがモモの舎弟になったそうだ。…可哀想なヤツ、これから頑張れよ
「というわけで、こいつも連れていくぞ。私の相棒だ」
「え?でも大丈夫なんですか?危ないんじゃ…」
俺も有名だけどそれはモモに付きまとわれているからであって、別に俺の強さが有名なわけじゃないからな。この反応が当然だろう
つか誰が相棒だ、誰が
「問題ない。こいつは強いぞ」
「ならいいんですけど」
数人に疑いの目で見られているが別に気にならない。
「とりあえず耳に穴開けられたのって誰だ?」
「おう!俺様だぜ!」
「ちょっと見せてみ?…~~これでどうだ?」
「お?痛くねえ!怪我が治った!」
修得したばかりの治療術で耳の怪我を治す。細胞一つ一つを意識してしっかりと。変な菌がはいって化膿でもしたら大変だからな。
「マジかよキャップ!?…すげえほんとに治ってる!」
「うわ~、どうやったのかしら?」
「お前いつの間に治療術使えるようになったんだ?」
「さっき教わってきた。結構便利だよなこれ」
連中は俺が怪我を治したのに驚いていた。普通じゃありえないもんな
「へへっ、ありがとよ!俺は風間翔一!みんなにはキャップって呼ばれてるぜ!」
「まあ知ってると思うけど、石川龍二。あとモモとは相棒じゃない、腐れ縁だ」
「つれないこと言うなよ~」
「ほれ引っ付くな」
いつものようにモモがジャレついてくるが、もう慣れた。
「で?お前たちは?」
「あ、ああ。俺は直江大和。ファミリーでは軍師をやっている。あと姉さんの舎弟になった」
姉さん?ああ、モモか。これから苦労するだろうなぁ、モモの舎弟なんて
「アタシは岡本一子!みんなからはワン子って呼ばれてるわ。よろしくね石川君!」
どことなく犬っぽいなこの子。あだ名がすごい似合ってる
「俺様は島津岳人だ。どうやったのかわかんねーけどキャップの傷治してくれてありがとよ」
なんだろ、俺様って流行ってるの?俺の周りって一人称がすごい奴多いな。我とか…
「ぼ、ぼくの名前は師岡卓也。みんなからはモロって呼ばれてる。よろしく…」
…普通だ。良くも悪くも普通だ。でも俺の周り濃い奴多いからこういう普通の奴が希少種なんだけど。普通って何だろう…
翌日になり、俺は結局モモに連れられ上級生退治に同行するはめになった。まあ、適当にノッキングでもしときゃいいだろ。
原っぱについた俺たちを待っていたのはニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべたたくさんの上級生だった。大体30人ちょいか?予想よりも多いな
ま、小学生がいくらいようと俺とモモには関係ないな。そのまま始まったのは喧嘩じゃなく蹂躙だった。モモが圧倒的な力で上級生を吹き飛ばし、風間たちはそれを見てポカーンとしてる。そりゃあ子供とはいえ人一人が宙を待っていればなぁ…
俺?俺は基本的に残党狩りだ。逃げようとしたり、モモには勝てないと踏んでこっちを攻撃して来ようとする奴らにノッキングを極めて固めてる。いやーらくなしごとだわー(棒読み)
気づくと上級生のリーダー以外は気絶してるか固まってるかのどちらかとなっていた。今はモモがリーダーを追い詰めている
「く、来るな!来るなよ!」
「命乞いは、媚びてするものだぞ」
黒い微笑みながら近づいていくモモと、腰を抜かしながら後ずさっていく上級生。
…どっちが悪者かわかんねえな
「俺は本当に悪なんだ!子猫を平気でイジメ殺せる!お前も殺すぞこのアマ!」
あ?
主人公の設定乗せときマース
名前:石川龍二(8歳時)
血液型:A型
誕生日:4月18日
一人称:俺
身長:134cm
武器:拳
好きな食べ物:なんでも
嫌いな食べ物:特になし
尊敬する人:両親、九鬼揚羽
苦手な人:ヒューム
将来の夢:料理人
最近の悩み:友達の少なさ
武士テーマ:料理人志望にあるわけないでしょ…
謎の爺さんの手によって手違いで殺され、転生させられた料理人志望の元学生。その際に植えつけられた知識などの爺さんのお節介が彼の苦労の原因。
ヒュームに無理やり弟子にされ、毎週ぼこぼこにされていたが、そのおかげで現在は小学生なのにも関わらず、世界でも有数の実力者。その強い力が原因で本人が望まないにも関わらず厄介事が舞い込んでくるかなりのトラブルホイホイ。
料理人になるのが彼の夢だが、川上という土地柄がそれを阻害している。なのでそれを手助けしてくれると約束した九鬼揚羽に深い感謝を抱いている。
小学校では百代が原因でみんなに避けられているが、先生方には百代のストッパーとして感謝されている
自分が受けた恩にはしっかりと感謝ししっかりと返そうとするが、逆に仇には容赦のない対応をする。
精神年齢が高いため周りから一歩引いてみてしまうが、そのおかげで仲間内では兄貴分のようなポジション。
・爺さんからもらった知識
1、食義の習得法
2、ノッキングの方法
3、体内エネルギーを使用する技(料理人のもの)